Dark Moon

たける

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「なぁ……まぁ、そう言わずに飲もうぜ」

ジョシュは渋るワイズを伴い、格納庫へと来ていた。

「だがよ、彼女、淋しがるんじゃ」

こっちも渋っている。
不安げにアルテミス号を見上げるカールは、さっきからジョシュと彼女を天秤にかけているようだった。

「大丈夫だって。きっと彼女、治療中の姿をずっと見られていたくないよ」

ジョシュにとってもこの艦は憧れであり、そして最も愛すべき恋人でもある。

「そ……そうかなぁ……?あいつら、下手に彼女の事いじくり回したりしないかなぁ?」

エンジンルームの心配をしているのだろう。そこは俺の縄張りだ、と言いたげだった。

「しないよ、しない。彼等だって、彼女に恋する奴らだよ」

そんなやり取りを、ワイズはうんざりしながら見守っていた。その隣で、ファイもまた見守っているようだった。表情こそ変わらないが、きっとファイもうんざりしている事だろうと推測する。

「んじゃ、行きますか!」

漸く決着がついたらしく、カールは満面の笑みで振り返った。

「ファイも行くだろ?」

ジョシュが仏頂面の副艦長に尋ねると、彼は茶色の瞳で見返してきた。

「私はアルコールは摂取しません」

きっぱりと言いきったが、ジョシュはお構いなしにその薄い肩を抱いた。

「たまにはいいじゃん。付き合い悪いと、チームワークにも響くぞ?」

半ば脅しとも取れる言葉にも、ファイは表情を変えない。

「アルコールを摂取する事によって、体内の血中濃度が上がり、思考が低迷する恐れが」
「いいんだって!たまには低迷したってさ」

それ以上ファイは反論しようとはしなかった。こうした彼との言い合いは、いつもジョシュのペースになってしまう。いくらファイが言おうとも、彼は頑固だった。
この討論も時間の無駄だ。そうファイは結論し、ジョシュに付き合ってやる事を決めた。




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