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第一幕 第一章 家にいる気はありません
061 まるで万能メイド?
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2019. 3. 8
**********
色々とあったが、無事三日間のお祭りが終わった。
忙しかったこともあり、祭り明けの翌朝。ベジラブの後見に侯爵が付いたという報告をした。侯爵とは、日を改めてまた挨拶することになっている。
ベラルはこれを聞いた後、驚きすぎてしばらく使い物にならなくなった。祭り期間中じゃなくて正解だった。
その後、妻に張り倒されて復活したベラルは、これから一層気合いを入れて頑張ると言って猛然と作業を開始していた。
こんな夫婦の一面を見ていたターザが『いいなぁ』と羨ましそうにしていたのが謎だった。
張り倒される所のどこが良いのだろうか。
ちなみに、兄のカルダや王子、侯爵達は三日目の昼には王都へ帰って行った。その際、護衛が不安だというナワちゃんが分身体をつけていた。
よっぽど双子が気になるようだ。とはいえ、カトラも賛成だった。
きっちり王宮に入るまで確認したらしい。ナワちゃんは、分身体単体で思考する。本体に戻る時もそうだ。王宮に入ったのを見届けた後に本体へ戻った。
そうするとカトラの側にいたナワちゃんが報告してくれる。
《ー王宮へ到着されましたー》
《ー途中の襲撃ありませんー》
「そう。お疲れ様」
優秀すぎる護衛だ。そして、今回の祭りでの大活躍により思考力が向上したナワちゃんは、以前にも増して気の利きすぎる子になっていた。
《ーお兄様が心配しておいででしたー》
《ーなのでお兄様に分身体をお預けしましたー》
「ん?」
向こうで更に分身したらしい。
なんでもカルダは、冒険者をしているカトラとでは、中々連絡も取り合えないことを不安に思っていたらしい。カトラが拠点としているエルケートの冒険者ギルドへ手紙を出したところでいつ見るか分からない。
何より、カトラはマメな方ではないことが分かっている。手紙を読んで返事を書くというところまで行かないのだ。
実際、カトラは送られてきた手紙を読んでその場で相づちを打って終わるタイプだ。うんうん頷いて終了。それは前世からもそうだった。
メールの終点は大抵がカトラだったのだ。よく『なんで返さないのか』と次の日に友人達に怒られた記憶がある。
『これって返事必要?』という判断が人とは少し違ったのかもしれない。
《ーもちろん護衛もいたしますー》
「……ありがとう……」
《ーお任せください♪ー》
本当に、ナワちゃんはどこまで行くのだろう。そのうち、メイドとかに取って代わりそうだ。
それは、隣にいるターザも思っていたらしい。
「ナワちゃんって、何でもできるよね。まるで万能メイド?」
今現在、カトラとターザはエルケートで旅支度のための買い物中だった。
因みに、なぜターザが同じ考えに至ったかといえば、目の前で繰り返されるナワちゃんの分身体達の働きによる。
《ーこの豆は古いですねー》
《ー新しいものも半分くださいー》
「は、はいっ、ただいまっ」
《ー古い方はもちろんお安くなりますよねー》
「っ、勉強させていただきます!!」
というのが右前方のお店でのやり取り。
《ーそれには傷みがありますー》
《ーこの値段では売れませんよー》
《ー三割は引いてくださいー》
「か、勘弁してくださいよナワの姐さん……」
これが左前方のお店。
更にその奥でも同じように値切り、品を見定めていく。カトラとターザはただ散歩しているだけになっていた。
「この辺の店の人たちがカーラに変な目を向けてくるから気になってたんだけど、気にしてたのはナワちゃんだったんだ」
「みたいだね……私もなんか怯えられるから気にはなってたんだけど……」
これは怖いわ。納得。
完全なナワちゃんの独断場だった。
《ー戦利品です! お願いします!ー》
「うん」
ナワちゃんは買った物を自身を素早くカゴの形にすることで苦もなく運んでくる。
そして、ターザに荷物を預けて、次の店に特攻していく。
「ターザ、なんで手で持つの?」
なぜかターザは荷物の大半を手で持っている。すぐに空間収納に入れてしまえばいいはずなのに、不思議だった。
「だって、こうやって荷物持ってた方が、カーラと買い物してる感じがするでしょ?」
「……そうだね……」
まるで荷物持ちの彼氏か夫。バーゲン帰りの気分だ。それがターザには嬉しいらしい。
カトラとしては、自分が手ぶらで隣を歩いていることで罪悪感が半端ないのだが、ターザが幸せそうなので気にしないようにしている。
小さな鞄も彼氏に持たせる女性というのを前世で見た。女であるカトラの目線から見ると、そういう女性は性格に問題がある人に見えたのだが、どうやら男の方が進んでそうしていた可能性があるなと新しい発見をした。
うん。至極どうでも良い発見だった。
ちなみにダルの方でもナワちゃんが活躍中だ。祭り期間中は手伝えなかったので、ナワちゃんも張り切っていた。
たった三日離れただけだったのだが、ダルは大げさに騒いでいた。ナワちゃんのありがたみを思い知ったらしい。
『うおぉぉぉっ、ナワっ、俺と結婚しよう!!』
『《ーーー落ち着いて仕事をしましょうー》』
盛大にトチ狂っていたので、それを放置しての買い物だった。
「師匠、落ち着いたかな」
「どうだろうね?」
ナワちゃんが優秀過ぎるのも問題だと心底思ったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
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色々とあったが、無事三日間のお祭りが終わった。
忙しかったこともあり、祭り明けの翌朝。ベジラブの後見に侯爵が付いたという報告をした。侯爵とは、日を改めてまた挨拶することになっている。
ベラルはこれを聞いた後、驚きすぎてしばらく使い物にならなくなった。祭り期間中じゃなくて正解だった。
その後、妻に張り倒されて復活したベラルは、これから一層気合いを入れて頑張ると言って猛然と作業を開始していた。
こんな夫婦の一面を見ていたターザが『いいなぁ』と羨ましそうにしていたのが謎だった。
張り倒される所のどこが良いのだろうか。
ちなみに、兄のカルダや王子、侯爵達は三日目の昼には王都へ帰って行った。その際、護衛が不安だというナワちゃんが分身体をつけていた。
よっぽど双子が気になるようだ。とはいえ、カトラも賛成だった。
きっちり王宮に入るまで確認したらしい。ナワちゃんは、分身体単体で思考する。本体に戻る時もそうだ。王宮に入ったのを見届けた後に本体へ戻った。
そうするとカトラの側にいたナワちゃんが報告してくれる。
《ー王宮へ到着されましたー》
《ー途中の襲撃ありませんー》
「そう。お疲れ様」
優秀すぎる護衛だ。そして、今回の祭りでの大活躍により思考力が向上したナワちゃんは、以前にも増して気の利きすぎる子になっていた。
《ーお兄様が心配しておいででしたー》
《ーなのでお兄様に分身体をお預けしましたー》
「ん?」
向こうで更に分身したらしい。
なんでもカルダは、冒険者をしているカトラとでは、中々連絡も取り合えないことを不安に思っていたらしい。カトラが拠点としているエルケートの冒険者ギルドへ手紙を出したところでいつ見るか分からない。
何より、カトラはマメな方ではないことが分かっている。手紙を読んで返事を書くというところまで行かないのだ。
実際、カトラは送られてきた手紙を読んでその場で相づちを打って終わるタイプだ。うんうん頷いて終了。それは前世からもそうだった。
メールの終点は大抵がカトラだったのだ。よく『なんで返さないのか』と次の日に友人達に怒られた記憶がある。
『これって返事必要?』という判断が人とは少し違ったのかもしれない。
《ーもちろん護衛もいたしますー》
「……ありがとう……」
《ーお任せください♪ー》
本当に、ナワちゃんはどこまで行くのだろう。そのうち、メイドとかに取って代わりそうだ。
それは、隣にいるターザも思っていたらしい。
「ナワちゃんって、何でもできるよね。まるで万能メイド?」
今現在、カトラとターザはエルケートで旅支度のための買い物中だった。
因みに、なぜターザが同じ考えに至ったかといえば、目の前で繰り返されるナワちゃんの分身体達の働きによる。
《ーこの豆は古いですねー》
《ー新しいものも半分くださいー》
「は、はいっ、ただいまっ」
《ー古い方はもちろんお安くなりますよねー》
「っ、勉強させていただきます!!」
というのが右前方のお店でのやり取り。
《ーそれには傷みがありますー》
《ーこの値段では売れませんよー》
《ー三割は引いてくださいー》
「か、勘弁してくださいよナワの姐さん……」
これが左前方のお店。
更にその奥でも同じように値切り、品を見定めていく。カトラとターザはただ散歩しているだけになっていた。
「この辺の店の人たちがカーラに変な目を向けてくるから気になってたんだけど、気にしてたのはナワちゃんだったんだ」
「みたいだね……私もなんか怯えられるから気にはなってたんだけど……」
これは怖いわ。納得。
完全なナワちゃんの独断場だった。
《ー戦利品です! お願いします!ー》
「うん」
ナワちゃんは買った物を自身を素早くカゴの形にすることで苦もなく運んでくる。
そして、ターザに荷物を預けて、次の店に特攻していく。
「ターザ、なんで手で持つの?」
なぜかターザは荷物の大半を手で持っている。すぐに空間収納に入れてしまえばいいはずなのに、不思議だった。
「だって、こうやって荷物持ってた方が、カーラと買い物してる感じがするでしょ?」
「……そうだね……」
まるで荷物持ちの彼氏か夫。バーゲン帰りの気分だ。それがターザには嬉しいらしい。
カトラとしては、自分が手ぶらで隣を歩いていることで罪悪感が半端ないのだが、ターザが幸せそうなので気にしないようにしている。
小さな鞄も彼氏に持たせる女性というのを前世で見た。女であるカトラの目線から見ると、そういう女性は性格に問題がある人に見えたのだが、どうやら男の方が進んでそうしていた可能性があるなと新しい発見をした。
うん。至極どうでも良い発見だった。
ちなみにダルの方でもナワちゃんが活躍中だ。祭り期間中は手伝えなかったので、ナワちゃんも張り切っていた。
たった三日離れただけだったのだが、ダルは大げさに騒いでいた。ナワちゃんのありがたみを思い知ったらしい。
『うおぉぉぉっ、ナワっ、俺と結婚しよう!!』
『《ーーー落ち着いて仕事をしましょうー》』
盛大にトチ狂っていたので、それを放置しての買い物だった。
「師匠、落ち着いたかな」
「どうだろうね?」
ナワちゃんが優秀過ぎるのも問題だと心底思ったのだ。
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