猫になった俺、王子様の飼い猫になる

あまみ

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魔術師の問診

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 蛇に睨まれた蛙のごとく動けない天音は言葉を絞り出そうと頭の中が真っ白になった。思わず目をぎゅっと閉じる。

 「あ、あの……俺……信じてもらえないかもしれないけど……違う世界から来たんです」

 沈黙が二人の間を流れる。おずおずと天音が自分を見下ろすテオドールを見上げると、テオドールは「なるほど」と小さく呟いたかと思うと天音をまじまじと頭のてっぺんから爪先まで何やらブツブツと呟きながら観察しだした。
 視線に耐えかねて身体を縮こませると自分が何も身につけていない生まれたままの姿であることに気づく。「わわっ」と声を上げてその辺にあった毛布のようなものを引っ張り出して身体を隠した。

 「実に興味深い、取り巻く魔力は人間のものなのに異質なようだし。違う世界から来たというのもどこかうなずける」

 ジリジリと近づいてきたかと思うとテオドールは身体を隠していた毛布を剥ぎ取った。体制を崩した天音は床に仰向けに転がる。
 そのままテオドールは天音に覆いかぶさる。サラサラと長い黒い髪が天音の身体にかかり、天音は身体を硬らせた。
 テオドールは不安そうな表情を浮かべる天音の顎を掴み、自分の方へ向けさせる。

 「瞳の色は黒色、年は十六から十八歳といったところ。健康状態は良好。」

 よく見ると黒猫のように金色のテオドールの瞳に捕らえられて言葉を無くしていると、今度は長い指で口の中をこじ開けてきた。
 口を大きく開けさせたかと思うと指で口腔内を確かめるように動かす。

 「ん!んぐっ……ふっ……う」
 「口腔内も唾液も舌の形もこちらの人間と同じ」

 先程のキャンディーのせいか口腔内を弄られると刺激されて唾液が出てくる。思わずごくりと唾液を飲み干したのと同時に指を抜かれて、今度はその指で身体をなぞっていく。

 「肌もこの国の人間よりかは東の方の人種に近い。乳頭は……」

 そう言いかけてテオドールは天音の胸の突起を指先でふにっと押す。ビリッと身体に電流が走ったような感覚に声を上げた。

 「アッ……ん!」

 自分のものとは思えない声が出て天音は思わず口元を押さえた。その表情に目を丸くした後テオドールはにやりと怪しく笑った。

 「性感帯なの?」

 その言葉に羞恥に震えた天音は顔を赤くする。猫になってからすっかりとは無縁でいたため、今自分が人間であることを知らされる。
 見なくても自分でわかる反応してしまった下腹部を隠すように天音は身をよじった。

 「性欲もある」

 顔から火が出るのではないかと思うくらい羞恥で熱くなった天音は「もう、勘弁してください」と涙目になって訴えた。
 その言葉をきいたテオドールは不思議そうな表情をしながらも「悪かった」と身体を離して天音に毛布をなげて寄越した。
 投げられた毛布を慌てて身体に巻き付けると、身体を縮こませてささっとテオドールから距離を取った。
 テオドールはその態度に少しむうとしながら近くにあるソファにどかっと座る。

 その後天音は自分が死ぬ前のことから今まで起きたことを話すことになったのだった。
  
 

 
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