犬伯爵様は永遠の愛を誓う

あまみ

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意地悪な気持ち

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 「取れましたか?」

 ユアンに頭に何かついてると言われ、頭を手で払うもまだ取れていないらしく苦戦していると微笑んだユアンにもう一度呼ばれる。
 手招きをするユアンの元へ行くと隣に座るように促され、素直にユアンの隣に腰掛けるとユアンはロイの頭を撫で始めた。
 優しく髪を撫でる手がくすぐったい。頭を撫でられるなんていつぶりだろうかと考えると、遠い母との記憶にあったような気がする。
 しばしおとなしく撫でられていると、いつまで経っても撫でる手をユアンが止めない。不思議に思ってまだかとたずねるとユアンは「んーまだかな」と笑って言ってやめる様子はない。
 ソファに座って向かい合って頭を撫でられている姿はなかなか恥ずかしい。
 見上げるとこちらを見下ろしているユアンの顔が目に入り恥ずかしくなって俯く。

 「ユアン様、もういいですよねっ」

 やめる様子のないユアンに痺れを切らしたロイが身を引こうとすると、ぐいっと肩を引き寄せられた。ロイの身体はユアンの腕の中におさまった。
 ユアンの香りを強く感じて何故か一瞬だけ眩暈がする。自分がユアンに抱き寄せられているとわかった途端、自分の心臓の音が早くなるのがわかる。
 ユアンが触れているロイの右肩の手の大きさを感じて布越しなのに熱を感じる気がして身体がカッと熱くなった。
 時が止まったのかと思うほど長い沈黙の後、ユアンはさらにロイの肩を自分に引き寄せてロイはされるがままユアンの肩に顎がかかる。ユアンの着ているシャツが肌に触れてその感触でこれが夢じゃないことを実感した。

 「ユアン、さ、ま……?」

 いつもと様子が違う気がしてロイは不安になってユアンの名を呼ぶもユアンからの返事はない。
 ユアンはロイの首元に顔を埋め、スウっと呼吸する。首筋からユアンの吐息を感じてびくりと肩を強張らせると、思わず手でユアンを押し戻そうとするがびくともしない。

 「ロイ」
 「っ……!」

 耳元で囁かれユアンの吐息がロイの耳のかかり、声にならない息が漏れ出た。
 ユアンの鼻先がロイの耳に触れた途端ロイはぎゅっと押し戻そうとした手に力を込めたのを感じるとユアンは意地悪く笑った。

 「耳が弱いの?」

 反応を確かめるように今度はロイの耳の上の方に口付ける。ちゅと音がしてロイの背中がぞくりと粟立ち、自分のものではないような甘い声が漏れ出た。

 「あ…っ」

 思わず片手で自分の自分の口元を抑えると、ロイは首をイヤイヤと左右に振り抵抗しようとする。ユアンはそんなロイにお構いなしに今度は耳から首筋に唇を滑らせた。滑らかな白いロイの首筋は少し汗ばんでおりそれがユアンの興奮を一層掻き立てた。抵抗するロイにユアンは手首を掴んで組み伏せていた。
 首筋に唇を這わせるとロイの香りが鼻腔をくすぐり、ユアンは思わず汗を舐めとるとロイは声にならない叫びをあげた。

 「~~!!」
 
 抑えた口元から漏れ出るロイの息遣いに気づいてユアンはそのとき初めてロイの顔を確認した。
 ソファに横たわってこちらを見上げるロイの顔は耳まで赤くして涙目でこちらを見上げていた。
 その姿にユアンは思わずごくりと喉を鳴らす。呼吸を荒くしながらロイは抑えていた手を外すとユアンの袖を掴んだ。

 「ユアン様……やめて、くだ…さ」

 このまま先へ進んでしまいたい気持ちに駆られるもユアンはグッと唇を噛み、荒くなった自身の呼吸に気づきゆっくりと息を吐いた。ユアンは顔の前に垂れ下がった前髪をかき上げる。きらりと光る金色の瞳とその扇状的な仕草にロイは息を呑む。

 「そんな表情をされると惜しいが今日はここでやめておくよ」

 途端にホッとした表情を見せたロイにユアンは覆い被さり、シャツをぐいと引っ張ったかと思うとロイの鎖骨の下に吸い付いた。
 ちゅうと音を立ててきつく吸いつかれ、ピリと痺れたような痛みを感じる。

 「あっ……」

 自分が何をされているかわかった途端ロイは慌ててユアンを押し戻すと、ユアンはようやくロイから身体を離した。 
 舌舐めずりをしながらロイを見下ろす様はさながら捕食獣のようで今更ながらユアンに獣人の血が流れていることを思い知った。
 乱れた姿のロイの白い肌には赤い花が咲いていた。
 自分がつけた赤い花をユアンは指でゆっくりとなぞるとロイはびくっと身体を強張らせたのを見たユアンは次の瞬間ロイの唇を自分の唇で塞いだ。

 「んんっ!」

 ユアンは角度を変え、何度もロイの唇を啄むと最初は抵抗していたロイも途中から力が抜けたのかされるがままになっていた。
 やがて何も考えられないほどユアンは夢中でロイの唇を喰んだ。

 貪るような長いキスの後ようやく唇を離すとロイはユアンの腕の中で息を荒くし、とろんとした目からは幾筋の涙の後があった。


 「君は誰にも渡さない」


 その言葉を聞いたと同時にロイはゆっくりと意識を手放した。
 

 
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