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第十三章
545 よく反省するように!
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日が暮れる頃までイスリナとミラルファによって、『お前達は王妃になど相応しくない』『常識も知らないのか』『人としてマズいだろう』とひたすらダメ出しを食らう話し合いが続いた。
これにより、聖女達は、聖魔教会に引き取られる時はとても静かだった。
「……何でしょう……何も食べていないのに、お腹いっぱいな気がします……」
「疲れた……聞いてるだけなのに、すごく……」
「そんなに喋ってないのに、喋り疲れた? みたいな……謎……」
神官達に連行されて来た三人は、先ずお風呂に入れられた。聖女のトレードマークである純真さをアピールするための真っ白なローブは回収され、一般的な住民達が着るような上下が渡された。
当然、文句を言うのはわかっていた。
「私たちの服は!?」
「あれは、聖女の特別な服なのよ!?」
「こんな普通の服着れるわけないわ!」
下着だけを身につけた状態で喚く三人。そこに、リスティアンがやって来て手を叩いた。
パンパンパン!
「はいはいはい。相変わらずよね。神教国がほぼ国として成り立たなくなってるのに、まだ聖女だとか言ってんのバカじゃない?」
「……あなた……リスティアン?」
「何であんたがここに?」
「その服、ここの人たちが着てるやつ……」
リスティアンは、元同僚である聖女達が動揺する中、彼らに呆れた目を向ける。
「今の私はリアンよ。もう、あんなクソみたいな所で生きてた私じゃないの」
「「「……は?」」」
意味が分からないと混乱する三人。そんなのはどうでも良いとリスティアンは続けた。
「さっさとその服着なさいよ。ってか、あんた達って、本当にバカだったのね。あの方の母親に本気でなれると思ったの? 頭腐ってんじゃない?」
「「「……は?」」」
「あんた達が元同僚とか、恥ずか死ぬかと思ったわ」
「「「……っ」」」
「ぼけっとしてないで、早く着ろって言ってんのっ。下着姿でワガママ言うとか、子どもかっ」
「「「っ、なっ」」」
「さっさとしろ! 張っ倒すぞ!」
「「「っ!!」」」
三人はリスティアンから発せられた威圧に腰を抜かした。
そこに、サーナがやって来る。
「リアン? 口が悪くなっていますよ」
「はっ、サーナお姉様! 申し訳ありません! このグズ共がお時間を取らせておりまして!」
「そうですね。そろそろ神官達の湯浴みの時間ですからね」
「はい! すぐに! すぐに部屋に放り込みます! あんた達! ぼさっとするなって言ってんでしょ!!」
「「「ひっ!!」」」
もう三人には、かつてのリスティアンの印象が霞んでいた。衝撃でこれは別人だと認識しはじめている。
「落ち着きなさい。リアン。あなた方も、これ以上この子を怒らせないように動いた方が良いですよ」
「「「はいっっっ」」」
恐怖に突き動かされ、三人は涙を滲ませながら服を着ていく。膝丈のワンピースに下はズボンだ。彼女達には着たことのない服。下々の者が着る服だと認識している。着たくはない。それは、自分達が下に落ちるということ。だが、着なければ恐怖はずっと続くのではないかと感じていた。文句も言わずに身に付けた。
「最初っからそうやって、口より手を動かせば良いのよ。ほら、行くわよ」
「「「っ……」」」
「返事!」
「「「っ、はいっ!」」」
カタカタと体が震えるのは、まだリスティアンが威圧を向けているからだ。だが、それが分からない三人は、なぜ自分たちが震えているのかも分からない恐怖に、ただ従う。
「ではサーナお姉様。こちらはお任せください」
「ええ。頼みましたよ」
「はい! ついて来なさい!」
「「「はい!」」」
突き動かされるままに、リスティアンについていく三人。
そんな様子を感じながら、リスティアンは地下の階段へ向かう。
「これから、きっちり反省し、自分自身と向き合い、悔い改めるまで地下の独居部屋で過ごしてもらいます。当面の間、食事は朝と夕の二回。部屋に運びます。朝の七時と夜の七時です。二回とも八時に回収に来ますから、それまでに食べるように」
「「「……っ」」」
「部屋には、史実書が置いてあります。正しい世界の史実を記したものです。神教国の罪、人の罪を知り、自分たちの愚かさを確認してください」
「「「……っ」」」
「それと、薬草辞典と計算問題集と史実書を元にした読解問題集、日常の常識問題集があります。問題集は、一日各二、三ページずつやるように。辞典も読んで一週間に一度、進捗を確認します」
「「「……っ??」」」
三人は顔を見合わせる。そんな様子も、ここで鍛えられたリスティアンには手に取るように分かる。だが、振り向くことなく尚も続けた。
「あなた達はまだ理解していないようですが、神教国はもうすぐ消えます。帰る場所、比護される場所はなくなるんです。今回のことで、この国だけでなく他国にもあなた方のバカさ加減は大々的に知られていくでしょう」
「……何……それ……」
「今日のあなた達の城の前での言動、この国に来るまでの行動は全ての国の民が知る所になったということです」
「……え?」
壁に映し出されていた映像だけでなく、これまでの国と国の間の門や宿でのやり取りの映像も、聖魔教の神官達によって密かに収録されていたのだ。
「後で見せてあげますよ。今夜はそれを観ながら眠ると良いわ。私なら、恥ずかし過ぎて寝られないけど」
「「「……?」」」
首を傾げる三人。だが、リスティアンは構わない。
「まあ、それは置いておいて、一般市民として生きていけるように常識を身に付けてください。落ち着いたら、掃除や洗濯の仕方を教えます。それから薬草採取の勉強。これでなんとか生きていけますからね。料理は……追々で」
「「「……」」」
「さっさと独り立ちしてください。本当は顔も見たくないので」
「「「……っ」」」
本気でリスティアンが嫌っているのは、三人も理解できたようだ。
「部屋はここです。一つ置きに使ってもらいます。いいですか。よく反省するように!」
「「「っ……」」」
一人ずつ、別の部屋に入ると、ドアをしっかりと閉められる。
しばらく呆然としていた三人だが、部屋の中を確認し、机の上にある問題集などを確認していれば、リスティアンが食事を運んで来る。
ドアには、下の方に食事のお膳を差し入れられる窓が付いており、ドアを開けなくてもそこからやり取りすることができた。
ドアを開ける気がないのだと知り、三人は状況をまた一つ理解する。
そして、その夜。部屋の壁にあるモニターに、編集された三人の愚行が映し出された。時間にして二時間。
住民達の反応や、意見なども入れられており、自分たちの行いが全く受け入れられないものだったのだとここでようやく気付く。
子どもにまで『おかしなおんなのひとたち』と評されていたことに、三人は羞恥心を知ったのだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
今年もよろしくお願いします!
これにより、聖女達は、聖魔教会に引き取られる時はとても静かだった。
「……何でしょう……何も食べていないのに、お腹いっぱいな気がします……」
「疲れた……聞いてるだけなのに、すごく……」
「そんなに喋ってないのに、喋り疲れた? みたいな……謎……」
神官達に連行されて来た三人は、先ずお風呂に入れられた。聖女のトレードマークである純真さをアピールするための真っ白なローブは回収され、一般的な住民達が着るような上下が渡された。
当然、文句を言うのはわかっていた。
「私たちの服は!?」
「あれは、聖女の特別な服なのよ!?」
「こんな普通の服着れるわけないわ!」
下着だけを身につけた状態で喚く三人。そこに、リスティアンがやって来て手を叩いた。
パンパンパン!
「はいはいはい。相変わらずよね。神教国がほぼ国として成り立たなくなってるのに、まだ聖女だとか言ってんのバカじゃない?」
「……あなた……リスティアン?」
「何であんたがここに?」
「その服、ここの人たちが着てるやつ……」
リスティアンは、元同僚である聖女達が動揺する中、彼らに呆れた目を向ける。
「今の私はリアンよ。もう、あんなクソみたいな所で生きてた私じゃないの」
「「「……は?」」」
意味が分からないと混乱する三人。そんなのはどうでも良いとリスティアンは続けた。
「さっさとその服着なさいよ。ってか、あんた達って、本当にバカだったのね。あの方の母親に本気でなれると思ったの? 頭腐ってんじゃない?」
「「「……は?」」」
「あんた達が元同僚とか、恥ずか死ぬかと思ったわ」
「「「……っ」」」
「ぼけっとしてないで、早く着ろって言ってんのっ。下着姿でワガママ言うとか、子どもかっ」
「「「っ、なっ」」」
「さっさとしろ! 張っ倒すぞ!」
「「「っ!!」」」
三人はリスティアンから発せられた威圧に腰を抜かした。
そこに、サーナがやって来る。
「リアン? 口が悪くなっていますよ」
「はっ、サーナお姉様! 申し訳ありません! このグズ共がお時間を取らせておりまして!」
「そうですね。そろそろ神官達の湯浴みの時間ですからね」
「はい! すぐに! すぐに部屋に放り込みます! あんた達! ぼさっとするなって言ってんでしょ!!」
「「「ひっ!!」」」
もう三人には、かつてのリスティアンの印象が霞んでいた。衝撃でこれは別人だと認識しはじめている。
「落ち着きなさい。リアン。あなた方も、これ以上この子を怒らせないように動いた方が良いですよ」
「「「はいっっっ」」」
恐怖に突き動かされ、三人は涙を滲ませながら服を着ていく。膝丈のワンピースに下はズボンだ。彼女達には着たことのない服。下々の者が着る服だと認識している。着たくはない。それは、自分達が下に落ちるということ。だが、着なければ恐怖はずっと続くのではないかと感じていた。文句も言わずに身に付けた。
「最初っからそうやって、口より手を動かせば良いのよ。ほら、行くわよ」
「「「っ……」」」
「返事!」
「「「っ、はいっ!」」」
カタカタと体が震えるのは、まだリスティアンが威圧を向けているからだ。だが、それが分からない三人は、なぜ自分たちが震えているのかも分からない恐怖に、ただ従う。
「ではサーナお姉様。こちらはお任せください」
「ええ。頼みましたよ」
「はい! ついて来なさい!」
「「「はい!」」」
突き動かされるままに、リスティアンについていく三人。
そんな様子を感じながら、リスティアンは地下の階段へ向かう。
「これから、きっちり反省し、自分自身と向き合い、悔い改めるまで地下の独居部屋で過ごしてもらいます。当面の間、食事は朝と夕の二回。部屋に運びます。朝の七時と夜の七時です。二回とも八時に回収に来ますから、それまでに食べるように」
「「「……っ」」」
「部屋には、史実書が置いてあります。正しい世界の史実を記したものです。神教国の罪、人の罪を知り、自分たちの愚かさを確認してください」
「「「……っ」」」
「それと、薬草辞典と計算問題集と史実書を元にした読解問題集、日常の常識問題集があります。問題集は、一日各二、三ページずつやるように。辞典も読んで一週間に一度、進捗を確認します」
「「「……っ??」」」
三人は顔を見合わせる。そんな様子も、ここで鍛えられたリスティアンには手に取るように分かる。だが、振り向くことなく尚も続けた。
「あなた達はまだ理解していないようですが、神教国はもうすぐ消えます。帰る場所、比護される場所はなくなるんです。今回のことで、この国だけでなく他国にもあなた方のバカさ加減は大々的に知られていくでしょう」
「……何……それ……」
「今日のあなた達の城の前での言動、この国に来るまでの行動は全ての国の民が知る所になったということです」
「……え?」
壁に映し出されていた映像だけでなく、これまでの国と国の間の門や宿でのやり取りの映像も、聖魔教の神官達によって密かに収録されていたのだ。
「後で見せてあげますよ。今夜はそれを観ながら眠ると良いわ。私なら、恥ずかし過ぎて寝られないけど」
「「「……?」」」
首を傾げる三人。だが、リスティアンは構わない。
「まあ、それは置いておいて、一般市民として生きていけるように常識を身に付けてください。落ち着いたら、掃除や洗濯の仕方を教えます。それから薬草採取の勉強。これでなんとか生きていけますからね。料理は……追々で」
「「「……」」」
「さっさと独り立ちしてください。本当は顔も見たくないので」
「「「……っ」」」
本気でリスティアンが嫌っているのは、三人も理解できたようだ。
「部屋はここです。一つ置きに使ってもらいます。いいですか。よく反省するように!」
「「「っ……」」」
一人ずつ、別の部屋に入ると、ドアをしっかりと閉められる。
しばらく呆然としていた三人だが、部屋の中を確認し、机の上にある問題集などを確認していれば、リスティアンが食事を運んで来る。
ドアには、下の方に食事のお膳を差し入れられる窓が付いており、ドアを開けなくてもそこからやり取りすることができた。
ドアを開ける気がないのだと知り、三人は状況をまた一つ理解する。
そして、その夜。部屋の壁にあるモニターに、編集された三人の愚行が映し出された。時間にして二時間。
住民達の反応や、意見なども入れられており、自分たちの行いが全く受け入れられないものだったのだとここでようやく気付く。
子どもにまで『おかしなおんなのひとたち』と評されていたことに、三人は羞恥心を知ったのだった。
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