Dark Moon

３．

２

サバル警察署を見上げながら、ノッドはあの日を嫌でも思い出さされていた。
涙に濡れる捜査官達。掲げられる国旗に、重厚で美しい装飾の棺。
構えられた銃から聞こえる何発もの銃声。
そして静かな墓地に永遠の安らぎを持って埋められて行く、愛しい人。
別れを惜しむ為、各地から押し寄せた人々の波に、ノッドは混じれなかった。と言うより、混じりたくなかったし、惜しみたくもなかった。
別れはいつか訪れると、知っていた。
辛くない。
悲しくない。
何も失っていない。
だが、体の内から込み上げる何かが、ノッドを突き上げる。
制御出来ない事はない。その方法を知っている。
怖くない。
淋しくない。
不安じゃない。
全て嘘だと思い込めたら、と願う。
貴方がくれた物は限りなく存在している。
全て消し去りたかった。
愛情を、苦しみを、悲しみを、連れて行って欲しかった。
共に永遠に生きる事は出来た。だが、そうしなかったのは、怖かったから。
違う。
望まれなかったから。
違う。
愛していたから。
瞬きをする。
景色は元に戻り、ノッドは息を吐いた。
あと１０年近くしか、一緒にいられない。
ノッドが選ばなかった道を、今の自分は選ぶだろうか？
それは分からない。
それは別の未来だ。