15 / 36
意地悪な気持ち
しおりを挟む「取れましたか?」
ユアンに頭に何かついてると言われ、頭を手で払うもまだ取れていないらしく苦戦していると微笑んだユアンにもう一度呼ばれる。
手招きをするユアンの元へ行くと隣に座るように促され、素直にユアンの隣に腰掛けるとユアンはロイの頭を撫で始めた。
優しく髪を撫でる手がくすぐったい。頭を撫でられるなんていつぶりだろうかと考えると、遠い母との記憶にあったような気がする。
しばしおとなしく撫でられていると、いつまで経っても撫でる手をユアンが止めない。不思議に思ってまだかとたずねるとユアンは「んーまだかな」と笑って言ってやめる様子はない。
ソファに座って向かい合って頭を撫でられている姿はなかなか恥ずかしい。
見上げるとこちらを見下ろしているユアンの顔が目に入り恥ずかしくなって俯く。
「ユアン様、もういいですよね」
やめる様子のないユアンに痺れを切らしたロイが身を引こうとすると、ぐいっと肩を引き寄せられロイの身体はユアンの腕の中におさまった。
ユアンの香りを強く感じて何故か一瞬だけ眩暈がした。自分がユアンに抱き寄せられているとわかった途端、自分の心臓の音が早くなるのがわかる。
触れられている肩がユアンの手の大きさを感じて布越しなのに熱を感じ、身体がカッと熱くなった。
ユアンはさらにロイの肩を自分に引き寄せてロイはされるがままユアンの肩に顎がかかる。ユアンの着ているシャツが肌に触れてその感触でこれが夢じゃないことを実感した。
「ユアン、さ、ま……?」
いつもと様子が違う気がしてロイは不安になってユアンの名を呼ぶもユアンからの返事はない。
ユアンはロイの首元に顔を埋め、スウっと呼吸する。首筋からユアンの吐息を感じてびくりと肩を強張らせ思わず手でユアンを押し戻そうとするがびくともしない。
「ロイ」
「っ……!」
耳元で囁かれユアンの吐息がロイの耳のかかり、声にならない息が漏れ出た。
ユアンの鼻先がロイの耳に触れた途端ぎゅっと押し戻そうとした手に力を込めたのを感じるとユアンは意地悪く笑った。
「耳が弱いの?」
反応を確かめるように今度はロイの耳の上の方に口付ける。ちゅと音がしてロイの背中がぞくりと粟立ち、自分のものではないような甘い声が漏れ出た。
「あ…っ」
思わず片手で自分の自分の口元を抑えると、ロイは首をイヤイヤと左右に振り抵抗しようとする。
ユアンはそんなロイにお構いなしに今度は耳から首筋に唇を滑らせた。
滑らかな白いロイの首筋は少し汗ばんでおりそれがユアンの興奮を一層掻き立て抵抗するロイにユアンは手首を掴んで組み伏せていた。
首筋に唇を這わせるとロイの香りが鼻腔をくすぐり、ユアンは思わず汗を舐めとるとロイは声にならない叫びをあげた。
「~~!!」
抑えた口元から漏れ出るロイの息遣いに気づいてユアンはそのとき初めてロイの顔を確認した。
ソファに横たわってこちらを見上げるロイの顔は耳まで赤くして涙目でこちらを見上げていた。
その姿にユアンは思わずごくりと喉を鳴らす。呼吸を荒くしながらロイは抑えていた手を外すとユアンの袖を掴んだ。
「ユアン様……やめて、くだ…さ」
このまま先へ進んでしまいたい気持ちに駆られるもユアンはグッと唇を噛み、荒くなった自身の呼吸に気づきゆっくりと息を吐いた。ユアンは顔の前に垂れ下がった前髪をかき上げる。きらりと光る金色の瞳とその扇状的な仕草にロイは息を呑む。
「そんな表情をされると惜しいが今日はここでやめておくよ」
途端にホッとした表情を見せたロイにユアンは覆い被さり、シャツをぐいと引っ張ったかと思うとロイの鎖骨の下に吸い付いた。
ちゅうと音を立ててきつく吸いつかれ、ピリと痺れたような痛みを感じる。
「あっ……」
自分が何をされているかわかった途端ロイは慌ててユアンを押し戻すと、ユアンはようやくロイから身体を離した。
舌舐めずりをしながらロイを見下ろす様はさながら捕食獣のようで今更ながらユアンに獣人の血が流れていることを思い知った。
乱れた姿のロイの白い肌には赤い花が咲いていた。
自分がつけた赤い花を指でゆっくりとなぞるとロイはびくっと身体を強張らせる。それを見たユアンは次の瞬間ロイの唇を自分の唇で塞いだ。
「んんっ!」
ユアンは角度を変え、何度も唇を啄むと最初は抵抗していたロイも途中から力が抜けたのかされるがままになっていた。
何も考えられないほどユアンは夢中でロイの唇を喰んだ。
貪るような長いキスの後ようやく唇を離すとロイはユアンの腕の中で息を荒くし、とろんとした目からは幾筋の涙の後があった。
「君は誰にも渡さない」
その言葉を聞いたと同時にロイはゆっくりと意識を手放した。
30
お気に入りに追加
103
あなたにおすすめの小説
君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが…
「お前なんて知らないから」
オタク眼鏡が救世主として異世界に召喚され、ケダモノな森の番人に拾われてツガイにされる話。
篠崎笙
BL
薬学部に通う理人は植物採集に山に行った際、救世主として異世界に召喚されるが、熊の獣人に拾われてツガイにされてしまい、もう元の世界には帰れない身体になったと言われる。そして、世界の終わりの原因は伝染病だと判明し……。
天涯孤独になった少年は、元兵士の優しいオジサンと幸せに生きる
ir(いる)
BL
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元兵士の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。
ニケの宿
水無月
BL
危険地帯の山の中。数少ない安全エリアで宿を営む赤犬族の犬耳幼子は、吹雪の中で白い青年を拾う。それは滅んだはずの種族「人族」で。
しっかり者のわんことあまり役に立たない青年。それでも青年は幼子の孤独をゆるやかに埋めてくれた。
異なる種族同士の、共同生活。
※過激な描写は控えていますがバトルシーンがあるので、怪我をする箇所はあります。
キャラクター紹介のページに挿絵を入れてあります。
苦手な方はご注意ください。
女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。
にのまえ
BL
バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。
オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。
獣人?
ウサギ族?
性別がオメガ?
訳のわからない異世界。
いきなり森に落とされ、さまよった。
はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。
この異世界でオレは。
熊クマ食堂のシンギとマヤ。
調合屋のサロンナばあさん。
公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。
運命の番、フォルテに出会えた。
お読みいただきありがとうございます。
タイトル変更いたしまして。
改稿した物語に変更いたしました。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
甘えんぼウサちゃんの一生のお願い
天埜鳩愛
BL
あらすじ🐰
卯乃は愛くるしい兎獣人の大学生。気になる相手は亡き愛猫の面影を宿すクールな猫獣人深森だ。
卯乃にだけ甘い顔を見せる彼に「猫の姿を見せて」とお願いする。
獣人にとって本性の姿を見せるのは恋人や番の前だけ!
友人からのとんでもない願いを前に、深森は……。
(ねこうさアンソロジー 掲載作品)
イラスト:わかめちゃん
https://twitter.com/fuesugiruwakame
遅咲きの番は孤独な獅子の心を甘く溶かす
葉月めいこ
BL
辺境の片田舎にある育った村を離れ、王都へやって来たリトは、これまで知らなかった獣人という存在に魅せられる。
自分の住む国が獣人の国であることも知らなかったほど世情に疎いリト。
獣人には本能で惹き合う番(つがい)という伴侶がいると知る。
番を深く愛する獣人は人族よりもずっと愛情深く優しい存在だ。
国王陛下の生誕祭か近づいた頃、リトは王族獣人は生まれながらにして番が決まっているのだと初めて知った。
しかし二十年前に当時、王太子であった陛下に番が存在する証し〝番紋(つがいもん)〟が現れたと国中にお触れが出されるものの、いまもまだ名乗り出る者がいない。
陛下の番は獣人否定派の血縁ではないかと想像する国民は多い。
そんな中、友好国の王女との婚姻話が持ち上がっており、獣人の番への愛情深さを知る民は誰しも心を曇らせている。
国や国王の存在を身近に感じ始めていたリトはある日、王宮の騎士に追われているとおぼしき人物と出会う。
黄金色の瞳が美しい青年で、ローブで身を隠し姿形ははっきりとわからないものの、優しい黄金色にすっかり魅了されてしまった。
またいつか会えたらと約束してからそわそわとするほどに。
二度の邂逅をしてリトはますます彼に心惹かれるが、自身が国王陛下の番である事実を知ってしまう。
青年への未練、まったく知らない場所に身を置く不安を抱え、リトは王宮を訊ねることとなった。
自分という存在、国が抱える負の部分、国王陛下の孤独を知り、リトは自分の未来を選び取っていく。
スパダリ獅子獣人×雑草根性な純真青年
僕はもう貴方を独りぼっちにはしない。貴方を世界で一番幸せな王様にしてみせる
本編全30話
番外編4話
個人サイトそのほかにも掲載されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる