シルバーヒーローズ!〜異世界でも現世でもまだまだ現役で大暴れします!〜

紫南

文字の大きさ
上 下
56 / 203
mission 6 ギルド職員業務

056 王都らしい

しおりを挟む
2018. 3. 31

**********

善治が若い頃から大人びた物静かな少年だったと宗徳が聞いたのは、祖母からだった。

最低限の事しか口にしない時が多かったし、いつでも冷静で、善治の周りの雰囲気は、とても凛としていたから、昔からそうだったのかと納得した。

けれど違うのだ。確かに冷静に見えるし、落ち着いた雰囲気も感じる。しかし、善治ほど熱い男はいないと思う。

まず、筋の通らないことは許さなかった。卑怯な手で脅されたのなら、それを正面から打ち砕く。物理的にだ。そうして、壊滅した組織は結構な数だったらしい。

もちろん、売られた喧嘩は買う。それが格下でも、格上でも、正面から貰い受けるのが善治のやり方だった。

だから、決して大人しい人ではないと思うのだ。熱い人間でなければ、座右の銘に『悪即斬』は掲げないはずだ。まったく、どこの時代の剣士か。

「善じぃのやつ……めちゃくちゃ速いなぁ……」
《グゥゥ……》

気配は分かるものの、宗徳はその姿を未だに捉えきれずにいる。徨流に乗って障害物のない空を飛んでいるというのにだ。月明かりの中であっても宗徳には見えると思っている。

「この辺初めてだし、あんま町から離れたくないんだがなぁ……」

飛び立った竜守城はもう遥か後方。そら豆程度の大きさになっている。とはいえ、仄かに光る町の明かりがその程度という所だ。

「こっちの方角だと首都……じゃねぇ、王都か」

宗徳の手には、地図があった。急遽出かける前にこの大陸の大まかな地図を手にしていたのだ。

「ホントに大雑把な地図だなぁ……落ち着いたらちゃんとしたのを作るか。あ~、でも善じぃがこれをこのままにしてるって事には理由が……」

あるのかもしれないし、単に人手が足りなかったために後回しになっているのかもしれない。とはいえ、作るべきだろうと思う。

「俺らだけが確認できればいいしな。世に出しちゃならんなら、隠しとけばいい」

そんな計画を立てながら、進むこと三十分。

「……マジで大きな町まで来ちまった……これが王都ってやつか……」

宗徳の前方には、丸く大きく囲われた都市がある。それが見え始めたころから、徨流には速度を落としてもらった。もう手遅れだと思ったからだ。

「……追いつけねぇとか……どういうことだよ……」

本気で追いつけなかった。おそらく、善治も本気で走ったのだろう。異世界人とは、とんでもない。

「俺もできっかな……」
《グル》
「お、マジで? なら、できるか今度頑張ってみるぜ」
《グルル》

徨流が宗徳にもできると太鼓判を押したので、是非今度挑戦してみようと思う。

「さてと……もうここまで来たら見届けるしかないな。降りるぞ」
《グルっ》

既に王都の中に入ってしまったらしい善治を追って、宗徳と徨流は王都の手前に降り立つのだった。

◆◆◆◆◆

「分厚そうな壁だな」
《くすぅ》

さすがに夜で見えにくくなるとはいえ、上空から入るのは問題だろう。しかし、中に入るためには、門の前から続く列に並ばなくてはならなかった。

そろそろ閉門の時刻が近づいているので、長い列となっている。その最後尾に並びながら、王都の外壁を見上げていた。すると、前に並んでいた男が声をかけてくる。

「はっ、田舎者か? この国の王都は特に審査も厳しいからな。坊主にゃ、入れないんじゃないか?」
「坊主?」

そんな坊主がどこにいるのかと周りを見回す。

「坊主は坊主だろ。これだから田舎もんは」
「……ああ、俺のことか」

そういえば、宗徳はこの世界では二十代の青年の姿だった。

「あん? フザケてんのか?」
「いや、今思い出したんだ。すまんな」

相手の男は四十代ぐらいだろうか。山賊のような大柄でボサボサのヒゲと頭をしている。

「年長者への口の利き方がなってねぇなぁ……おい、ちょいツラ貸せや」
「と言われてもなぁ」

実年齢は明らかに宗徳の方が上なのだから。

「はっ。その格好、冒険者だろ。なら、いいよなぁ?」

そうして、男はニヤリと笑いながら、おもむろに拳を握ったのだ。

**********

読んでくださりありがとうございます◎


トラブル発生?


次回、一度お休みさせていただき
土曜14日0時です。
よろしくお願いします◎
しおりを挟む
感想 213

あなたにおすすめの小説

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!

月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。 そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。 新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ―――― 自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。 天啓です! と、アルムは―――― 表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

処理中です...