上 下
180 / 199
mission 17

180 豪運でしょうか

しおりを挟む
赤いマニキュアと口紅がよく似合う、アイメイクもばっちりなルルベルという名の魔女。

魔女自体が、自分本位で厄介な存在だ。理不尽な事も平気で口にする。そんな魔女をちゃん付けで呼ぶ者は、このライトクエストにも居ないはずだ。

大体、そんな呼び方をされたら、挽き肉にされるというのが大抵の者の答えだろう。

この場に居る収集課の三人も、瑠偉もルルベルに不快な思いをさせないよう、その場で動きを止め、極力気配を薄めることで身を守ろうとしていた。それだけ魔女とは時に理不尽な存在なのだ。

しかし、宗徳と寿子は笑顔で手を振っていた。そして、ルルベル自身も笑顔で手を振る。

「やっほー。ノリちゃん、ヒサちゃん ♪ 相変わらずの仲良しっぷりねえ」
「そうかしら。そうだ。ルルちゃんっ。これ、レン君から預かってたの。新しい配合のバラの紅茶よ」
「あら~、覚えててくれたんだあっ。今度お礼するって、レンちゃんに言っておいて」
「分かったわ」
「「「「……」」」」

口にはしなかったが、瑠偉達は『魔女が普通の女の人に見える……』と目を合わせて頷き合っていた。

「それで? ルルちゃんはどうしたんだ?」

宗徳が尋ねると、ルルベルは楽しそうに答えた。

「ノリちゃんが行くなら、手に入るんじゃないかな~って ♪ 」

そう言いながら、ルルベルが追加の収集依頼の紙を差し出す。

これに、瑠偉達『収集稞』の者達は驚愕する。

「「「「い、依頼用紙!?」」」」
「ん? 瑠偉までどうした?」

紙を受け取りながら、珍しく瑠偉まで声をしっかり出したことに驚いて目を向ける宗徳と寿子。

「ルイ君のそんな大きな声、初めて聞いたわねえ」
「っ……出た……」
「おお、声は出した方がいいぞ」
「ん……それで……何が……」

何が書かれているのか気になったようだ。

宗徳は紙を確認する。ルルベルは後ろで手を組んで『ふふふ』と笑っていた。

それだけでも、瑠偉達には嫌な予感がしていたようだ。

「あ~、暗黒竜丸ごとと、虹色竜苔? どんな苔だ? あと、エルダートレントの果実だってさ」
「「「「……むり……」」」」
「無理? 見つかり難いのか?」
「どれも伝説ですよ!?」
「エルダートレントが実をつけるやつって、何百年に一体現れるかどうかの希少種です!」
「竜苔さえほぼ見つからないのに! 虹色!? あるわけ無いじゃん!」
「……」

瑠偉はもう放心していた。他の三人も錯乱中だ。

しかし、ルルベルと寿子は平然としている。

「まあ、この人が居たら見つかるかもしれませんねえ」
「よねっ。ノリちゃんって、ものすごいの引き当てる力あるもの~」

そうして二人は宗徳を意味ありげに見つめる。

「まあ、ダメ元で、チャレンジしてみて♪」
「分かったわっ」
「ダメ元? ダメでも許されるの?」
「そんな優しさある? 未だかつてないよね?」
「見つけるまで帰ってくるなって言う魔女様が? ダメ元? 夢かな?」
「……」

引き続き錯乱中の瑠偉達。そんな彼らを心配しながら、宗徳は時計を確認して彼らの背中を押した。

「ほれほれ、時間がもったいないだろ。ルルちゃん、それじゃあ、行ってくる」
「行ってきま~す」
「いってらっしゃ~い」

そうしてルルベルに見送られながら、宗徳達は瑠偉達を引き連れて指定された門を潜ったのだ。





**********
読んでくださりありがとうございます◎


しおりを挟む
感想 202

あなたにおすすめの小説

『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月

りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。 1話だいたい1500字くらいを想定してます。 1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。 更新は不定期。 完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。 恋愛とファンタジーの中間のような話です。 主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。

公爵令嬢は父の遺言により誕生日前日に廃嫡されました。

夢見 歩
ファンタジー
日が暮れ月が昇り始める頃、 自分の姿をガラスに写しながら静かに 父の帰りを待つひとりの令嬢がいた。 リリアーヌ・プルメリア。 雪のように白くきめ細かい肌に 紺色で癖のない綺麗な髪を持ち、 ペリドットのような美しい瞳を持つ 公爵家の長女である。 この物語は 望まぬ再婚を強制された公爵家の当主と 長女による生死をかけた大逆転劇である。 ━━━━━━━━━━━━━━━ ⚠︎ 義母と義妹はクズな性格ですが、上には上がいるものです。 ⚠︎ 国をも巻き込んだ超どんでん返しストーリーを作者は狙っています。(初投稿のくせに)

女神なんてお断りですっ。

紫南
ファンタジー
圧政に苦しむ民達を見るに耐えず、正体を隠して謀反を起こした第四王女『サティア・ミュア・バトラール』は、その企みを成功させた。 国を滅し、自身も死んでリセット完了。 しかし、次に気付いたら『女神』になっており?! 更には『転生』させられて?! 新たな生は好きにするっ!! 過去に得た知識や縁、女神として得てしまった反則級な能力で周りを巻き込みながら突き進む。 死後『断罪の女神』として信仰を得てしまった少女の痛快転生譚。 ◆初めて読まれる方には、人物紹介リポートを読まれる事をオススメいたします◎ 【ファンタジーが初めての方でも楽しんでいただける作品を目指しております。主人公は女の子ですが、女性も男性も嫌味なく読めるものになればと思います】 *書籍化に伴い、一部レンタル扱いになりました。 ☆書籍版とはアプローチの仕方やエピソードが違っています。 ●【2018. 9. 9】書籍化のために未公開となってしまった未収録エピソードを編集公開開始しました。【閑話】となっています◎

悪役令嬢は大好きな絵を描いていたら大変な事になった件について!

naturalsoft
ファンタジー
『※タイトル変更するかも知れません』 シオン・バーニングハート公爵令嬢は、婚約破棄され辺境へと追放される。 そして失意の中、悲壮感漂う雰囲気で馬車で向かって─ 「うふふ、計画通りですわ♪」 いなかった。 これは悪役令嬢として目覚めた転生少女が無駄に能天気で、好きな絵を描いていたら周囲がとんでもない事になっていったファンタジー(コメディ)小説である! 最初は幼少期から始まります。婚約破棄は後からの話になります。

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...