Dark Moon

たける

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歪んだ相手が好ましい。とは思わないが、自分には相応しい相手だと、ファイは思った。
寝顔を見つめながら、未だ燻る欲求を堪える。
異端者には、それなりの相手がいるものなのだ。

「ノッド、もう起きて下さい」

窓の外はその眩しさを失いつつある。寝息を立てる体を揺すぶると、ノッドは睫毛を持ち上げた。

「もう少し休ませろよ」
「まだ要求する訳ではありません。今度は、貴方が私の要求に従う番です」

さっきまでの行為は、自分の要求ではない、とファイは言っているようだ。
嘘つけ、と思いながら、ノッドはファイの要求を思い返した。

「あぁ……戻せって?」

艦に帰せ。そう言っているようだ。まだ怠い体を起こし、ノッドはすっかり帰り支度をしているファイを見つめた。

「帰りたいのか?」

まだその体は疼いている筈だ。

「勿論です。私は私のしなければならない事がある」

欲望は、漸く抑えられるようになってきていた。それに安堵しながら、ファイは自分の取るべき態度を取った。

「宇宙なんて、何もないだろ。何が面白いんだ?」

シャツを着て髪を撫でつけたノッドは、もう落ち着いている。

「未開の星、未開の者達との平和的協定を結ぶ事と、宇宙に於ける危険からそれらのものを護る為に、我々惑星連邦はあるのです」

今頃ジョシュ達は水の底から脱出し、時間を超越して地球に戻っているだろう。もしそうでなければ、ファイはジョシュに落胆する事になる。

「そうだったな。戻してやるがお前、もう大丈夫なのか?」
「お気遣いに感謝します。ですが、それは無用ですノッド」

ピンと胸を張りノッドを見下ろすファイは、もう2人の間にあった性交などなかった、と言わんばかりの平静ぶりだった。それを少しつまらなくも思った。が、ノッドも、いつまでもこの男に時間を裂いてはいられない。

「なら、いい」

立ち上がったノッドは、ファイを抱き寄せた。
自分が求める光ではなかった。だが、それはノッドにとって光を探す上で必要な明かりではあった。

「ノッド、貴方にいつか平穏が来る事を」

そう言ったファイは、初めてノッドに笑顔を見せた。




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