犬伯爵様は永遠の愛を誓う

あまみ

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目が覚めるとそこは

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 ──「どこにいるの…クロ…」

 ──「僕をひとりにしないで」

 ──「行かないで…僕も連れてって」



 瞼をゆっくりと開けると視界が滲んでいる。こめかみを涙が伝っていく。

 「最悪だ…」

 忘れた頃にみる夢は幼い頃の記憶。涙をごしごしと拭っているとだんだん視界がはっきりしていく。
 
 ロイが目覚めるとそこは広いベッドの上だった。

 装飾の施された天井が目に入って、思わず飛び起きると何故かバスローブ姿で豪華な部屋のベッドの上にいる。
 半ばパニックになりながらも昨晩の出来事を必死に思い出そうとした。

 (えっと……昨日俺はバーでひとり飲んでて、そこで隣に美形の男が座ってきて……)

 ふわふわのバスローブに身を包まれているせいか「高そう」と値段のことがよぎってしまい落ち着かず頭の中が混乱していると、扉を開ける音がした。

 「おはよう。起きた?」

 そこには昨晩一緒に酒を飲んだ男が腰にタオルを巻いただけの状態で濡れた髪を拭きながら立っていた。
 褐色の肌を惜しげもなくさらす男の身体はあちこちに傷があったが、それが端正のとれた筋肉をいっそう引き立てていた。
 背中までウェーブがかった黒髪からポタポタと雫を垂らしていてそれが扇状的に見える。
 みてるこちらが恥ずかしくなってロイは思わず顔を逸らした。

 「あ、あの! これはいったい……」
 「ああ、昨日結構飲んでいたから酔っていてね、途中で寝てしまって起きないから私の宿に連れてきたんだよ」
 
 男の言葉に顔を青くさせ、慌ててロイはベッドから降りて男に向けて土下座する。
 酔って醜態を晒した上に宿に連れ帰ってもらうなんて。しかもこんな豪華な宿に泊まることができるのなら間違いなくこの男は貴族だ。
 平民になった自分が宿代を請求されても到底支払えるものではない。

 「申し訳ございませんでした! お貴族様とは知らず、とんだご無礼を……」

 ロイは平身低頭して謝罪をしていると男が近づいてきて、しゃがんだと同時に肩を叩いた。
 
 「顔を上げて」
 
 恐る恐る顔を上げるとすぐ近くに男の顔があった。やはり驚くほど顔のいい男は野生的な魅力が溢れており、瞳は昨晩と同じ吸い込まれそうな金色をしていた。
 ただそこらにいる人間とは違うのは頭の上には毛色と同じ色のピンっと尖った獣耳があった。

 ──獣人。

 この国ではあまり見かけない獣人に思わずロイは固まる。

 「驚かせてごめんね」

 男は柔らかい笑みを浮かべる。笑うと野生的な顔立ちから目元が優しげな印象になる。思わず見惚れていると男はロイの頬に触れた。



 「行くあてがないんだろう? 私と共に来るといい」
 
 
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