170 / 197
mission 16 家族と友人と
170 新たな才能発見?
しおりを挟む
イザリに気付いた宗徳は、時間を確認する。
この間にキュリアートは羽ばたいて美希鷹の頭の上へと着地した。
「イズ様。今日はオムライスなんですが、食べます?」
これはイザリや薔薇が来て知ったことだが、魔女は昼ご飯を食べることは稀らしい。
昼ご飯どころか、朝も夜も食べない者が多いという。食に興味がないのだ。それと面倒だというのがある。
よって、ほぼお茶など間食だけで食事というものを済ませる。
食べなくても問題ない者も居るらしいが、そこは、人として最低限、体の機能を損なわないようにするためと聞く。
ライトクエストでは、多くの飲食店がフードコートにある。それは、少しでも食に興味を持ってもらう為でもあった。
逆に中には何年も続けて気に入った物ばかり食べる者もいるらしい。唐突に、食に目覚める時もあると聞くので難しいところだ。
「うむ……オムライス……それで絵を描くのか……小さな旗が立ったものを食べた事がある」
「あ~……なるほど。旗要ります? 日の丸……ライトクエストのマークとかにしますか」
「……良いのか?」
フードコートに、お子様ランチを出す所があった。それを知っているのだろう。イザリの見た目は、小学生の低学年くらい。お子様ランチを食べていても違和感はなさそうだ。
「いつかあっちで使おうと思って、楊枝を使ってコツコツ作り溜めしたのがあるんですよ」
宗徳は得意げに、亜空間収納からお菓子が入っていただろう缶の箱を取り出す。長細い箱だ。
子ども達には無難に色が付いただけの旗を立ててお子様ランチを作ることはあった。だが、もっと子ども達に楽しんでもらうためにと、旗に絵を描くようになったのだ。
「そうか……なら頼む……その……オムライスは小さいものでいい。師匠にもいいか?」
これを聞きながら缶を開けると、旗が沢山あった。楊枝の尖った方を落とした棒に紙の旗が付けてある。日の丸もあるが、梟や虎、兎や熊、犬や猫などの動物の絵があるものもあった。
国旗というのは寧ろ少ない。
「薔薇様のなら、やっぱバラが良いですかねえ」
薔薇を描いたものを取り出すと、注文通りの小さめのオムライスが二つメイドの藜蘭によって用意される。
自然にケチャップも手渡されたので、バラを描き、その真ん中にバラの旗を立てた。
その旗に描かれたバラは、豪華だ。ただのお子様ランチに立てたならきっととてつもなく浮いただろう。
「うわぁっ。おじいちゃんケチャップ上手っ」
「可愛いですわっ」
オムライスに描かれたバラの花を律紀と治季が目を輝かせて絶賛してくれた。これならばなんとか旗も浮かないだろう。
寿子が缶の中を覗き込む。
「あらあら。本当に沢山作って。子ども達にもくださいな」
「おうよ。イズ様はどれにします?」
「む……この白い虎が良い」
「さすがイズ様っ。これは自信作ですよ!」
「うむ……すごいものだ……」
それは、白い地。とても小さい範囲だというのに、見事な写実的な白い虎が墨絵で描かれていた。
「濡れたり食べ物に付いても滲まないように、きちんとこーてぃっ……んんっ、コーティング加工もしてるんで安心っすよ」
「……うむ。感心したのはこの見事な絵になのだが……」
「すごいわ……お義父さん……」
「うわ~……」
「「っ……」」
沙耶は心底感心し、律紀は思わずというように声を上げる。
そして、徹と征哉は目を丸くしていた。新たな宗徳の才能を発見して驚いているようだ。
「いやあ、絵なんて久しぶりに描いたんで。小さくしたから誤魔化せてるだけっすよ。見本もあったんで。ただ見て写しただけです」
「そんなレベルではないのだが……どおりで……魔法陣を描くのが正確で早いわけだ……」
イザリが戸惑うほどの腕ということだ。
オムライスに描かれたバラも単純な絵だが、見た目もとても良い。
次に子ども達が缶箱の中を覗き込む。旗にある動物の絵は、可愛らしいデフォルメされた絵ではなく、今にも飛び出して来そうな生き生きとした墨絵風のものばかりだった。
「「「「「っ……すごい……」」」」」
幼くても、悠遠達にもその凄さが伝わるくらいだ。普通ではない。
しかし、宗徳にはそれほど大したことという認識がなかった。
「そうか? 見て真似るくらいしか出来ないんだがなあ」
「あなたはまた……あ~、でも確か、あなたは長く書道をやられていましたよね」
「おう。臨書が楽しくってなあ。どう筆を動かしたらこんな線が書けるのかって考えるのが良いんだっ。そっくりに出来た時、嬉しくなるんだよ」
臨書とは、書道をやる中で、先人の書や書き彫った詩などを、その通りに書き取ることだ。
文字のバランスはもちろん。線の細さや太さ、入り方、はらい方、止め方、全てをそっくりにしなくてはならない。
そうして見て書き写すという力を養い、気に入った線を自身の作品に落とし込んでいく所も書道の楽しさだった。
「お父さん、しょどう? ってなあに?」
そう尋ねる悠遠を始め、子ども達は首を傾げていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
この間にキュリアートは羽ばたいて美希鷹の頭の上へと着地した。
「イズ様。今日はオムライスなんですが、食べます?」
これはイザリや薔薇が来て知ったことだが、魔女は昼ご飯を食べることは稀らしい。
昼ご飯どころか、朝も夜も食べない者が多いという。食に興味がないのだ。それと面倒だというのがある。
よって、ほぼお茶など間食だけで食事というものを済ませる。
食べなくても問題ない者も居るらしいが、そこは、人として最低限、体の機能を損なわないようにするためと聞く。
ライトクエストでは、多くの飲食店がフードコートにある。それは、少しでも食に興味を持ってもらう為でもあった。
逆に中には何年も続けて気に入った物ばかり食べる者もいるらしい。唐突に、食に目覚める時もあると聞くので難しいところだ。
「うむ……オムライス……それで絵を描くのか……小さな旗が立ったものを食べた事がある」
「あ~……なるほど。旗要ります? 日の丸……ライトクエストのマークとかにしますか」
「……良いのか?」
フードコートに、お子様ランチを出す所があった。それを知っているのだろう。イザリの見た目は、小学生の低学年くらい。お子様ランチを食べていても違和感はなさそうだ。
「いつかあっちで使おうと思って、楊枝を使ってコツコツ作り溜めしたのがあるんですよ」
宗徳は得意げに、亜空間収納からお菓子が入っていただろう缶の箱を取り出す。長細い箱だ。
子ども達には無難に色が付いただけの旗を立ててお子様ランチを作ることはあった。だが、もっと子ども達に楽しんでもらうためにと、旗に絵を描くようになったのだ。
「そうか……なら頼む……その……オムライスは小さいものでいい。師匠にもいいか?」
これを聞きながら缶を開けると、旗が沢山あった。楊枝の尖った方を落とした棒に紙の旗が付けてある。日の丸もあるが、梟や虎、兎や熊、犬や猫などの動物の絵があるものもあった。
国旗というのは寧ろ少ない。
「薔薇様のなら、やっぱバラが良いですかねえ」
薔薇を描いたものを取り出すと、注文通りの小さめのオムライスが二つメイドの藜蘭によって用意される。
自然にケチャップも手渡されたので、バラを描き、その真ん中にバラの旗を立てた。
その旗に描かれたバラは、豪華だ。ただのお子様ランチに立てたならきっととてつもなく浮いただろう。
「うわぁっ。おじいちゃんケチャップ上手っ」
「可愛いですわっ」
オムライスに描かれたバラの花を律紀と治季が目を輝かせて絶賛してくれた。これならばなんとか旗も浮かないだろう。
寿子が缶の中を覗き込む。
「あらあら。本当に沢山作って。子ども達にもくださいな」
「おうよ。イズ様はどれにします?」
「む……この白い虎が良い」
「さすがイズ様っ。これは自信作ですよ!」
「うむ……すごいものだ……」
それは、白い地。とても小さい範囲だというのに、見事な写実的な白い虎が墨絵で描かれていた。
「濡れたり食べ物に付いても滲まないように、きちんとこーてぃっ……んんっ、コーティング加工もしてるんで安心っすよ」
「……うむ。感心したのはこの見事な絵になのだが……」
「すごいわ……お義父さん……」
「うわ~……」
「「っ……」」
沙耶は心底感心し、律紀は思わずというように声を上げる。
そして、徹と征哉は目を丸くしていた。新たな宗徳の才能を発見して驚いているようだ。
「いやあ、絵なんて久しぶりに描いたんで。小さくしたから誤魔化せてるだけっすよ。見本もあったんで。ただ見て写しただけです」
「そんなレベルではないのだが……どおりで……魔法陣を描くのが正確で早いわけだ……」
イザリが戸惑うほどの腕ということだ。
オムライスに描かれたバラも単純な絵だが、見た目もとても良い。
次に子ども達が缶箱の中を覗き込む。旗にある動物の絵は、可愛らしいデフォルメされた絵ではなく、今にも飛び出して来そうな生き生きとした墨絵風のものばかりだった。
「「「「「っ……すごい……」」」」」
幼くても、悠遠達にもその凄さが伝わるくらいだ。普通ではない。
しかし、宗徳にはそれほど大したことという認識がなかった。
「そうか? 見て真似るくらいしか出来ないんだがなあ」
「あなたはまた……あ~、でも確か、あなたは長く書道をやられていましたよね」
「おう。臨書が楽しくってなあ。どう筆を動かしたらこんな線が書けるのかって考えるのが良いんだっ。そっくりに出来た時、嬉しくなるんだよ」
臨書とは、書道をやる中で、先人の書や書き彫った詩などを、その通りに書き取ることだ。
文字のバランスはもちろん。線の細さや太さ、入り方、はらい方、止め方、全てをそっくりにしなくてはならない。
そうして見て書き写すという力を養い、気に入った線を自身の作品に落とし込んでいく所も書道の楽しさだった。
「お父さん、しょどう? ってなあに?」
そう尋ねる悠遠を始め、子ども達は首を傾げていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
72
お気に入りに追加
818
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
せっかく転生したのに得たスキルは「料理」と「空間厨房」。どちらも外れだそうですが、私は今も生きています。
リーゼロッタ
ファンタジー
享年、30歳。どこにでもいるしがないOLのミライは、学校の成績も平凡、社内成績も平凡。
そんな彼女は、予告なしに突っ込んできた車によって死亡。
そして予告なしに転生。
ついた先は、料理レベルが低すぎるルネイモンド大陸にある「光の森」。
そしてやって来た謎の獣人によってわけの分からん事を言われ、、、
赤い鳥を仲間にし、、、
冒険系ゲームの世界につきもののスキルは外れだった!?
スキルが何でも料理に没頭します!
超・謎の世界観とイタリア語由来の名前・品名が特徴です。
合成語多いかも
話の単位は「食」
3月18日 投稿(一食目、二食目)
3月19日 え?なんかこっちのほうが24h.ポイントが多い、、、まあ嬉しいです!
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる