151 / 199
mission 15 古の魔女との邂逅
151 こっちでも?
しおりを挟む
扉を潜ると、いつもはふわふわと浮く一人がけ用のソファに腰掛けて飛んでくるチェルシャーノが、床に立ち、両手を広げて出迎えてくれた。
「やあ、大変だったようだネ」
「チェシャさん、ただいまです」
「お帰り~徳々。随分と大所帯だネエ」
「あはは。いやあ、自然と増えまして」
こうして、戻って来た後、少し今回は何をしてきたかなど、チェルシャーノと話すことが常だった。なので、五人の獣人の子ども達のことや、徨流についてもチェルシャーノは知っている。
そこに更に今回は白欐、黒欐、そして、虎のような魔獣である琥翔も、当然のように連れてきているのだ。増えたと笑われるのも仕方がない。
「こんなにお持ち帰りして来た子は、はじめてダヨ。それも神さまクラスまデ」
「いかんですか?」
「ウウン。この扉を潜れた時点で問題ナシっ、ダヨー」
「なら良かった」
チェルシャーノが扉の管理人の中でもすごい人であるというのは、もう分かっているのだ。その人が問題ないと言えば、安心出来る。
「ソッチの子達が、召喚されちゃった子だネ。まだ時間的には余裕がアルし、この後、診察は受けてもらうヨ」
「やっぱ、何か悪くなってたりするんで?」
宗徳と寿子も、最初の数回は軽い健康診断のようなものを受けている。全身スキャンされて終わりという感じの早い診察ではあったが、何らかの確認はしていたのだ。
「時差ボケみたいな違和感を確認するだけダヨ。あとは未知の病原菌とかがないかをネ。徳々たちの付けてるその腕輪は、そういうのからも守るものでもあるんダヨ」
「へえ。知らんかったですわ……」
宗徳は、もう着けているのが当たり前で、体の一部として馴染んでしまった細い腕輪を見る。メール機能や写真も撮れる。翻訳機能付きで更に病原菌からの保護までできる腕輪。すごいものを着けている。
「病原菌の選別まではできないし、効果を切ることもできないカラ、こっちでも風邪一つひかなくなるんダけどネ~」
「それは有難いですけど?」
「いやいや、人類も環境に適応できないといけない生物だカラ、本当は良くないんだヨ。体の機能がサボるからネ。けど、魔法とか魔術とカ、異世界で適応しようトしてるカラ、そこはまあ同じカナって妥協したんダヨ」
方面は違うが、体の機能を完全にサボらせることにはならないだろうとの結論に至ったらしい。
「さてト、じゃあ、子どもたちハ、あっちの黄色い通路を通っテくれるカナ。そのアト、ちょっとダケ問診を受けテ、召喚される前にイタ場所に行ってもらうヨ」
「我々で送る」
これはイザリからの言葉だ。これにチェルシャーノが笑った。
「それはイイ! 魔女さんの宅配便ナラ、時間ギリギリでもいいもんネ」
「は~い。じゃあ私が案内するわね。そっちの神さまや徨ちゃんと琥翔ちゃんもね」
「あっ、俺も一緒に行くよ」
「なら僕も。悠遠達は僕の弟だからね」
魔女の一人と美希鷹と廉哉に案内され、律紀や子ども達が検査に向かう。子ども達は、宗徳と寿子の姿が変わった事に少し驚いているようだった。だが、それだけだ。
「いってきます」
「「「「いってきま~す」」」」
「おう。話をちゃんと聞くんだぞ」
「怖い事はないからね」
手を振る子ども達に、宗徳と寿子も笑顔で振り返す。
「可愛いネエ」
「「でしょう?」」
ちょっと自慢げだ。そして、残った魔女達にこの後の説明を受ける。
「召喚された子達は、私たちが空からお届けすることになるわ。今の時間は、あの子達がここと、もう一人居ることになってるの。だから、見られないようにしないとダメなのよ」
「はあ……なら、空からが一番っスね」
今現在は、召喚される前の律紀達も存在している。よって、他に見られるわけにはいかない。
「もちろん、徳ちゃんと寿ちゃんは自分達で飛んでね?」
「飛行コースを教えるわ♪ 不可視の術も使ってもらうからね」
「「……え……」」
宗徳と寿子は、ポカンと口を開けた。しかし、二人はすぐに何を言われたのか理解して慌てる。
