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夢魔、自重する

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 自重しよう……。
 落ちこぼれ夢魔のエイシェは、項垂れた。朝ベッドの上で目を覚ました時、大いに反省した。
 
 エッチを覚えたばかりのピュアな青年に、夢の中で主導権を握られてしまうとは。
 自分は夢魔なのに……。夢の中では無双のはずなのに。アイデンティティーが崩壊しそうだ。
 ちょっと摂食に成功したからと言って、浮かれて自分はできる夢魔だと勘違いしてしまった。
 
 栄養もしっかり取れたし、1ヶ月位は人間の食事で持ちそうなので、しばらく大人しくしようと心に決めたのだった。

 そんなわけで、清く正しくサマエルのお手伝いをしていたエイシェだったが、3週間たったある夜のことだった。
 
 夜12時を少し過ぎた頃、ふと目が覚めた。
 喉乾いたな……。
 
 ダイニングの奥のキッチンで水を飲んで部屋へ戻る途中で、浴室の電気がついているのに気がついた。
 ドアがほんの少し開いており、明かりが漏れている。
 消しておこうと浴室のドアに手をかける。

 はぁ、はぁ。んっ、くっ。……んっ。
 ドアの隙間から荒い息遣いとしゅっしゅっと何かを擦る音が、聞こえてくる。

 え、誰? 神官様?

 ドアの隙間からそっと覗くと、エイシェの白いブラウスの匂いを嗅ぎながら、全裸のサマエルが自身を擦っていた。
 浴室手前に置いてある洗濯カゴに入れたはずの下着が床に広げられており、股の部分が晒されていた。
 
 久々に見た彼のモノは、相変わらず立派に膨張しており、先端からは先走りがぬらぬらと流れ出ていた。

(神官様が、私のブラウスとショーツで、オナニーを……。年頃の青年だし、そういうこともあるのよね……)
 
 はあはあと荒い息を吐き出しながら、眉をしかめて自慰をしている年若い神官。ダークレッドの瞳は、閉じられており見えない。
 気持ちいいのをこらえている切なげな表情が、魅惑的だ。
 
 このシチュエーションは、おいしすぎる。夢の中だったら、すかさず便乗して食事をしたいところだけど……。
 現実で食事なんて、ハードルが高過ぎる。食事の後うまくごまかして、日常生活をこなせる自信は皆無だ。
 
 無駄打ちは、もったいないけどなーと思いながら、そっとその場を離れようとした時、寝間着のワンピースの裾をかかとで踏んでしまう。

「きゃっ」

 や、やばい。退散しないと!
 慌てて、四つ這いになって自分の部屋をめがけて、廊下を進もうとする。
 きいっと浴室のドアが開き、中からサマエルが出てくる。怒張した下半身を露出したままで……。

「こんな真夜中に、どうしました?」
「あの、喉が渇いて、お水を飲みに……。その、えっと、もう部屋に戻りますね。お休みなさーい……」

 何事もなかったかのように、部屋へ戻ろうとする。変な汗がだらだらと流れる。
 逆光でサマエルの表情はよく分からないが、いつものように丁寧な物言いが逆に怖い。

「エイシェ、良かったら、少し手伝ってくれないでしょうか?」
「な、な、な、何をでしょうか?」

 わーん、怖いよ。せめて夢の中だったら、まだどうにかできるかも……? できないか? できないなっ!
 アルメリナ姉様、メリディ、こんな時どうしたらいいの! 絶体絶命24時だよ!

「そんなに怖がらないで下さい」
「は、は、はいぃぃ……」

 いや、怖いって! 腰が抜けて、素早く動けない。
 サマエルが少しずつ、近付いてくる。プレッシャーを感じて後ずさる。
 
「だから怖がらないで。そんなにいい反応をされると」
「ひぃっ!」

 彼が、一歩前に進む。エイシェは、身構える。

「――かえって、我慢できなくなってしまいますから、ね?」 
「はい。はっ……え?」

 どういう展開⁉︎    全然分からないよ!
 
 でも本能が告げている。彼は、圧倒的強者だと。
 
「エイシェ、あなたのせいでこうなってしまったのです。どうか慰めてくれませんか?」

 サマエルは、片膝をついて床を這いつくばるエイシェの手を取り、そっと自身を握らせる。
 張り詰めたソレはヌルヌルとしており、今にも爆発しそうだ。

 いつものように頬を薔薇色に染めて微笑む麗しの神官は、「お願いします」と断れない雰囲気を醸し出して言う。
 そしてエイシェを抱き上げ、ダイニングのソファーへ移動する。
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