Prisoner

たける

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第9章

3.

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翌朝早くに、ドーズが保釈金を払いクレイズを迎えに来た。その顔は厳しく、逮捕された理由をゲイナーか誰かに聞いたのだろうと推測する。

「もうこんな事は止めてくれ」

運転しながらドーズは、嘆くようにそう言った。それに頷くだけで答え、クレイズは独房での事を思い返す事にした。


──甘く激しかった。


思い出すだけで体が熱くなる。クレイズはそんな体を自身で抱くと、運転しているドーズを横目で見た。

「なぁドーズ。ハリスの家へ行ってくれないか?」

そう言うと、ドーズはクレイズを一瞬だけ見遣り、すぐに前を向いた。

「どうして?保釈したばかりなんだから、少しは大人しくしていたらどう?」

そうドーズがクレイズに言ったが、クレイズは笑顔のまま首を振った。

「ハリスは友達だ。会って色々話したい。そろそろ、あのカルロスって奴の事、調べられてるだろうし」





以前教えて貰った住所を頼りに車を進めていると、高級そうなマンションにたどり着いた。その5階にハリスは住んでいるらしい。
マンションの入口は自動ドアに挟まれていて、インターフォンが備えられている小さなモニターと、その横にルームナンバーを入力する電卓のようなものがあった。そこへハリスの部屋の番号を入力し、インターフォンを押すと、暫くしてからモニターにハリスの姿が映し出された。

「やぁハリス。久しぶりだな」
『クレイズじゃん。あ、ドーズさんも。今開けるから』

そう言って画面が暗くなると、2枚目の自動ドアが開き、そこを潜ってマンション内に入った。すぐにエレベーターがありボタンを押して待っていると、ドーズがクレイズを見下ろして来た。

「カルロスの事を聞いたら、すぐ帰るんだから」
「そうだな」

適当な相槌を打つとエレベーターが開き、ハリスが中から手を上げた。どうやらお節介にも迎えに来たらしい。

「さぁ、どうぞ」

自分の物でもないのにハリスはそう言って2人をエレベーターに招くと、目的階を押した。

「2人揃って遊びに来てくれるなんて、珍しい事もあるもんだね」

静かな浮遊感を感じ、エレベーターが動き出す。クレイズはハリスの隣に立ち、笑いかけた。

「実はな、カルロスについて聞きたくて来たんだ」
「カルロス?あぁ、はいはい。その話しなら、ゲイナーにもメールはしたんだよ」





ハリスに通され、2人はリビングへ入った。四方の壁を書棚が占めていて圧迫感がある。どれも裁判で使う資料なのだろう。

「ちょっと待ってて、コーヒー入れてくるから」

そう言うと、ハリスはキッチンへと消えた。
リビングに残されたクレイズは取り敢えずソファに座り、ドーズはその隣に腰掛けた。

「本部長には、もう報告してるのか」

そう呟いたドーズは、少しだけ機嫌を損ねたように唇を尖らせた。

「どんな内容だろうな?」

保釈金を払った理由については何か分かったのだろうか?そう考えていると、トレーにカップを3つ乗せてハリスが戻って来た。

「逮捕されたって聞いてたんだけど、ドーズさんが保釈金を払ったのかな?」

そう言いながら木目の綺麗なテーブルへカップをそれぞれ並べると、ハリスはクレイズの向かい側に落ち着いた。

「そうだ」

ドーズが短く答えると、クレイズは困ったような笑みをハリスに見せた。

「その話しはもういいだろ。早くカルロスの事を教えてくれ」

そうクレイズが催促すると、ハリスはあらかじめ用意していた紙をソファから取り上げた。それをクレイズに寄越すと、ブラックのコーヒーを1口啜った。

「それはゲイナーに送ったメールのコピーなんだけどね」

それに目を通し、クレイズは唸った。


──愛人……?接触してくるだと?


クレイズは鼻先で笑った。自分を愛人にする為に、わざわざ保釈金を払ったのだろうか?だとしたらご苦労な事だ。

「僕にも見せてよ」

ドーズにそれを手渡すと、クレイズはコーヒーにたっぷりの砂糖とミルクを入れ、掻き回してから飲んだ。程よく冷めていて、猫舌のクレイズにも飲めた。隣でメールのコピーを読んでいたドーズは読み終わったのか、不快な顔をしながら紙をテーブルへと投げ出した。

「何?これ。愛人だとか、接触だとかさ」
「まぁ、確かにね。僕だってこの噂を聞いた時、えー?って思ったもん」
「その噂って、どこから聞いてきたんだ?」

クレイズが尋ねると、ハリスはそれは秘密、と、口元に人差し指を立てた。

「でもまぁ、気をつけてよね。カルロス、手段を選ばないって話しだから」




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