Dark Moon

たける

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異端者は、正当な扱いを受けられない。
そんな事は、最初から分かっていた。だがそれでも、努力さえ惜しまなければ報われる時もある。
ファイの進学が決まった時もそうだった。地球人の遺伝子を受け継ぐ者として宇宙アカデミーへ進学する、と言う初の快挙となる筈だった。
だが、結局ファイはそれを蹴り、宇宙艦隊へ進む道を選んだ。そちらでも、初めて地球人とのハーフとして宇宙艦隊に入る、と言う快挙を成し遂げたのだが。

「ハァ……ハァ……」

抑え切れない感情は内的噴火を引き起こし、欲望は全てを飲み込むマグマのようにファイを燃やし尽くそうとしている。
ノッドはこのリタルド人を好奇の目で見ていた。

「ノッド……はっ、あ、あぁっ……!」

自分の上に跨がり、獣のように快楽を貪るファイの姿は、さっきまでのリタルド人とはまるで違う。
感情的で強欲。そして甘く愛らしい。

「あんま無茶するなよ。持たないぞ?」

細腰を撫で、小さな尻に手をかける。その脳内はノッドで占められていて気分がいい。

「無茶、なんて……してません」

唇を重ねる。温かく柔らかな感触が、ファイは気に入っていた。何度も重ね、ノッドが困った顔をしている。
さすが人間により近く作られたサイボーグなだけはあり、知らなければ彼がそうだとは分からない程の感触だ。

「この、キス魔」
「どうとでも……?」

キスをしながらノッドは体を捻り、ファイをシーツに沈める。もうそろそろ、こちらから攻めさせてもらいたい。
弱い場所は知っている。

「次は俺の番だ、ファイ」

潤んだ瞳が見上げてくる。熱にやられた体は熱く、呼吸が荒い。腕は早く、と急かすようにノッドを引き寄せ、濡れた髪は艶やかに光っていた。

「あぁ……早く……」

唇を重ねながらファイへと入り込み、すぐに性感帯を突き上げてやる。するとファイはノッドをきつく絞め上げ、背中に指を食い込ませた。

「……っ、加減しろよ、痛いだろ?」

だが苦痛ではない。寧ろその圧迫感が堪らない。

「可愛いな、お前」

そんな言葉にも、今のファイは反応する。

「初耳……です」

誰もファイをそう表現する者はいない。
かつて1人だけいたが、その者はもういない。

「そうか?みんなお前のこの姿を見たら、きっと言うぞ」

ゆったりとした律動を繰り返しながら、ノッドはファイを揺すった。性感帯を刺激されるファイは、うねるように体を擦り寄せ、品のある嬌声を漏らす。

「はっ……う、あっ」

顎をなぞり、汗の伝う頬へ指を滑らせる。
ノッドの指先がファイを愛撫している。
不意に、触れている場所から暗いイメージがファイに流れ込んできた。
陰欝な闇。
硬い殻のような精神。次々に表れては消える映像。
苦しみ。闇の中でもがき、必死に光を捜し求めるノッドの姿。

「ノッ……ド……」

彼の内側がファイをも闇に搦め捕る。

「何だ……?」

目を細め、見下ろしてくるノッドが、迷い人に重なり、ファイは彼の顔から手を放した。
乱れていた呼吸が更に乱れている。

「貴方は、私に何を見せたんです?」

苦しそうなファイを見つめながら、それが情事からきているものではない、と理解したノッドは、眉間に皺を刻んだ。

「見た……のか?」

そう尋ねるが、ファイは答えなかった。黙ったまま見つめ返す瞳は、哀れみを含んでいる。

「暗闇が見えました……貴方はそんな暗い場所にいるのですね」

愁いを含んだその目を見つめていられず、ノッドは視線を逸らした。

「その人が、貴方の」
「言うな。何も」

遮られ、ファイは黙った。見えた映像については、これ以上言及してはならない。そうノッドの横顔が訴えていた。

「すみません」
「いや、いい。見た物は忘れてくれ」

視線が戻る。ノッドが動揺している事は、ファイには分かっていた。だがその動揺は、今はただ邪魔な感情だ。

「続きを、お願いしたいのですが……?」

その言葉が、いくらかノッドに安堵を齎した。


──今は考えたくない。


目の前の男に集中していたかった。




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