45 / 91
2章
2−16
しおりを挟む『しょうちゃん。ぼくね。
なんかね…。』
そのとき僕は珍しく
落ち込んでいたんだ。
小学一年生になって
しょうちゃんと
2人きりの時間も減って…。
かっこいいしょうちゃんの
周りにはいつも女子がいて
僕は近寄れなくって。
やっとしょうちゃんの隣に
座ったとき、なんか糸が
切れたように力が抜けて
背中に頭をもたせかけた。
「どうしたの?たっくん?」
『しょうちゃんおんなのこに
もてもてだね…。』
「おれはおんなのこなんて
いらない。っていうか…。
たっくんいがいはいらない。」
『ほんと…?』
僕は目をぱちくりさせて
しょうちゃんを見た。
「あたりまえでしょ?」
こちらに向き直り怒ったように
呆れたように言う。
『あたり、まえ?』
そだよ!としょうちゃんは
えらく憤慨している。
「おれはたっくんひとすじ!
しってるだろ?」
『う、うん…。』
僕は顔を赤くして俯いた。
「たっくん!ほら!ちからを
あげるよ。」
そう言うとしょうちゃんは
僕の両手を握りしめ
目をじっと見つめる。
『ふぁ………。熱……い………。』
手からは熱い何かが流れ込んで
僕の頭はふうっ、と白くなった。
気がつくとぼぉっと光るふたつの
小さな瞳が僕を見上げていた。
僕はとても大きい木で…
ずっと待っていた。
『来てくれたんだね…。』
その小さな瞳は1匹の鹿だった。
両前足を僕の幹につけると
そこからあたたかい想いが
流れ込んでくる。
「木の妖精さん…。俺の気を
わけてあげる。だいぶ弱って
生気がなくなってる。」
『鹿さん…。ありがとう。』
「俺はずっと探していたよ。
あなたを。」
『僕はずっと待っていたよ…
あなたを。』
「ほら。元気出てきたでしょ?」
『ん…。あたたかい…。 鹿さん
ありがとう。来てくれて。』
「木の妖精さん。ありがとう。
いてくれて。」
「たっくん…げんき………。
でたでしょ?」
『しょうちゃんありがと…。
やっぱりいつもしょうちゃんは
きてくれる。』
「いくさ。だってたっくんが
たいせつだから。
ずっといっしょにいたいから。」
『これまでもこれからも
ずっとずっと…。』
「おれはたっくんにちからを
あげる。いつもいつのひも。
だからたっくんはしんじてて。
おれだけを。」
『しょうちゃんだけをみてる。』
「そ!それでよし!じゃあ
かえろう!かえってなにして
あそぶ?」
『おえかきは?』
「いいね!」
僕達は自然と手を繋ぎ
唖然としている女子たちを後目に
微笑みあって校門に向かった。
なんかね…。』
そのとき僕は珍しく
落ち込んでいたんだ。
小学一年生になって
しょうちゃんと
2人きりの時間も減って…。
かっこいいしょうちゃんの
周りにはいつも女子がいて
僕は近寄れなくって。
やっとしょうちゃんの隣に
座ったとき、なんか糸が
切れたように力が抜けて
背中に頭をもたせかけた。
「どうしたの?たっくん?」
『しょうちゃんおんなのこに
もてもてだね…。』
「おれはおんなのこなんて
いらない。っていうか…。
たっくんいがいはいらない。」
『ほんと…?』
僕は目をぱちくりさせて
しょうちゃんを見た。
「あたりまえでしょ?」
こちらに向き直り怒ったように
呆れたように言う。
『あたり、まえ?』
そだよ!としょうちゃんは
えらく憤慨している。
「おれはたっくんひとすじ!
しってるだろ?」
『う、うん…。』
僕は顔を赤くして俯いた。
「たっくん!ほら!ちからを
あげるよ。」
そう言うとしょうちゃんは
僕の両手を握りしめ
目をじっと見つめる。
『ふぁ………。熱……い………。』
手からは熱い何かが流れ込んで
僕の頭はふうっ、と白くなった。
気がつくとぼぉっと光るふたつの
小さな瞳が僕を見上げていた。
僕はとても大きい木で…
ずっと待っていた。
『来てくれたんだね…。』
その小さな瞳は1匹の鹿だった。
両前足を僕の幹につけると
そこからあたたかい想いが
流れ込んでくる。
「木の妖精さん…。俺の気を
わけてあげる。だいぶ弱って
生気がなくなってる。」
『鹿さん…。ありがとう。』
「俺はずっと探していたよ。
あなたを。」
『僕はずっと待っていたよ…
あなたを。』
「ほら。元気出てきたでしょ?」
『ん…。あたたかい…。 鹿さん
ありがとう。来てくれて。』
「木の妖精さん。ありがとう。
いてくれて。」
「たっくん…げんき………。
でたでしょ?」
『しょうちゃんありがと…。
やっぱりいつもしょうちゃんは
きてくれる。』
「いくさ。だってたっくんが
たいせつだから。
ずっといっしょにいたいから。」
『これまでもこれからも
ずっとずっと…。』
「おれはたっくんにちからを
あげる。いつもいつのひも。
だからたっくんはしんじてて。
おれだけを。」
『しょうちゃんだけをみてる。』
「そ!それでよし!じゃあ
かえろう!かえってなにして
あそぶ?」
『おえかきは?』
「いいね!」
僕達は自然と手を繋ぎ
唖然としている女子たちを後目に
微笑みあって校門に向かった。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

転生したら捕らえられてました。
アクエリア
ファンタジー
~あらすじ~ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
目を覚ますと薄暗い牢獄にいた主人公。
思い付きで魔法を使ってみると、なんと成功してしまった!
牢獄から脱出し騎士団の人たちに保護され、新たな生活を送り始めるも、なかなか平穏は訪れない…
転生少女のチートを駆使したファンタジーライフ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
見切り発車なので途中キャラぶれの可能性があります。
感想やご指摘、話のリクエストなど待ってます(*^▽^*)
これからは不定期更新になります。なかなか内容が思いつかなくて…すみません

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる