446 / 475
第十三章
551 遠慮はしていられない
しおりを挟む
コウヤは会議を終えると、そのまま部屋に戻ろうとニールだけを連れて移動していた。
今後は、コウヤが間に入らなくても、タリスと商業ギルドのウィルズがやる気になってくれたので、任せても大丈夫そうだ。
「これで一つ、気になってたことが解決かな。パックンやダンゴも協力するみたいだし、商業ギルドの人たちは大変そうだけど」
ウィルズやその補佐達は、ずっと顔色が悪かった。だが、最後は自分達もしっかりと口を出さないと、もっと大変なことになると理解し、顔を赤らめながら注文を付けていた。
それを、同じく思い出したのだろう。ニールが苦笑する。
「商業ギルドの方々は、遠慮がなくなりましたね」
「ふふっ。うん。前回はまだ、距離感があったけど、ちょっと必死な感じで距離を一気に詰めて来てたかも」
「あのまま、黙っていては潰れていたでしょう。私でも、遠慮はしていられないと判断したと思います」
「そうだね。後で丸投げされそうだし」
「はい。タリス様ならばそうされたでしょう」
自分達が満足したら、あとはよろしくと丸投げしていたに違いない。この時点から食い込んでいかなければ、あとで泣くどころの騒ぎではなかったはずだ。
「途中でもう、面倒そうな顔していたしねっ」
「やはりそうですか……タリス様は容赦がない……」
「年の功ってのもあるかも。投げた方が良いものって、判断が早いから。それに、統括をしていたからだろうけど、その後の面倒くささ? が分かるのかも」
「ありそうです……」
上に立ったことがあるから、丸投げされた時の面倒臭ささが分かるのだろう。経験から、回避するタイミングを知っているようだ。
そんな話をして部屋の近くまで来たところで、コウヤに会いに来たのだろう。リルファムが駆け寄って来た。
「コウヤにいさまぁっ」
嬉しそうに抱きついてきたリルファムを、コウヤは受け止める。
「リル。授業、終わったの?」
「はいっ。おわってすぐにきました!」
「ふふっ。そっか。これからオヤツでもしようと思ってたんだ。一緒にどうかな?」
「っ、ごいっしょします!」
「良かった。ビルワのタルトとプーラのゼリーを作ったんだ」
「にいさまがつくったものですか!? ぜったいにたべます!」
「そう。すぐに用意するね」
「はい!」
リルファムとオヤツをしていれば、当たり前のようにシンリームやイスリナ、ミラルファがやって来て、一緒にそれを楽しんだ。
そこで、ミラルファがコウヤに確認したいことがあったらしく、ニールの淹れてくれた紅茶を飲みながらそれを聞いた。
「コウヤさん。前に言っていた『師弟コンパ』? だったかしら、師匠として技術を継承したい人と弟子入りしたい子達で顔合わせをするって言う話はどうなりました?」
「あ~……それなんですが……」
「何か問題が?」
コウヤが言いにくそうにする様子を見て、ミラルファが首を傾げる。
「サニールさん達がお友達とか、知り合いに話したらしくて……」
「……叔父が何か困らせることを……?」
ニールが少し不機嫌そうに問いかけた。それに大したことではないと微笑みながらコウヤは答える。
「同じように弟子を取りたいけど、素質のありそうな人に巡り会えないって悩んでいた人が結構いたらしいんだ」
「まあっ。でもそうよね。出会わないと分からないし」
「ええ。それで、この前の迷宮化の時の映像を観て、その素質ある人を見つけたらしくて」
「あら~、いいじゃないっ」
「はい。悪いことではないですよね。ただ、そこで観ただけなので、会えないだろうと思っていた所に、この話があったことで、それならばと問い合わせが殺到したんです」
「……あっ、映像で観た子を探して欲しいって?」
「はい」
「「……」」
ミラルファとニールは、それは見つかるのだろうかと顔を見合わせて、目だけで確認し合っている。
「なので、専用の問い合わせの部署を、臨時でギルドに設けました。あの時の映像を見せながら、確認しています」
「大変ね……」
「はい。なので、まだ少し時間がかかりそうです」
「そう……私も確認させてもらおうかしら」
「え? お祖母様も、弟子を? 何の……」
「ふふっ」
ミラルファは楽しそうに笑うだけで誤魔化していた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
無料話もうすぐ終了です!
この機会に読み返しもどうぞ。
今後は、コウヤが間に入らなくても、タリスと商業ギルドのウィルズがやる気になってくれたので、任せても大丈夫そうだ。
「これで一つ、気になってたことが解決かな。パックンやダンゴも協力するみたいだし、商業ギルドの人たちは大変そうだけど」
ウィルズやその補佐達は、ずっと顔色が悪かった。だが、最後は自分達もしっかりと口を出さないと、もっと大変なことになると理解し、顔を赤らめながら注文を付けていた。
それを、同じく思い出したのだろう。ニールが苦笑する。
「商業ギルドの方々は、遠慮がなくなりましたね」
「ふふっ。うん。前回はまだ、距離感があったけど、ちょっと必死な感じで距離を一気に詰めて来てたかも」
「あのまま、黙っていては潰れていたでしょう。私でも、遠慮はしていられないと判断したと思います」
「そうだね。後で丸投げされそうだし」
「はい。タリス様ならばそうされたでしょう」
自分達が満足したら、あとはよろしくと丸投げしていたに違いない。この時点から食い込んでいかなければ、あとで泣くどころの騒ぎではなかったはずだ。
「途中でもう、面倒そうな顔していたしねっ」
「やはりそうですか……タリス様は容赦がない……」
「年の功ってのもあるかも。投げた方が良いものって、判断が早いから。それに、統括をしていたからだろうけど、その後の面倒くささ? が分かるのかも」
「ありそうです……」
上に立ったことがあるから、丸投げされた時の面倒臭ささが分かるのだろう。経験から、回避するタイミングを知っているようだ。
そんな話をして部屋の近くまで来たところで、コウヤに会いに来たのだろう。リルファムが駆け寄って来た。
「コウヤにいさまぁっ」
嬉しそうに抱きついてきたリルファムを、コウヤは受け止める。
「リル。授業、終わったの?」
「はいっ。おわってすぐにきました!」
「ふふっ。そっか。これからオヤツでもしようと思ってたんだ。一緒にどうかな?」
「っ、ごいっしょします!」
「良かった。ビルワのタルトとプーラのゼリーを作ったんだ」
「にいさまがつくったものですか!? ぜったいにたべます!」
「そう。すぐに用意するね」
「はい!」
リルファムとオヤツをしていれば、当たり前のようにシンリームやイスリナ、ミラルファがやって来て、一緒にそれを楽しんだ。
そこで、ミラルファがコウヤに確認したいことがあったらしく、ニールの淹れてくれた紅茶を飲みながらそれを聞いた。
「コウヤさん。前に言っていた『師弟コンパ』? だったかしら、師匠として技術を継承したい人と弟子入りしたい子達で顔合わせをするって言う話はどうなりました?」
「あ~……それなんですが……」
「何か問題が?」
コウヤが言いにくそうにする様子を見て、ミラルファが首を傾げる。
「サニールさん達がお友達とか、知り合いに話したらしくて……」
「……叔父が何か困らせることを……?」
ニールが少し不機嫌そうに問いかけた。それに大したことではないと微笑みながらコウヤは答える。
「同じように弟子を取りたいけど、素質のありそうな人に巡り会えないって悩んでいた人が結構いたらしいんだ」
「まあっ。でもそうよね。出会わないと分からないし」
「ええ。それで、この前の迷宮化の時の映像を観て、その素質ある人を見つけたらしくて」
「あら~、いいじゃないっ」
「はい。悪いことではないですよね。ただ、そこで観ただけなので、会えないだろうと思っていた所に、この話があったことで、それならばと問い合わせが殺到したんです」
「……あっ、映像で観た子を探して欲しいって?」
「はい」
「「……」」
ミラルファとニールは、それは見つかるのだろうかと顔を見合わせて、目だけで確認し合っている。
「なので、専用の問い合わせの部署を、臨時でギルドに設けました。あの時の映像を見せながら、確認しています」
「大変ね……」
「はい。なので、まだ少し時間がかかりそうです」
「そう……私も確認させてもらおうかしら」
「え? お祖母様も、弟子を? 何の……」
「ふふっ」
ミラルファは楽しそうに笑うだけで誤魔化していた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
無料話もうすぐ終了です!
この機会に読み返しもどうぞ。
328
お気に入りに追加
11,119
あなたにおすすめの小説


【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS
himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。
えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。
ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ!
アルファポリス恋愛ランキング入りしました!
読んでくれた皆様ありがとうございます。
連載希望のコメントをいただきましたので、
連載に向け準備中です。
*他サイトでも公開中
なろう日間総合ランキング2位に入りました!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。