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ザカライアスの寝室
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目を開く。身体がだるく、脚がじんじんと熱を持って痛む。
「ここは……?」
緩慢な動きでロータスは身体を起こす。眼前に広がるのは均等に配置されている鉄の棒。そこに毛布とクッションが敷き詰められており、その上で気を失っていたようだった。
豪華な部屋の中で、灯りは消されており薄暗い。少し離れた場所に天蓋付きのベッドが見えた。どうやらこの場所は、寝室のようだが……自分がいるのは……?
「檻……の中?」
「目が覚めたか」
「ひっ! イグ……ニス!」
気配を感じなかったが、イグニスが檻の傍でひっそりと佇んでいた。ぼんやりとした頭が、急速に怒りと共に目覚める。
「あなた! どうしてオルフィを殺したの!」
「邪魔するものは全て排除するのが私に課された役割だからだ」
「ただの人殺しでしょ!」
「あいつを殺さなければ、私が殺されていた。正当防衛だとも言える」
「そんなの詭弁だわ。そもそも私をプリマヴェルから連れ出そうとすることは、正当なことなのかしら。私は正当な理由でフェアファクスから追放されたのよ!」
「――っそれは」
ロータスは、眼前でゆっくりと力なく倒れていくオルフィロスの姿を再び思い出し、涙で目が潤む。
「……そんなに憎いなら、私を殺せばよかったじゃない。どうせこの世界は私を受け入れてくれないのだから」
「憎い……? 私が、ロータス嬢を……?」とイグニスが俯く。
「それは、私が困るな」
部屋の魔石灯が灯る。声の方へ反射的に顔を向ける。吐き気を催す凶悪な甘い香りが、辺り一面に漂う。
「ザカライアス殿下……と、アリサ様……」
ロータスは呆然と二人を見る。
――ここはフェアファクス王国なのね。そして二人がいるということは、王城のどこかの部屋ということだ。またゲームの世界に逆戻りなのかな……。
ザカライアスは、光沢のある白いシルクのガウンを緩く結んでいる。広く開いた胸元からは、骨ばった上半身が見える。だらしなく開いているガウンの足元から除く、白く細い脚はひどく不健康にロータスの瞳には映る。
オルフィロスの筋肉質な身体をいつも見ていたからかもしれない。もうその身体にも熱にも触れることはできないけど……。
アリサは、贅沢にレースをあしらったピンクのストンとしたシルエットの寝間着を着ていた。そして下腹部だけが不自然に膨らんでいた。アリサの腹はまるで、餓鬼のようだった。
黒い髪はつやつやと歩くたびに輝き、そのビジョンブラッドルビーのような赤い瞳は、いつか見た時よりも妖艶で魅惑的に潤っている。丁寧に手入れされた美しく白い指先は、ふんわりとザカライアスの腕に添えられていた。
(……妊娠、しているのよね? でも私が知っている妊婦さんのお腹はもっと胸の下の方から膨らんでいたような)
妊娠したことが今までないのでよく分からない。個人差があるのかもしれない。訝しげな眼差しで二人を観察する。
「ザカリー、やだぁ、またロータスがアリサのことを嫌な目で見てくる」
アリサが「怖いですぅ」とザカライアスに腕を絡み付かせる。ザカライアスがアリサを庇うように肩をしっかりと抱く。
何かデジャヴだわ……。こっちは檻の中に収容されているって言うのに何が怖いと言うのだ。魔法も封じられていて万事窮すなんですけど……。
「アリサ、ロータスは魔獣用の檻に入れているし、魔法も使えない。何の問題もないよ。だから少し静かにしていてね」
「はぁい」
