惑星保護区

ラムダムランプ

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第1章『ベサーイの最後』

第10節『エムルマの光』

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 タルカはモセルに驚くなよ。と言われ、何の事なのか分からなかった。

モセルの合図と共に、バルターモの所を隠すようにあった囲いが外れた。
すると、其所にはバルターモの形をした大きな建造物があった。

驚くタルカと両親。
タルカが嬉しくて喜ぶと、それを見ていたモセルと市民達も喜ぶ。

モセル

『タルカを喜ばしたくて、皆で内緒していたんだ』

中を見てくれ。とモセルに言われ、建物の入り口を入ると、その中心ベサーイがいた。

上を見上げると、まだ造っている最中。

タルカがモセルに聞く

『ここは、何の建物?』

『ここか?ここは、タルカの家になるんだ』

これにはタルカと両親が、二度驚いた。

『タルカは皆を救った。その感謝の気持ちを形にしよう、と市民達みんなで決めたんだ』

とモセルが言い、タルカは嬉しくて大喜びをした。

まだ完成していなかったが、外観だけは出来たので、見せたかったとの事。

そして後日、星と都市の名前を募集した結果、新たな星の名はムカーク。そして都市の名はベサーイに決定した。

タルカは、ムカーク族を救ったという大きな功績を市民達から称えられ【王】という称号を授けられた。

(王と言っても、人類のような政治や権力等は一切無く、星の守護者としての意味で、今まで通り市民)

その後、タルカはワワと同じ天体の観測担当となり、毎日を忙しくしていた。

モセルも街の発展に忙しく過ごす日々を送り、コーカクは新たな物質発見と技術開発で市民達の暮らしを支える毎日。

コルルも地形調査の担当として、球体の内側、外側(外はタルカ頼み)で忙しい日々を送った。

タルカは、同じ天体観測担当で知り合ったマルルと結婚。

二人は大きなバルターモの形をした家で暮らし子供にも恵まれ幸せな日々を送った。

後に、この出来事をコルルが伝記としてタルカに渡し、子から子へと受け継いでいった。

その伝記のタイトルが【エムルマの光】
エムルマとは、ムカーク語でオレンジ色を表す言葉である。

そしてタルカの時代から、何万年も時が経った後のムカーク族のラム王に話に戻る。

 ◇◆◇◆◇◆◇


 ラム王は、オレンジ色の皮膚になった娘のマーヤを見て伝記を思い出し、マーヤが守護者だと悟った。

しかし、守護者とはいえ、まだ生まれたばかりだ。

ラム王は、王妃サルンに

『マーヤは守護者だ』

原因は、外(地上)で起きてる事に寄るものだと推測した。

そしてサルンに地上で起きている事を伝えた。
ラム王が、銀色の発光するテーブルに触れて見えたのは塵(捕食者)だった。

王とは言え、タルカに比べ見える範囲は更に狭まり、ほんの僅かな一部分しか見えない。
それでも塵が見えた。

塵は球のように一塊になり、地上の氷を削り球体の外側で蛇のように這い、何かを探している様だった。それが振動の原因だった。

話を聞いたサルンは恐怖に慄く。
ラム王は、まず市民達を守る為に、頑丈な物質で出来ている施設に直ぐに向かうよう伝えた。

賑わっていた街の市民達は何事か?

と思う者もいたが、一部の市民達は僅かな違和感を感じていたので、それを周囲に伝え速やかに施設に向かう。

ラム王はサルンと双子のマーヤとオーロを連れて王室に向かう。
ラム王は思っていた。

あの頑丈な施設に市民達を避難させた所で、塵には無意味だ。

僅かな時間稼ぎにしかならない。
それにマーヤは生まれたばかりだ。
一体どうすれば…もしかしたらベサーイが復活しているかもしれない!

と思い、王室にサルンと双子を入れ、急いで宮殿の中心にいるベサーイの元へ向かった。
たどり着いて見たのは、いつも通りの小さなままのベサーイ。

王は必死に助けを求めるが返答は無い。
ラム王はベサーイを諦め王室に戻る。

振動が徐々に酷くなり、塵が外を這う不気味な音が、球体の中にまで響く。

ラム王は、サルンと双子の前を通り過ぎ、王室の窓から街を様子を見る。

まだ施設に入れていない大半の市民達が、不気味な音にパニックになり街は大混乱の状態。

そして、ゆっくり部屋を見ると、妻のサルンが恐怖に怯えなからも必死に双子を守っていた。

ラム王は、ゆっくりと玉座の縁を握りしめ

『私は王として、星とムカーク族そして家族を守れなかった。』

諦めと嘆きが混じるような口調で呟いた。
そして双子を守る妻のサルンの所に静かに向かう。
妻と双子の側に項垂れるように座り

『なぜ双子誕生の今日なんだろうな。』

諦めからくる笑顔で妻サルンに言う。
更に振動と不気味な音が強くなった。
すると突然、ピタリと音と振動が止んだ。

外から中に捕食者が侵入した。
そう思ったラム王は、いよいよ来たか。と覚悟を決めた。

都市を不気味な静けさだけが漂い、時間の流れが長く感じる。
どのくらい時間が経ったのだろうか?
都市も静かなままだ。

ラム王は、ゆっくりと立ち上がり、そっと窓から街の様子を見た。

すると市民達も、急な静けさに上を見上げたままで様子を見ている感じ。

捕食者が、まだ中には入って来ては無さそうだ。
もしかして去ったのか?と思い、ラム王は銀色のテーブルに触れた。

僅かに見えてる部分からは塵の姿が見えない。
やはり去ったのだろうか?

そう思った瞬間、地上の上(宇宙)を青白い光を放ちながら、奇妙な物体(ハンガーを幾つも重ねた円形の形)が通過していく。

塵が、その物体に引き寄せられるように星から離れていく。

奇妙な物体は突如、四方八方に別れ凄い速度で飛んで行くと、それを追いかけるように塵も、あらゆる方向に飛んで行った。

今のは一体何だったのか。とラム王が見ていると突然、ログカーロ(地上)から都市の空間に続く穴が開いた。 

上に穴が空いた事に言い知れぬ恐怖が都市を覆っていた。   

ラム王はログカーロに続く穴が開いた事に、一体、星の周囲で何が起こっているのか理解出来ずにいた。

すると開いた穴から、初めて見る得体の知れない、白く輝く流線形の物体(砂時計のような形)が次々と都市に降りて来る。

その光景を見た市民達は大パニックで、街は再び大混乱になった。

何なんだあれは!塵ではない別の捕食者なのか?どうして入って来れた!と、ラム王も窓を離れサルン達の側に行く。

その物体は無音で都市の上を飛び、中心にある宮殿の周りを取り囲むように着地した。
その内の1つが、ゆっくりと飛び、王室の窓に近付く。

ラム王は慌てて窓を閉め離れるが、閉めた窓が勝手に開き、其所へスルリと物体が王室に入る。

得体の知れない物体にラム王とサルン達は恐怖心で動けずにいた。

物体は、その場から動かず何か低いノイズの様な音を出していた。
少し時間を空けて別の高い音を出す。

不快な音に思わず顔を背けるラム王達。
すると音を出すのを止め、白く輝く表面にカラフルな色の線を走らせ始めた。

ラム王達は、それを見ていると、今度は様々な見た事も無い文字や絵を表面に映し、それを物体表面から空間に押し出し、部屋の宙に浮いている。

浮いている文字や絵が左右反転したり、波打つ様に形が次々と変化していく。

もしかしたら、我々とコミュニケーションを図ろうとしているのか?
そう思ったラム王は勇気を出して言った。

『あなた方は何者なんだ。我々ムカーク族は争い事を望まない。直ぐに星から出ていってくれ!』

と強い口調で言った。

物体は少し間を置いてから、ムカークが全く知らない言語の音を出している。
ラム王は

『そちらの言語はわからない。私はムカークのラム王だ。今すぐに私達の都市ベサーイから出ていっ…』

ベサーイと言った瞬間、物体は表面にバルターモの絵を映し出した。

ラム王は、なぜバルターモを知っている?と意表を突かれた表情になる。

すると物体は静かに、ゆっくりと形を変え始め、ムカーク達と同じ外見になった。
その姿に驚くラム王達。

そして、ゆっくりと歩きラム王達に近付く。
ラム王は家族を守ろうと、物体の前に立ち塞がる。

するとラム王のウゲルカ器官を通し、ベサーイと言った。
何故ウゲルカ器官を使えるのか?不思議に思うラム王。
物体は王の後ろにいるマーヤを指す。

まさか…彼ら(先住民)なのか?と思い、ラム王の後ろで子供達を庇う様に、必死で守るサルンに

『彼らなのかも知れない。』

ラム王は驚いた様子で伝えた。

サルンは、それを聞いても半信半疑で子供達を守ろうと庇っている。
そこへ静かに近づく物体。

怯えるサルンにラム王は

『大丈夫だ、サルン。彼らなんだよ、捕食者なら、我々は、とっくに襲われている』

物体は、ゆっくりと手を出しマーヤに触れようとする。
サルンはマーヤを触らせまいとするが、ラム王が何度もサルンに大丈夫だ。と言った。

物体の手がマーヤに触れると、物体の手に吸い取られるように、マーヤのオレンジ色だった皮膚の色が元に戻っていった。

この光景に驚くサルン。
そしてラム王の手にも触れる。
物体の手は少し暖かかった。

ラム王に触れた直後、突如ムカーク語を話し始めた。

『私達はランキバーサを造り出したファモ族です。』
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