「いやいやっ。さすがにこっちで飛ぶとか術とか無理ですよね!?」
「えっ? こっちでも使えるんですか? と、飛べる? そんなことできませんよね!?」
異世界だからこそ魔法が使えるのだと思い込んでいたが、まるでそうではないと言っているようなもの。飛べると言われた時も、当然異世界でだけの話だと思っていたのだ。
「「使えるわよ」」
「徳々達なら使えるヨ?」
「「……」」
当たり前のようにチェルシャーノにまで言われ、二人揃って言葉を失くす。そんな宗徳と寿子を見て、珍しくイザリがクスリと笑っていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二週空きます。
よろしくお願いします◎
「やあ、大変だったようだネ」
「チェシャさん、ただいまです」
「お帰り~徳々。随分と大所帯だネエ」
「あはは。いやあ、自然と増えまして」
こうして、戻って来た後、少し今回は何をしてきたかなど、チェルシャーノと話すことが常だった。なので、五人の獣人の子ども達のことや、徨流についてもチェルシャーノは知っている。
そこに更に今回は白欐、黒欐、そして、虎のような魔獣である琥翔も、当然のように連れてきているのだ。増えたと笑われるのも仕方がない。
「こんなにお持ち帰りして来た子は、はじめてダヨ。それも神さまクラスまデ」
「いかんですか?」
「ウウン。この扉を潜れた時点で問題ナシっ、ダヨー」
「なら良かった」
チェルシャーノが扉の管理人の中でもすごい人であるというのは、もう分かっているのだ。その人が問題ないと言えば、安心出来る。
「ソッチの子達が、召喚されちゃった子だネ。まだ時間的には余裕がアルし、この後、診察は受けてもらうヨ」
「やっぱ、何か悪くなってたりするんで?」
宗徳と寿子も、最初の数回は軽い健康診断のようなものを受けている。全身スキャンされて終わりという感じの早い診察ではあったが、何らかの確認はしていたのだ。
「時差ボケみたいな違和感を確認するだけダヨ。あとは未知の病原菌とかがないかをネ。徳々たちの付けてるその腕輪は、そういうのからも守るものでもあるんダヨ」
「へえ。知らんかったですわ……」
宗徳は、もう着けているのが当たり前で、体の一部として馴染んでしまった細い腕輪を見る。メール機能や写真も撮れる。翻訳機能付きで更に病原菌からの保護までできる腕輪。すごいものを着けている。
「病原菌の選別まではできないし、効果を切ることもできないカラ、こっちでも風邪一つひかなくなるんダけどネ~」
「それは有難いですけど?」
「いやいや、人類も環境に適応できないといけない生物だカラ、本当は良くないんだヨ。体の機能がサボるからネ。けど、魔法とか魔術とカ、異世界で適応しようトしてるカラ、そこはまあ同じカナって妥協したんダヨ」
方面は違うが、体の機能を完全にサボらせることにはならないだろうとの結論に至ったらしい。
「さてト、じゃあ、子どもたちハ、あっちの黄色い通路を通っテくれるカナ。そのアト、ちょっとダケ問診を受けテ、召喚される前にイタ場所に行ってもらうヨ」
「我々で送る」
これはイザリからの言葉だ。これにチェルシャーノが笑った。
「それはイイ! 魔女さんの宅配便ナラ、時間ギリギリでもいいもんネ」
「は~い。じゃあ私が案内するわね。そっちの神さまや徨ちゃんと琥翔ちゃんもね」
「あっ、俺も一緒に行くよ」
「なら僕も。悠遠達は僕の弟だからね」
魔女の一人と美希鷹と廉哉に案内され、律紀や子ども達が検査に向かう。子ども達は、宗徳と寿子の姿が変わった事に少し驚いているようだった。だが、それだけだ。
「いってきます」
「「「「いってきま~す」」」」
「おう。話をちゃんと聞くんだぞ」
「怖い事はないからね」
手を振る子ども達に、宗徳と寿子も笑顔で振り返す。
「可愛いネエ」
「「でしょう?」」
ちょっと自慢げだ。そして、残った魔女達にこの後の説明を受ける。
「召喚された子達は、私たちが空からお届けすることになるわ。今の時間は、あの子達がここと、もう一人居ることになってるの。だから、見られないようにしないとダメなのよ」
「はあ……なら、空からが一番っスね」
今現在は、召喚される前の律紀達も存在している。よって、他に見られるわけにはいかない。
「もちろん、徳ちゃんと寿ちゃんは自分達で飛んでね?」
「飛行コースを教えるわ♪ 不可視の術も使ってもらうからね」
「「……え……」」
宗徳と寿子は、ポカンと口を開けた。しかし、二人はすぐに何を言われたのか理解して慌てる。
「いやいやっ。さすがにこっちで飛ぶとか術とか無理ですよね!?」
「えっ? こっちでも使えるんですか? と、飛べる? そんなことできませんよね!?」
異世界だからこそ魔法が使えるのだと思い込んでいたが、まるでそうではないと言っているようなもの。飛べると言われた時も、当然異世界でだけの話だと思っていたのだ。
「「使えるわよ」」
「徳々達なら使えるヨ?」
「「……」」
当たり前のようにチェルシャーノにまで言われ、二人揃って言葉を失くす。そんな宗徳と寿子を見て、珍しくイザリがクスリと笑っていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
二週空きます。
よろしくお願いします◎
67
お気に入りに追加
838
あなたにおすすめの小説
『忘れられた公爵家』の令嬢がその美貌を存分に発揮した3ヶ月
りょう。
ファンタジー
貴族達の中で『忘れられた公爵家』と言われるハイトランデ公爵家の娘セスティーナは、とんでもない美貌の持ち主だった。
1話だいたい1500字くらいを想定してます。
1話ごとにスポットが当たる場面が変わります。
更新は不定期。
完成後に完全修正した内容を小説家になろうに投稿予定です。
恋愛とファンタジーの中間のような話です。
主人公ががっつり恋愛をする話ではありませんのでご注意ください。
公爵令嬢は父の遺言により誕生日前日に廃嫡されました。
夢見 歩
ファンタジー
日が暮れ月が昇り始める頃、
自分の姿をガラスに写しながら静かに
父の帰りを待つひとりの令嬢がいた。
リリアーヌ・プルメリア。
雪のように白くきめ細かい肌に
紺色で癖のない綺麗な髪を持ち、
ペリドットのような美しい瞳を持つ
公爵家の長女である。
この物語は
望まぬ再婚を強制された公爵家の当主と
長女による生死をかけた大逆転劇である。
━━━━━━━━━━━━━━━
⚠︎ 義母と義妹はクズな性格ですが、上には上がいるものです。
⚠︎ 国をも巻き込んだ超どんでん返しストーリーを作者は狙っています。(初投稿のくせに)
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
女神なんてお断りですっ。
紫南
ファンタジー
圧政に苦しむ民達を見るに耐えず、正体を隠して謀反を起こした第四王女『サティア・ミュア・バトラール』は、その企みを成功させた。
国を滅し、自身も死んでリセット完了。
しかし、次に気付いたら『女神』になっており?!
更には『転生』させられて?!
新たな生は好きにするっ!!
過去に得た知識や縁、女神として得てしまった反則級な能力で周りを巻き込みながら突き進む。
死後『断罪の女神』として信仰を得てしまった少女の痛快転生譚。
◆初めて読まれる方には、人物紹介リポートを読まれる事をオススメいたします◎
【ファンタジーが初めての方でも楽しんでいただける作品を目指しております。主人公は女の子ですが、女性も男性も嫌味なく読めるものになればと思います】
*書籍化に伴い、一部レンタル扱いになりました。
☆書籍版とはアプローチの仕方やエピソードが違っています。
●【2018. 9. 9】書籍化のために未公開となってしまった未収録エピソードを編集公開開始しました。【閑話】となっています◎
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる