2 / 4
ウサギだからか?
しおりを挟む
おかしなところだった。
コンクリート打ちっぱなしのだだっ広い建物。窓もない。もっとおかしなことに出口と言えそうなものが何もない。建物の隅に部屋があり、トイレも、ベッドもあったが、その部屋からも外には出られない。
良介がふっと気配を感じて振り返ると、ウサギの覆面にメイド服の不気味な女がいた。
「わあ!」
思わず叫び声を上げる。
「私の名前は『耳沢』です。ANGEL様からあなたの担当を任されました」
キテレツな姿には不似合いな、大人っぽく落ち着いた声だった。
「こ、怖え…」
何もかもがチンプンカンプンだった。
「ヒラタリョウスケさん、あなたはこの世界に取り込まれました。男たちの妄想によって産まれたANGEL様の支配する異世界です」
「異世界?」
「ここではANGEL様に必要とされなくなった存在は、削除されてしまいます。存在し続けたければANGEL様に認められなければなりません」
「さ、削除って…殺されるのか」
「安心してください。痛みも苦しみもなく消去されるだけです。現実世界のあなたも存在しなくなるので、それを殺されるというならば…」
現状を未だに信じられない上に、あまりに理不尽な話に良介は力なく笑う。
「どうすれば良いんだよ」
耳沢がいうには、削除されないためには自らが着エロの出演者になり、ユーザーの需要に応え続けなければならない。
「おいおいおい!じゃあ、ゲイのビデオに出ろっていうのか!」
「いいえ、ご覧ください」
耳沢が手で示す先に鏡、全身の映るサイズのいわゆる姿見がある。
のぞいてみると、驚くほどの美少女がこちらをのぞいている。
「え、誰?」
「リョウスケさん、あなたです」
「俺?」鏡の中では美少女が頬に手を当てて目を丸くしている。
「そして、ここがあなたのためのスタジオ」
建物の中央にビデオカメラが3台、そしてモニターが2台並んでいる。
さらに指を弾くと、コンクリート打ちっぱなしの殺風景だった「スタジオ」からいきなり海岸に出た。いきなり開放的な空間。風さえ吹いている。
良介は思わず歩き出していた。
「どうなってるんだこれ」
足元は砂だ。靴も履いてないので歩きにくい。
さっきまで壁だったところに行ってみて、壁がないのを確認する。
壁はない。だが、変な感じもした。
さっきと同じところを歩いてる。
「同じ空間が繰り返されてる!」
耳沢は良介の言葉には答えず、また指を弾いた。
教室だ。本物の教室ではなく、形だけ取り揃えた感じで、机の中にはなにもなく、生徒がそこで活動している気配はない。
次は、可愛い内装の部屋が現れた。女の子の部屋らしい。
良介は気づいた。これは、自分が見てきたイメージビデオの背景だ。
次々と現れる空間、海岸から始まり、教室、女子部屋、どこかのベランダ、プールサイド、シャワールーム…。
「あなにはここで、モデルとなって着エロビデオに出演してもらいます」
コンクリート打ちっぱなしのだだっ広い建物。窓もない。もっとおかしなことに出口と言えそうなものが何もない。建物の隅に部屋があり、トイレも、ベッドもあったが、その部屋からも外には出られない。
良介がふっと気配を感じて振り返ると、ウサギの覆面にメイド服の不気味な女がいた。
「わあ!」
思わず叫び声を上げる。
「私の名前は『耳沢』です。ANGEL様からあなたの担当を任されました」
キテレツな姿には不似合いな、大人っぽく落ち着いた声だった。
「こ、怖え…」
何もかもがチンプンカンプンだった。
「ヒラタリョウスケさん、あなたはこの世界に取り込まれました。男たちの妄想によって産まれたANGEL様の支配する異世界です」
「異世界?」
「ここではANGEL様に必要とされなくなった存在は、削除されてしまいます。存在し続けたければANGEL様に認められなければなりません」
「さ、削除って…殺されるのか」
「安心してください。痛みも苦しみもなく消去されるだけです。現実世界のあなたも存在しなくなるので、それを殺されるというならば…」
現状を未だに信じられない上に、あまりに理不尽な話に良介は力なく笑う。
「どうすれば良いんだよ」
耳沢がいうには、削除されないためには自らが着エロの出演者になり、ユーザーの需要に応え続けなければならない。
「おいおいおい!じゃあ、ゲイのビデオに出ろっていうのか!」
「いいえ、ご覧ください」
耳沢が手で示す先に鏡、全身の映るサイズのいわゆる姿見がある。
のぞいてみると、驚くほどの美少女がこちらをのぞいている。
「え、誰?」
「リョウスケさん、あなたです」
「俺?」鏡の中では美少女が頬に手を当てて目を丸くしている。
「そして、ここがあなたのためのスタジオ」
建物の中央にビデオカメラが3台、そしてモニターが2台並んでいる。
さらに指を弾くと、コンクリート打ちっぱなしの殺風景だった「スタジオ」からいきなり海岸に出た。いきなり開放的な空間。風さえ吹いている。
良介は思わず歩き出していた。
「どうなってるんだこれ」
足元は砂だ。靴も履いてないので歩きにくい。
さっきまで壁だったところに行ってみて、壁がないのを確認する。
壁はない。だが、変な感じもした。
さっきと同じところを歩いてる。
「同じ空間が繰り返されてる!」
耳沢は良介の言葉には答えず、また指を弾いた。
教室だ。本物の教室ではなく、形だけ取り揃えた感じで、机の中にはなにもなく、生徒がそこで活動している気配はない。
次は、可愛い内装の部屋が現れた。女の子の部屋らしい。
良介は気づいた。これは、自分が見てきたイメージビデオの背景だ。
次々と現れる空間、海岸から始まり、教室、女子部屋、どこかのベランダ、プールサイド、シャワールーム…。
「あなにはここで、モデルとなって着エロビデオに出演してもらいます」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
5分で読めるブラックユーモア
夜寝乃もぬけ
ホラー
ようこそ喫茶『BLACK』へ
当店は苦さ、ユニークさ、後味の悪さを焙煎した
【5分で読めるブラックユーモア】しか置いておりません。
ブラックな世界へとドリップできる極上の一品です。
※シュガー好きな方はお口に合いませんので、どうぞお帰り下さい。
ホラー短編集【キグルミ】
AAKI
ホラー
SSや短編のホラー小説です。
1篇目【ガールフレンド?(仮)】もし貴方に、何者なのかわからないガールフレンドがいたとしたら 2篇目【お前たちは誰だ?】少しずつ身の回りの人たちが記憶にない者たちに置き換わっていく 3篇目【キグルミ】人間に成り代わろうとする山の物の怪 4篇目【蘇生の回廊】6人の大学生が避暑地の別荘で巻き込まれた邪悪な儀式の結末は―― 順次更新予定
銀の少女
栗須帳(くりす・とばり)
ホラー
昭和58年。
藤崎柚希(ふじさき・ゆずき)は、いじめに悩まされる日々の中、高校二年の春に田舎の高校に転校、新生活を始めた。
父の大学時代の親友、小倉の隣の家で一人暮らしを始めた柚希に、娘の早苗(さなえ)は少しずつ惹かれていく。
ある日柚希は、銀髪で色白の美少女、桐島紅音(きりしま・あかね)と出会う。
紅音には左手で触れた物の生命力を吸い取り、右手で触れた物の傷を癒す能力があった。その能力で柚希の傷を治した彼女に、柚希は不思議な魅力を感じていく。
全45話。
ツギハギ・リポート
主道 学
ホラー
拝啓。海道くんへ。そっちは何かとバタバタしているんだろうなあ。だから、たまには田舎で遊ぼうよ。なんて……でも、今年は絶対にきっと、楽しいよ。
死んだはずの中学時代の友達から、急に田舎へ来ないかと手紙が来た。手紙には俺の大学時代に別れた恋人もその村にいると書いてあった……。
ただ、疑問に思うんだ。
あそこは、今じゃ廃村になっているはずだった。
かつて村のあった廃病院は誰のものですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる