犬伯爵様は永遠の愛を誓う

あまみ

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屋敷と使用人

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  「うわあ……」

 目の前に広がるはとてつもなく大きな屋敷。赤煉瓦を基調とした作りの屋敷は古いながらも手入れがしっかりとされていおり、その古さが味のある重厚な佇まいを醸し出していた。
 馬車でそのまま門を通りすぎ、手入れされた庭を横目に玄関につく直前まで窓の外の景色に齧り付きっぱなしだったロイは再び目の前の美しく見事な屋敷に感嘆のため息を漏らした。

 「綺麗な屋敷だろう。古いけど、気に入っているんだ」

 そう言ってこちらを見て微笑むユアンに気づいたロイは窓から身体を慌てて離した。

 「申し訳ありません! あまりにも素敵なお屋敷で」
 「ありがとう。王都の端の方だから少し不便なくらいでこの辺は静かで住み心地はいいよ」

 確かにステルク王国の中心部の王都でも端の方にあるこの屋敷は伯爵であるユアンが王城に行く際は時間がかかるだろう。
 屋敷周辺には数軒ほどの貴族屋敷があり、その中でも奥の方にある閑静な場所とも言える。
 
 門をそのまま馬車で抜けると真ん中に石畳が敷かれており、サイドは綺麗に手入れされた芝生が陽の光に照らされて青々と輝いてみえる。
 ロイがいた伯爵家では街に近くて立地は良かったものの、屋敷は手入れされておらず昔はまだ手入れはされていた庭も草木が生い茂っていた。見かねたロイが庭師の真似事をして枝を伐採していたくらいだ。しばらくすると勝手に兄が業者を呼んで草木を全部刈り取り更地にしたときは父もカンカンに怒っていたことを思い出す。
 同じ伯爵でもこうも違うのかとやや複雑な気持ちでいると馬車はゆっくりと停車した。
 
 「さあ、行こうか」
 
 ごく自然に手を引かれ馬車から降りる。長い階段をゆっくりと二人で上がるとされるがままエスコートされているロイはふと思う。

 (あれ? 俺従者だから反対では?)

 ユアンにエスコートされることに疑問に思ったのも束の間、たどり着いた玄関の前には数人の使用人と思しき人が目に入った。

 「これはこれは旦那様おかえりなさいませ。下でお出迎えもせず申し訳ございません」

 執事服をきた白髪の老齢の男性が前に出て恭しく頭を下げてユアンの帰りを迎えた。

 「ただいま戻ったよ。膝を悪くしている癖にそんなことはしなくてもいい。ここでじゅうぶんだ。……それと連絡した通りに」
 「かしこまりました。こちらの方がロイ様ですね。ロイ様、この家で執事を勤めておりますトーマスと申します」
 「ロイです。よろしくお願いします」

 挨拶をして頭を下げるとトーマスはロイの顔を見て微笑んだ。

 「貴方様がこの家に来られるのを楽しみにしておりました」

 (面識は……ないはずだけど)

 不思議に思って首を傾げていると横から咳払いが聞こえた。

 「んっ、トーマス。ロイにはこの家のことをいろいろ教えてあげて。ロイ、長旅で疲れただろう。今日はゆっくり休んで、夜は一緒に食べようね」

 「ではロイ様、お部屋へ案内致しますのでこちらへ」

 導かれるままロイはトーマスの後について行く。その後ろ姿をユアンがしばらくの間熱っぽく見つめていたのはロイ以外のトーマスとその場にいた使用人しか知らない。
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