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第1章『ベサーイの最後』
第19節『襲撃者』
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この日もラム王は、ファモ族達と一緒に地上で作物の世話をしていた。
あまりに巨大になりすぎたパプリカ(1個で8m)の収穫する時を楽しみに土を足していた時である。
急に辺りが、一瞬暗くなった感じがした。
『何だ?雲の影かな?』
と思い、上を見ると澄んだ空が広がっていた。
何だろう?と思いながら背丈以上に生い茂る畑を出て、恒星の方を見ると何か黒い筋のような物が、うねりながら横切っていた。
あれは一体…。
と見ていると、ファモ族達が
『全員早く地下へ!早く!!』
珍しく叫び、慌てている様子。
ラム王も市民達も何事だろうか?と思いつつ地下へ行くと、ファモ族達は皆慌てている。
地下と地上の出入口の穴が静かに閉まる。
何事なんだろうか?とラム王が見ていると、ソウエが来て緊張した様子で
『ラム王、落ち着いて聞いて下さい。』
どうしたのか?とラム王が聞くと
『今、捕食者が恒星の周囲に来ています!』
『それならば、再び囮(おとり)を使えば大丈夫なのでは?』
とラム王が言うとソウエは
『あれは偽物ではなく本物の塵です!
今はまだ、こちら(星)の存在に気付いていません。
我々の家(太鼓)も外からは見えない様に施し、星の裏側に隠しています。
市民達がパニックを起こすと気付かれますので、普段通りにお願いします。
上手くやり過ごせれば良いのですが…』
それを聞いたラム王は恐怖で戦慄が走った。
それと同時に、この事態を市民達に悟られてはならない。と思い、恐怖と緊張を抑えつつ市民達に対しウゲルカ器官を使い伝える。
『市民の皆さん、今、地上では…恒星の…恒星の光が一時的に強くなるそうです。ですので、少しの間、地上には出られない事をお伝えします』
出来るだけ冷静を保って伝えた。
そのままラム王は宮殿の王室に向かい、銀色のテーブルに触れ外の様子を伺うが、一部分しか見えず全体が把握出来ない。
そこへソウエが来てテーブルに触れた。
すると全体が見れる様になり、ソウエと一緒に外の様子を見ると、塵はうねりながら、恒星の周囲を回り、近づいたり離れたりを繰り返し、何か様子を伺っている感じだ。
『これは何をしているか…』
ソウエに小声で聞くと
『恐らく…恒星が人工的に造られたのか?自然に出来たのか?それを確認しているのだと思います。』
するとそこにサルンが来た。
『恒星の光が強くなる。と言うのは嘘でしょ?あなたの顔を見れば分かる。本当は何があったの?』
とラム王に聞く
一瞬、ごまかそうと思ったラム王だったが、妻には隠せないと判断し、事の真相を伝えると妻は、うろたえた。
『そんな、どうして!』
その場で右往左往するサルンにラム王が
『うろたえるのもわかるが、君は王妃であり母親だ。子供達はもちろん、市民達にも悟られたら終わりだ。』
とやや強い口調で言うと、サルンは落ち着きを取り戻し、子供達の元へと部屋を出ていく。
そして再びテーブルに触れるラム王
先程より塵の数が増え、恒星の周囲に輪を描くように回り、どんどん集まるにつれて黄色やピンク色の閃光を輪の中で放っている。
輪の中から一部の塵が、恒星の表面を触れるような動きを見せた後、一瞬、恒星から大きく離れ、一塊になって渦を巻くような動きをした後に、再び輪の形に戻る。
それを何度か繰り返し後、突如輪のスピードを上げ、塵は一度恒星を離れ、輪の形から槍のような線状の形に変化させ恒星の真ん中を貫いた。
貫いた前方の塵が、Uターンして再び恒星の真ん中を貫き、最後尾と繋がって八の字の形で更生の中を移動している。
あの高温に何故耐えられるのか?とラム王が凝視していると恒星が徐々に小さくなり始めた。
塵が恒星を補食し始めた瞬間だ。
恒星が、みるみる小さくなり、それにつれて輝きも弱くなっていく。
そして恒星が、かなり小さくなった瞬間、小さな爆発をおこし、周辺に僅かなカラフルな雲を撒いて、再び漆黒の宇宙になった。
『なんと恐ろしい光景だ』
ラム王がそう言うと、ソウエは
『あれが本当の捕食者の姿です』と言った。
すると街の方で、市民達のざわめいている声が聞こえた。
『いつまで光が強いの?』
『まだ上でやる事が残ってる!地上に上がりたい!』
『まだ行けないの?』
市民達が騒ぎ始めた。
まずい…このままでは捕食者に見つかる。
しかし真実を告げたら間違いなくパニックが起きて見つかる。
何か良い方法は無いのか?と悩んでいると、サルンが子供達を連れて戻って来た。
『外はどんな様子?』
不安げに聞くサルンに見た事をありのまま伝え、市民達の騒ぎも静めたい事を言うと
サルンは
『このまま何も言わず見つかるより、ありのままを市民達にも伝えるべきです。
恒星が無くなったならば、また造れば良い、作物も、またやり直せば良い。今は星と、市民、そして家族を守るのが優先です。』
ラム王は少し間をおいてから、市民達に向けて伝えてた。
『皆さん、落ち着いて聞いて欲しい事があります。
先程、恒星の光が強くなるので地上に出られない事を伝えました。
本当は違います。
恒星に捕食者が出現し、先ほど捕食者によって恒星は失われました。
皆さんがパニックを起こすと、星の場所が見つかり、捕食者に襲われる事を危惧した私が、咄嗟に言った嘘です。
皆さん本当の事を伝えず申し訳ない。
恒星は失ったけれど、また造れます。
地上の自然も元に戻せます。
しかし今、市民の皆さんがパニックになり、騒ぎを起こすと、この星は襲撃されムカーク族、ファモ族、そして、この星も危機に瀕します。
皆さんお願いです。
どうか落ち着いて冷静な行動をお願いします!』
ラム王は市民達に伝えた。
それを聞いた市民達がざわつき始める。
『もう駄目だ、パニックになる』
そう思ったラム王。
すると市民達のざわつきが急に収まり、ラム王に伝え始めた。
『そうなら、そうと初めに言ってよ』
『静かにしてれば大丈夫なんだよね?』
『せっかく作物育ったのに、でも仕方ない、また、一から作るか』
『みんなの星なんだから今度からは、最初に本当の事を言って下さいね』
市民達の言葉は意外と冷静だった。
この光景にソウエは
『普通ならばパニックなっても、おかしくない状況なのに、市民の皆さんが落ち着いてるのには驚きました。』
とラム王とサルンに言った。
再びラム王とソウエは、外の状況を見る。
未だに塵は、恒星のあった場所で、僅かに残るカラフルな雲に群がっていた。
そして全てを食い尽くした塵は、一塊の集団になり星から遠ざかって行く。
それを見ていたラム王とソウエは、ひと安心して
『このまま、遠ざかってくれれば安心だ』
ラム王が言うと、ソウエも
『そうですね。このまま去ってもらいたいです。』
ラム王は近くに居るサルンに、今の状況を伝えると、サルンも少し安堵した表情になった。
ひと安心したラム王が
『これでまた、地上を一から造り直し…』
と小さく言った時だった。
ソウエが
『まだです、まだ居ます。』
と言い、急いでラム王が外を見ると
一塊になり遠ざかって行く塵の集団から、一部がUターンして来たのだ。
塵はゆっくりと形を変化させ、恒星のあった場所を中心に範囲を広げながら、念入りに何かを探すように移動している。
ソウエが
『多分、人工的な恒星があった以上、その周囲にも惑星があると思い探しているのだと…』
小声でラム王に話す。
徐々に塵がムカーク星の辺りまで近づいて来た。
恐怖と緊張から、時間の流れが遅く感じるラム王は
『落ち着け、捕食者から、こちらの姿(星)は見えないはず、大丈夫、大丈夫だ。』
自分に言い聞かせる。
そして捕食者は、ムカーク星の目の前まで来た。
ラム王は、早く!早く何処かに行ってくれ!頼む!!と心の中で叫んだ。
塵は星の周辺を、ゆっくりと波を打つように、広がったり狭まったりしながら、移動して過ぎ去って行った。
『良かった、良かった。行ってくれた』
と、捕食者が過ぎ去った事に緊張の糸がほぐれ、その場に座り込んだラム王。
その様子を心配そうに見るサルンに、ラム王が笑顔で答えると、それを察したサルンは安堵した。
ラム王が、ゆっくりと立ち上がろうとした時だった。
ソウエが
『何かおかしい…』
それを聞きラム王は外を見る。
一度通り過ぎた捕食者が再び戻って来たのだ。
すると塵は星の周囲で、うねり始め緑色の閃光を放っている。
『大変、仲間を呼んでます!』
とソウエが言うと、緑の光に気付いた塵の集団が集まって来た。
恒星を補食する前の行動と同じように、星の周囲に輪を作り、黄色やピンクの閃光を放ち始めた。
そして、塵の一部が急接近して星の大気に触れた瞬間、外から見えないようにしていた所が剥がれ、星の存在が捕食者に見つかった。
『そんな…見つかってしまった…』
ラム王は恐怖と絶望から、うなだれるようにその場で崩れ落ちた。
その様子にサルンが近寄り
『何があったの!まだ去ってなかったの?』
ラム王に聞くと
『捕食者に見つかった。もう何もかも終わりだ…』
と諦めにも似た悲しい口調で妻に答えた。
それを聞いたサルンも泣き崩れ、その声に子供達も部屋に入って来たが、幼い子供達は、この状況が理解出来ず、部屋の入り口で当惑していた。
王室に悲壮感が漂う中、ソウエが意を決した様に
『まだ終わった訳ではありません!ラム王、我々が捕食者を引き付けている間に、市民達を星から避難するよう伝えて下さい!』
『星から避難と言っても、どうやって…ましてや、この人数を移動させる事など到底…』
とラム王が言うとソウエは
『市民全員を一緒に避難させるのは危険です!それぞれ別々の場所に避難させるのです。』
と言うと銀色のテーブルに触れ、ファモ族が宇宙や他の星を市民達に教えた際、使用した球体(星の位置を示す球)を街のあちこちに飛ばした。
街全体に、ばら蒔かられた球体は、その場で大きくなった。
しかし大きさがバラバラで大きな物でも100人程度、小さな物だと2人程度しか入れる空間しか無かった。
球体の数が足りず、全員は乗れない。
ならば若い者だけでも避難させよう。と思い市民達に伝えようとすると、ソウエが
『大丈夫ですよ、全員乗れます。』
と言い、都市に浮いていたファモ族のそれぞれのスペース(お煎餅)が、幾つにも分裂して街に飛んで行く。
飛んで行った先でお煎餅は急速に広がり、1つで、ゆうに300人は乗れる程の大きさになった。
市民達は急に飛んで来た物体に、戸惑っていた。
『さあ早く!市民達に、それに乗り避難するように伝えて下さい!』
とソウエが言う。
ラム王は市民達に
『皆さん!星の存在が捕食者に見つかりました…それぞれ近くにある物に乗って避難…避難して下さい!星…この星はもう危険です…』
とラム王は緊張と不安から、上手く説明出来ずに言うと市民達から
『静かにしていのに見つかったの?』
『何故見つかったの?』
『襲撃されるのか!!』
『避難と言っても何処へ行くの!』
『星を捨てろという事なのか!!』
市民達は疑念と当惑から動かない。
それを見たソウエが市民達に向け
『皆さん、今は一大事です。
このまま何もせずにいると、間違いなく、この地下にも捕食者は侵入して、都市は勿論、星自体も消えます。
星を捨てたくない気持ちは、よくわかります。
しかし、生き残らなければ意味がありません!
我々が捕食者を引き付けている間に、皆さんは、この星から脱出して下さい!
ムカーク族の皆さんが生き残るには、これしかありません!!』
と強い口調で言うと市民達も、ようやく事の重大さを理解し、慌てて動き始めた。
その頃地上では、
塵が剥がれた所から侵入し、カーテンで地面を擦るように大地を進む。
塵が過ぎ去った後の大地は大きく削り取られ、巨大な溝が出来て、そこへ大量の水が押し寄せるが、水が流れ込む前に、別の塵の集団が大地と水を一編に食い尽くしていく。
塵は様々な形に変化させながら、ラム王達が造った山脈の中腹を、うねるように貫通すると、山には巨大な穴が空き、更に上から塵の大群が、山脈にカーテンを掛けるように覆い、食い尽くして、高く大きな山脈は跡形もなく姿を消した。
畑も一瞬で消え去り、市民達がファモ族に送った宮殿は、僅かな数の塵が地面と建物の境目を細い槍の様な形で通り過ぎると、その速さから宮殿はバラバラになって飛散し、それが地面に落ちる前に大群が食い尽くした。
星の周囲には、おびただしい数の捕食者達が集まって、あらゆる場所を剥がして行き、星全体が露出していく。
ソウエと地下に居た他のファモ族達は、限定地の空間閉鎖と、市民達を避難させる時間稼ぎの為に、行動を始めた。
ファモ族達が銀色のテーブルを囲むように触れる。
テーブルの表面に波紋模様が浮き出て模様は、オレンジ色に強く発光し、触れているファモ族達は青く発光した。
波紋の形が一瞬、大きく変わり赤く発光すると、限定地と交換している空間は閉じられた。
そして、星の裏側に隠していたファモ族の家が姿を現す。
姿を現すと同時に襲い掛かってくる塵に対し、5個の太鼓の内、研究保管用の2個の太鼓が連結から外れて、宇宙空間を凄い速さで別々の方向に飛んで行く。
それを追うように、星の周囲にいた一部の捕食者が星から離れた。
その隙に残りの太鼓を地表に着陸させようも、星の周囲に残っていた捕食者によって、連結部分は破壊されて、太鼓を囲むトライアングルはバラバラになり、高速度で太鼓は地面に着陸した。
(殆ど墜落に近い)
そして緊急用の太鼓から、オレンジ色の光を放つ大量の塵が放出された。
あまりに巨大になりすぎたパプリカ(1個で8m)の収穫する時を楽しみに土を足していた時である。
急に辺りが、一瞬暗くなった感じがした。
『何だ?雲の影かな?』
と思い、上を見ると澄んだ空が広がっていた。
何だろう?と思いながら背丈以上に生い茂る畑を出て、恒星の方を見ると何か黒い筋のような物が、うねりながら横切っていた。
あれは一体…。
と見ていると、ファモ族達が
『全員早く地下へ!早く!!』
珍しく叫び、慌てている様子。
ラム王も市民達も何事だろうか?と思いつつ地下へ行くと、ファモ族達は皆慌てている。
地下と地上の出入口の穴が静かに閉まる。
何事なんだろうか?とラム王が見ていると、ソウエが来て緊張した様子で
『ラム王、落ち着いて聞いて下さい。』
どうしたのか?とラム王が聞くと
『今、捕食者が恒星の周囲に来ています!』
『それならば、再び囮(おとり)を使えば大丈夫なのでは?』
とラム王が言うとソウエは
『あれは偽物ではなく本物の塵です!
今はまだ、こちら(星)の存在に気付いていません。
我々の家(太鼓)も外からは見えない様に施し、星の裏側に隠しています。
市民達がパニックを起こすと気付かれますので、普段通りにお願いします。
上手くやり過ごせれば良いのですが…』
それを聞いたラム王は恐怖で戦慄が走った。
それと同時に、この事態を市民達に悟られてはならない。と思い、恐怖と緊張を抑えつつ市民達に対しウゲルカ器官を使い伝える。
『市民の皆さん、今、地上では…恒星の…恒星の光が一時的に強くなるそうです。ですので、少しの間、地上には出られない事をお伝えします』
出来るだけ冷静を保って伝えた。
そのままラム王は宮殿の王室に向かい、銀色のテーブルに触れ外の様子を伺うが、一部分しか見えず全体が把握出来ない。
そこへソウエが来てテーブルに触れた。
すると全体が見れる様になり、ソウエと一緒に外の様子を見ると、塵はうねりながら、恒星の周囲を回り、近づいたり離れたりを繰り返し、何か様子を伺っている感じだ。
『これは何をしているか…』
ソウエに小声で聞くと
『恐らく…恒星が人工的に造られたのか?自然に出来たのか?それを確認しているのだと思います。』
するとそこにサルンが来た。
『恒星の光が強くなる。と言うのは嘘でしょ?あなたの顔を見れば分かる。本当は何があったの?』
とラム王に聞く
一瞬、ごまかそうと思ったラム王だったが、妻には隠せないと判断し、事の真相を伝えると妻は、うろたえた。
『そんな、どうして!』
その場で右往左往するサルンにラム王が
『うろたえるのもわかるが、君は王妃であり母親だ。子供達はもちろん、市民達にも悟られたら終わりだ。』
とやや強い口調で言うと、サルンは落ち着きを取り戻し、子供達の元へと部屋を出ていく。
そして再びテーブルに触れるラム王
先程より塵の数が増え、恒星の周囲に輪を描くように回り、どんどん集まるにつれて黄色やピンク色の閃光を輪の中で放っている。
輪の中から一部の塵が、恒星の表面を触れるような動きを見せた後、一瞬、恒星から大きく離れ、一塊になって渦を巻くような動きをした後に、再び輪の形に戻る。
それを何度か繰り返し後、突如輪のスピードを上げ、塵は一度恒星を離れ、輪の形から槍のような線状の形に変化させ恒星の真ん中を貫いた。
貫いた前方の塵が、Uターンして再び恒星の真ん中を貫き、最後尾と繋がって八の字の形で更生の中を移動している。
あの高温に何故耐えられるのか?とラム王が凝視していると恒星が徐々に小さくなり始めた。
塵が恒星を補食し始めた瞬間だ。
恒星が、みるみる小さくなり、それにつれて輝きも弱くなっていく。
そして恒星が、かなり小さくなった瞬間、小さな爆発をおこし、周辺に僅かなカラフルな雲を撒いて、再び漆黒の宇宙になった。
『なんと恐ろしい光景だ』
ラム王がそう言うと、ソウエは
『あれが本当の捕食者の姿です』と言った。
すると街の方で、市民達のざわめいている声が聞こえた。
『いつまで光が強いの?』
『まだ上でやる事が残ってる!地上に上がりたい!』
『まだ行けないの?』
市民達が騒ぎ始めた。
まずい…このままでは捕食者に見つかる。
しかし真実を告げたら間違いなくパニックが起きて見つかる。
何か良い方法は無いのか?と悩んでいると、サルンが子供達を連れて戻って来た。
『外はどんな様子?』
不安げに聞くサルンに見た事をありのまま伝え、市民達の騒ぎも静めたい事を言うと
サルンは
『このまま何も言わず見つかるより、ありのままを市民達にも伝えるべきです。
恒星が無くなったならば、また造れば良い、作物も、またやり直せば良い。今は星と、市民、そして家族を守るのが優先です。』
ラム王は少し間をおいてから、市民達に向けて伝えてた。
『皆さん、落ち着いて聞いて欲しい事があります。
先程、恒星の光が強くなるので地上に出られない事を伝えました。
本当は違います。
恒星に捕食者が出現し、先ほど捕食者によって恒星は失われました。
皆さんがパニックを起こすと、星の場所が見つかり、捕食者に襲われる事を危惧した私が、咄嗟に言った嘘です。
皆さん本当の事を伝えず申し訳ない。
恒星は失ったけれど、また造れます。
地上の自然も元に戻せます。
しかし今、市民の皆さんがパニックになり、騒ぎを起こすと、この星は襲撃されムカーク族、ファモ族、そして、この星も危機に瀕します。
皆さんお願いです。
どうか落ち着いて冷静な行動をお願いします!』
ラム王は市民達に伝えた。
それを聞いた市民達がざわつき始める。
『もう駄目だ、パニックになる』
そう思ったラム王。
すると市民達のざわつきが急に収まり、ラム王に伝え始めた。
『そうなら、そうと初めに言ってよ』
『静かにしてれば大丈夫なんだよね?』
『せっかく作物育ったのに、でも仕方ない、また、一から作るか』
『みんなの星なんだから今度からは、最初に本当の事を言って下さいね』
市民達の言葉は意外と冷静だった。
この光景にソウエは
『普通ならばパニックなっても、おかしくない状況なのに、市民の皆さんが落ち着いてるのには驚きました。』
とラム王とサルンに言った。
再びラム王とソウエは、外の状況を見る。
未だに塵は、恒星のあった場所で、僅かに残るカラフルな雲に群がっていた。
そして全てを食い尽くした塵は、一塊の集団になり星から遠ざかって行く。
それを見ていたラム王とソウエは、ひと安心して
『このまま、遠ざかってくれれば安心だ』
ラム王が言うと、ソウエも
『そうですね。このまま去ってもらいたいです。』
ラム王は近くに居るサルンに、今の状況を伝えると、サルンも少し安堵した表情になった。
ひと安心したラム王が
『これでまた、地上を一から造り直し…』
と小さく言った時だった。
ソウエが
『まだです、まだ居ます。』
と言い、急いでラム王が外を見ると
一塊になり遠ざかって行く塵の集団から、一部がUターンして来たのだ。
塵はゆっくりと形を変化させ、恒星のあった場所を中心に範囲を広げながら、念入りに何かを探すように移動している。
ソウエが
『多分、人工的な恒星があった以上、その周囲にも惑星があると思い探しているのだと…』
小声でラム王に話す。
徐々に塵がムカーク星の辺りまで近づいて来た。
恐怖と緊張から、時間の流れが遅く感じるラム王は
『落ち着け、捕食者から、こちらの姿(星)は見えないはず、大丈夫、大丈夫だ。』
自分に言い聞かせる。
そして捕食者は、ムカーク星の目の前まで来た。
ラム王は、早く!早く何処かに行ってくれ!頼む!!と心の中で叫んだ。
塵は星の周辺を、ゆっくりと波を打つように、広がったり狭まったりしながら、移動して過ぎ去って行った。
『良かった、良かった。行ってくれた』
と、捕食者が過ぎ去った事に緊張の糸がほぐれ、その場に座り込んだラム王。
その様子を心配そうに見るサルンに、ラム王が笑顔で答えると、それを察したサルンは安堵した。
ラム王が、ゆっくりと立ち上がろうとした時だった。
ソウエが
『何かおかしい…』
それを聞きラム王は外を見る。
一度通り過ぎた捕食者が再び戻って来たのだ。
すると塵は星の周囲で、うねり始め緑色の閃光を放っている。
『大変、仲間を呼んでます!』
とソウエが言うと、緑の光に気付いた塵の集団が集まって来た。
恒星を補食する前の行動と同じように、星の周囲に輪を作り、黄色やピンクの閃光を放ち始めた。
そして、塵の一部が急接近して星の大気に触れた瞬間、外から見えないようにしていた所が剥がれ、星の存在が捕食者に見つかった。
『そんな…見つかってしまった…』
ラム王は恐怖と絶望から、うなだれるようにその場で崩れ落ちた。
その様子にサルンが近寄り
『何があったの!まだ去ってなかったの?』
ラム王に聞くと
『捕食者に見つかった。もう何もかも終わりだ…』
と諦めにも似た悲しい口調で妻に答えた。
それを聞いたサルンも泣き崩れ、その声に子供達も部屋に入って来たが、幼い子供達は、この状況が理解出来ず、部屋の入り口で当惑していた。
王室に悲壮感が漂う中、ソウエが意を決した様に
『まだ終わった訳ではありません!ラム王、我々が捕食者を引き付けている間に、市民達を星から避難するよう伝えて下さい!』
『星から避難と言っても、どうやって…ましてや、この人数を移動させる事など到底…』
とラム王が言うとソウエは
『市民全員を一緒に避難させるのは危険です!それぞれ別々の場所に避難させるのです。』
と言うと銀色のテーブルに触れ、ファモ族が宇宙や他の星を市民達に教えた際、使用した球体(星の位置を示す球)を街のあちこちに飛ばした。
街全体に、ばら蒔かられた球体は、その場で大きくなった。
しかし大きさがバラバラで大きな物でも100人程度、小さな物だと2人程度しか入れる空間しか無かった。
球体の数が足りず、全員は乗れない。
ならば若い者だけでも避難させよう。と思い市民達に伝えようとすると、ソウエが
『大丈夫ですよ、全員乗れます。』
と言い、都市に浮いていたファモ族のそれぞれのスペース(お煎餅)が、幾つにも分裂して街に飛んで行く。
飛んで行った先でお煎餅は急速に広がり、1つで、ゆうに300人は乗れる程の大きさになった。
市民達は急に飛んで来た物体に、戸惑っていた。
『さあ早く!市民達に、それに乗り避難するように伝えて下さい!』
とソウエが言う。
ラム王は市民達に
『皆さん!星の存在が捕食者に見つかりました…それぞれ近くにある物に乗って避難…避難して下さい!星…この星はもう危険です…』
とラム王は緊張と不安から、上手く説明出来ずに言うと市民達から
『静かにしていのに見つかったの?』
『何故見つかったの?』
『襲撃されるのか!!』
『避難と言っても何処へ行くの!』
『星を捨てろという事なのか!!』
市民達は疑念と当惑から動かない。
それを見たソウエが市民達に向け
『皆さん、今は一大事です。
このまま何もせずにいると、間違いなく、この地下にも捕食者は侵入して、都市は勿論、星自体も消えます。
星を捨てたくない気持ちは、よくわかります。
しかし、生き残らなければ意味がありません!
我々が捕食者を引き付けている間に、皆さんは、この星から脱出して下さい!
ムカーク族の皆さんが生き残るには、これしかありません!!』
と強い口調で言うと市民達も、ようやく事の重大さを理解し、慌てて動き始めた。
その頃地上では、
塵が剥がれた所から侵入し、カーテンで地面を擦るように大地を進む。
塵が過ぎ去った後の大地は大きく削り取られ、巨大な溝が出来て、そこへ大量の水が押し寄せるが、水が流れ込む前に、別の塵の集団が大地と水を一編に食い尽くしていく。
塵は様々な形に変化させながら、ラム王達が造った山脈の中腹を、うねるように貫通すると、山には巨大な穴が空き、更に上から塵の大群が、山脈にカーテンを掛けるように覆い、食い尽くして、高く大きな山脈は跡形もなく姿を消した。
畑も一瞬で消え去り、市民達がファモ族に送った宮殿は、僅かな数の塵が地面と建物の境目を細い槍の様な形で通り過ぎると、その速さから宮殿はバラバラになって飛散し、それが地面に落ちる前に大群が食い尽くした。
星の周囲には、おびただしい数の捕食者達が集まって、あらゆる場所を剥がして行き、星全体が露出していく。
ソウエと地下に居た他のファモ族達は、限定地の空間閉鎖と、市民達を避難させる時間稼ぎの為に、行動を始めた。
ファモ族達が銀色のテーブルを囲むように触れる。
テーブルの表面に波紋模様が浮き出て模様は、オレンジ色に強く発光し、触れているファモ族達は青く発光した。
波紋の形が一瞬、大きく変わり赤く発光すると、限定地と交換している空間は閉じられた。
そして、星の裏側に隠していたファモ族の家が姿を現す。
姿を現すと同時に襲い掛かってくる塵に対し、5個の太鼓の内、研究保管用の2個の太鼓が連結から外れて、宇宙空間を凄い速さで別々の方向に飛んで行く。
それを追うように、星の周囲にいた一部の捕食者が星から離れた。
その隙に残りの太鼓を地表に着陸させようも、星の周囲に残っていた捕食者によって、連結部分は破壊されて、太鼓を囲むトライアングルはバラバラになり、高速度で太鼓は地面に着陸した。
(殆ど墜落に近い)
そして緊急用の太鼓から、オレンジ色の光を放つ大量の塵が放出された。
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