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王宮で働らく
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天音が王宮での仕事を始めてから早二ヶ月が過ぎようとしている。
ユエルについて仕事を教わりながら簡単なおつかいでのあちこちを駆け回る日々で、最初こそ戸惑うこともたくさんあったが、今では城で顔見知りに挨拶するくらいには慣れつつあった。
珍しい東方の人種の少年に最初こそ警戒心をあらわしていたが、王子の側近であるユエルが直接スカウトしたことであれこれ言うものはいなかった。
それどころか幼く見える天音があちこち駆け回り一生懸命仕事をしている姿を目にして徐々に城で働らく人々の癒しになっていった。
「よーう!天音!これ持って行けよ」
「天音君、おはよう。今日も元気ね」
「あ!天音!このあいだは相談にのってくれてありがとよ。息子にプレゼントあげたらすげえ喜んでたよ」
このように城を駆け回れば、声をかけられるほどだ。ひとつひとつ笑顔で返事しながら今日もユエルに頼まれた仕事を片付けていく。
「ただいま戻りました!」
扉を開けるとそこには黙々と書類仕事をする人物。サラサラの金の髪や透き通るような肌は徹夜明けとは思えないほどだ。
エリオットはこちらを見ることもなく黙々と仕事をしている。天音がここで働くようになってからエリオットはこの調子で片手で足りるほどしか会話をしていない。そのことに少し胸が痛みながらも天音は笑顔でユエルのもとへ向かった。
「ああ、おかえりなさい。第一騎士団への書類は届けてくれましたか」
「はい!たまっていた報告書ももらってきました!」
「あなたに頼んで正解でしたね、団長がまた話を聞いて欲しいと言っていましたよ」
「ははは……」
ユエルがにっこりと笑顔で天音を出迎えた。天音のしたことといえば第一騎士団長の話を聞いただけである。
前の世界でもよく人の相談に乗ったり、愚痴を聞くことが多かった天音は対人スキルが結構高い。
本人はそのことに気づいていないが、ユエルはこの二ヶ月で天音のことを好ましく思うようになった。
何よりよく働く。
なくなりそうだったインクの補充や、書類の整理など言わなくてもやってくれるのはありがたい。
当初他国のスパイを疑ったが、本人と話しても何か隠しているふうではあるものの、怪しい行動は見られないし何よりテオドールからの話がなければ信じる気になれなかった。働く天音の姿を眺めながらユエルはつい先日交わしたテオドールとの会話を思い出す。
──『あの子がスパイ?ないないない!どっちかっていうと俺の患者かな』
──『患者?どこか悪いのですか?』
──『周りに害がないから言うけど、呪い持ちなんだよー、今のとこ手立てがないから俺が研究してるってわけ』
それならばあの場で言って欲しかったが、あの時問答無用でテオドールに掌底を食らわした後、天音を引っ張ってきたので話をちゃんと聞いていなかったのは自覚があったため、それ以上何も言えなかった。
呪いの詳細はプライバシーに関わるとのことで教えてはくれなかったが、テオドールの何かを企んだようなにやけ顔が鼻についた。
(早く呪いが解けるといいですね)
そんなことを願うくらいには天音はユエルにとっても大切な部下となりつつあった。
ユエルについて仕事を教わりながら簡単なおつかいでのあちこちを駆け回る日々で、最初こそ戸惑うこともたくさんあったが、今では城で顔見知りに挨拶するくらいには慣れつつあった。
珍しい東方の人種の少年に最初こそ警戒心をあらわしていたが、王子の側近であるユエルが直接スカウトしたことであれこれ言うものはいなかった。
それどころか幼く見える天音があちこち駆け回り一生懸命仕事をしている姿を目にして徐々に城で働らく人々の癒しになっていった。
「よーう!天音!これ持って行けよ」
「天音君、おはよう。今日も元気ね」
「あ!天音!このあいだは相談にのってくれてありがとよ。息子にプレゼントあげたらすげえ喜んでたよ」
このように城を駆け回れば、声をかけられるほどだ。ひとつひとつ笑顔で返事しながら今日もユエルに頼まれた仕事を片付けていく。
「ただいま戻りました!」
扉を開けるとそこには黙々と書類仕事をする人物。サラサラの金の髪や透き通るような肌は徹夜明けとは思えないほどだ。
エリオットはこちらを見ることもなく黙々と仕事をしている。天音がここで働くようになってからエリオットはこの調子で片手で足りるほどしか会話をしていない。そのことに少し胸が痛みながらも天音は笑顔でユエルのもとへ向かった。
「ああ、おかえりなさい。第一騎士団への書類は届けてくれましたか」
「はい!たまっていた報告書ももらってきました!」
「あなたに頼んで正解でしたね、団長がまた話を聞いて欲しいと言っていましたよ」
「ははは……」
ユエルがにっこりと笑顔で天音を出迎えた。天音のしたことといえば第一騎士団長の話を聞いただけである。
前の世界でもよく人の相談に乗ったり、愚痴を聞くことが多かった天音は対人スキルが結構高い。
本人はそのことに気づいていないが、ユエルはこの二ヶ月で天音のことを好ましく思うようになった。
何よりよく働く。
なくなりそうだったインクの補充や、書類の整理など言わなくてもやってくれるのはありがたい。
当初他国のスパイを疑ったが、本人と話しても何か隠しているふうではあるものの、怪しい行動は見られないし何よりテオドールからの話がなければ信じる気になれなかった。働く天音の姿を眺めながらユエルはつい先日交わしたテオドールとの会話を思い出す。
──『あの子がスパイ?ないないない!どっちかっていうと俺の患者かな』
──『患者?どこか悪いのですか?』
──『周りに害がないから言うけど、呪い持ちなんだよー、今のとこ手立てがないから俺が研究してるってわけ』
それならばあの場で言って欲しかったが、あの時問答無用でテオドールに掌底を食らわした後、天音を引っ張ってきたので話をちゃんと聞いていなかったのは自覚があったため、それ以上何も言えなかった。
呪いの詳細はプライバシーに関わるとのことで教えてはくれなかったが、テオドールの何かを企んだようなにやけ顔が鼻についた。
(早く呪いが解けるといいですね)
そんなことを願うくらいには天音はユエルにとっても大切な部下となりつつあった。
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