6 / 36
屋敷と使用人
しおりを挟む
「うわあ……」
目の前に広がるはとてつもなく大きな屋敷。赤煉瓦を基調とした作りの屋敷は古いながらも手入れがしっかりとされていおり、その古さが味のある重厚な佇まいを醸し出していた。
馬車でそのまま門を通りすぎ、手入れされた庭を横目に玄関につく直前まで窓の外の景色に齧り付きっぱなしだったロイは再び目の前の美しく見事な屋敷に感嘆のため息を漏らした。
「綺麗な屋敷だろう。古いけど、気に入っているんだ」
そう言ってこちらを見て微笑むユアンに気づいたロイは窓から身体を慌てて離した。
「申し訳ありません! あまりにも素敵なお屋敷で」
「ふふふ、屋敷を褒めてもらえると嬉しいな。手入れしている者たちも喜ぶよ。この辺はね王都の端の方だから城に行くには不便だけど、その分静かで住み心地はいいんだ」
確かにステルク王国の中心部の王都でも端の方にあるこの屋敷は伯爵であるユアンが王城に行く際は時間がかかるだろう。
屋敷周辺には数軒ほどの貴族屋敷があり、その中でも奥の方にある閑静な場所とも言える。
門をそのまま馬車で抜けると真ん中に石畳が敷かれており、サイドは綺麗に手入れされた芝生が陽の光に照らされて青々と輝いてみえる。
ロイがいた伯爵家では街に近くて立地は良かったものの、執事と料理人、使用人数人で回していたため屋敷は手入れするほど余裕もなく、昔はまだ手入れはされていた庭も草木が生い茂っていた。
見かねたロイが庭師の真似事をして枝を伐採していたくらいだ。しばらくすると勝手に兄が業者を呼んで草木を全部刈り取り更地にしたときは普段手入れを怠っていた癖に「貴族の屋敷だというのに!」と父がカンカンに怒ったことがあったが兄に論破され怒りに震えながら賭博に出かけていったのを思い出す。
同じ伯爵でもこうも違うのかとやや複雑な気持ちでいると馬車はゆっくりと停車した。
「さあ、行こうか」
ごく自然に手を引かれ馬車から降りる。長い階段をゆっくりと二人で上がるとされるがままエスコートされているロイはふと思う。
(あれ? 俺従者だから反対では?)
ユアンにエスコートされることに疑問に思ったのも束の間、たどり着いた玄関の前には数人の使用人と執事と思われる男性が一礼する。
「これはこれは旦那様おかえりなさいませ。下でお出迎えもせず申し訳ございません」
執事服をきた白髪の老齢の男性が前に出て恭しく頭を下げてユアンの帰りを迎えた。
「ただいま戻ったよ。膝を悪くしているんだからそんなことはしなくてもいい。ここでじゅうぶんだ。……それと連絡した通りに」
「かしこまりました。こちらの方がロイ様ですね。ロイ様、この家で執事を勤めておりますトーマスと申します」
「ロイです。よろしくお願いします」
挨拶をして頭を下げるとトーマスはロイの顔を見て微笑んだ。
「貴方様がこの家に来られるのを楽しみにしておりました」
(面識は……ないはずだけど)
不思議に思って首を傾げていると横から咳払いが聞こえた。
「んっ、トーマス。ロイにはこの家のことをいろいろ教えてあげて。ロイ、長旅で疲れただろう。今日はゆっくり休んで、夜は一緒に食べようね」
「ではロイ様、お部屋へ案内致しますのでこちらへ」
導かれるままロイはトーマスの後について行く。その後ろ姿をユアンがしばらくの間熱っぽく見つめていたのはロイ以外のトーマスとその場にいた使用人しか知らない。
目の前に広がるはとてつもなく大きな屋敷。赤煉瓦を基調とした作りの屋敷は古いながらも手入れがしっかりとされていおり、その古さが味のある重厚な佇まいを醸し出していた。
馬車でそのまま門を通りすぎ、手入れされた庭を横目に玄関につく直前まで窓の外の景色に齧り付きっぱなしだったロイは再び目の前の美しく見事な屋敷に感嘆のため息を漏らした。
「綺麗な屋敷だろう。古いけど、気に入っているんだ」
そう言ってこちらを見て微笑むユアンに気づいたロイは窓から身体を慌てて離した。
「申し訳ありません! あまりにも素敵なお屋敷で」
「ふふふ、屋敷を褒めてもらえると嬉しいな。手入れしている者たちも喜ぶよ。この辺はね王都の端の方だから城に行くには不便だけど、その分静かで住み心地はいいんだ」
確かにステルク王国の中心部の王都でも端の方にあるこの屋敷は伯爵であるユアンが王城に行く際は時間がかかるだろう。
屋敷周辺には数軒ほどの貴族屋敷があり、その中でも奥の方にある閑静な場所とも言える。
門をそのまま馬車で抜けると真ん中に石畳が敷かれており、サイドは綺麗に手入れされた芝生が陽の光に照らされて青々と輝いてみえる。
ロイがいた伯爵家では街に近くて立地は良かったものの、執事と料理人、使用人数人で回していたため屋敷は手入れするほど余裕もなく、昔はまだ手入れはされていた庭も草木が生い茂っていた。
見かねたロイが庭師の真似事をして枝を伐採していたくらいだ。しばらくすると勝手に兄が業者を呼んで草木を全部刈り取り更地にしたときは普段手入れを怠っていた癖に「貴族の屋敷だというのに!」と父がカンカンに怒ったことがあったが兄に論破され怒りに震えながら賭博に出かけていったのを思い出す。
同じ伯爵でもこうも違うのかとやや複雑な気持ちでいると馬車はゆっくりと停車した。
「さあ、行こうか」
ごく自然に手を引かれ馬車から降りる。長い階段をゆっくりと二人で上がるとされるがままエスコートされているロイはふと思う。
(あれ? 俺従者だから反対では?)
ユアンにエスコートされることに疑問に思ったのも束の間、たどり着いた玄関の前には数人の使用人と執事と思われる男性が一礼する。
「これはこれは旦那様おかえりなさいませ。下でお出迎えもせず申し訳ございません」
執事服をきた白髪の老齢の男性が前に出て恭しく頭を下げてユアンの帰りを迎えた。
「ただいま戻ったよ。膝を悪くしているんだからそんなことはしなくてもいい。ここでじゅうぶんだ。……それと連絡した通りに」
「かしこまりました。こちらの方がロイ様ですね。ロイ様、この家で執事を勤めておりますトーマスと申します」
「ロイです。よろしくお願いします」
挨拶をして頭を下げるとトーマスはロイの顔を見て微笑んだ。
「貴方様がこの家に来られるのを楽しみにしておりました」
(面識は……ないはずだけど)
不思議に思って首を傾げていると横から咳払いが聞こえた。
「んっ、トーマス。ロイにはこの家のことをいろいろ教えてあげて。ロイ、長旅で疲れただろう。今日はゆっくり休んで、夜は一緒に食べようね」
「ではロイ様、お部屋へ案内致しますのでこちらへ」
導かれるままロイはトーマスの後について行く。その後ろ姿をユアンがしばらくの間熱っぽく見つめていたのはロイ以外のトーマスとその場にいた使用人しか知らない。
35
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる