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第一幕 第一章 家にいる気はありません
053 ならターザか
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2019. 1. 29
**********
カトラが町の外にいくつか牢を作り上げると、ナワちゃんが更に分身し、その見張りをかって出る。
この場所は町からも離れており、更には反省を促し恐怖を与えられる場所だ。
夜には魔獣がうろつく場所ということで、そんな場所に兵や冒険者を配置するのは申し訳ない。そこで、ナワちゃんが牢の上で見張りをするというわけだ。
ナワちゃんならば、脱走しようとしても捕まえられるし、その辺の魔獣にも負けない。分身しているナワちゃん達は感覚も共有しているので、異常があればリアルタイムで報告も可能。
最強の護衛であり見張りなのだが、それを牢に入る者たちが知るわけもなく、恐怖だけが植え付けられるという寸法だ。
「なら、ナワちゃん任せたよ」
《ーお任せください!ー》
付き添って来た領兵にも、後は任せると告げておく。
「は! 必ずやご期待に沿えてみせます!」
「……うん。期待してる」
「はい!!」
よく分からないが燃えていらっしゃるので任せることにした。
この町では町の発展に協力しているからか、兵達はカトラに全幅の信頼を寄せている。強い冒険者であることもそうだが、ナワちゃんが従っているのが大きいかもしれない。
その証拠が、背後で交わされる言葉だ。
「ナワ軍曹! ご苦労様です! 護送開始いたしました!」
確実にナワちゃんはこの町を支配しつつあった。
「ナワちゃん、いつの間に軍曹に?」
《ー昨年でしょうかー》
「そう……」
それを受け入れているようなので良いとしよう。そのままナワちゃんを連れてカトラは町へと戻る。
今回はターザがベジラブの警備をしてくれているので、カトラはかなり楽をさせてもらっている。
明日の朝にはまた食材を集めて運んで来る必要はあるが、店の安全を考えなくていいのは、かなり余裕が持てる。
作業をしていても意識をずっと向けていなくてはならない状況が丸三日続くのだ。まだ十代半ばであるとはいえ、疲れるものは疲れる。
これまでは祭りの日以外でも、ベジラブを気にしていたため、町をゆったり見ながら散歩ということもできなかった。
だから、こうして周りを見ながら歩く今が不思議な気がした。
「あっ」
「ん?」
誰かが声を上げる。それは、カトラに向けられたものだったらしく、真っ直ぐに耳に届いた。
そして、感じる視線を辿るようにして首を巡らすと、そこにはどこかの護衛といった格好の男がこちらを見ていた。
男はカトラを知っているらしい様子なのだが、カトラには見覚えがない。なので、視線を戻して商業ギルドへ向かうことにする。
「えっ? ちょっ、か、カトラ様ですよね?」
「違う」
「へ?」
今のカトラは冒険者のカーラだ。何より、知らない相手だ。関わる気はなかった。
「ま、待ってください私はっ」
「近付くな。鬱陶しい」
「っ!?」
横目で睨みつけておけば、男は動かなくなった。
《ー少し殺気を込めすぎですー》
「そうだった? よく分からないな」
本気でカトラには興味がなかったのだ。
《ーそれとあの方は騎士ですー》
「知ってる人?」
《ー腕を斬り飛ばされた方ですー》
「私が?」
《ーいえー》
「ならターザか」
カトラでなければターザという認識は正しい。
けれど、それでもカトラは男に興味は持てない。そのまま商業ギルドに向かった。
ターザ達の待つ執務室へ入ると、何かがぶつかってきた。それをとっさに受け止めたのは、殺気がなかったからだ。
何より、それはとても小さく無力だった。
「ねえちゃま~っ」
「ねえちゃま見つけた~」
「……メル君、セリ君……?」
受け止めたのは、輝く笑顔を見せた幼い双子の王子達だったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
また三日空きます。
よろしくお願いします◎
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カトラが町の外にいくつか牢を作り上げると、ナワちゃんが更に分身し、その見張りをかって出る。
この場所は町からも離れており、更には反省を促し恐怖を与えられる場所だ。
夜には魔獣がうろつく場所ということで、そんな場所に兵や冒険者を配置するのは申し訳ない。そこで、ナワちゃんが牢の上で見張りをするというわけだ。
ナワちゃんならば、脱走しようとしても捕まえられるし、その辺の魔獣にも負けない。分身しているナワちゃん達は感覚も共有しているので、異常があればリアルタイムで報告も可能。
最強の護衛であり見張りなのだが、それを牢に入る者たちが知るわけもなく、恐怖だけが植え付けられるという寸法だ。
「なら、ナワちゃん任せたよ」
《ーお任せください!ー》
付き添って来た領兵にも、後は任せると告げておく。
「は! 必ずやご期待に沿えてみせます!」
「……うん。期待してる」
「はい!!」
よく分からないが燃えていらっしゃるので任せることにした。
この町では町の発展に協力しているからか、兵達はカトラに全幅の信頼を寄せている。強い冒険者であることもそうだが、ナワちゃんが従っているのが大きいかもしれない。
その証拠が、背後で交わされる言葉だ。
「ナワ軍曹! ご苦労様です! 護送開始いたしました!」
確実にナワちゃんはこの町を支配しつつあった。
「ナワちゃん、いつの間に軍曹に?」
《ー昨年でしょうかー》
「そう……」
それを受け入れているようなので良いとしよう。そのままナワちゃんを連れてカトラは町へと戻る。
今回はターザがベジラブの警備をしてくれているので、カトラはかなり楽をさせてもらっている。
明日の朝にはまた食材を集めて運んで来る必要はあるが、店の安全を考えなくていいのは、かなり余裕が持てる。
作業をしていても意識をずっと向けていなくてはならない状況が丸三日続くのだ。まだ十代半ばであるとはいえ、疲れるものは疲れる。
これまでは祭りの日以外でも、ベジラブを気にしていたため、町をゆったり見ながら散歩ということもできなかった。
だから、こうして周りを見ながら歩く今が不思議な気がした。
「あっ」
「ん?」
誰かが声を上げる。それは、カトラに向けられたものだったらしく、真っ直ぐに耳に届いた。
そして、感じる視線を辿るようにして首を巡らすと、そこにはどこかの護衛といった格好の男がこちらを見ていた。
男はカトラを知っているらしい様子なのだが、カトラには見覚えがない。なので、視線を戻して商業ギルドへ向かうことにする。
「えっ? ちょっ、か、カトラ様ですよね?」
「違う」
「へ?」
今のカトラは冒険者のカーラだ。何より、知らない相手だ。関わる気はなかった。
「ま、待ってください私はっ」
「近付くな。鬱陶しい」
「っ!?」
横目で睨みつけておけば、男は動かなくなった。
《ー少し殺気を込めすぎですー》
「そうだった? よく分からないな」
本気でカトラには興味がなかったのだ。
《ーそれとあの方は騎士ですー》
「知ってる人?」
《ー腕を斬り飛ばされた方ですー》
「私が?」
《ーいえー》
「ならターザか」
カトラでなければターザという認識は正しい。
けれど、それでもカトラは男に興味は持てない。そのまま商業ギルドに向かった。
ターザ達の待つ執務室へ入ると、何かがぶつかってきた。それをとっさに受け止めたのは、殺気がなかったからだ。
何より、それはとても小さく無力だった。
「ねえちゃま~っ」
「ねえちゃま見つけた~」
「……メル君、セリ君……?」
受け止めたのは、輝く笑顔を見せた幼い双子の王子達だったのだ。
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また三日空きます。
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