162 / 201
mission 16 家族と友人と
162 魔法の扉?
しおりを挟む
薔薇との再会からひと月ほどが経った。
あの後、屋敷に薔薇とイザリの部屋を用意し、ライトクエストとの扉は、自由に行き来してもらうようにした。
薔薇は屋敷を拠点にするようになり、イザリも会いやすくなったことを喜んでいる。
家の方には、ご近所の目があるため、子ども達を連れて行けない。よって、宗徳と寿子は、自宅を扉で繋いだことで、それも一つの部屋として使いながらも、普段は屋敷の方に住むようになった。
悠遠達、五人の獣人の子どもや徨流や白欐、黒欐、それと、魔獣の子の琥翔は、屋敷の広い庭を遊び場にして、のびのびと過ごしている。
時折、ここにライトクエスト所属の獣人の青年である瑠偉や美希鷹が扉を使ってやって来て、遊んでくれる。
扉は、宗徳と寿子が連れてきて、許可した者しか使えないため、安心だ。
善治郎が未だにあちらの世界から戻って来ないが、彼の部屋も用意し、待っている状態だった。
そして、祝日と土日を合わせた連休の今日。
久し振りに、律紀がやって来ることになっていた。
屋敷では、美希鷹が既に前日から遊びに来ており、子ども達も廉哉共々楽しく過ごしている。善治の血縁である治季にも連絡しており、彼女も今日初めて屋敷に呼ぶことになっていた。
よって、この日の朝、朝食を屋敷の方で済ませた後、宗徳と寿子だけで自宅の方にやって来て、律紀と治季の到着を待っている所だった。
「もうそろそろですかねえ」
「だな。治季は迎えに行ってもよかったんだがなあ」
「律っちゃんが一緒にって言ったんですもの」
「まあな。この家の場所を知っとってもらったら、治季や律紀も会いやすくなるかもしれんか」
「そうですね」
屋敷の方で三日間過ごすため、のんびりと戸締まりの確認をする。そして、しばらくしてベルが鳴った。
ビルルル!
昔から変えていないちょっと耳障りなベルの音。それを聞いて、宗徳と寿子は出迎えに玄関へ向かう。
「おお。良く来た……な……?」
「あらあら」
宗徳が歩みを止める。その理由は、律紀と治季の後ろ。
「徹に……征哉まで来たの? 珍しいわねえ」
「あ、ああ……久しぶり……」
「……」
宗徳と寿子の息子である徹。彼とは、疎遠になっていた。だから、こんな風に来るとは思わなかったのだ。その手には、しっかり泊まりの準備だろう、旅行カバンがあった。
その隣には、少し不貞腐れたような顔をした律紀の兄である孫の征哉が、同じように旅行カバンを持って佇んでいる。彼が来るのは、小学校に上がる前だったかもしれない。
「聞いてくださいよっ、お義母さんっ。もうっ、二人してピリピリしちゃって本当に嫌になるんですっ」
征哉は今年、高校の入試がある。どうやら、勉強に身が入らないらしく、それを徹が注意して、更に意固地になって勉強をサボるという悪循環ができてしまっているようだ。
寿子は少し前から沙耶からメールで相談を受けていた。
「確かに、受験勉強は頑張ってほしいですけど、言い方ってものもあると思うんですよ!」
「ふふふっ。そうねえ。それで、私たちに徹を叱ってくれってことかしら?」
「お願いします! ついでに征哉も!」
「はいはい。けど、息抜きも必要でしょう。ちょっと環境も変えて、楽しんでみたらいいかもしれないわねえ」
「はい! なので、律紀だけじゃなく、私たちもお世話になります!」
「良いわ。ね、あなた」
寿子が納得しているなら、宗徳も言うことはないと頷く。
「おう。ほれ、上がれ。そんで、戸締まりをしっかりしろ。良いとこ連れてってやるよ」
「戸締まりして?」
律紀が不思議そうに。けれど、嬉しそうに目を輝かせた。
「そうだ。言っただろ? 別荘に案内するってよ。治季もよく来たな。タカはもう昨日の内に来てるぞ」
「そうなんですか!? ずるいですっ。あっ、お邪魔しますわっ」
「おうっ、上がれ。悠遠達も、会えるのを楽しみにしてたぞ」
「嬉しいですっ。あの子達、かわいいんですものっ」
そうして、治季と律紀は、すぐに家に上がってきた。
残された三人は、意味がわからないという顔で立ち尽くしている。
それを見兼ねて、寿子が玄関の鍵をし、背中を押す。
「ほらほら。何をばさっとしてるんです? 早く行きますよ。私たちの屋敷に」
「屋敷……? どう言うことです? お義母さん?」
「説明するのは面倒なのよ。だから、先に見てちょうだい。徹と征哉も、きっと驚くと思うわ。あなた達は好きなんじゃないかしら。この家にはねえ、魔法の扉があるのよっ」
「「「魔法の扉……」」」
まさか、そんな言葉が出るなんて思ってもみない三人は、呆然としながらも、寿子に押されて家に上がる。
「ほれ、行くぞ」
そして、物置きとして使っていた部屋のドアを宗徳が開けたのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
あの後、屋敷に薔薇とイザリの部屋を用意し、ライトクエストとの扉は、自由に行き来してもらうようにした。
薔薇は屋敷を拠点にするようになり、イザリも会いやすくなったことを喜んでいる。
家の方には、ご近所の目があるため、子ども達を連れて行けない。よって、宗徳と寿子は、自宅を扉で繋いだことで、それも一つの部屋として使いながらも、普段は屋敷の方に住むようになった。
悠遠達、五人の獣人の子どもや徨流や白欐、黒欐、それと、魔獣の子の琥翔は、屋敷の広い庭を遊び場にして、のびのびと過ごしている。
時折、ここにライトクエスト所属の獣人の青年である瑠偉や美希鷹が扉を使ってやって来て、遊んでくれる。
扉は、宗徳と寿子が連れてきて、許可した者しか使えないため、安心だ。
善治郎が未だにあちらの世界から戻って来ないが、彼の部屋も用意し、待っている状態だった。
そして、祝日と土日を合わせた連休の今日。
久し振りに、律紀がやって来ることになっていた。
屋敷では、美希鷹が既に前日から遊びに来ており、子ども達も廉哉共々楽しく過ごしている。善治の血縁である治季にも連絡しており、彼女も今日初めて屋敷に呼ぶことになっていた。
よって、この日の朝、朝食を屋敷の方で済ませた後、宗徳と寿子だけで自宅の方にやって来て、律紀と治季の到着を待っている所だった。
「もうそろそろですかねえ」
「だな。治季は迎えに行ってもよかったんだがなあ」
「律っちゃんが一緒にって言ったんですもの」
「まあな。この家の場所を知っとってもらったら、治季や律紀も会いやすくなるかもしれんか」
「そうですね」
屋敷の方で三日間過ごすため、のんびりと戸締まりの確認をする。そして、しばらくしてベルが鳴った。
ビルルル!
昔から変えていないちょっと耳障りなベルの音。それを聞いて、宗徳と寿子は出迎えに玄関へ向かう。
「おお。良く来た……な……?」
「あらあら」
宗徳が歩みを止める。その理由は、律紀と治季の後ろ。
「徹に……征哉まで来たの? 珍しいわねえ」
「あ、ああ……久しぶり……」
「……」
宗徳と寿子の息子である徹。彼とは、疎遠になっていた。だから、こんな風に来るとは思わなかったのだ。その手には、しっかり泊まりの準備だろう、旅行カバンがあった。
その隣には、少し不貞腐れたような顔をした律紀の兄である孫の征哉が、同じように旅行カバンを持って佇んでいる。彼が来るのは、小学校に上がる前だったかもしれない。
「聞いてくださいよっ、お義母さんっ。もうっ、二人してピリピリしちゃって本当に嫌になるんですっ」
征哉は今年、高校の入試がある。どうやら、勉強に身が入らないらしく、それを徹が注意して、更に意固地になって勉強をサボるという悪循環ができてしまっているようだ。
寿子は少し前から沙耶からメールで相談を受けていた。
「確かに、受験勉強は頑張ってほしいですけど、言い方ってものもあると思うんですよ!」
「ふふふっ。そうねえ。それで、私たちに徹を叱ってくれってことかしら?」
「お願いします! ついでに征哉も!」
「はいはい。けど、息抜きも必要でしょう。ちょっと環境も変えて、楽しんでみたらいいかもしれないわねえ」
「はい! なので、律紀だけじゃなく、私たちもお世話になります!」
「良いわ。ね、あなた」
寿子が納得しているなら、宗徳も言うことはないと頷く。
「おう。ほれ、上がれ。そんで、戸締まりをしっかりしろ。良いとこ連れてってやるよ」
「戸締まりして?」
律紀が不思議そうに。けれど、嬉しそうに目を輝かせた。
「そうだ。言っただろ? 別荘に案内するってよ。治季もよく来たな。タカはもう昨日の内に来てるぞ」
「そうなんですか!? ずるいですっ。あっ、お邪魔しますわっ」
「おうっ、上がれ。悠遠達も、会えるのを楽しみにしてたぞ」
「嬉しいですっ。あの子達、かわいいんですものっ」
そうして、治季と律紀は、すぐに家に上がってきた。
残された三人は、意味がわからないという顔で立ち尽くしている。
それを見兼ねて、寿子が玄関の鍵をし、背中を押す。
「ほらほら。何をばさっとしてるんです? 早く行きますよ。私たちの屋敷に」
「屋敷……? どう言うことです? お義母さん?」
「説明するのは面倒なのよ。だから、先に見てちょうだい。徹と征哉も、きっと驚くと思うわ。あなた達は好きなんじゃないかしら。この家にはねえ、魔法の扉があるのよっ」
「「「魔法の扉……」」」
まさか、そんな言葉が出るなんて思ってもみない三人は、呆然としながらも、寿子に押されて家に上がる。
「ほれ、行くぞ」
そして、物置きとして使っていた部屋のドアを宗徳が開けたのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
112
お気に入りに追加
874
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
辺境伯令嬢は婚約破棄されたようです
くまのこ
ファンタジー
身に覚えのない罪を着せられ、王子から婚約破棄された辺境伯令嬢は……
※息抜きに書いてみたものです※
※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています※
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】私との結婚は不本意だと結婚式の日に言ってきた夫ですが…人が変わりましたか?
まりぃべる
ファンタジー
「お前とは家の為に仕方なく結婚するが、俺にとったら不本意だ。俺には好きな人がいる。」と結婚式で言われた。そして公の場以外では好きにしていいと言われたはずなのだけれど、いつの間にか、大切にされるお話。
☆現実でも似たような名前、言葉、単語、意味合いなどがありますが、作者の世界観ですので全く関係ありません。
☆緩い世界観です。そのように見ていただけると幸いです。
☆まだなかなか上手く表現が出来ず、成長出来なくて稚拙な文章ではあるとは思いますが、広い心で読んでいただけると幸いです。
☆ざまぁ(?)は無いです。作者の世界観です。暇つぶしにでも読んでもらえると嬉しいです。
☆全23話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
☆感想ありがとうございます。ゆっくりですが、返信させていただきます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の場に相手がいなかった件について
三木谷夜宵
ファンタジー
侯爵令息であるアダルベルトは、とある夜会で婚約者の伯爵令嬢クラウディアとの婚約破棄を宣言する。しかし、その夜会にクラウディアの姿はなかった。
断罪イベントの夜会に婚約者を迎えに来ないというパターンがあるので、では行かなければいいと思って書いたら、人徳あふれるヒロイン(不在)が誕生しました。
カクヨムにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる