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第二幕 第一章
118 婚約ですか……
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その日、カルサート伯爵家では日が昇る前から、使用人達が慌ただしく屋敷内を駆け回っていた。
「ベイス様! 庭も整いました」
「間に合いましたか。では、テーブルの設置を急いでください」
「はい!」
前日までグズグスとした天気で、今日も雨は止まない様子だった。だが、この日は晴れているべきだと、今日の主役の内の一人が呟いていた。
それを聞いて、ベイスは『あ、明日晴れだ』と直感し、会場を庭まで広げる手筈を整えていたのだ。
その直感通り、昨晩夜半から途切れることがないように見えた雲は忽然と上空から消えた。
「はあ……これもあの方のお力なのでしょうか……」
間違いなく今日はどこまでも青い澄み切った空が見えるだろう。そう確信しながら、薄く陽の光が広がり出した空を見上げた。
「神さえも敬意を示した御方……ですか。レフィアのアレは、やはり冗談でも誇張でもなかったのですね……」
よもや、この世で再び会えるとは思わなかった死んだと思っていた最愛の人。
レフィアがこの家の主人であるカルフ・カルサートと共に聖王国からやって来たのは半年前。
何度夢だと思い、頭を壁に打ち付けたか知れない。ほんの少し遅れて帰ってきた孫娘は、笑いながら傷を癒してくれた。手を煩わせたことに謝罪しながらも、やはり夢ではとまた頭をかち割る。間違いなく錯乱していた。
「お嬢様が居なければ、今頃ここには立っていませんでしたね……」
きっと、最愛の人の前で死んでいただろう。神聖魔術とは恐ろしくも素晴らしい魔術だった。
「はあ……婚約ですか……本当に、今日が迎えられて良かった……」
しみじみと呟いてしまうのは仕方がない。
一年半ほど前。
カルサート家の正統な血を引く令嬢が、すれ違いと誤解から、家を出て行ってしまうということがあった。
彼女はカトラ・カルサートの名を捨て、以前から活動していたカーラという名で冒険者として生きるつもりだったらしい。
実際、ただの夢想ではなく、実力の伴ったもので、最年少最強のAランクだった。
最強と呼ばれるのは、既に実力や実績からSランク認定を受けていたためだ。ただし、正式にライセンスとして発行、認可されるには、登録地の国王に謁見しなくてはならない。
しかし、女性である場合。その国の王子や有力貴族との婚姻が絡んでくる。それを蹴れば、実質国外追放。これを避けるためには、先に婚約者を立てるか結婚していなくてはならなかった。
父親であるカルフ・カルサート伯爵との和解もあり、五日に一度くらいのペースで伯爵家に戻ってくるようになったカトラは今日、正式に婚約を発表する。
「そろそろレフィアがお嬢様を呼びに行く頃ですね」
パーティは昼からとはいえ、女性の用意というのは時間がかかる。今頃、部屋に来たレフィアにカトラはため息を吐いて叱られている頃だろう。
「ふふふ。レフィアには、後で紅茶を淹れましょうか」
なんとかカトラのやる気を引き出さなければ、カトラ命である未来の旦那様が『じゃあ、やめようか』と言いかねないのだ。
困ったものだと笑いながら、会場を見回っていると、淡く光る縄が、壁に飾るタペストリーを引き揚げていた。
「ナワさん。そちらは……グラジオスの紋章でしょうか? ターザ様のですか?」
婚約する二人の家の紋章を正面に並べるのが婚約披露の時の慣しだ。だが、今回はどうなるか分からなかった。
ターザはあくまでも生家は関係なく、Sランク冒険者として婚約発表をするつもりだったのだ。
《-王家の者が来られるならばと-》
《-牽制のためです-》
カトラの相棒であるナワちゃんは、意思を持つ縄だ。カトラが作り出したもので、最初こそ驚いたが、今やこの屋敷で恐れたり、知らぬ者は居なかった。
器用に作り出す文字で、意志の疎通も可能となれば、怖がる必要はない。何より、分身したり、戦闘したりと万能だった。
「なるほど……グラジオス王家のものを出されるとは……よろしかったのでしょうか」
これに答えたのは、会場に入ってきたターザ本人だった。
「俺も、この半年遊んでた訳じゃないからね。きっちり許可を取ってきたよ。カトラが心配するからね」
ずっと冒険者カーラと、カトラのことを呼んでいたターザも、婚約が決まってからカトラと改めていた。
どのみち、Sランクとなった冒険者は、名を偽ることが許されなくなる。
Sランク冒険者を目指す理由の一つが、名を偽らなくてはならなくなったことを公に示して、正統性を主張することができるというものだ。
