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mission 13 魔女の来臨
129 残る爪痕
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ダンジョンを出た宗徳と廉哉は、白儷と黒儷を連れて徨流に乗り寿子達が待つ王都へ向かっていた。
「落ちても飛べるだろうが、気を付けろよ~」
徨流に乗ってから白儷と黒儷は、楽しそうに徨流の上をトントンと歩き回る。景色を見ながらなので、危なかっしい。
二匹も飛べるだろうが、こうして何かに乗って飛ぶというのは考えたこともなかったらしく、驚くほどはしゃいでいた。
《くるる~》
《ぐるっ》
「なんだ。なら、一緒に飛んでみたらどうだ? あ、待て。ここから飛ぶのはよくない。下に降りたらな」
《くっるる~♪》
《ぐ、ぐる……っ》
そうしようねと黒儷に擦り寄る白儷。それに黒儷は恥ずかしそうに応と答えた。
「なんて言ったんです?」
廉哉には二匹の先程の会話がわからない。なので、当然のように理解している様子の宗徳に後ろから確認する。
「ああ。誰かと一緒に飛ぶとかもしたことないって言うから。お互い一緒に飛んだらいいと言ってやったんだ。白儷はそうする~♪ って、黒儷はい、いけど……って答えてたよ」
「……黒儷さんはツンデレさんですね」
「は~、これがツンデレか。なるほど。素直になれない感じが可愛いのなっ。ただの恥ずかしがり屋じゃないのか」
なるほどなるほどと宗徳はしきりに頷いた。
「人見知りもしそうですね」
「大丈夫だろ。寿子ならめっちゃ可愛がるしな。迫り過ぎて逃げそうだが」
「律紀さんはどうなんです? もう一人の……善治さんの所の子はグイグイ行きそうですけど」
間違いなく治季は詰め寄っていくだろう。逃げ腰になる白儷と黒儷の姿が見えるようだった。
先に伝えておかなくてはと宗徳は二匹へ声をかける。
「白儷、黒儷。俺の妻を紹介する。それと、孫とその友達が二人だ。仲良くしてやってくれると嬉しい」
《くるる~》
《ぐるるっ》
翼を広げて当然だと返ってきたことに宗徳は思わず笑った。
しばらくして王都が見えて来た時。二匹の様子が変わった。
何かを感じ取ろうとする、少し緊張した気配を感じる。
「どうした……」
《くるる……くる……》
「歪み……ああ……勇者の召喚の儀式をしたばっかだ。それで、見えるだろ。地面が割れたり、隆起したりして、めちゃくちゃになってんだ」
白儷は、この場に歪みが生じていると伝えてきた。それは、間違いなく勇者召喚によってできた世界の歪みだろう。
「その歪みはまだあるってことだよな? 何かこの後も影響が出るか?」
《くる……》
大地へ加護を与えられないと言った。
《ぐるる……ぐるる》
今の自分たちの力では、どうにもできないのだと黒儷は頭をすくめる。
「そうか……いや、無理すんな。それに、こっちで何とかできるかもしれん。その時、相談するだろうから、一緒に聞いてくれ。俺じゃ理解できんかもしれんしなっ」
笑って見せれば、白儷も黒儷も目を丸くして首を伸ばした。役に立てないと、不甲斐ないと頭を埋もれさせていた二匹は、重く考えることはないのかと気持ちを切り替えたのだ。落ち込んだ空気は吹き飛ばせた。
「あの……なら、僕が召喚された後って、どうなってたんでしょう」
「そうだな……」
同じ歪みはあっただろうと予想できる。ならば、時間が解決してくれるのではないかと思えた。しかし、どうやら違うらしい。
《ぐるっ、ぐるるっ》
「……マジか……」
「え?」
廉哉には伝わらないんだったと、宗徳は通訳する。
「勝手には穴も塞がらんらしい」
「っ、なら、どうなってるんですか?」
「開いたままだった所に、また開けたからな。そのせいでこんな状態になったんだろうってよ」
「……」
上から見ると本当に酷い状態だ。城は宗徳が瓦礫を退かせたので、そこだけ空白になっている。そこを中心に同心円状に被害が広がったのがわかりやすい。
撤去作業は難航しているらしく、整った場所はない。外壁も一部壊れているようで、そこには兵達が固まっていた。食糧不足で凶暴化している魔獣達は、その弱くなった所にやってくるのだ。
「やべえな。外壁まで気が回らんかった」
「はい……結界も張ってるみたいですけど……脆そうです……」
「あれで本気か?」
見えたのは、何人もの魔術師達。お揃いのローブなので間違いないだろう。必死に手を突き出して魔獣を食い止めていた。
「ありゃあ、ダメだな。完全に弱い所だと見抜かれてやがる」
「……集まってきてますね……」
魔獣が、徐々にそこへと集まっているのが上からだとよく見えた。
「仕方ねえ。レンはこのまま徨流に乗って白儷と黒儷を寿子達んとこに連れてってくれ。俺は、あそこをどうにかしてくる」
「っ、分かりました」
今までの廉哉ならば、自分もと言ったかもしれない。けれど、神と再会し、思う所があったのだろう。
少しだけ我慢する様に息を詰めてから頷いた廉哉に、宗徳は後ろに体を捻って褒めるように、その頭を撫でた。
「っ……」
「頼むぞ」
「っ、はい!」
任されたことが嬉しいと、その表情から知れる。もう一人で頑張る必要はないのだ。神を封印したという憂いも消えたことで、廉哉は重い過去を振り払った。
ようやく彼は一歩を進めたのだ。
宗徳は、子どもが成長する姿を見て満足気に頷くと、徨流から飛び降りた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
また二週空きます。
よろしくお願いします◎
「落ちても飛べるだろうが、気を付けろよ~」
徨流に乗ってから白儷と黒儷は、楽しそうに徨流の上をトントンと歩き回る。景色を見ながらなので、危なかっしい。
二匹も飛べるだろうが、こうして何かに乗って飛ぶというのは考えたこともなかったらしく、驚くほどはしゃいでいた。
《くるる~》
《ぐるっ》
「なんだ。なら、一緒に飛んでみたらどうだ? あ、待て。ここから飛ぶのはよくない。下に降りたらな」
《くっるる~♪》
《ぐ、ぐる……っ》
そうしようねと黒儷に擦り寄る白儷。それに黒儷は恥ずかしそうに応と答えた。
「なんて言ったんです?」
廉哉には二匹の先程の会話がわからない。なので、当然のように理解している様子の宗徳に後ろから確認する。
「ああ。誰かと一緒に飛ぶとかもしたことないって言うから。お互い一緒に飛んだらいいと言ってやったんだ。白儷はそうする~♪ って、黒儷はい、いけど……って答えてたよ」
「……黒儷さんはツンデレさんですね」
「は~、これがツンデレか。なるほど。素直になれない感じが可愛いのなっ。ただの恥ずかしがり屋じゃないのか」
なるほどなるほどと宗徳はしきりに頷いた。
「人見知りもしそうですね」
「大丈夫だろ。寿子ならめっちゃ可愛がるしな。迫り過ぎて逃げそうだが」
「律紀さんはどうなんです? もう一人の……善治さんの所の子はグイグイ行きそうですけど」
間違いなく治季は詰め寄っていくだろう。逃げ腰になる白儷と黒儷の姿が見えるようだった。
先に伝えておかなくてはと宗徳は二匹へ声をかける。
「白儷、黒儷。俺の妻を紹介する。それと、孫とその友達が二人だ。仲良くしてやってくれると嬉しい」
《くるる~》
《ぐるるっ》
翼を広げて当然だと返ってきたことに宗徳は思わず笑った。
しばらくして王都が見えて来た時。二匹の様子が変わった。
何かを感じ取ろうとする、少し緊張した気配を感じる。
「どうした……」
《くるる……くる……》
「歪み……ああ……勇者の召喚の儀式をしたばっかだ。それで、見えるだろ。地面が割れたり、隆起したりして、めちゃくちゃになってんだ」
白儷は、この場に歪みが生じていると伝えてきた。それは、間違いなく勇者召喚によってできた世界の歪みだろう。
「その歪みはまだあるってことだよな? 何かこの後も影響が出るか?」
《くる……》
大地へ加護を与えられないと言った。
《ぐるる……ぐるる》
今の自分たちの力では、どうにもできないのだと黒儷は頭をすくめる。
「そうか……いや、無理すんな。それに、こっちで何とかできるかもしれん。その時、相談するだろうから、一緒に聞いてくれ。俺じゃ理解できんかもしれんしなっ」
笑って見せれば、白儷も黒儷も目を丸くして首を伸ばした。役に立てないと、不甲斐ないと頭を埋もれさせていた二匹は、重く考えることはないのかと気持ちを切り替えたのだ。落ち込んだ空気は吹き飛ばせた。
「あの……なら、僕が召喚された後って、どうなってたんでしょう」
「そうだな……」
同じ歪みはあっただろうと予想できる。ならば、時間が解決してくれるのではないかと思えた。しかし、どうやら違うらしい。
《ぐるっ、ぐるるっ》
「……マジか……」
「え?」
廉哉には伝わらないんだったと、宗徳は通訳する。
「勝手には穴も塞がらんらしい」
「っ、なら、どうなってるんですか?」
「開いたままだった所に、また開けたからな。そのせいでこんな状態になったんだろうってよ」
「……」
上から見ると本当に酷い状態だ。城は宗徳が瓦礫を退かせたので、そこだけ空白になっている。そこを中心に同心円状に被害が広がったのがわかりやすい。
撤去作業は難航しているらしく、整った場所はない。外壁も一部壊れているようで、そこには兵達が固まっていた。食糧不足で凶暴化している魔獣達は、その弱くなった所にやってくるのだ。
「やべえな。外壁まで気が回らんかった」
「はい……結界も張ってるみたいですけど……脆そうです……」
「あれで本気か?」
見えたのは、何人もの魔術師達。お揃いのローブなので間違いないだろう。必死に手を突き出して魔獣を食い止めていた。
「ありゃあ、ダメだな。完全に弱い所だと見抜かれてやがる」
「……集まってきてますね……」
魔獣が、徐々にそこへと集まっているのが上からだとよく見えた。
「仕方ねえ。レンはこのまま徨流に乗って白儷と黒儷を寿子達んとこに連れてってくれ。俺は、あそこをどうにかしてくる」
「っ、分かりました」
今までの廉哉ならば、自分もと言ったかもしれない。けれど、神と再会し、思う所があったのだろう。
少しだけ我慢する様に息を詰めてから頷いた廉哉に、宗徳は後ろに体を捻って褒めるように、その頭を撫でた。
「っ……」
「頼むぞ」
「っ、はい!」
任されたことが嬉しいと、その表情から知れる。もう一人で頑張る必要はないのだ。神を封印したという憂いも消えたことで、廉哉は重い過去を振り払った。
ようやく彼は一歩を進めたのだ。
宗徳は、子どもが成長する姿を見て満足気に頷くと、徨流から飛び降りた。
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よろしくお願いします◎
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