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mission 17
185 癒され、落ち込み、癒されて
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森を彷徨うようにして、トレントを探す宗徳達。しかし、トレントが居ないわけではないのだ。
「こんな頻度で見つかるとか……ないわ~」
いつも何時間も何日も森を彷徨って、何とか見つけるトレント。それが、宗徳と寿子にかかれば、それほど時間をかけずに見つけることができた。
だが、実があったとしても、どうしても採る気になれなかった。その理由は一つ。
「けど、それ以上に……訳の分からん生命体が多くない!?」
「さっきのタコみたいなの……なに?」
「……宇宙人……」
「「「言わないで!!」」」
瑠偉達は、精神的に追い詰められ始めていた。
「宇宙人……異世界人と同じ……?」
「「「違うと思うっ!」」」
異世界人と変わらない気もするが、違うということにしたい。認めたくない。そんな葛藤して足が重くなる瑠偉達とは別に、宗徳と寿子の足取りは軽い。
「あの宇宙人っぽいやつ、どっから来るんだろうなあ。はっ! 宇宙船探そうぜ!」
「ダメですよ。あと三時間もすれば日が暮れる時間ですからね?」
「いやいや! だって、乗ってたのは喰われちまってるだろ? なら、あるはずだ!」
「それはそうですが……帰りに見つけたらにしてください」
「ちょい遠回りするのは!?」
「仕方ありませんねえ」
「よし! ならさっさと実を見つけて、暗黒竜を捕まえねえとな!」
はしゃぐ宗徳に、寿子は本当に困った人だなあと微笑んでいた。
そんな様子を見た瑠偉達は心が癒されていくのを感じていた。
「ヤバいな……なに? この微笑ましい光景……」
「いや、でも言ってることすげえよ? 宇宙船? 俺も見たいわ」
「ノリちゃんかわいい~」
「……仲良い……」
そこで、宗徳が分かりやすく喜色を浮かべる。何かを見つけたようだ。目が輝いていた。
「居た! エルダーだ! 実もあるぞっ」
そう言って、宗徳は足元にあった石を蹴り上げ、その木に向かって蹴った。それを叩き落とす枝を確認し、間違いないと確信を得る。
「よく分かるよな……」
「ん? なんか気配が明らかに違うだろ?」
「「「わかりません」」」
「ん」
「マジ? こう、気持ち悪いんだが……」
瑠偉達は、これからもトレントの実を採りに来ることもあるだろう。宗徳は、少しでも役に立つコツの様なものを教えられたらと思っていた。
寿子も同じように思ったのだろう。この気持ち悪さを言葉にしようと口を開く。
「無理やり気配を消している感じもありますよね」
「おう。それもあるな」
「後は……中心? に何かあるような……」
「っ、それだ! アイツら、常に何かを取り込もうとしてんだよ。すげえゆっくり消化? してる感じ」
「「「「っ!!」」」」
まだ距離がある。だから、その気配を覚えることができた。
「なんか分かったかも……」
「分かるかも……」
「あ~、でも……消化してる感……感じるのキモいね」
「「「うん……」」」
せっかく微笑ましい夫婦の様子を見て癒えた心が、また落ちていくのは止められなかった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
「こんな頻度で見つかるとか……ないわ~」
いつも何時間も何日も森を彷徨って、何とか見つけるトレント。それが、宗徳と寿子にかかれば、それほど時間をかけずに見つけることができた。
だが、実があったとしても、どうしても採る気になれなかった。その理由は一つ。
「けど、それ以上に……訳の分からん生命体が多くない!?」
「さっきのタコみたいなの……なに?」
「……宇宙人……」
「「「言わないで!!」」」
瑠偉達は、精神的に追い詰められ始めていた。
「宇宙人……異世界人と同じ……?」
「「「違うと思うっ!」」」
異世界人と変わらない気もするが、違うということにしたい。認めたくない。そんな葛藤して足が重くなる瑠偉達とは別に、宗徳と寿子の足取りは軽い。
「あの宇宙人っぽいやつ、どっから来るんだろうなあ。はっ! 宇宙船探そうぜ!」
「ダメですよ。あと三時間もすれば日が暮れる時間ですからね?」
「いやいや! だって、乗ってたのは喰われちまってるだろ? なら、あるはずだ!」
「それはそうですが……帰りに見つけたらにしてください」
「ちょい遠回りするのは!?」
「仕方ありませんねえ」
「よし! ならさっさと実を見つけて、暗黒竜を捕まえねえとな!」
はしゃぐ宗徳に、寿子は本当に困った人だなあと微笑んでいた。
そんな様子を見た瑠偉達は心が癒されていくのを感じていた。
「ヤバいな……なに? この微笑ましい光景……」
「いや、でも言ってることすげえよ? 宇宙船? 俺も見たいわ」
「ノリちゃんかわいい~」
「……仲良い……」
そこで、宗徳が分かりやすく喜色を浮かべる。何かを見つけたようだ。目が輝いていた。
「居た! エルダーだ! 実もあるぞっ」
そう言って、宗徳は足元にあった石を蹴り上げ、その木に向かって蹴った。それを叩き落とす枝を確認し、間違いないと確信を得る。
「よく分かるよな……」
「ん? なんか気配が明らかに違うだろ?」
「「「わかりません」」」
「ん」
「マジ? こう、気持ち悪いんだが……」
瑠偉達は、これからもトレントの実を採りに来ることもあるだろう。宗徳は、少しでも役に立つコツの様なものを教えられたらと思っていた。
寿子も同じように思ったのだろう。この気持ち悪さを言葉にしようと口を開く。
「無理やり気配を消している感じもありますよね」
「おう。それもあるな」
「後は……中心? に何かあるような……」
「っ、それだ! アイツら、常に何かを取り込もうとしてんだよ。すげえゆっくり消化? してる感じ」
「「「「っ!!」」」」
まだ距離がある。だから、その気配を覚えることができた。
「なんか分かったかも……」
「分かるかも……」
「あ~、でも……消化してる感……感じるのキモいね」
「「「うん……」」」
せっかく微笑ましい夫婦の様子を見て癒えた心が、また落ちていくのは止められなかった。
**********
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