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第二章 聖女は過去とむきあうようです
芽生えた気持ち
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陽が落ちる前にベルーゲン城に戻り、先に夕食と風呂を終えて、天音は部屋でのんびりと本を読んでいた。
「アマネ! 今日も一日お疲れ様でした」
ドアが勢いよく開かれると、仕事が終わったアルテアが部屋に入って来た。その勢いのまま、天音までまっしぐらに向かってくる。そして天音をぎゅうぎゅうと気が済むまで抱きしめると、キスをする。流れるようないつもの一連の動作に、天音は何だかほっとする。
正装でいる所をみると、会合が終わってすぐに戻ってきたようだ。
「どう考えても、アルテアの方がお疲れでしょう? もう夕食は食べたのですか?」
「はい。会食しながら打ち合わせをしていたので、もう済みました」
天音は、アルテアの上着を脱がし、「ではお風呂に入って来た方がいいですよ。疲れがとれますよ」とアルテアを浴室の方へ移動させる。
「今日も一緒に入りたいです」
「私はもう入りましたから、お一人で入ってきてください。もう夜も遅いですし」
天音は、昨晩、温泉が引かれているお風呂に一緒に入ったのだが、散々鳴かされ三時間も浴室にこもりっきりになってしまった。
あれは色々な意味で大変だった。
いつもと違った環境だったからか、感覚が研ぎ澄まされていたようで、とても良かった……。こんなことは、恥ずかしくてアルテアに伝えることはできないが。
「一緒に入りましょうよ。今日は、アマネに身体を洗ってもらいたいです」
「もう少し早い時間でしたら、検討させていただいたのですが……」
「じゃあ、天音は服を脱がなくていいですから、私を洗ってください。頑張った私にご褒美をください」
アルテアをあざとく小首をかしげて、お願いと言わんばかりに琥珀色の瞳でじっと天音を見つめる。
プラチナブロンドのゴールデンリトリバーが、遊んで遊んでとねだっているように見えて、天音は断り切れず折れた。
天音は髪を一つにまとめ三つ編みをし、ドレスの下に着る白サテンのキャミソールタイプの膝丈のインナーを着る。胸元にレースがあしらわれ、両脇には深くスリットが入っており、スリットは細いリボンでゆるく結ばれている。前からの露出は、それほどでも無いが、横から見れば、深いスリットの間から、胸から太ももまでほとんど見えてしまう。
けれどこれしか濡れても大丈夫な衣服がないので仕方ない……。湯気でそんなに良く見えないから大丈夫だろう。
天音はゆっくりと浴室へ入ると、アルテアは浴槽の横の大理石に座り、湯を身体にかけていた。
「アルテア、お待たせしました」
天音が声をかけると、嬉しそうにほほ笑む。次に視線は、天音のインナーに向かう。
何か変な所ないよね? 天音は自問しながら、アルテアのじっとりした視線を無視する。
「お待ちしていました」
「まずは髪を洗いましょう」
天音は、アルテアの髪をとかし、お湯に濡らし、シャンプーを泡立てる。丁寧に泡を流し、トリートメントをする。アルテアのプラチナブロンドは、しなやかな直毛で寝ぐせもあまりつかないらしい。猫っ毛の天音にはうらやましい限りだ。
大人しく、天音に髪を洗ってもらっているアルテアが何だか可愛らしくて、天音の口角は無意識に上がる。
髪を洗い流すとふかふかとしたタオルに石鹸を揉み込み、泡立てる。もこもこの泡で背中を洗い始める。
アルテアの骨ばっている背中は、筋肉の線がすっと走り、美しかった。
「あら、ひっかき傷がありますね」
「昨晩、アマネが私の背中に爪を立てたのですよ」
「――本当に⁉︎ ごめんなさい。全く気が付きませんでした」
「全然。アマネにつけられた傷もご褒美でしかないな。そもそも、天音が私の背中に爪を立てたのは、私のせいなのですから」
アルテアの背を洗う手が止まる。天音は、昨晩の自分の乱れ具合を思い出し赤面する。昨日は本当に最後の方は意識がなかった。覚えているのは、自分の甘い嗚咽が浴室に響き、恥ずかしくても声が漏れるのを我慢できなかったことと、アルテアが自分の名を呼ぶ声だけだ。
