Prisoner

第３章

１．

護送車にクレイズが乗り込む時に、そこにゲイナーの姿はなかった。見送って欲しかったとは思わなかったが、どこか物悲しい気持ちになった。
クレイズが手錠をつけられて護送車に乗り込むと、銃を持った警官が１人クレイズと一緒に乗り込んで来た。
他に誰もおらず、クレイズと警官を乗せた護送車はゆっくりと発進する。
ブレイブ刑務所は街の外れにあり、ほぼ隣街に隣接するように建てられていて、治安も悪いとクレイズは聞いていた。

「どのぐらいで刑務所に着くんだ？」

向かい側に座って、クレイズを睨んでいる警官に尋ねた。すると警官は、渋滞していなければ３０分程で到着すると答えた。


──３０分。長いな。


クレイズはそう思った。
このまま、刑務所に入るのもいい。だがそれは、洋館に１人暮らしていた時と同等の退屈さを味わわなければならない。むしろ、それ以上かも知れないなと考えた。
退屈なのは嫌だが、どうする事も出来ない。
だが、どうにかしなければならない、とも思う。
ふと、ゲイナーの顔が思い出され、クレイズはその声や匂いも思い出した。
生まれて初めて、安らぐと感じた。その安らぎの側にいたい、とも思い始めていた。この気持ちは、親を求める子のようなものだ。そうクレイズは思った。
刑務所に入れば、ゲイナーに会う事はないだろう。
自分は強盗犯であり、殺人犯でもある。弁護士がいくら働き掛けてくれても、そう罪は軽くなる筈もない。


──罪？いや、オレは罪を犯してはいない。


クレイズは思った。


強盗をしたのは、自分が貧しかったからだ。

仲間を殺したのは、自分を裏切ったからだ。


──下手をすれば死ぬ。


いつか、誰かが言っていた台詞を思い出した。
今の自分は、下手をして刑務所に送られようとしている。自分が下手をした訳でもないのに、それはごめんだ。クレイズは唇を噛み締めた。
護送車は頑丈で、ここから逃げる事は出来ない。
だが、逃げなければならない。


──もっと頭を使うんだ。


クレイズは脱出方法を考え始めた。