Dark Moon

１．

５

アカデミー内は、制服を着た男女や異星人で溢れている。ノッドは手早く自身の衣類を制服へと変えると、その人込みに紛れた。
その作業があまりにも手早かった為、誰もノッドが制服を作り出した、とは気付いていない。また、彼等は講義や演習で頭がいっぱいらしく、ノッドには目もくれない。
その方がありがたい。そう思いながら敷地を歩いていると、目の前から男が４人連れ立って歩いて来るのが見えた。その内２人は若いが、残りは明らかにおやじ、に属する部類だ。
目を逸らし、思考の主探しをしようと再び集中しかけた時、新たな思考がノッドの脳天を刺激した。
その思考は聞き覚えのあるもので、徐々にノッドの方へ近付いてくる。
誰だ？辺りを見回し、その思考の主を探す。と、ノッドの側をさっきの４人組が通り過ぎて行った。

「１杯だけですからね」

その声は思考の主だった。
振り返り、４人組を目で追う。


──今、誰が喋った？


もう背中しか見えない。

「だーもう……！１杯なんて言わず、ぱーっと飲めよ」

遠ざかる背中を、ノッドはひそかに尾行し始めた。