拗ねたようにアリサは返事をすると、大きくなった腹をさすりながら、ベッドの方へスタスタと歩いていく。
二人の着ているものからすると、ここはザカライアスの寝室なのかもしれない。
誰だか知らないけれど、とんでもないところに収容してくれた。
「やっと会えたね、ロータス。中々戻ってきてくれないから、少し強引な手を使ってしまったよ」
「ザカライアス殿下、皆さんおかしなことを仰いますけど、どうして私がこちらへ戻ってこないといけないのでしょう。刑は国外追放でしたし、殿下は私を死の森へ送りましたよね」
「そう……だったかな。君をずっと待っていたんだよ。魔法陣の修復や私の仕事を手伝ってもらいたくてね」
ザカライアスは、まだアリサが現れる前の純真で爽やかな微笑みを浮かべている。しかしその顔色は悪く、頬の肉が落ちたように思える。
それに自分を死の森へ送っておいて、覚えていないなんて。ひどすぎるのでは。
「意味が分かりません。オルフィロス様を殺してまで、連れてくるほど、私に価値はありませんよ」
「オルフィロスか。イグニスに刺されたんだっけ。まあ運が良ければ、死なないだろう。あいつの強さは、半端ないからな」
「心臓を、ガルシア卿に一突きされたのですよ」
「死んだ所を見たわけじゃないのだろう?」
「……すぐにその場から連れ去られたので、見ていないですが、普通の人なら死んでいるはずです」
「普通の人じゃないのだよ。彼を守るリュミエールの愛は、人知を超えている。そんな場面を魔王との戦いで何度も見たよ」
――だからと言って、オルフィロスが絶対に死なないという理由にはならないし、心臓を一突きしてもいいわけではない。
イグニスの主人であるザカライアスへも強く怒りが湧く。
突然、屋敷がグラグラと揺れる。
地震! 前世以来の地震だ。ロータスは床に手をつくと、揺れがおさまるのを待つ。こんな檻の中に入れられているのに、地震なんて勘弁してほしい。
フェアファクスで暮らしていて、地震が起きたことはなかったので、久々の揺れに少し驚く。しかしザカライアスやイグニスは、慣れた様子で特に驚いてはいないようだった。
二人は静かに揺れが止まるのを待っていた。
一人戸惑うロータスを無視して、アリサがザカライアスへ話しかける。
「ザカリー、お話まだ終わらないのぉ? 早くこっちに来てぇ」
「話はまた今度にしよう。君を連れてきたのは極秘事項なので、しばらくはここで保護させもらうよ」
「ちょっと!」
ロータスを無視して、ザカライアスはアリサへすうっと引き寄せられるように進む。無言で立っている、イグニスをちらりと見ると無表情でベッドの二人を見ていた。
自分の愛する人がザカライアスと二人でベッドの上にいるのを見て、一体どんな気持ちでいるのだろうか。
(私には関係ないけど。オルフィがどうなったのかだけでも、知ることができれば……)
不安になると癖でついつい胸元のイエローダイヤモンドの首飾りを握りしめてしまう。
ふとロータスは、オルフィロスが最期に言った『お守りは絶対に手放すな』という言葉を思い出し、そっと自分の下着の胸の谷間へそれを隠す。
――これから一体どうしたら。この魔力封じのバングルさえなければ、隙を見て逃げ出せるのに。
諸々考えていると、魔石灯が再び暗くなる。
「はぁ、んんっ……ああ、そんなダメ」
「何がダメなのかな?」
「アリサ、赤ちゃんいるのにぃ」
「医者は安定期に入ったから激しくしなければ大丈夫だって、言っていただろう?」
「でも、いつもザカリー激しいじゃない? 悪いパパさんだよ?」
(――は!? 始まっちゃっうの? 私もイグニスもいるっていうのに!? は、破廉恥過ぎじゃない!?)
ロータスの悲壮感を吹き飛ばすように、ザカライアスとアリサの偏差値ゼロの会話と睦み合いが始まる。
ザカライアスの息遣いとアリサの嬌声が次第に大きくなっていく。
「やぁん……」
「ほらこんなにヌルヌルになって。アリサだって、悪いママさんじゃないか」
あ、あの美麗な輝く金髪に青い瞳の朗らか王子様キャラが……、ベッドの上では気持ち悪過ぎない⁉︎
このゲーム、倫理観どうなってるの……。
再びイグニスの方をちらりと見るが、暗がりに人影が見えるだけで、表情はよく分からない。壁と同化している。
忠臣の鏡ね……。
ロータスが呆れていると、ザカライアスがアリサへ挿入したらしく、「ああん、ザカリー、いいっ。赤ちゃん、アリサ、悪いママで、ごめんねっ」というよく分からない小芝居が続いている。
ザカライアスがへこへこと腰を振って、アリサへ抽挿しているシルエットが見える。
前世でも人の行為なんて見たことないよ……。崖っぷちに立っているというのに、更なる追い打ちをかけられている気分だ。
パンパンと腰を打ち付ける音と、べちゃべちゃと粘着質な音が高まりあう。
「ザカリー、イッちゃう、イッちゃうのー」
「イケ、アリサ、イキ狂え!」
大人のビデオのように作られたセリフと共に二人は果てる。
ロータスは、やっと終わったかと安堵のため息をついた。こんな超プライベートな空間に居たくない。
その時「……はぁん、イグもこっちにおいでぇ」と荒い息をしながら、アリサがイグニスをベッドへ呼び寄せる。さっきまで壁の一部になっていた黒いシルエットが、ベッドへ移動する。
え、嘘、どうするの? 清純派主人公、どうした⁉︎
ロータスは、価値観についていけず、混乱する。
イグニスは、慣れた様子でベッドの上に上がると膝立ちになった。トラウザーズのベルトを外す音がかちゃりと聞こえる。
アリサはベッドから起き上がり、四つ這いになると、「挿れていいよぅ。ザカリーはお口で……ね?」とイグニスを振り返る。
イグニスは、アリサの腰を掴み、一気に挿入する。
「ああっ……、イグ、すごいわあ。ギャラリーがいるから、いつもより興奮しているのかなぁ? かわいいー」
ザカライアスも膝立ちになると、アリサの頭を掴み、自身を口へ差し込む。アリサがうぐっと苦しそうに唸ると、話すのをやめる。
一体自分は何を見せられているのだろう。
四つ這いになっているアリサの下腹部はとても膨らんでいて、ベッドへつきそうになっている。妊娠している救国の乙女と激しく獣のように行為している、かつての護り人の二人。
これって、十八禁のゲームじゃなかったはずよね。価値観がバグり過ぎていてついていけない。
国が魔獣の襲来により危機に瀕しているというのに、この爛れた夜がここでの日常なのだろうか。
何度も果てては、始まるエンドレスの三人の交わりに、ロータスは耳を塞ぎ、一刻も早く朝が来ることを願った。
「ここは……?」
緩慢な動きでロータスは身体を起こす。眼前に広がるのは均等に配置されている鉄の棒。そこに毛布とクッションが敷き詰められており、その上で気を失っていたようだった。
豪華な部屋の中で、灯りは消されており薄暗い。少し離れた場所に天蓋付きのベッドが見えた。どうやらこの場所は、寝室のようだが……自分がいるのは……?
「檻……の中?」
「目が覚めたか」
「ひっ! イグ……ニス!」
気配を感じなかったが、イグニスが檻の傍でひっそりと佇んでいた。ぼんやりとした頭が、急速に怒りと共に目覚める。
「あなた! どうしてオルフィを殺したの!」
「邪魔するものは全て排除するのが私に課された役割だからだ」
「ただの人殺しでしょ!」
「あいつを殺さなければ、私が殺されていた。正当防衛だとも言える」
「そんなの詭弁だわ。そもそも私をプリマヴェルから連れ出そうとすることは、正当なことなのかしら。私は正当な理由でフェアファクスから追放されたのよ!」
「――っそれは」
ロータスは、眼前でゆっくりと力なく倒れていくオルフィロスの姿を再び思い出し、涙で目が潤む。
「……そんなに憎いなら、私を殺せばよかったじゃない。どうせこの世界は私を受け入れてくれないのだから」
「憎い……? 私が、ロータス嬢を……?」とイグニスが俯く。
「それは、私が困るな」
部屋の魔石灯が灯る。声の方へ反射的に顔を向ける。吐き気を催す凶悪な甘い香りが、辺り一面に漂う。
「ザカライアス殿下……と、アリサ様……」
ロータスは呆然と二人を見る。
――ここはフェアファクス王国なのね。そして二人がいるということは、王城のどこかの部屋ということだ。またゲームの世界に逆戻りなのかな……。
ザカライアスは、光沢のある白いシルクのガウンを緩く結んでいる。広く開いた胸元からは、骨ばった上半身が見える。だらしなく開いているガウンの足元から除く、白く細い脚はひどく不健康にロータスの瞳には映る。
オルフィロスの筋肉質な身体をいつも見ていたからかもしれない。もうその身体にも熱にも触れることはできないけど……。
アリサは、贅沢にレースをあしらったピンクのストンとしたシルエットの寝間着を着ていた。そして下腹部だけが不自然に膨らんでいた。アリサの腹はまるで、餓鬼のようだった。
黒い髪はつやつやと歩くたびに輝き、そのビジョンブラッドルビーのような赤い瞳は、いつか見た時よりも妖艶で魅惑的に潤っている。丁寧に手入れされた美しく白い指先は、ふんわりとザカライアスの腕に添えられていた。
(……妊娠、しているのよね? でも私が知っている妊婦さんのお腹はもっと胸の下の方から膨らんでいたような)
妊娠したことが今までないのでよく分からない。個人差があるのかもしれない。訝しげな眼差しで二人を観察する。
「ザカリー、やだぁ、またロータスがアリサのことを嫌な目で見てくる」
アリサが「怖いですぅ」とザカライアスに腕を絡み付かせる。ザカライアスがアリサを庇うように肩をしっかりと抱く。
何かデジャヴだわ……。こっちは檻の中に収容されているって言うのに何が怖いと言うのだ。魔法も封じられていて万事窮すなんですけど……。
「アリサ、ロータスは魔獣用の檻に入れているし、魔法も使えない。何の問題もないよ。だから少し静かにしていてね」
「はぁい」
拗ねたようにアリサは返事をすると、大きくなった腹をさすりながら、ベッドの方へスタスタと歩いていく。
二人の着ているものからすると、ここはザカライアスの寝室なのかもしれない。
誰だか知らないけれど、とんでもないところに収容してくれた。
「やっと会えたね、ロータス。中々戻ってきてくれないから、少し強引な手を使ってしまったよ」
「ザカライアス殿下、皆さんおかしなことを仰いますけど、どうして私がこちらへ戻ってこないといけないのでしょう。刑は国外追放でしたし、殿下は私を死の森へ送りましたよね」
「そう……だったかな。君をずっと待っていたんだよ。魔法陣の修復や私の仕事を手伝ってもらいたくてね」
ザカライアスは、まだアリサが現れる前の純真で爽やかな微笑みを浮かべている。しかしその顔色は悪く、頬の肉が落ちたように思える。
それに自分を死の森へ送っておいて、覚えていないなんて。ひどすぎるのでは。
「意味が分かりません。オルフィロス様を殺してまで、連れてくるほど、私に価値はありませんよ」
「オルフィロスか。イグニスに刺されたんだっけ。まあ運が良ければ、死なないだろう。あいつの強さは、半端ないからな」
「心臓を、ガルシア卿に一突きされたのですよ」
「死んだ所を見たわけじゃないのだろう?」
「……すぐにその場から連れ去られたので、見ていないですが、普通の人なら死んでいるはずです」
「普通の人じゃないのだよ。彼を守るリュミエールの愛は、人知を超えている。そんな場面を魔王との戦いで何度も見たよ」
――だからと言って、オルフィロスが絶対に死なないという理由にはならないし、心臓を一突きしてもいいわけではない。
イグニスの主人であるザカライアスへも強く怒りが湧く。
突然、屋敷がグラグラと揺れる。
地震! 前世以来の地震だ。ロータスは床に手をつくと、揺れがおさまるのを待つ。こんな檻の中に入れられているのに、地震なんて勘弁してほしい。
フェアファクスで暮らしていて、地震が起きたことはなかったので、久々の揺れに少し驚く。しかしザカライアスやイグニスは、慣れた様子で特に驚いてはいないようだった。
二人は静かに揺れが止まるのを待っていた。
一人戸惑うロータスを無視して、アリサがザカライアスへ話しかける。
「ザカリー、お話まだ終わらないのぉ? 早くこっちに来てぇ」
「話はまた今度にしよう。君を連れてきたのは極秘事項なので、しばらくはここで保護させもらうよ」
「ちょっと!」
ロータスを無視して、ザカライアスはアリサへすうっと引き寄せられるように進む。無言で立っている、イグニスをちらりと見ると無表情でベッドの二人を見ていた。
自分の愛する人がザカライアスと二人でベッドの上にいるのを見て、一体どんな気持ちでいるのだろうか。
(私には関係ないけど。オルフィがどうなったのかだけでも、知ることができれば……)
不安になると癖でついつい胸元のイエローダイヤモンドの首飾りを握りしめてしまう。
ふとロータスは、オルフィロスが最期に言った『お守りは絶対に手放すな』という言葉を思い出し、そっと自分の下着の胸の谷間へそれを隠す。
――これから一体どうしたら。この魔力封じのバングルさえなければ、隙を見て逃げ出せるのに。
諸々考えていると、魔石灯が再び暗くなる。
「はぁ、んんっ……ああ、そんなダメ」
「何がダメなのかな?」
「アリサ、赤ちゃんいるのにぃ」
「医者は安定期に入ったから激しくしなければ大丈夫だって、言っていただろう?」
「でも、いつもザカリー激しいじゃない? 悪いパパさんだよ?」
(――は!? 始まっちゃっうの? 私もイグニスもいるっていうのに!? は、破廉恥過ぎじゃない!?)
ロータスの悲壮感を吹き飛ばすように、ザカライアスとアリサの偏差値ゼロの会話と睦み合いが始まる。
ザカライアスの息遣いとアリサの嬌声が次第に大きくなっていく。
「やぁん……」
「ほらこんなにヌルヌルになって。アリサだって、悪いママさんじゃないか」
あ、あの美麗な輝く金髪に青い瞳の朗らか王子様キャラが……、ベッドの上では気持ち悪過ぎない⁉︎
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再びイグニスの方をちらりと見るが、暗がりに人影が見えるだけで、表情はよく分からない。壁と同化している。
忠臣の鏡ね……。
ロータスが呆れていると、ザカライアスがアリサへ挿入したらしく、「ああん、ザカリー、いいっ。赤ちゃん、アリサ、悪いママで、ごめんねっ」というよく分からない小芝居が続いている。
ザカライアスがへこへこと腰を振って、アリサへ抽挿しているシルエットが見える。
前世でも人の行為なんて見たことないよ……。崖っぷちに立っているというのに、更なる追い打ちをかけられている気分だ。
パンパンと腰を打ち付ける音と、べちゃべちゃと粘着質な音が高まりあう。
「ザカリー、イッちゃう、イッちゃうのー」
「イケ、アリサ、イキ狂え!」
大人のビデオのように作られたセリフと共に二人は果てる。
ロータスは、やっと終わったかと安堵のため息をついた。こんな超プライベートな空間に居たくない。
その時「……はぁん、イグもこっちにおいでぇ」と荒い息をしながら、アリサがイグニスをベッドへ呼び寄せる。さっきまで壁の一部になっていた黒いシルエットが、ベッドへ移動する。
え、嘘、どうするの? 清純派主人公、どうした⁉︎
ロータスは、価値観についていけず、混乱する。
イグニスは、慣れた様子でベッドの上に上がると膝立ちになった。トラウザーズのベルトを外す音がかちゃりと聞こえる。
アリサはベッドから起き上がり、四つ這いになると、「挿れていいよぅ。ザカリーはお口で……ね?」とイグニスを振り返る。
イグニスは、アリサの腰を掴み、一気に挿入する。
「ああっ……、イグ、すごいわあ。ギャラリーがいるから、いつもより興奮しているのかなぁ? かわいいー」
ザカライアスも膝立ちになると、アリサの頭を掴み、自身を口へ差し込む。アリサがうぐっと苦しそうに唸ると、話すのをやめる。
一体自分は何を見せられているのだろう。
四つ這いになっているアリサの下腹部はとても膨らんでいて、ベッドへつきそうになっている。妊娠している救国の乙女と激しく獣のように行為している、かつての護り人の二人。
これって、十八禁のゲームじゃなかったはずよね。価値観がバグり過ぎていてついていけない。
国が魔獣の襲来により危機に瀕しているというのに、この爛れた夜がここでの日常なのだろうか。
何度も果てては、始まるエンドレスの三人の交わりに、ロータスは耳を塞ぎ、一刻も早く朝が来ることを願った。
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