144 / 197
mission 14 大地の再生
144 夢中になりすぎる
しおりを挟む
魔素はまだ吹き出し続けている。
とりあえず、そのままでは何者にも、今出てきている魔素の濃度では、毒でしかないため、魔力として加工しておくことにする。
「ん~、魔素を魔力に変えるとしても……このまま俺が吸収し続けるわけにはいかんよな……」
一度宗徳自身の体を通すことで魔力とするのだ。今はそれを何に使うかを考えなくてはならない。現在進行形で、魔素は溢れているのだから。
「どっかに溜めとくには……」
そう呟いている間にも、帯のように町から引っ張ってきた魔素を自身の体に吸収する。これは、本来ならば一流の魔術師しか出来ないこと。その一流の魔術師も、この世界に居ても数人だろう。
そもそもが、濃すぎる魔素の毒性すらも中和する特性があるのが前提だ。その特異性に宗徳は気付いていない。
「う~む……何かに使うとか、込めるとか……あっ」
アレがあったと思い当たったのは、白欐の涙、【ダイヤ】だった。
「ちっさいし、先ずは実験だな」
魔素を変換した端から使ってしまえば、別に問題はない。ならば、遊びで使ってしまおう。他の使い道が浮かぶまで。そう決め、未だに白欐と黒欐が木の実採りに夢中になっていることもあり、その木の根元に腰を下ろし、木に背を預けて、あの日、無造作に拾って入れた袋を亜空間から出す。
「あ~、こんな入れ方したら、傷付くよな……ヤベえ……寿子に言うの忘れてた……」
報告してないなと、今更ながらに気付いた。恐らく、廉哉も忘れている。
「……まあ、この後言えばいいよな……いいよな? いい……よな……」
多分怒られない。怒られないといいなと、自分を納得させながらその袋から五つ程摘み出す。
白欐の涙なのだ。それほど大きくはない。一粒は、小さな指輪に付けるのに丁度良いくらいだ。
そして、摘みだした五つのダイヤに魔力を込める。すると、グニャリと柔らかくなり、結合して一つになる。手のひらにそれをコロンと落とす。すると、一粒のそれなりの大きさの丸い石となっていた。
「思った通りだな」
そうして、地道に五つずつを一つにする作業に没頭した。
出来上がったのは、百は下らない数のダイヤの原石。それも一つずつが親指の先くらいの大きさだ。
普通は、そこでこれはやっちまったなと気付く。だが、宗徳は、丁度五つずつで、一粒も余らなかったことを喜び、この後どうするかを考えていたため、そこに思い至らなかった。だから、そのまま事態をさらに悪化させる。
「確か、ダイヤには色もあった……ピンクとか、青とか、黄色とか……黒……」
どうしたら、この石に色が付くだろうか。それを考え出した宗徳には、もはや誰の忠告も耳に入らない様子で石と睨み合っている。
「なんか……微妙に色が……違う?」
光の加減かとも思ったが、微妙に色合いが一粒ずつ違うように見えた。
「魔力の込め方か? やってみるか……」
片手の掌に石を一つ置き、もう片方の手を翳して、魔力を浸透させるように注ぎ込む。すると、ゆっくりと色が変化していった。
「混ぜ具合だな……後は、属性か……」
宗徳にとっては、ダイヤとはいえ、白欐の涙だ。鷲掴みして、スーパーのポリ袋に放り込むくらいの、ちょっと綺麗だから、何かに使えるかなと思う程度の貴重性しかない。
それも、カットされていない原石の状態のため、余計に実感がなかったのだ。扱い方は、どうしても、その辺の石と同じになる。
全てを様々な色に変え終わった所で、ハッとした。
「しまった……全部色付きになっちまった……」
転がるのは、全て様々な色の未カットのダイヤの原石。透明なものはなかった。
「……やっちまったか……?」
気付いても後の祭り。ここまで来たら、カットもしようと、嫌なことは忘れて、更に魔力を消費すべく、また石へと意識を集中した。
これにより、宗徳は気付かなかった。
いつの間にか、宗徳の周りには、凶暴だったはずの魔獣達が集い、寝転び、穏やかに昼寝を始めていたのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
また二週空きます。
よろしくお願いします◎
とりあえず、そのままでは何者にも、今出てきている魔素の濃度では、毒でしかないため、魔力として加工しておくことにする。
「ん~、魔素を魔力に変えるとしても……このまま俺が吸収し続けるわけにはいかんよな……」
一度宗徳自身の体を通すことで魔力とするのだ。今はそれを何に使うかを考えなくてはならない。現在進行形で、魔素は溢れているのだから。
「どっかに溜めとくには……」
そう呟いている間にも、帯のように町から引っ張ってきた魔素を自身の体に吸収する。これは、本来ならば一流の魔術師しか出来ないこと。その一流の魔術師も、この世界に居ても数人だろう。
そもそもが、濃すぎる魔素の毒性すらも中和する特性があるのが前提だ。その特異性に宗徳は気付いていない。
「う~む……何かに使うとか、込めるとか……あっ」
アレがあったと思い当たったのは、白欐の涙、【ダイヤ】だった。
「ちっさいし、先ずは実験だな」
魔素を変換した端から使ってしまえば、別に問題はない。ならば、遊びで使ってしまおう。他の使い道が浮かぶまで。そう決め、未だに白欐と黒欐が木の実採りに夢中になっていることもあり、その木の根元に腰を下ろし、木に背を預けて、あの日、無造作に拾って入れた袋を亜空間から出す。
「あ~、こんな入れ方したら、傷付くよな……ヤベえ……寿子に言うの忘れてた……」
報告してないなと、今更ながらに気付いた。恐らく、廉哉も忘れている。
「……まあ、この後言えばいいよな……いいよな? いい……よな……」
多分怒られない。怒られないといいなと、自分を納得させながらその袋から五つ程摘み出す。
白欐の涙なのだ。それほど大きくはない。一粒は、小さな指輪に付けるのに丁度良いくらいだ。
そして、摘みだした五つのダイヤに魔力を込める。すると、グニャリと柔らかくなり、結合して一つになる。手のひらにそれをコロンと落とす。すると、一粒のそれなりの大きさの丸い石となっていた。
「思った通りだな」
そうして、地道に五つずつを一つにする作業に没頭した。
出来上がったのは、百は下らない数のダイヤの原石。それも一つずつが親指の先くらいの大きさだ。
普通は、そこでこれはやっちまったなと気付く。だが、宗徳は、丁度五つずつで、一粒も余らなかったことを喜び、この後どうするかを考えていたため、そこに思い至らなかった。だから、そのまま事態をさらに悪化させる。
「確か、ダイヤには色もあった……ピンクとか、青とか、黄色とか……黒……」
どうしたら、この石に色が付くだろうか。それを考え出した宗徳には、もはや誰の忠告も耳に入らない様子で石と睨み合っている。
「なんか……微妙に色が……違う?」
光の加減かとも思ったが、微妙に色合いが一粒ずつ違うように見えた。
「魔力の込め方か? やってみるか……」
片手の掌に石を一つ置き、もう片方の手を翳して、魔力を浸透させるように注ぎ込む。すると、ゆっくりと色が変化していった。
「混ぜ具合だな……後は、属性か……」
宗徳にとっては、ダイヤとはいえ、白欐の涙だ。鷲掴みして、スーパーのポリ袋に放り込むくらいの、ちょっと綺麗だから、何かに使えるかなと思う程度の貴重性しかない。
それも、カットされていない原石の状態のため、余計に実感がなかったのだ。扱い方は、どうしても、その辺の石と同じになる。
全てを様々な色に変え終わった所で、ハッとした。
「しまった……全部色付きになっちまった……」
転がるのは、全て様々な色の未カットのダイヤの原石。透明なものはなかった。
「……やっちまったか……?」
気付いても後の祭り。ここまで来たら、カットもしようと、嫌なことは忘れて、更に魔力を消費すべく、また石へと意識を集中した。
これにより、宗徳は気付かなかった。
いつの間にか、宗徳の周りには、凶暴だったはずの魔獣達が集い、寝転び、穏やかに昼寝を始めていたのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
また二週空きます。
よろしくお願いします◎
66
お気に入りに追加
818
あなたにおすすめの小説
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる