87 / 197
mission 9 東大陸の調査
087 母親ですし
しおりを挟む
2019. 1. 5
**********
見えてきた港には、聞いていた通り大きな船があるようには見えなかった。
「港も小さいなぁ」
「船の数もそれほど多くありませんからね」
こちら側の大陸との間にある海にいるというリヴァイアサンが理由なのだろう。
「あ~、でも距離あるなぁ。向こう側の大陸がこの高さでようやく薄っすらあるように見える感じか」
「そうですね。確か二日はかかったと思います。風向きとか、潮の流れとかありますから、平均三日と聞きました」
「遠いな」
三日も海の上。退屈しそうだ。
「そんで? お前の母親はどこに居んだ?」
《グルル~っ》
徨流は任せろというようにスピードをあげる。
それからしばらく海の上を進むと、丁度大陸と大陸の中間くらいの位置だろうか。大きな渦が見えたかと思うと、そこからニュッと長細い何かが飛び出してきた。
「おお!?」
「あっ、あれですっ、リヴァイアサンですっ」
渦の中心から現れたのは、青い体の尖った顔と長いトビウオのようなヒレを持つリヴァイアサンだ。
「ほぉ……見た目違うな」
龍神様と呼べる東洋の龍というイメージ通りの姿をしている徨流に対し、こちらは派手な魚か蛇かという姿。宗徳はこれがリヴァイアサンなのかと感心しながら観察した。
「あれが母ちゃんか?」
《グルっ》
嬉しそうな徨流。しかし、リヴァイアサンの方はじっとこちらを見つめて微動だにしない。警戒されているのかと、宗徳と廉哉は緊張気味に息を詰めた。
不意にスッと目が細められた気がした。
《ーー、ー~》
まるでオカリナを吹き損じたときのような、こもった高い音が響いた。
《グルっ、グルル~ゥ》
《~~、、ーー、ー》
その音はリヴァイアサンから響いてきているのだと気付いた宗徳は、それが鳴き声であることを理解する。
今のところ、徨流や宗徳達を敵と認識していないようだ。親子の会話の最中に口を出す気もないので、邪魔にならないように注意する。
一方、廉哉はリヴァイアサンの鳴き声に聞き惚れていた。
「きれい……宗徳さんは何て言っているか分かりますか?」
「いや、徨流ので何となく内容が理解出来るって感じだな。今は俺らの説明をしてるみたいだ」
リヴァイアサンの方から、背中に乗せているのは誰かと聞かれたらしい徨流は、一生懸命説明してくれていた。
『困っているところを助けてくれた』
『住処を移した』
『大好きだから一緒にいる』
そんなことを徨流は必死に伝えているのだ。
「やっぱり警戒されてるんでしょうか……」
「まぁ、普通の親なら、子どもの交友関係ってのは気になるだろ」
「そういうものですか」
しばらくして気配が和らいだのを見ると、敵認定は回避されたらしい。
「お、決着したな」
戦ったわけでもないし、母であるリヴァイアサンは最終的に聞き手に回っていたので問題もなかったのだが、落ち着いたので良しとする。
そこでリヴァイアサンがついて来いというように一度伸び上がって鳴いた。
《~~、~~ーーー》
《グルル♪》
「おお!?」
「どこに行くんです!?」
徨流が嬉しそうに急激に上昇すると、リヴァイアサンが潜っていく渦の中に躊躇いもなく突入していったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、土曜12日です。
よろしくお願いします◎
**********
見えてきた港には、聞いていた通り大きな船があるようには見えなかった。
「港も小さいなぁ」
「船の数もそれほど多くありませんからね」
こちら側の大陸との間にある海にいるというリヴァイアサンが理由なのだろう。
「あ~、でも距離あるなぁ。向こう側の大陸がこの高さでようやく薄っすらあるように見える感じか」
「そうですね。確か二日はかかったと思います。風向きとか、潮の流れとかありますから、平均三日と聞きました」
「遠いな」
三日も海の上。退屈しそうだ。
「そんで? お前の母親はどこに居んだ?」
《グルル~っ》
徨流は任せろというようにスピードをあげる。
それからしばらく海の上を進むと、丁度大陸と大陸の中間くらいの位置だろうか。大きな渦が見えたかと思うと、そこからニュッと長細い何かが飛び出してきた。
「おお!?」
「あっ、あれですっ、リヴァイアサンですっ」
渦の中心から現れたのは、青い体の尖った顔と長いトビウオのようなヒレを持つリヴァイアサンだ。
「ほぉ……見た目違うな」
龍神様と呼べる東洋の龍というイメージ通りの姿をしている徨流に対し、こちらは派手な魚か蛇かという姿。宗徳はこれがリヴァイアサンなのかと感心しながら観察した。
「あれが母ちゃんか?」
《グルっ》
嬉しそうな徨流。しかし、リヴァイアサンの方はじっとこちらを見つめて微動だにしない。警戒されているのかと、宗徳と廉哉は緊張気味に息を詰めた。
不意にスッと目が細められた気がした。
《ーー、ー~》
まるでオカリナを吹き損じたときのような、こもった高い音が響いた。
《グルっ、グルル~ゥ》
《~~、、ーー、ー》
その音はリヴァイアサンから響いてきているのだと気付いた宗徳は、それが鳴き声であることを理解する。
今のところ、徨流や宗徳達を敵と認識していないようだ。親子の会話の最中に口を出す気もないので、邪魔にならないように注意する。
一方、廉哉はリヴァイアサンの鳴き声に聞き惚れていた。
「きれい……宗徳さんは何て言っているか分かりますか?」
「いや、徨流ので何となく内容が理解出来るって感じだな。今は俺らの説明をしてるみたいだ」
リヴァイアサンの方から、背中に乗せているのは誰かと聞かれたらしい徨流は、一生懸命説明してくれていた。
『困っているところを助けてくれた』
『住処を移した』
『大好きだから一緒にいる』
そんなことを徨流は必死に伝えているのだ。
「やっぱり警戒されてるんでしょうか……」
「まぁ、普通の親なら、子どもの交友関係ってのは気になるだろ」
「そういうものですか」
しばらくして気配が和らいだのを見ると、敵認定は回避されたらしい。
「お、決着したな」
戦ったわけでもないし、母であるリヴァイアサンは最終的に聞き手に回っていたので問題もなかったのだが、落ち着いたので良しとする。
そこでリヴァイアサンがついて来いというように一度伸び上がって鳴いた。
《~~、~~ーーー》
《グルル♪》
「おお!?」
「どこに行くんです!?」
徨流が嬉しそうに急激に上昇すると、リヴァイアサンが潜っていく渦の中に躊躇いもなく突入していったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、土曜12日です。
よろしくお願いします◎
56
お気に入りに追加
818
あなたにおすすめの小説
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました
杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」
王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。
第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。
確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。
唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。
もう味方はいない。
誰への義理もない。
ならば、もうどうにでもなればいい。
アレクシアはスッと背筋を伸ばした。
そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺!
◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。
◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。
◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。
◆全8話、最終話だけ少し長めです。
恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。
◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。
◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03)
◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます!
9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる