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第二章 奴隷とかムカつきます

095 売っていただいても?

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セルカを連行していく男達を見送ってしばらく歩くと、武器屋が見えてきた。その店の側で、リィリを肩に乗せたトゥーリが待っていた。

「遅くなってごめんね」
「大丈夫……です……」
《みぎゃ》

トゥーリは、ターザに課せられた課題を毎朝こなしている。カトラが目覚める前には既に起きて簡単に朝食を済ませ、町の外で体を動かしてくるのだ。

ターザとフェジが戻ってきていなければ、この時間に武器屋に行くと昨晩約束をしていた。予定変更をする場合は黒子達が伝言してくれるので心配はない。

「なら入ろうか。キュリとクスカも、良いのがあれば買って良いからね」
「ありがとうございます!」
「お手入れの道具も見たいと思ってたんです!」

キュリのクスカは、戦えるようになってから武器屋に来るのが楽しいらしい。最近は、どんな武器が自分に合うのかを真剣に考えているようだ。

カトラも中を見て回る。

この武器屋は大通りからはかなり外れてしまっているが、この国で一番だと一部で有名らしい。これは黒子達が仕入れてきた情報だ。

均一商品として、箱に無造作に入れられている武器を見る。すると、一番だという情報が嘘ではないことがわかる。

「へえ……しっかり掘り出し物が入ってる……」

割合的には十本中の二、三本という具合だが、剣や槍も付けられている値段より遥かに価値の高いものが混じっている。

その中で気になった剣を手に取ってみて気づく。カトラの魔力に反応したのだ。

「これ……魔効……聖武器なんじゃ……」

この世界には、魔力に反応する武器【魔効武器】というのがある。腕の良い鍛治師でも、一生に一度できるかどうかという、最高の武器だ。

特に神聖魔術の使い手が持つことで本来の力を発揮すると言われている【聖武器】は神の力を持つと言われるほど強力だ。そのため、見つけ次第聖王国が回収していく。

「なんでこんな所に……」

そこで、店主がカウンターからこちらを見つめていることに気付く。ふと目を向けると、静かに神妙に頷かれた。確認のため、カトラはその武器を持って店主に近付いた。

「これは、店主の作品ではありませんよね?」
「ああ。あの箱に入ってんのは俺のじゃねえ……お前さん、その武器が何かわかったのか」

こちらを探るような視線を受け、どう答えるかと考える。だが、嫌な感じはしないのだ。正直に話すことにした。

「……はい……売っていただいても?」
「構わんが、相対する魔力を持ってなけりゃ、なまくらでしかない……お前さん、使えるのか?」

これもどう答えるか考えたが、彼には嘘を付かない方がいいと思えた。

「使える者も知っています」
「そうか……それはタダでいい」
「でもっ」
「元々、俺もタダで手に入れたものだ。あそこのは、倒した盗賊の戦利品だからな」
「あ、ご自分で?」
「わかるか? そういうお嬢ちゃんも強そうだ」
「ありがとうございます」

ニヤリと笑いあう。

店主は鍛治師だが、自身で素材を取りに行けるようにと冒険者としての実力も付けたそうだ。ついでに盗賊を倒し、そこで手に入れた剣などをここで捨て値価格で売っているらしい。手に入れる時の手間賃だろうか。

「それでも、あの値段はないのでは?」

捨て値ではあるが、本当にクズで使い物にならないような物は置いていなかったのだ。あの中で最低ランクの武器でも、かなりお得な値段だった。

「俺の作品じゃなけりゃ、本気で売る気にならねえよ」
「なるほど……」

どれだけ良いものでも、自分の作品でなければ、値段など気にしないらしい。他人の作品を貶しているようにも見えるが、正しく目利きを持った者の手に渡って欲しいと思ってのことらしい。手に入れた者に正しい価値を見出して欲しいと願ってのことだ。

「それで? これを買うか……」
「はい。いただきます」
「そうだな……まさか、本当にこれを使える奴がいるとは……いや、すまんな。だが……これを手に入れて、お嬢ちゃんは大丈夫か?」

この心配は、これが聖武器とわかっているからこそのものだ。神聖魔術を使える者にしか使いこなせないということはどういうことか。

「あの国から……逃げてんじゃねえのか?」
「いえ。寧ろ、これから喧嘩を売りに行こうかと思っているところです」
「……は?」
「ちょっかいをかけられたので、そのお返しをしに行くところです」
「……っ、ははっ、そりゃあいい! よしっ、ちょい待ってろっ」

店主は楽しそうに店の奥へ引っ込んで行った。

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読んでくださりありがとうございます◎
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