過去には、貴族家から不当に追放された子息や、借金によって売られた奴隷、冤罪をかけられた元騎士などがいたそうだ。
彼らはSランク冒険者となることで、名誉を取り戻していた。これだけは、承認する国王も手を出すことはできないものだった。
よって、冒険者カーラ改め『Sランク冒険者カトラ』となることは、最早決まっているのだ。
「っ、ターザ様……ですが、王にと未だ望まれているとお聞きしましたが」
「うん。まあ、そこは上手くやるよ。いくつか手札も持ってるしね」
「……なるほど……」
抜かりはない。カトラを溺愛してやまないターザにとって、邪魔となるならば生家の王家を滅ぼすことも辞さない。
前世から引きずるカトラへの想いは、重く、深く、強かった。
「そういえば、ケイトやフェジ達の姿が見えないけど」
カトラが救った奴隷達や、聖王国の元影達。彼らにとって、今日は主人の晴れ舞台。遊んでいるとは思えない。
「ああ。ケイト達女性陣でしたら『パーティには新鮮な肉を!』と出かけて行きました。フェジ達は、外の掃除と最終確認だそうです」
半年前。聖王国からこちらへ帰ってくる折、隣国でケイト達のように不当に売られた奴隷の女性達を中心にカトラは引き取ってきた。
大半はケイト達と同じ孤児院に居た者たちで、ここ半年、冒険者となった彼らは、聖王国の方へ修行に行かせたりと強化した結果、最強のメイド部隊と執事部隊が出来上がった。
特にメイド部隊は好戦的な者が多く、普段はメイドとして完璧だが、こういう時には暴走して飛び出していくのだ。
「そう。あいつらになら、まあ任せてもいいかな」
Sランク冒険者のターザさえ認めているのだ。この辺りに敵うものなどいない。
「それじゃあ、俺もそろそろ用意しないとね」
「はい。こちらはお任せください」
「うん。よろしく」
去って行くその背中には、確かな喜びがあった。いつもよりも笑みも深かったのだ。今日という日を最も楽しみにしているのは彼かもしれない。
「ようやくですからね」
《-浮かれていらっしゃいます-》
「……レフィアにあまり気合いを入れないようにと言っておくべきでしたね」
《-何事もないことを願います-》
「そうですね……」
神さえ跪かせる彼が暴走しないようにと願ったところで、神にはどうすることもできないだろうと、ベイスとナワちゃんは諦めた。
ここ最近、一気に大人びて美しくなったカトラの美貌に我を忘れる貴族が居ない事を祈るばかりだ。
************
読んでくださりありがとうございます◎
隔週を目指しますが、予定が不確かです。
更新を気長にお待ち下さい。
「ベイス様! 庭も整いました」
「間に合いましたか。では、テーブルの設置を急いでください」
「はい!」
前日までグズグスとした天気で、今日も雨は止まない様子だった。だが、この日は晴れているべきだと、今日の主役の内の一人が呟いていた。
それを聞いて、ベイスは『あ、明日晴れだ』と直感し、会場を庭まで広げる手筈を整えていたのだ。
その直感通り、昨晩夜半から途切れることがないように見えた雲は忽然と上空から消えた。
「はあ……これもあの方のお力なのでしょうか……」
間違いなく今日はどこまでも青い澄み切った空が見えるだろう。そう確信しながら、薄く陽の光が広がり出した空を見上げた。
「神さえも敬意を示した御方……ですか。レフィアのアレは、やはり冗談でも誇張でもなかったのですね……」
よもや、この世で再び会えるとは思わなかった死んだと思っていた最愛の人。
レフィアがこの家の主人であるカルフ・カルサートと共に聖王国からやって来たのは半年前。
何度夢だと思い、頭を壁に打ち付けたか知れない。ほんの少し遅れて帰ってきた孫娘は、笑いながら傷を癒してくれた。手を煩わせたことに謝罪しながらも、やはり夢ではとまた頭をかち割る。間違いなく錯乱していた。
「お嬢様が居なければ、今頃ここには立っていませんでしたね……」
きっと、最愛の人の前で死んでいただろう。神聖魔術とは恐ろしくも素晴らしい魔術だった。
「はあ……婚約ですか……本当に、今日が迎えられて良かった……」
しみじみと呟いてしまうのは仕方がない。
一年半ほど前。
カルサート家の正統な血を引く令嬢が、すれ違いと誤解から、家を出て行ってしまうということがあった。
彼女はカトラ・カルサートの名を捨て、以前から活動していたカーラという名で冒険者として生きるつもりだったらしい。
実際、ただの夢想ではなく、実力の伴ったもので、最年少最強のAランクだった。
最強と呼ばれるのは、既に実力や実績からSランク認定を受けていたためだ。ただし、正式にライセンスとして発行、認可されるには、登録地の国王に謁見しなくてはならない。
しかし、女性である場合。その国の王子や有力貴族との婚姻が絡んでくる。それを蹴れば、実質国外追放。これを避けるためには、先に婚約者を立てるか結婚していなくてはならなかった。
父親であるカルフ・カルサート伯爵との和解もあり、五日に一度くらいのペースで伯爵家に戻ってくるようになったカトラは今日、正式に婚約を発表する。
「そろそろレフィアがお嬢様を呼びに行く頃ですね」
パーティは昼からとはいえ、女性の用意というのは時間がかかる。今頃、部屋に来たレフィアにカトラはため息を吐いて叱られている頃だろう。
「ふふふ。レフィアには、後で紅茶を淹れましょうか」
なんとかカトラのやる気を引き出さなければ、カトラ命である未来の旦那様が『じゃあ、やめようか』と言いかねないのだ。
困ったものだと笑いながら、会場を見回っていると、淡く光る縄が、壁に飾るタペストリーを引き揚げていた。
「ナワさん。そちらは……グラジオスの紋章でしょうか? ターザ様のですか?」
婚約する二人の家の紋章を正面に並べるのが婚約披露の時の慣しだ。だが、今回はどうなるか分からなかった。
ターザはあくまでも生家は関係なく、Sランク冒険者として婚約発表をするつもりだったのだ。
《-王家の者が来られるならばと-》
《-牽制のためです-》
カトラの相棒であるナワちゃんは、意思を持つ縄だ。カトラが作り出したもので、最初こそ驚いたが、今やこの屋敷で恐れたり、知らぬ者は居なかった。
器用に作り出す文字で、意志の疎通も可能となれば、怖がる必要はない。何より、分身したり、戦闘したりと万能だった。
「なるほど……グラジオス王家のものを出されるとは……よろしかったのでしょうか」
これに答えたのは、会場に入ってきたターザ本人だった。
「俺も、この半年遊んでた訳じゃないからね。きっちり許可を取ってきたよ。カトラが心配するからね」
ずっと冒険者カーラと、カトラのことを呼んでいたターザも、婚約が決まってからカトラと改めていた。
どのみち、Sランクとなった冒険者は、名を偽ることが許されなくなる。
Sランク冒険者を目指す理由の一つが、名を偽らなくてはならなくなったことを公に示して、正統性を主張することができるというものだ。
過去には、貴族家から不当に追放された子息や、借金によって売られた奴隷、冤罪をかけられた元騎士などがいたそうだ。
彼らはSランク冒険者となることで、名誉を取り戻していた。これだけは、承認する国王も手を出すことはできないものだった。
よって、冒険者カーラ改め『Sランク冒険者カトラ』となることは、最早決まっているのだ。
「っ、ターザ様……ですが、王にと未だ望まれているとお聞きしましたが」
「うん。まあ、そこは上手くやるよ。いくつか手札も持ってるしね」
「……なるほど……」
抜かりはない。カトラを溺愛してやまないターザにとって、邪魔となるならば生家の王家を滅ぼすことも辞さない。
前世から引きずるカトラへの想いは、重く、深く、強かった。
「そういえば、ケイトやフェジ達の姿が見えないけど」
カトラが救った奴隷達や、聖王国の元影達。彼らにとって、今日は主人の晴れ舞台。遊んでいるとは思えない。
「ああ。ケイト達女性陣でしたら『パーティには新鮮な肉を!』と出かけて行きました。フェジ達は、外の掃除と最終確認だそうです」
半年前。聖王国からこちらへ帰ってくる折、隣国でケイト達のように不当に売られた奴隷の女性達を中心にカトラは引き取ってきた。
大半はケイト達と同じ孤児院に居た者たちで、ここ半年、冒険者となった彼らは、聖王国の方へ修行に行かせたりと強化した結果、最強のメイド部隊と執事部隊が出来上がった。
特にメイド部隊は好戦的な者が多く、普段はメイドとして完璧だが、こういう時には暴走して飛び出していくのだ。
「そう。あいつらになら、まあ任せてもいいかな」
Sランク冒険者のターザさえ認めているのだ。この辺りに敵うものなどいない。
「それじゃあ、俺もそろそろ用意しないとね」
「はい。こちらはお任せください」
「うん。よろしく」
去って行くその背中には、確かな喜びがあった。いつもよりも笑みも深かったのだ。今日という日を最も楽しみにしているのは彼かもしれない。
「ようやくですからね」
《-浮かれていらっしゃいます-》
「……レフィアにあまり気合いを入れないようにと言っておくべきでしたね」
《-何事もないことを願います-》
「そうですね……」
神さえ跪かせる彼が暴走しないようにと願ったところで、神にはどうすることもできないだろうと、ベイスとナワちゃんは諦めた。
ここ最近、一気に大人びて美しくなったカトラの美貌に我を忘れる貴族が居ない事を祈るばかりだ。
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