24 / 33
テオドールの企み
しおりを挟む
「んで、君はここに逃げてきたってわけ?」
ソファに座ってうなだれる人間の姿の天音を見てテオドールはニヤニヤと笑みを浮かべた。
朝日が登る前に途方にくれた天音が訪れたのはテオドールのもとだった。
普段秘匿されているこの研究所は特殊な防護壁で周りからは見えない。
テオドールの屋敷の方に訪れた天音は猫の姿でテオドールを探していると侵入者を察知したテオドールが自らやってきて研究所に通されたというわけだ。
「あの、バレちゃったかもしれないんですけど……」
「かしれない、じゃなくて十中八九バレただろうねえ」
エリオットとは古い付き合いなので断言できるが、エリオットは馬鹿じゃない。
ユエルに以前天音について探りを入れられて答えたことも報告が入っているだろう。
目の前で天音が猫になるところを見たというのなら、天音の呪いも猫になってしまう呪いだということ、日中だけ人間の姿に戻ることも検討がついているだろう。
──そして自分が呪いについて治療法があることを黙っていることも。
(だってさあ……こんな面白いの、もうしばらく楽しみたいじゃん)
バスローブ姿でしょんぼりとうなだれている天音を見てほくそ笑む。
あのエリオットが執着を見せるなんて今まで見てきた中でなかった。
最初、エリオットが猫を拾ってきたと耳に入ったのは驚いた。
気まぐれで連れ出したときにはユエルをわざわざ寄越して魔導具まで使ってこの部屋まで探しにきたこともテオドールの好奇心を駆り立てるにじゅうぶんだった。
物にも人にも地位にさえも執着をみせなかったエリオットが唯一執着を見せたもの。
それだけでも興味深いのに、猫を調べてみると実は人間が特殊な呪いをかけられていてなおかつこの世界の人間ではない……これを面白いと言わずになんと言おう。
しかも昼は普通の顔してエリオットのもとで働いて夜は猫の姿でエリオットに会いにきているというではないか。
正体を知ったときエリオットはどんな顔をするのか……考えるだけで胸を躍らせていた。
そしてその場に自分が居合わせてその表情を見たいとテオドールは思っていた。
(バレちゃったのは思ったより早かったなー。ざーんねん。さて、エリオットはどうするかな)
テオドールは天音を見ながら考える。本当に執着があるならばここにくるはずだ。
──それまで暇潰しで研究するのも悪くない。
黙って天音に近づくとテオドールはソファに乗り、天音に覆いかぶさった。
「あ、の……これは……」
怯えと戸惑いの表情を浮かべている天音にテオドールは弑虐心がむくむくと自分のなかで沸き起こるのを感じた。
ソファに座ってうなだれる人間の姿の天音を見てテオドールはニヤニヤと笑みを浮かべた。
朝日が登る前に途方にくれた天音が訪れたのはテオドールのもとだった。
普段秘匿されているこの研究所は特殊な防護壁で周りからは見えない。
テオドールの屋敷の方に訪れた天音は猫の姿でテオドールを探していると侵入者を察知したテオドールが自らやってきて研究所に通されたというわけだ。
「あの、バレちゃったかもしれないんですけど……」
「かしれない、じゃなくて十中八九バレただろうねえ」
エリオットとは古い付き合いなので断言できるが、エリオットは馬鹿じゃない。
ユエルに以前天音について探りを入れられて答えたことも報告が入っているだろう。
目の前で天音が猫になるところを見たというのなら、天音の呪いも猫になってしまう呪いだということ、日中だけ人間の姿に戻ることも検討がついているだろう。
──そして自分が呪いについて治療法があることを黙っていることも。
(だってさあ……こんな面白いの、もうしばらく楽しみたいじゃん)
バスローブ姿でしょんぼりとうなだれている天音を見てほくそ笑む。
あのエリオットが執着を見せるなんて今まで見てきた中でなかった。
最初、エリオットが猫を拾ってきたと耳に入ったのは驚いた。
気まぐれで連れ出したときにはユエルをわざわざ寄越して魔導具まで使ってこの部屋まで探しにきたこともテオドールの好奇心を駆り立てるにじゅうぶんだった。
物にも人にも地位にさえも執着をみせなかったエリオットが唯一執着を見せたもの。
それだけでも興味深いのに、猫を調べてみると実は人間が特殊な呪いをかけられていてなおかつこの世界の人間ではない……これを面白いと言わずになんと言おう。
しかも昼は普通の顔してエリオットのもとで働いて夜は猫の姿でエリオットに会いにきているというではないか。
正体を知ったときエリオットはどんな顔をするのか……考えるだけで胸を躍らせていた。
そしてその場に自分が居合わせてその表情を見たいとテオドールは思っていた。
(バレちゃったのは思ったより早かったなー。ざーんねん。さて、エリオットはどうするかな)
テオドールは天音を見ながら考える。本当に執着があるならばここにくるはずだ。
──それまで暇潰しで研究するのも悪くない。
黙って天音に近づくとテオドールはソファに乗り、天音に覆いかぶさった。
「あ、の……これは……」
怯えと戸惑いの表情を浮かべている天音にテオドールは弑虐心がむくむくと自分のなかで沸き起こるのを感じた。
53
お気に入りに追加
1,676
あなたにおすすめの小説
【魔導具師マリオンの誤解】 ~陰謀で幼馴染みの王子に追放されたけど美味しいごはんともふもふに夢中なので必死で探されても知らんぷりします
真義あさひ
BL
だいたいタイトル通りの前世からの因縁カプもの、剣聖王子×可憐な錬金魔導具師の幼馴染みライトBL。
攻の王子はとりあえず頑張れと応援してやってください……w
◇◇◇
「マリオン・ブルー。貴様のような能無しはこの誉れある研究学園には必要ない! 本日をもって退学処分を言い渡す!」
マリオンはいくつもコンクールで受賞している優秀な魔導具師だ。業績を見込まれて幼馴染みの他国の王子に研究学園の講師として招かれたのだが……なぜか生徒に間違われ、自分を呼び寄せたはずの王子からは嫌がらせのオンパレード。
ついに退学の追放処分まで言い渡されて意味がわからない。
(だから僕は学生じゃないよ、講師! 追放するなら退学じゃなくて解雇でしょ!?)
マリオンにとって王子は初恋の人だ。幼い頃みたく仲良くしたいのに王子はマリオンの話を聞いてくれない。
王子から大切なものを踏みつけられ、傷つけられて折れた心を抱え泣きながら逃げ出すことになる。
だがそれはすべて誤解だった。王子は偽物で、本物は事情があって学園には通っていなかったのだ。
事態を知った王子は必死でマリオンを探し始めたが、マリオンは戻るつもりはなかった。
もふもふドラゴンの友達と一緒だし、潜伏先では綺麗なお姉さんたちに匿われて毎日ごはんもおいしい。
だがマリオンは知らない。
「これぐらいで諦められるなら、俺は転生してまで追いかけてないんだよ!」
王子と自分は前世からずーっと同じような追いかけっこを繰り返していたのだ。
俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~
アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。
これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。
※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。
初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。
投稿頻度は亀並です。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
神獣の僕、ついに人化できることがバレました。
猫いちご
BL
神獣フェンリルのハクです!
片思いの皇子に人化できるとバレました!
突然思いついた作品なので軽い気持ちで読んでくださると幸いです。
好評だった場合、番外編やエロエロを書こうかなと考えています!
本編二話完結。以降番外編。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる