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mission 10 荒廃した町の支援
097 まあ、穏便に?
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2019. 4. 13
**********
こちらの世界に来てから、気配というものが良く分かるようになった。
これは、魔法ではない。感覚的なものが発達したのだ。こちらの者でも簡単ではない。宗徳はこちらへ来てから色々出来ることが増えため、こういうものかと思っており、大したことだとは感じていなかった。
「え~っと? あっちの陰に三人。向こうに四人。そんで教会の裏の方に六人か?」
動けなくなっている者を合わせればこの近くには結構人がいる。
だが、こちらの様子を明らかに窺っている様子の者はこの十三人だ。
「そんじゃ、まずは……っと」
一気に駆け出し、近い順から挨拶していく。まずは四人のグループだ。
「よぉ。なんの用だ?」
「っ!?」
「なっ、どうやってっ」
突然目の前に現れた宗徳に、彼らは完全に腰が引けていた。
見た目からしてこの町の住人だろう。年齢は二、三十代というところだ。
「妙なことしなけりゃこっちも手は出さん。どうする」
「……何もしない……」
「そうか。ならいい。なんか聞きたいこととかあるなら、後で聞いてやるよ。ちょい待っててくれや」
「あ、ああ……」
彼らは無害。ならば次と今度は三人のグループの所に飛んでいく。
文字通り大ジャンプで飛んでその男たちの背後に着地した。
「おめえらは何の用だ?」
「っ、わっ」
「しまッ」
「このっ」
咄嗟に宗徳に向かって抜いていた剣を振ってくる。
それを宗徳も先日手に入れた刀で難なく受け止めた。
「ひっ」
「っ!?」
「なっ!」
一人気の弱いのが混じっているなと変な感想を持つ。見れば、その一人は若い。まだ十代だろうか。それも少し良い服を着ているように見える。
どうやら、残りの二人は少年の護衛のようなものらしい。
「っ、逃げろっ」
「急げっ」
これに少年は首を振っていた。それも絶望したような顔で真っ青だ。よく見ると、彼もとても痩せている。
「おいおい。そっちが何もして来なければ俺もこれ以上、手は出さんぞ。ただ、ちゃんとどうしてここでこっちの様子を窺っていたのかって理由は聞くがな」
「……っ……こ、殺さないのか……」
「あんま、そういうことはしたくねえな。子どもらも居るしよ」
ここならば見えないとはいえ、手を汚してその手で子ども達の頭を撫でられるかと考えると嫌だ。
それが、子ども達の身を守ることだったとしても、宗徳には受け入れがたいことなのだ。
「……わ、わかった。説明させていただく……」
少年がそう答えたことで、護衛らしき男達もゆっくりと警戒しながらも剣を鞘に戻した。
「あ、でもちょい待っててくれ。まだもう一組、お客がいるんだ。そっちとも話し付けてくっから」
「わ、わかった……」
そうして、彼らの元を去ろうとする時、すれ違った青年の様子を見て、宗徳は小さなカバンを取り出す。二人用のお弁当を入れて行ける小さな四角い保冷用のカバンだ。
「育ちが良さそうなのに、唇カサカサじゃねぇか。腹も減ってるだろ。これ二人用だが、三人で分けて食え。飲み物もこうやってネジって開けて飲むんだぞ」
「っ……」
困惑する護衛の一人に手渡しながら中身の説明をする。中にあるのは野菜を挟んだロールパンがいくつか入っており、ペットボトルもどきの入れ物に麦茶が入っている。それが二本。
開け方を教えて押し付け、宗徳は教会の裏へ急いだ。
「おいおいおい。解体屋かなんかか?」
そこにいた六人の男達は、明らかに教会に侵入しようとしていた。
手にはハンマーや斧。それで教会の裏口をこじ開けようとしたらしいのだが、残念ながら結界に阻まれ、弾かれていた。
「なんで入れねえんだよ!」
「俺らも入れろよ!!」
「ガキどもっ、出てこいやっ!」
とにかくガラが悪い上に見た目も汚かった。
「お前ら……汚ねえ成りで入ろうとしてんじゃねぇ! 子どもらが病気になったらどうすんだ!!」
「っ!?」
「なんだあ!?」
宗徳は蹴り飛ばし、殴りつけ、踏み付けて男達を地面に沈めた。それはほんの数十秒の出来事だった。
「ったく、キレイに体洗って出直してきやがれってんだっ」
男達が持っていた斧などを取り上げ、男達を結界で覆う。それから水の魔法で巨大な水の玉を作り男達へ放った。
「っ、ぶっ」
「ぷはっ」
「げほっ」
溺れかけるほどの大量な水。結界は容れ物の役割を果たしており、男達は深めな小さなプールに入れられているようなものだ。
とはいえ、つま先は付く。
「ちょい温めてやるか。そんで回転!」
温水にしてやり、そのままグルグル回転が始まる。
「洗濯、洗濯っ」
回転だけではダメなので、複雑な揺れも追加する。薬草も入れ、男達は溺れかけながらも洗われていく。
「こんなもんか?」
殺菌の作用もある薬草風呂なので、それなりにキレイになったらしい。
水はそのまま地面にまく。乾燥した大地は、すぐにその水を吸ってしまった。
男達は目を回しながら結界の中に残されており、それを乾燥させる。
「よっしっ。これで多少はキレイになったろう」
そして、その場に放り出す。
宗徳は満足げに頷くと、男達はそのまま放置し、教会の表に戻った。
「待たせたな」
そこには、二組の男達が話しをすべく待っていた。
「そんじゃ、あっちに会議室あっから、そこに行こうや」
「……は、はい……」
教会の端。そこにある小さなドアを開けて宗徳は七人の男達を招き入れたのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
来週投稿予定です。
よろしくお願いします◎
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こちらの世界に来てから、気配というものが良く分かるようになった。
これは、魔法ではない。感覚的なものが発達したのだ。こちらの者でも簡単ではない。宗徳はこちらへ来てから色々出来ることが増えため、こういうものかと思っており、大したことだとは感じていなかった。
「え~っと? あっちの陰に三人。向こうに四人。そんで教会の裏の方に六人か?」
動けなくなっている者を合わせればこの近くには結構人がいる。
だが、こちらの様子を明らかに窺っている様子の者はこの十三人だ。
「そんじゃ、まずは……っと」
一気に駆け出し、近い順から挨拶していく。まずは四人のグループだ。
「よぉ。なんの用だ?」
「っ!?」
「なっ、どうやってっ」
突然目の前に現れた宗徳に、彼らは完全に腰が引けていた。
見た目からしてこの町の住人だろう。年齢は二、三十代というところだ。
「妙なことしなけりゃこっちも手は出さん。どうする」
「……何もしない……」
「そうか。ならいい。なんか聞きたいこととかあるなら、後で聞いてやるよ。ちょい待っててくれや」
「あ、ああ……」
彼らは無害。ならば次と今度は三人のグループの所に飛んでいく。
文字通り大ジャンプで飛んでその男たちの背後に着地した。
「おめえらは何の用だ?」
「っ、わっ」
「しまッ」
「このっ」
咄嗟に宗徳に向かって抜いていた剣を振ってくる。
それを宗徳も先日手に入れた刀で難なく受け止めた。
「ひっ」
「っ!?」
「なっ!」
一人気の弱いのが混じっているなと変な感想を持つ。見れば、その一人は若い。まだ十代だろうか。それも少し良い服を着ているように見える。
どうやら、残りの二人は少年の護衛のようなものらしい。
「っ、逃げろっ」
「急げっ」
これに少年は首を振っていた。それも絶望したような顔で真っ青だ。よく見ると、彼もとても痩せている。
「おいおい。そっちが何もして来なければ俺もこれ以上、手は出さんぞ。ただ、ちゃんとどうしてここでこっちの様子を窺っていたのかって理由は聞くがな」
「……っ……こ、殺さないのか……」
「あんま、そういうことはしたくねえな。子どもらも居るしよ」
ここならば見えないとはいえ、手を汚してその手で子ども達の頭を撫でられるかと考えると嫌だ。
それが、子ども達の身を守ることだったとしても、宗徳には受け入れがたいことなのだ。
「……わ、わかった。説明させていただく……」
少年がそう答えたことで、護衛らしき男達もゆっくりと警戒しながらも剣を鞘に戻した。
「あ、でもちょい待っててくれ。まだもう一組、お客がいるんだ。そっちとも話し付けてくっから」
「わ、わかった……」
そうして、彼らの元を去ろうとする時、すれ違った青年の様子を見て、宗徳は小さなカバンを取り出す。二人用のお弁当を入れて行ける小さな四角い保冷用のカバンだ。
「育ちが良さそうなのに、唇カサカサじゃねぇか。腹も減ってるだろ。これ二人用だが、三人で分けて食え。飲み物もこうやってネジって開けて飲むんだぞ」
「っ……」
困惑する護衛の一人に手渡しながら中身の説明をする。中にあるのは野菜を挟んだロールパンがいくつか入っており、ペットボトルもどきの入れ物に麦茶が入っている。それが二本。
開け方を教えて押し付け、宗徳は教会の裏へ急いだ。
「おいおいおい。解体屋かなんかか?」
そこにいた六人の男達は、明らかに教会に侵入しようとしていた。
手にはハンマーや斧。それで教会の裏口をこじ開けようとしたらしいのだが、残念ながら結界に阻まれ、弾かれていた。
「なんで入れねえんだよ!」
「俺らも入れろよ!!」
「ガキどもっ、出てこいやっ!」
とにかくガラが悪い上に見た目も汚かった。
「お前ら……汚ねえ成りで入ろうとしてんじゃねぇ! 子どもらが病気になったらどうすんだ!!」
「っ!?」
「なんだあ!?」
宗徳は蹴り飛ばし、殴りつけ、踏み付けて男達を地面に沈めた。それはほんの数十秒の出来事だった。
「ったく、キレイに体洗って出直してきやがれってんだっ」
男達が持っていた斧などを取り上げ、男達を結界で覆う。それから水の魔法で巨大な水の玉を作り男達へ放った。
「っ、ぶっ」
「ぷはっ」
「げほっ」
溺れかけるほどの大量な水。結界は容れ物の役割を果たしており、男達は深めな小さなプールに入れられているようなものだ。
とはいえ、つま先は付く。
「ちょい温めてやるか。そんで回転!」
温水にしてやり、そのままグルグル回転が始まる。
「洗濯、洗濯っ」
回転だけではダメなので、複雑な揺れも追加する。薬草も入れ、男達は溺れかけながらも洗われていく。
「こんなもんか?」
殺菌の作用もある薬草風呂なので、それなりにキレイになったらしい。
水はそのまま地面にまく。乾燥した大地は、すぐにその水を吸ってしまった。
男達は目を回しながら結界の中に残されており、それを乾燥させる。
「よっしっ。これで多少はキレイになったろう」
そして、その場に放り出す。
宗徳は満足げに頷くと、男達はそのまま放置し、教会の表に戻った。
「待たせたな」
そこには、二組の男達が話しをすべく待っていた。
「そんじゃ、あっちに会議室あっから、そこに行こうや」
「……は、はい……」
教会の端。そこにある小さなドアを開けて宗徳は七人の男達を招き入れたのだった。
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来週投稿予定です。
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