この場所で……だった。今更ながら様々な感覚も思い出してきて変な気分になってきてしまったので、自分を落ち着かせるために深呼吸をする。
「アマネ、背中はいいから今度は前も洗って」
アルテアの甘えるような声が浴室に響き、天音を包む。身体が熱くなるのは、浴室の蒸気のせいだろうか。
「……はい」
天音はアルテアの前に移動し膝立ちになると、アルテアのモノは既に鎌首をもたげている。天音は不自然に目を逸らしながら、アルテアの首元にタオルをあて、洗い始める。首筋から胸元にかけて優しくタオルを滑らせる。アルテアの大胸筋にそって洗っていく。彼の胸筋の先端部分に触れると、アルテアから「んっ」という悩ましい声が漏れる。
「ご、ごめんなさい。痛かったですか?」
「ふふ、大丈夫です。ほらもっと下まで洗って?」
アルテアは、天音の手首を掴むと腹からその屹立までタオルを滑らせる。天音は、まじまじとその狂暴そうな雄を見つめる。五百ミリリットルのペットボトルくらいの太さがありそうだ。その先端は丸みを帯びて無害そうにしているが、天音の隘路を奥へ奥へと進み、最奥を容赦なく攻め立ててくる。
これがいつも自分の中にいるなんて、信じられない。昨晩も……。
「……アマネ、お願いします」
アルテアがいつの間にか天音の方に身体を傾け、耳元で催促するように囁く。熱い息が耳をくすぐり、身体がぴくりと反応してしまう。
「は、……はい」とタオルをそこにあてようとするが、アルテアにタオルは取られてしまう。
「敏感な場所だから、天音のその小さな手で直接洗ってください」
「えっ、え?」
天音は両手をアルテアに取られ、熱い高ぶりを握らされる。アルテアの手が、天音の手をその上から包む。誘導されるように天音は、アルテアのものを上下に擦る。初めて直接触れたアルテアのものは、とても熱く、はち切れそうなほどぱんぱんに勃起していた。
「んっ……はぁ、お上手ですね」
アルテアの気持ちよさそうな声を聞いて、思わず天音はアルテアの顔を見上げる。うっとりとした琥珀色の瞳が、自身を擦る天音を、じっと見つめている。
「アルテア、気持ち……いいのですか?」
「はい、気持ちいいですよ。あなたその神聖な手で触れられていると、何だかいけないことをしているみたいで、背徳感もありますけど」
アルテアが天音の頬に片手を添えて、キスをする。少し開いた天音の口に、舌が捩じ込まれる。歯茎を舐め、舌を絡ませて、余すところなく口内を侵していく。
その間も天音は、アルテアのもう片方の手に導かれるままに屹立を擦らされる。
その擦っているしぐさが、昨日までの二人の様々な交わりを彷彿とさせ、身体が熱くなる。
自分が彼の熱に触れて、彼が時折気持ちよさそうに息を漏らしている。そう考えると嬉しくなると同時に、その気持ちよさが自分にも伝染する気がする。
今だって触られてもいないのに、胸の先がツンと尖り、中が潤ってくるのを感じる。
唇が離れた時、天音はフラフラとアルテアの胸に倒れ、アルテアに抱きついてしまう。
「アマネ、どうしました? のぼせてしまいましたか?」
「何だか身体が熱くて……」
アルテアは天音の背をそっと撫でる。息が、はあはあと荒くなっているのが分かる。天音はアルテアの頬に自分の頬を甘えるように擦り寄せる。
「アマネから寄ってくるなんて。どうしたのでしょうか?」
「分かりません、アルテアにぎゅっとしてもらいたいです……」
「アマネが濡れてしまいますよ?」
「……濡れてもいいです」
アルテアが天音を抱きしめると、「……ふぅん」と天音から悩ましげな息が漏れる。
「ああ……、違いますね。アマネ、もう既に濡れていますね」
アルテアは、天音の背中からゆっくり両手を腰まで滑らせ、尻の方から下着に手を入れる。ゆっくりとショーツを膝まで下ろす。
「シミができていますよ? これはお湯で濡れてしまったのでしょうか? それとも……」
髪と同じ薄い色の下生えを伝うようにゆっくりと滴る蜜をアルテアは指先でねっとりと絡めとる。
「ああ……これは、やはりお湯じゃないですね。アマネの……だね」
そしてその蜜をペロリと舐めると、「甘い」と艶やかに笑う。その笑顔がなぜかとても卑猥に見えて、天音の雌としての本能が疼く。
「……アルテア」
彼を呼ぶ甘えた自分の声が、浴室に響く。今すぐその猛りを自分の中に埋めて、めちゃくちゃにしてほしい。
天音は、初めて自分がアルテアに欲情していることに気が付く。
あんなに辛くて、我慢するだけの行為だったのに。かつて愛していた伊久磨に抱かれた時だって、こんな風に思ったことはなかった。
アルテアが与えてくれる甘美な快楽は、身体だけではなく、心も満たしてくれた。ただの人を区別するだけの記号だった自分の名前が、アルテアに呼ばれるだけで、何かとても特別なものになったように感じる。
例えそれが再び嘘だとしても、すがらずにはいられない、甘い禁断の果実。
「アマネ、着ているやつも濡れてしまいましたね。風邪をひいてしまうから、もうお風呂から出て寝ましょうか?」
意地悪そうに笑いながら、アルテアは言う。
「……い、いやです」
「どうして? もう遅いから寝ましょう」
天音は、おずおずと無言でアルテアの手を取り、自分の胸の上に置く。
いつもならすぐにその大きな手で胸に触れてくれるのに、今日は全くアルテアの手は動いてくれない。天音はもどかしくなる。
「どうしてほしいの? アマネ、口で言ってくれないと分かりませんよ?」
アルテアは分かっているくせに、分からない振りをしている。天音は羞恥に全身が熱くなる。けれど……、か細い声を発する。
「……アルテアのが、……中に欲しいです……」
自分のお願いをする小さな声が、浴室に大きく響く。羞恥さえも自分の欲望を高めるようで、頭の中はアルテアのアレでいっぱいになってしまう。
「よくできました」
アルテアは、よくできた子犬をほめるように、天音の頭を撫でる。そして、天音の両手を浴槽のふちに置かせると、腰を掴み、後ろから一気に貫く。パンという音が浴室内に響き、貫かれた快感で声が上がる。
「あああっ」
天音の中は、ほぐされてもないのに既にぐずぐずで、天音は思ってた通りの快感に、嬌声が止まらない。アルテアは、天音の腰を持ったまま、小刻みに抽挿を始める。
「アマネは、何ていやらしい奥様なんでしょうか。私のを咥えて、吸い付いてきますよ」
しばらく自分の剛直と天音の蜜を絡めるように動かす。天音は、もっと自分の中を擦って欲しいと、自分から腰を動かしてしまう。
その様子を見てアルテアは、焦らすのを止め、腰を乱暴に天音に打ち付ける。
さっきまで自分の手の中にいた狂暴な雄は、今天音の中を暴力的に貪っている。隙間なく広がる彼の熱に自分が溶けて、一体になってしまうような気がする。
天音が逃げないよう腰を掴み、アルテアは夢中で抽挿を繰り返す。
白の肌着は、汗と湯で濡れてぴったりと天音の肌に張り付き、天音の身体の線を淫猥に強調する。両脇のリボンは、ほどけかけており、前身ごろは垂れ下がり、揺れる胸が見え隠れする。
「はぁん、……ああっ、やんっ、」
「アマネ、もっと優しくしてあげたいのに。ごめん、腰が全然止まらない……」
アルテアのあまりの律動の激しさに、天音の細い腕はがくがくと震え、次第に前のめりになっていく。アルテアは、天音を後ろから片手で抱きしめると、もう片方の手で自ら浴槽のふちを掴む。アルテアのプラチナブロンドの濡れた髪が、天音を包むように下に流れる。
いつものように少しずつ言葉を交わして、キスを繰り返すセックスとは違う、本能に駆り立てられるような獣のような交わり。けれど天音の身体と心は、アルテアともっと繋がりたくて、貪欲にアルテアを締め付ける。途中何度も達してしまったが、終わりたくなくて、彼の熱を受け入れるためにとめどなく蜜が溢れる。狂いそうになるほどの執着に自分でも驚く。
浴室に響きわたる嬌声と息遣い、パンパンという腰を打ち付ける音が、更に興奮を促す。
「……アル、テア、大好きです……」
心の声が思わず漏れてしまう。
「アマネっ、私も、……大好きですよ」
耳ざとく聞いていたアルテアはそれに答える。天音の中は、悦びでギュッと締まり痙攣する。ぐんと大きくなったアルテアの屹立は、ひときわ激しく動くと、天音の奥でたっぷりと精を放った。
「アマネ! 今日も一日お疲れ様でした」
ドアが勢いよく開かれると、仕事が終わったアルテアが部屋に入って来た。その勢いのまま、天音までまっしぐらに向かってくる。そして天音をぎゅうぎゅうと気が済むまで抱きしめると、キスをする。流れるようないつもの一連の動作に、天音は何だかほっとする。
正装でいる所をみると、会合が終わってすぐに戻ってきたようだ。
「どう考えても、アルテアの方がお疲れでしょう? もう夕食は食べたのですか?」
「はい。会食しながら打ち合わせをしていたので、もう済みました」
天音は、アルテアの上着を脱がし、「ではお風呂に入って来た方がいいですよ。疲れがとれますよ」とアルテアを浴室の方へ移動させる。
「今日も一緒に入りたいです」
「私はもう入りましたから、お一人で入ってきてください。もう夜も遅いですし」
天音は、昨晩、温泉が引かれているお風呂に一緒に入ったのだが、散々鳴かされ三時間も浴室にこもりっきりになってしまった。
あれは色々な意味で大変だった。
いつもと違った環境だったからか、感覚が研ぎ澄まされていたようで、とても良かった……。こんなことは、恥ずかしくてアルテアに伝えることはできないが。
「一緒に入りましょうよ。今日は、アマネに身体を洗ってもらいたいです」
「もう少し早い時間でしたら、検討させていただいたのですが……」
「じゃあ、天音は服を脱がなくていいですから、私を洗ってください。頑張った私にご褒美をください」
アルテアをあざとく小首をかしげて、お願いと言わんばかりに琥珀色の瞳でじっと天音を見つめる。
プラチナブロンドのゴールデンリトリバーが、遊んで遊んでとねだっているように見えて、天音は断り切れず折れた。
天音は髪を一つにまとめ三つ編みをし、ドレスの下に着る白サテンのキャミソールタイプの膝丈のインナーを着る。胸元にレースがあしらわれ、両脇には深くスリットが入っており、スリットは細いリボンでゆるく結ばれている。前からの露出は、それほどでも無いが、横から見れば、深いスリットの間から、胸から太ももまでほとんど見えてしまう。
けれどこれしか濡れても大丈夫な衣服がないので仕方ない……。湯気でそんなに良く見えないから大丈夫だろう。
天音はゆっくりと浴室へ入ると、アルテアは浴槽の横の大理石に座り、湯を身体にかけていた。
「アルテア、お待たせしました」
天音が声をかけると、嬉しそうにほほ笑む。次に視線は、天音のインナーに向かう。
何か変な所ないよね? 天音は自問しながら、アルテアのじっとりした視線を無視する。
「お待ちしていました」
「まずは髪を洗いましょう」
天音は、アルテアの髪をとかし、お湯に濡らし、シャンプーを泡立てる。丁寧に泡を流し、トリートメントをする。アルテアのプラチナブロンドは、しなやかな直毛で寝ぐせもあまりつかないらしい。猫っ毛の天音にはうらやましい限りだ。
大人しく、天音に髪を洗ってもらっているアルテアが何だか可愛らしくて、天音の口角は無意識に上がる。
髪を洗い流すとふかふかとしたタオルに石鹸を揉み込み、泡立てる。もこもこの泡で背中を洗い始める。
アルテアの骨ばっている背中は、筋肉の線がすっと走り、美しかった。
「あら、ひっかき傷がありますね」
「昨晩、アマネが私の背中に爪を立てたのですよ」
「――本当に⁉︎ ごめんなさい。全く気が付きませんでした」
「全然。アマネにつけられた傷もご褒美でしかないな。そもそも、天音が私の背中に爪を立てたのは、私のせいなのですから」
アルテアの背を洗う手が止まる。天音は、昨晩の自分の乱れ具合を思い出し赤面する。昨日は本当に最後の方は意識がなかった。覚えているのは、自分の甘い嗚咽が浴室に響き、恥ずかしくても声が漏れるのを我慢できなかったことと、アルテアが自分の名を呼ぶ声だけだ。
この場所で……だった。今更ながら様々な感覚も思い出してきて変な気分になってきてしまったので、自分を落ち着かせるために深呼吸をする。
「アマネ、背中はいいから今度は前も洗って」
アルテアの甘えるような声が浴室に響き、天音を包む。身体が熱くなるのは、浴室の蒸気のせいだろうか。
「……はい」
天音はアルテアの前に移動し膝立ちになると、アルテアのモノは既に鎌首をもたげている。天音は不自然に目を逸らしながら、アルテアの首元にタオルをあて、洗い始める。首筋から胸元にかけて優しくタオルを滑らせる。アルテアの大胸筋にそって洗っていく。彼の胸筋の先端部分に触れると、アルテアから「んっ」という悩ましい声が漏れる。
「ご、ごめんなさい。痛かったですか?」
「ふふ、大丈夫です。ほらもっと下まで洗って?」
アルテアは、天音の手首を掴むと腹からその屹立までタオルを滑らせる。天音は、まじまじとその狂暴そうな雄を見つめる。五百ミリリットルのペットボトルくらいの太さがありそうだ。その先端は丸みを帯びて無害そうにしているが、天音の隘路を奥へ奥へと進み、最奥を容赦なく攻め立ててくる。
これがいつも自分の中にいるなんて、信じられない。昨晩も……。
「……アマネ、お願いします」
アルテアがいつの間にか天音の方に身体を傾け、耳元で催促するように囁く。熱い息が耳をくすぐり、身体がぴくりと反応してしまう。
「は、……はい」とタオルをそこにあてようとするが、アルテアにタオルは取られてしまう。
「敏感な場所だから、天音のその小さな手で直接洗ってください」
「えっ、え?」
天音は両手をアルテアに取られ、熱い高ぶりを握らされる。アルテアの手が、天音の手をその上から包む。誘導されるように天音は、アルテアのものを上下に擦る。初めて直接触れたアルテアのものは、とても熱く、はち切れそうなほどぱんぱんに勃起していた。
「んっ……はぁ、お上手ですね」
アルテアの気持ちよさそうな声を聞いて、思わず天音はアルテアの顔を見上げる。うっとりとした琥珀色の瞳が、自身を擦る天音を、じっと見つめている。
「アルテア、気持ち……いいのですか?」
「はい、気持ちいいですよ。あなたその神聖な手で触れられていると、何だかいけないことをしているみたいで、背徳感もありますけど」
アルテアが天音の頬に片手を添えて、キスをする。少し開いた天音の口に、舌が捩じ込まれる。歯茎を舐め、舌を絡ませて、余すところなく口内を侵していく。
その間も天音は、アルテアのもう片方の手に導かれるままに屹立を擦らされる。
その擦っているしぐさが、昨日までの二人の様々な交わりを彷彿とさせ、身体が熱くなる。
自分が彼の熱に触れて、彼が時折気持ちよさそうに息を漏らしている。そう考えると嬉しくなると同時に、その気持ちよさが自分にも伝染する気がする。
今だって触られてもいないのに、胸の先がツンと尖り、中が潤ってくるのを感じる。
唇が離れた時、天音はフラフラとアルテアの胸に倒れ、アルテアに抱きついてしまう。
「アマネ、どうしました? のぼせてしまいましたか?」
「何だか身体が熱くて……」
アルテアは天音の背をそっと撫でる。息が、はあはあと荒くなっているのが分かる。天音はアルテアの頬に自分の頬を甘えるように擦り寄せる。
「アマネから寄ってくるなんて。どうしたのでしょうか?」
「分かりません、アルテアにぎゅっとしてもらいたいです……」
「アマネが濡れてしまいますよ?」
「……濡れてもいいです」
アルテアが天音を抱きしめると、「……ふぅん」と天音から悩ましげな息が漏れる。
「ああ……、違いますね。アマネ、もう既に濡れていますね」
アルテアは、天音の背中からゆっくり両手を腰まで滑らせ、尻の方から下着に手を入れる。ゆっくりとショーツを膝まで下ろす。
「シミができていますよ? これはお湯で濡れてしまったのでしょうか? それとも……」
髪と同じ薄い色の下生えを伝うようにゆっくりと滴る蜜をアルテアは指先でねっとりと絡めとる。
「ああ……これは、やはりお湯じゃないですね。アマネの……だね」
そしてその蜜をペロリと舐めると、「甘い」と艶やかに笑う。その笑顔がなぜかとても卑猥に見えて、天音の雌としての本能が疼く。
「……アルテア」
彼を呼ぶ甘えた自分の声が、浴室に響く。今すぐその猛りを自分の中に埋めて、めちゃくちゃにしてほしい。
天音は、初めて自分がアルテアに欲情していることに気が付く。
あんなに辛くて、我慢するだけの行為だったのに。かつて愛していた伊久磨に抱かれた時だって、こんな風に思ったことはなかった。
アルテアが与えてくれる甘美な快楽は、身体だけではなく、心も満たしてくれた。ただの人を区別するだけの記号だった自分の名前が、アルテアに呼ばれるだけで、何かとても特別なものになったように感じる。
例えそれが再び嘘だとしても、すがらずにはいられない、甘い禁断の果実。
「アマネ、着ているやつも濡れてしまいましたね。風邪をひいてしまうから、もうお風呂から出て寝ましょうか?」
意地悪そうに笑いながら、アルテアは言う。
「……い、いやです」
「どうして? もう遅いから寝ましょう」
天音は、おずおずと無言でアルテアの手を取り、自分の胸の上に置く。
いつもならすぐにその大きな手で胸に触れてくれるのに、今日は全くアルテアの手は動いてくれない。天音はもどかしくなる。
「どうしてほしいの? アマネ、口で言ってくれないと分かりませんよ?」
アルテアは分かっているくせに、分からない振りをしている。天音は羞恥に全身が熱くなる。けれど……、か細い声を発する。
「……アルテアのが、……中に欲しいです……」
自分のお願いをする小さな声が、浴室に大きく響く。羞恥さえも自分の欲望を高めるようで、頭の中はアルテアのアレでいっぱいになってしまう。
「よくできました」
アルテアは、よくできた子犬をほめるように、天音の頭を撫でる。そして、天音の両手を浴槽のふちに置かせると、腰を掴み、後ろから一気に貫く。パンという音が浴室内に響き、貫かれた快感で声が上がる。
「あああっ」
天音の中は、ほぐされてもないのに既にぐずぐずで、天音は思ってた通りの快感に、嬌声が止まらない。アルテアは、天音の腰を持ったまま、小刻みに抽挿を始める。
「アマネは、何ていやらしい奥様なんでしょうか。私のを咥えて、吸い付いてきますよ」
しばらく自分の剛直と天音の蜜を絡めるように動かす。天音は、もっと自分の中を擦って欲しいと、自分から腰を動かしてしまう。
その様子を見てアルテアは、焦らすのを止め、腰を乱暴に天音に打ち付ける。
さっきまで自分の手の中にいた狂暴な雄は、今天音の中を暴力的に貪っている。隙間なく広がる彼の熱に自分が溶けて、一体になってしまうような気がする。
天音が逃げないよう腰を掴み、アルテアは夢中で抽挿を繰り返す。
白の肌着は、汗と湯で濡れてぴったりと天音の肌に張り付き、天音の身体の線を淫猥に強調する。両脇のリボンは、ほどけかけており、前身ごろは垂れ下がり、揺れる胸が見え隠れする。
「はぁん、……ああっ、やんっ、」
「アマネ、もっと優しくしてあげたいのに。ごめん、腰が全然止まらない……」
アルテアのあまりの律動の激しさに、天音の細い腕はがくがくと震え、次第に前のめりになっていく。アルテアは、天音を後ろから片手で抱きしめると、もう片方の手で自ら浴槽のふちを掴む。アルテアのプラチナブロンドの濡れた髪が、天音を包むように下に流れる。
いつものように少しずつ言葉を交わして、キスを繰り返すセックスとは違う、本能に駆り立てられるような獣のような交わり。けれど天音の身体と心は、アルテアともっと繋がりたくて、貪欲にアルテアを締め付ける。途中何度も達してしまったが、終わりたくなくて、彼の熱を受け入れるためにとめどなく蜜が溢れる。狂いそうになるほどの執着に自分でも驚く。
浴室に響きわたる嬌声と息遣い、パンパンという腰を打ち付ける音が、更に興奮を促す。
「……アル、テア、大好きです……」
心の声が思わず漏れてしまう。
「アマネっ、私も、……大好きですよ」
耳ざとく聞いていたアルテアはそれに答える。天音の中は、悦びでギュッと締まり痙攣する。ぐんと大きくなったアルテアの屹立は、ひときわ激しく動くと、天音の奥でたっぷりと精を放った。
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でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
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