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第三章 聖女は守りたいものがあるようです
錯綜する想いと願いと
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エレノアが来て一カ月がたったが、今の所問題のない日々が続いていた。
ただアルテアと一緒に午後のお茶の時間を過ごしていると突然現れるようになったり、居住区外で二人でいると、どこからともなく現れて話に入ってくるため、以前よりもアルテアと一緒に過ごす時間が減った。
何だか監視されているようで少しだけ怖かったので、自然と居住区以外でアルテアと過ごすのを断るようになった。
もし自分のせいでシリウスに何かあったらと考えると、極力エレノアの気に障らない方がいいだろう。
天音は寝室の窓から、日付が変わる間際であるにも関わらず、今なお煌々と灯りが点いている別邸を眺める。
終日、魔法や魔道具を使用しているみたいだけど、何だかんだと言ってもトウライアムウルは裕福なように見えた。あのような大量の魔水晶の消費は、メイオールでは考えられない。やはりメイオールよりも大国であるトウライアムウル連合国は、少しぐらい経済力が落ちたとしても未だに強い国であるのだ。
「アマネ、どうしました? 何か気がかりなことがあるのですか?」
アルテアが、寝間着に着替えて部屋に入ってくる。急いで出てきたのか、洗った髪はまだ濡れていて、タオルにぽたぽたと水滴が落ちている。水も滴るいい男とはよく言ったものだなと天音は思う。
「いえ。別邸の方が明るいので、何となく見ていただけです」
「そうですか」
アルテアは、天音の肩越しに両腕を伸ばし、カーテンをさっと閉める。天音は、アルテアの顔を見上げ「髪、乾かしますね」と言う。
薄暗く照明を落とした部屋で、アルテアを鏡の前の椅子に座らせて、その髪をタオルで拭いていく。
刻一刻と過ぎていく時間をとても愛おしく思いながら、こんな時間もあとどのくらい過ごせるのだろうかと考える。鏡の中のアルテアは、じっと髪に触れる天音の姿を見ていた。タオルドライした後に魔道具で髪を乾かすと、きらきらのプラチナブロンドの髪をとかしていく。
「ありがとうございます、アマネ」
アルテアはそう言うと振り返ると天音をそのまま抱きしめる。アルテアの頭は天音の腹の辺りに埋められる。腹の感触を楽しむようにアルテアは、頬を腹にすりすりと寄せる。
「アルテア、そんなに甘えて、どうしたのですか?」
「日中、全然会えないから、さみしくて、心が凍えて死ぬかと思いました」
「またそんな大げさな。今からそんなことを言っていたら極夜を越えられませんよ?」
極夜とは一日中夜の日が続く、冬の一番深い時期のことだった。平均気温が氷点下三十度となり、夜が明けないこの時期は、終日太陽が登らないせいか、精神を病む人が多かった。また闇に紛れて紛れて明日悪しき存在が多く現れる時期でもあった。
この三カ月続く極夜を越えたら、シグナイとの約束の三年が終わる。最後の夜の日々がやってくる。
「アマネ、私を温めて」
アルテアが天音を自分の太ももの上に座らせる。唇を合わせるだけの軽いキスが始まり、夜着のストラップが肩から落とされる。露わになる双丘にアルテアが熱い指先で触れる。
「指先、熱いですよ? ……全然、冷えてなんかないじゃないですか……」
天音が、ぽんとアルテアの胸を軽く叩く。
「はあ……、全然分かっていない奥様ですね」
少しだけ荒くなった呼吸とアルテアの酩酊しているような舌足らずの甘い声が、天音を背筋を流れていく。身体がぞくぞくとする。
キスが徐々に深いものになり、アルテアは指先でピンクの頂をこねる。
「……んっ」
それがトリガーとなり天音の全身は、アルテアの指先に敏感に反応してしまう。凶暴なもう一人のアルテアは、天音の太ももに自分の存在をアピールするかのように擦り寄ってくる。
アルテアが身を屈ませ、天音のコリコリとしたピンクの屹立を口に含み舌で嬲る。
「はぁん……」
思わず体がびくりと反応し、足に力が入る。アルテアの不埒な指先は太ももを静かに伝い、上へ上へと進む。鼠蹊部を触れるか触れないかの力で軽く押し、天音の肌を堪能する。天音はもどかしくなって、アルテアを見上げると、その隙に下着がするりと脱がされる。
ひんやりとした感覚に、天音の秘所は既にたらりと甘露を流していることに気づかされる。
アルテアを飲み込みたくて、涎を垂らしている猛獣のような自分の蜜穴が、少しだけ恥ずかしくなる。
アルテアは分かっていると言わんばかりに、つぷりと秘裂を指で開く。そしてゆっくりと春泥に指を沈めていく。
「入口のところも好きですよね?」
「んん……っ、好きです……ああ……」
指先で膣壁の上を擦ると、じわじわと気持ちよさが広がっていく。アルテアに開発された身体は、従順にその指を受け入れながら、きつく締め付ける。
「うねうねとしていますね。もうこんなに涎を垂らして……」
もっと奥まで指を進めて欲しくなり、天音は腰をふるふると揺らす。分かっているはずなのにアルテアは、指を抜いてしまう。
「っん、いや……ぁ、どうしてぇ」
アルテアは無言で、天音を自分に背を向けて座らせる。そして、後ろから天音の膝下に腕を入れ、天音の脚を開脚させる。膝丈の夜着はめくり上がり、ウエストのあたりに寄る。
「……ん、何す……るのですか?」
「アマネ、前の鏡を見てて」
天音はぽうっとした頭で前の鏡を見る。そこにはアルテアに寄りかかり、M字に開脚した自分がいた。紅潮した顔、ペリドット色の瞳はとろけるように潤んでいる。上半身をはだけさせ、大きく脚を開かされ、淫靡に蜜をたらたらと流す花芯が露わになっていた。
「いやぁ……、アルテア、何を! ……やだぁ、恥ずかしいです」
天音は脚を閉じようと暴れるが、アルテアの腕は微動だにしない。アルテアは、ふっと笑うといつの間にか取り出した剛直を天音の蜜口へとあてる。
「アマネ、恥ずかしがらないで前を見てて。誰があなたと繋がっているのか、あなたが何を受け入れているのか」
アルテアは、天音を少し持ち上げると、アルテアの先端が天音の秘裂に挿入される。
「あああ……」
ぐずぐずと待ち侘びていた天音の中に、アルテアの熱杭は少しずつ沈んでいく。かつて、婚約破棄の原因となった、多くのご令嬢たちを泣かせたアルテアの巨根は禍々しい大きさを保ちながら、天音の中に飲み込まれていく。
天音が前をチラリと鏡を見ると、同じく紅潮した顔をしたアルテアが、天音の首筋にキスをしながら苦しそうにしているのが見える。
自分の欲情した顔も鏡に映っており、いつもこんな顔をしてアルテアと抱き合っていたのかと恥ずかしくなる。
けれどそれを凌駕するアルテアの熱がもたらす、快感に自分の中が悦んでいる。
アルテアの屹立はまるでクロタンナイフが山羊のチーズに切り込みを入れるように、すっと天音の媚肉に差し込まれていく。
最奥でずんと衝撃を受け、嬌声が一際高く上がる。天音はあまりの刺激に身体が前屈みになってしまう。
アルテアは天音の膝裏から腕を抜き、天音の肩を前から抱きかかえ、もう片方の腕を天音の臍の下あたりにそえる。
「アマネ、動きますよ」
天音はなす術もなく何度も奥を突かれる。嗚咽のような嬌声が止まらない。
「やぁ、っああ、くっ、あああ……」
アルテアが、臍の下を押すと、中のあたる場所が更に快感を拾う。ごりごりと良いところを擦られ、外からと中からの刺激に訳がわからなくなる。
時折、鏡の中の二人が目に入る。後ろから天音を抱きしめながら腰を突き上げるアルテアと、熱杭を打ち込まれ亜麻色の髪を乱し喘いでいる自分の姿は、まるで他人の性行為を見ているかのようで現実味がない。
淫らで、動物的で、快楽を貪り合う貪欲なこの行為は、同時に神聖で愛おしく、愛に包まれ、幸福であるように思える。
「アマネ、もっと感じて。誰のものを入れられて、気持ち良くなってるの? 誰にこんなに身体の奥深くまで挿れることを許しているの?」
煽るようなアルテアの言葉は、なぜか悲痛な叫びにも聞こえた。
「アルテア……です。アルテアのものを最奥まで、受け入れっ、私は放したくありません……っああ」
天音の返事を聞いて、ぐっと硬度を増したアルテアは、容赦なく天音を突き上げる。
「ああ……ダメ、イッちゃ……んん、あああ……」
天音の隘路は、びくびくと痙攣する。アルテアは天音の締め付けに自分は達するのを堪えて、呼吸が整ってきたところで、後ろから天音の乳首をコリコリと摘む。
「イッちゃって、コリコリですね。こちらはどうかな」
アルテアは、ぬるぬるとした結合部に指を進め、硬い桜の蕾を指先で優しく弾く。
「ひゃ、……っあ、あ、まだイッたばかりで敏感だからダメ……で」
「本当にそうかな。天音の上の口は素直じゃないから、信用できないですね」
アルテアは剛直を抜かずに、立ち上がる。天音は前に倒れそうになる。
「や、膝がガクガクして立てません」
「私が支えるから大丈夫です。さあ、鏡に手をついて?」
「え……?」
天音は、前の鏡に両掌をつく。その様子をアルテアは満足そうに眺め、天音の細腰を両手でしっかりと掴む。
「よくできました」
パンと腰を天音に打ち付ける。
「ああ……っ」
体勢が変わり、アルテアの動き方も変わる。抜けてしまいそうな所まで、腰を引くと再び奥まで貫く。狂暴な雄は天音の中で暴れまわる。ゆっくりと動いていたアルテアの抽挿は次第に早くなり、天音の嬌声も短く高くなる。
鏡に手をついて、だらしなく口から喘ぎ声をあげる女がそこにいた。アルテアの律動に合わせて、身体が揺れ、快楽に溺れている。こんな自分は知らない。
アルテアの側にずっといたくて、この瞬間が永遠に続けばいいのにと胸がいっぱいになる。
涙が流れる。この涙は快楽からなのか、この生が終わることに対する悲しみなのか、頭がぐちゃぐちゃになって分からない。頭が真っ白になる。
「アルテア、またイッちゃう……」
腕の力が入らず、鏡についた手はずるずると下まで下がる。アルテアは手元のタオルを床に敷き、アマネをうつ伏せにさせる。
「アマネ、いいですよ。……私ので何度も達して」
アルテアは、天音の尻を両手で左右に少し広げながら掴むと、再び天音の中を擦る。ぽたぽたと愛液が天音の内ももを伝い、流れていく。
「――ああ、いいっ、ん、すごっ」
天音は言葉にならない声を漏らす。アルテアの汗が天音の背中にぽたりぽたりとと落ちる。恥ずかしいとか、悲しいとか全て霧散する。ただただ二人で繋がりたくて溶けあってしまいたくて、天音はひたすらにアルテアの雄を締め付ける。
「――っ、アマネ、締まってきていますよ。最後は一緒に」
アルテアは、後ろから天音に覆いかぶさるとその身体を両腕で包む。
(熱くて、二人で溶けてしまいそう。このまま、あなたの一部になってしまいたい)
アルテアは荒々しく、ポルチオを何度も強く押し上げる。
「ああ、……アルテアっ、好きぃ……」
「くっ、――アマネ、愛しています」
天音は、中でアルテアがぶるりと熱い精液を吐き出したのを感じる。アルテアの熱く汗ばむ身体に包まれて、何とも言えない幸福を感じる。
(ここで、彼の胸の中にいることが、私の望む幸せだとしたら……。私はどうやって、『私が望む幸せな人生』をアルテアのいない来世で手に入れることができるのだろうか……)
アルテアは、名残惜しそうに自身を天音から抜く。ずるりとアルテアの栓が取れると、精液と愛液が混ざったものが流れ出る。
天音に優しくキスを落とすと、アルテアは天音の顔を見て焦ったような表情になる。
「痛かったですか? それとも嫌だった?」
天音は、両目から大粒の涙を流して、泣いていた。
ただアルテアと一緒に午後のお茶の時間を過ごしていると突然現れるようになったり、居住区外で二人でいると、どこからともなく現れて話に入ってくるため、以前よりもアルテアと一緒に過ごす時間が減った。
何だか監視されているようで少しだけ怖かったので、自然と居住区以外でアルテアと過ごすのを断るようになった。
もし自分のせいでシリウスに何かあったらと考えると、極力エレノアの気に障らない方がいいだろう。
天音は寝室の窓から、日付が変わる間際であるにも関わらず、今なお煌々と灯りが点いている別邸を眺める。
終日、魔法や魔道具を使用しているみたいだけど、何だかんだと言ってもトウライアムウルは裕福なように見えた。あのような大量の魔水晶の消費は、メイオールでは考えられない。やはりメイオールよりも大国であるトウライアムウル連合国は、少しぐらい経済力が落ちたとしても未だに強い国であるのだ。
「アマネ、どうしました? 何か気がかりなことがあるのですか?」
アルテアが、寝間着に着替えて部屋に入ってくる。急いで出てきたのか、洗った髪はまだ濡れていて、タオルにぽたぽたと水滴が落ちている。水も滴るいい男とはよく言ったものだなと天音は思う。
「いえ。別邸の方が明るいので、何となく見ていただけです」
「そうですか」
アルテアは、天音の肩越しに両腕を伸ばし、カーテンをさっと閉める。天音は、アルテアの顔を見上げ「髪、乾かしますね」と言う。
薄暗く照明を落とした部屋で、アルテアを鏡の前の椅子に座らせて、その髪をタオルで拭いていく。
刻一刻と過ぎていく時間をとても愛おしく思いながら、こんな時間もあとどのくらい過ごせるのだろうかと考える。鏡の中のアルテアは、じっと髪に触れる天音の姿を見ていた。タオルドライした後に魔道具で髪を乾かすと、きらきらのプラチナブロンドの髪をとかしていく。
「ありがとうございます、アマネ」
アルテアはそう言うと振り返ると天音をそのまま抱きしめる。アルテアの頭は天音の腹の辺りに埋められる。腹の感触を楽しむようにアルテアは、頬を腹にすりすりと寄せる。
「アルテア、そんなに甘えて、どうしたのですか?」
「日中、全然会えないから、さみしくて、心が凍えて死ぬかと思いました」
「またそんな大げさな。今からそんなことを言っていたら極夜を越えられませんよ?」
極夜とは一日中夜の日が続く、冬の一番深い時期のことだった。平均気温が氷点下三十度となり、夜が明けないこの時期は、終日太陽が登らないせいか、精神を病む人が多かった。また闇に紛れて紛れて明日悪しき存在が多く現れる時期でもあった。
この三カ月続く極夜を越えたら、シグナイとの約束の三年が終わる。最後の夜の日々がやってくる。
「アマネ、私を温めて」
アルテアが天音を自分の太ももの上に座らせる。唇を合わせるだけの軽いキスが始まり、夜着のストラップが肩から落とされる。露わになる双丘にアルテアが熱い指先で触れる。
「指先、熱いですよ? ……全然、冷えてなんかないじゃないですか……」
天音が、ぽんとアルテアの胸を軽く叩く。
「はあ……、全然分かっていない奥様ですね」
少しだけ荒くなった呼吸とアルテアの酩酊しているような舌足らずの甘い声が、天音を背筋を流れていく。身体がぞくぞくとする。
キスが徐々に深いものになり、アルテアは指先でピンクの頂をこねる。
「……んっ」
それがトリガーとなり天音の全身は、アルテアの指先に敏感に反応してしまう。凶暴なもう一人のアルテアは、天音の太ももに自分の存在をアピールするかのように擦り寄ってくる。
アルテアが身を屈ませ、天音のコリコリとしたピンクの屹立を口に含み舌で嬲る。
「はぁん……」
思わず体がびくりと反応し、足に力が入る。アルテアの不埒な指先は太ももを静かに伝い、上へ上へと進む。鼠蹊部を触れるか触れないかの力で軽く押し、天音の肌を堪能する。天音はもどかしくなって、アルテアを見上げると、その隙に下着がするりと脱がされる。
ひんやりとした感覚に、天音の秘所は既にたらりと甘露を流していることに気づかされる。
アルテアを飲み込みたくて、涎を垂らしている猛獣のような自分の蜜穴が、少しだけ恥ずかしくなる。
アルテアは分かっていると言わんばかりに、つぷりと秘裂を指で開く。そしてゆっくりと春泥に指を沈めていく。
「入口のところも好きですよね?」
「んん……っ、好きです……ああ……」
指先で膣壁の上を擦ると、じわじわと気持ちよさが広がっていく。アルテアに開発された身体は、従順にその指を受け入れながら、きつく締め付ける。
「うねうねとしていますね。もうこんなに涎を垂らして……」
もっと奥まで指を進めて欲しくなり、天音は腰をふるふると揺らす。分かっているはずなのにアルテアは、指を抜いてしまう。
「っん、いや……ぁ、どうしてぇ」
アルテアは無言で、天音を自分に背を向けて座らせる。そして、後ろから天音の膝下に腕を入れ、天音の脚を開脚させる。膝丈の夜着はめくり上がり、ウエストのあたりに寄る。
「……ん、何す……るのですか?」
「アマネ、前の鏡を見てて」
天音はぽうっとした頭で前の鏡を見る。そこにはアルテアに寄りかかり、M字に開脚した自分がいた。紅潮した顔、ペリドット色の瞳はとろけるように潤んでいる。上半身をはだけさせ、大きく脚を開かされ、淫靡に蜜をたらたらと流す花芯が露わになっていた。
「いやぁ……、アルテア、何を! ……やだぁ、恥ずかしいです」
天音は脚を閉じようと暴れるが、アルテアの腕は微動だにしない。アルテアは、ふっと笑うといつの間にか取り出した剛直を天音の蜜口へとあてる。
「アマネ、恥ずかしがらないで前を見てて。誰があなたと繋がっているのか、あなたが何を受け入れているのか」
アルテアは、天音を少し持ち上げると、アルテアの先端が天音の秘裂に挿入される。
「あああ……」
ぐずぐずと待ち侘びていた天音の中に、アルテアの熱杭は少しずつ沈んでいく。かつて、婚約破棄の原因となった、多くのご令嬢たちを泣かせたアルテアの巨根は禍々しい大きさを保ちながら、天音の中に飲み込まれていく。
天音が前をチラリと鏡を見ると、同じく紅潮した顔をしたアルテアが、天音の首筋にキスをしながら苦しそうにしているのが見える。
自分の欲情した顔も鏡に映っており、いつもこんな顔をしてアルテアと抱き合っていたのかと恥ずかしくなる。
けれどそれを凌駕するアルテアの熱がもたらす、快感に自分の中が悦んでいる。
アルテアの屹立はまるでクロタンナイフが山羊のチーズに切り込みを入れるように、すっと天音の媚肉に差し込まれていく。
最奥でずんと衝撃を受け、嬌声が一際高く上がる。天音はあまりの刺激に身体が前屈みになってしまう。
アルテアは天音の膝裏から腕を抜き、天音の肩を前から抱きかかえ、もう片方の腕を天音の臍の下あたりにそえる。
「アマネ、動きますよ」
天音はなす術もなく何度も奥を突かれる。嗚咽のような嬌声が止まらない。
「やぁ、っああ、くっ、あああ……」
アルテアが、臍の下を押すと、中のあたる場所が更に快感を拾う。ごりごりと良いところを擦られ、外からと中からの刺激に訳がわからなくなる。
時折、鏡の中の二人が目に入る。後ろから天音を抱きしめながら腰を突き上げるアルテアと、熱杭を打ち込まれ亜麻色の髪を乱し喘いでいる自分の姿は、まるで他人の性行為を見ているかのようで現実味がない。
淫らで、動物的で、快楽を貪り合う貪欲なこの行為は、同時に神聖で愛おしく、愛に包まれ、幸福であるように思える。
「アマネ、もっと感じて。誰のものを入れられて、気持ち良くなってるの? 誰にこんなに身体の奥深くまで挿れることを許しているの?」
煽るようなアルテアの言葉は、なぜか悲痛な叫びにも聞こえた。
「アルテア……です。アルテアのものを最奥まで、受け入れっ、私は放したくありません……っああ」
天音の返事を聞いて、ぐっと硬度を増したアルテアは、容赦なく天音を突き上げる。
「ああ……ダメ、イッちゃ……んん、あああ……」
天音の隘路は、びくびくと痙攣する。アルテアは天音の締め付けに自分は達するのを堪えて、呼吸が整ってきたところで、後ろから天音の乳首をコリコリと摘む。
「イッちゃって、コリコリですね。こちらはどうかな」
アルテアは、ぬるぬるとした結合部に指を進め、硬い桜の蕾を指先で優しく弾く。
「ひゃ、……っあ、あ、まだイッたばかりで敏感だからダメ……で」
「本当にそうかな。天音の上の口は素直じゃないから、信用できないですね」
アルテアは剛直を抜かずに、立ち上がる。天音は前に倒れそうになる。
「や、膝がガクガクして立てません」
「私が支えるから大丈夫です。さあ、鏡に手をついて?」
「え……?」
天音は、前の鏡に両掌をつく。その様子をアルテアは満足そうに眺め、天音の細腰を両手でしっかりと掴む。
「よくできました」
パンと腰を天音に打ち付ける。
「ああ……っ」
体勢が変わり、アルテアの動き方も変わる。抜けてしまいそうな所まで、腰を引くと再び奥まで貫く。狂暴な雄は天音の中で暴れまわる。ゆっくりと動いていたアルテアの抽挿は次第に早くなり、天音の嬌声も短く高くなる。
鏡に手をついて、だらしなく口から喘ぎ声をあげる女がそこにいた。アルテアの律動に合わせて、身体が揺れ、快楽に溺れている。こんな自分は知らない。
アルテアの側にずっといたくて、この瞬間が永遠に続けばいいのにと胸がいっぱいになる。
涙が流れる。この涙は快楽からなのか、この生が終わることに対する悲しみなのか、頭がぐちゃぐちゃになって分からない。頭が真っ白になる。
「アルテア、またイッちゃう……」
腕の力が入らず、鏡についた手はずるずると下まで下がる。アルテアは手元のタオルを床に敷き、アマネをうつ伏せにさせる。
「アマネ、いいですよ。……私ので何度も達して」
アルテアは、天音の尻を両手で左右に少し広げながら掴むと、再び天音の中を擦る。ぽたぽたと愛液が天音の内ももを伝い、流れていく。
「――ああ、いいっ、ん、すごっ」
天音は言葉にならない声を漏らす。アルテアの汗が天音の背中にぽたりぽたりとと落ちる。恥ずかしいとか、悲しいとか全て霧散する。ただただ二人で繋がりたくて溶けあってしまいたくて、天音はひたすらにアルテアの雄を締め付ける。
「――っ、アマネ、締まってきていますよ。最後は一緒に」
アルテアは、後ろから天音に覆いかぶさるとその身体を両腕で包む。
(熱くて、二人で溶けてしまいそう。このまま、あなたの一部になってしまいたい)
アルテアは荒々しく、ポルチオを何度も強く押し上げる。
「ああ、……アルテアっ、好きぃ……」
「くっ、――アマネ、愛しています」
天音は、中でアルテアがぶるりと熱い精液を吐き出したのを感じる。アルテアの熱く汗ばむ身体に包まれて、何とも言えない幸福を感じる。
(ここで、彼の胸の中にいることが、私の望む幸せだとしたら……。私はどうやって、『私が望む幸せな人生』をアルテアのいない来世で手に入れることができるのだろうか……)
アルテアは、名残惜しそうに自身を天音から抜く。ずるりとアルテアの栓が取れると、精液と愛液が混ざったものが流れ出る。
天音に優しくキスを落とすと、アルテアは天音の顔を見て焦ったような表情になる。
「痛かったですか? それとも嫌だった?」
天音は、両目から大粒の涙を流して、泣いていた。
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