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第5章
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窓の外はまだ薄暗かった。室内も同様に暗く、そんな中でクレイズは着替えを済ませた。
久しぶりに温かな布団で眠ったせいか、気分は晴れ晴れとしている。そっと窓を開き、昨夜用意しておいたカーテンをベッドの下から取り出した。カーテンを引き裂き、その先を括りつけてロープ代わりにしたもので、地上まで十分な長さがあった。それの先端をベッドの足に括りつけ窓から垂らすと、クレイズは息を潜めながら部屋からゆっくりと降りた。
外は雪がまだ降り続き、かじかんだ手が痛むが、それでも何とかカーテンを握り一足ずつ屋敷を降りる。
幸いにも部屋は2階にあり、すぐに足は雪を踏んだ。
雪が積もっているお陰で、心配していた足音も立たず、クレイズは身を屈めながら門へ駆けた。
庭も屋敷もシンと静まり返っていて、誰に見つかる事もなく門まで来られた事にホッと一息ついた。その時、不意に肩を叩かれ、クレイズは飛び上がりそうになった。
早鐘を打つような心臓を押さえながらゆっくりと振り返ると、そこにはロゼが立っていた。
「どちらへお出かけですか?クレイズ様」
ロゼも辺りに気を遣っているらしく、そう尋ねた声は小さかった。
まだ胸は緊張している。
「この屋敷を出て行くんだ」
そう答えると、ロゼは困ったように眉を潜めた。
「やはり、ゲイナー本部長の元へ向かわれるのですか?」
ロゼが心を見透かしたように言った。クレイズは言葉に詰まり目を丸くしてロゼを見つめた。
何故知っている?と尋ねたかったが、舌がうまく回らない。
「ドーズに聞いたのか?」
漸くそれだけを口にすると、ロゼは頷いた。
「はい。お食事の前に、少しだけ。クレイズ様が、ゲイナー本部長を気に入っておられるようだと、マイク様がそうおっしゃっておりました」
「それだけで、オレが本部長の元へ向かうと思ったのか?」
そう尋ねると、ロゼは再度頷いた。
「安易だ。だが、外れてはいないな。オレには他に知人などいないからな」
「マイク様がいらっしゃいますよ」
ハッキリとロゼは言った。
「ドーズはオレをレイプしたんだぞ?そんな奴を好きになれるか……!」
そうクレイズが言うと、ロゼはどこか悲しげな表情になった。
「ですが、マイク様は本当にクレイズ様を」
「聞きたくない」
ロゼの言葉を遮ると、クレイズは耳を塞いだ。するとロゼは口を閉じ、門の鍵を開けた。
「差し出がましかったようで、申し訳ございません」
クレイズは耳から手を放すと、ロゼを一瞥し門を出た。
──今必要なのは、ドーズの嘘くさい愛ではない。
雪を踏み締めながら、クレイズは歩いた。背中に視線を感じたが、振り返る事はしなかった。
久しぶりに温かな布団で眠ったせいか、気分は晴れ晴れとしている。そっと窓を開き、昨夜用意しておいたカーテンをベッドの下から取り出した。カーテンを引き裂き、その先を括りつけてロープ代わりにしたもので、地上まで十分な長さがあった。それの先端をベッドの足に括りつけ窓から垂らすと、クレイズは息を潜めながら部屋からゆっくりと降りた。
外は雪がまだ降り続き、かじかんだ手が痛むが、それでも何とかカーテンを握り一足ずつ屋敷を降りる。
幸いにも部屋は2階にあり、すぐに足は雪を踏んだ。
雪が積もっているお陰で、心配していた足音も立たず、クレイズは身を屈めながら門へ駆けた。
庭も屋敷もシンと静まり返っていて、誰に見つかる事もなく門まで来られた事にホッと一息ついた。その時、不意に肩を叩かれ、クレイズは飛び上がりそうになった。
早鐘を打つような心臓を押さえながらゆっくりと振り返ると、そこにはロゼが立っていた。
「どちらへお出かけですか?クレイズ様」
ロゼも辺りに気を遣っているらしく、そう尋ねた声は小さかった。
まだ胸は緊張している。
「この屋敷を出て行くんだ」
そう答えると、ロゼは困ったように眉を潜めた。
「やはり、ゲイナー本部長の元へ向かわれるのですか?」
ロゼが心を見透かしたように言った。クレイズは言葉に詰まり目を丸くしてロゼを見つめた。
何故知っている?と尋ねたかったが、舌がうまく回らない。
「ドーズに聞いたのか?」
漸くそれだけを口にすると、ロゼは頷いた。
「はい。お食事の前に、少しだけ。クレイズ様が、ゲイナー本部長を気に入っておられるようだと、マイク様がそうおっしゃっておりました」
「それだけで、オレが本部長の元へ向かうと思ったのか?」
そう尋ねると、ロゼは再度頷いた。
「安易だ。だが、外れてはいないな。オレには他に知人などいないからな」
「マイク様がいらっしゃいますよ」
ハッキリとロゼは言った。
「ドーズはオレをレイプしたんだぞ?そんな奴を好きになれるか……!」
そうクレイズが言うと、ロゼはどこか悲しげな表情になった。
「ですが、マイク様は本当にクレイズ様を」
「聞きたくない」
ロゼの言葉を遮ると、クレイズは耳を塞いだ。するとロゼは口を閉じ、門の鍵を開けた。
「差し出がましかったようで、申し訳ございません」
クレイズは耳から手を放すと、ロゼを一瞥し門を出た。
──今必要なのは、ドーズの嘘くさい愛ではない。
雪を踏み締めながら、クレイズは歩いた。背中に視線を感じたが、振り返る事はしなかった。
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