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第十三章
539 美女ねえ……
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聖女達は呆然と見ていることしかできなかったようだ。
その盛り上がりは、彼女達にとっては未知のもので、理解できなかったというのもあるだろう。
そして、全てが終了し、見ていた誰もが健闘を讃え、勝利報酬としての宮廷料理人お手製のサンドを頬張る者達を羨ましがった。
そんな中でニールが告げる。
『これにて、ゲームは終了となりますが、こちらのゲームや料理につきましては、コウヤ様をはじめとして上層部にて今後の運用を検討しております。以降のお知らせをお待ちください』
「「「「「っ、おぉぉぉぉっ」」」」」
「「「「「コウヤ様ぁぁぁぉ、お願いしまぁぁあす!」」」」」
そんな声援が城に向かって送られた。
ニールが下がり、さあ次はとジルファスが前に出る。その視線の先には聖女達が居る。住民達は思い出した。
「そういえば……」
「居たんだっけ」
「存在忘れてたわ……」
「あいつら、静かに出来るんだな」
「それなっ」
住民達は、完全に聖女達の存在を忘れていた。何でここに集まったのかという理由が、先ほどのゲーム観戦のためというものに置き換わろうとしていたのだ。
「私は、この楽しい気持ちのまま終わりたいのだが、それで? 何か他に主張するものは決まったか?」
「「「……」」」
住民達の視線は冷たい。今にも『帰れコール』が始まりそうだ。
苦し紛れに聖女達は口を開いた。
「わ、私たちは、未来の王妃に相応しい美貌があります!」
「そ、そうよ! 料理なんて王妃には必要ないわ! 美しさが大事よ!」
「国の顔になるんですからね! 見た目は重要だわ!」
「「「「「……」」」」」
住民達だけでなく、ジルファスも王宮側の者達も目を丸くした。想いは同じ『え? 本気で言ってんの?』だ。
本気で聖女達は、自分たちは美しいと思っているらしい。自信満々に、向けられる視線を受けて得意げな顔をしている。その視線の意味を都合よく脳内変換しているようだ。
「……そうか……美しさに自信があると……」
「その通りよ!」
「聖女は特別なのよ!」
「神に近い尊い存在ですもの!」
「……特別……尊い……なるほど、確かに神に近い方は、美しく目を惹く存在だな」
「あら、分かっているじゃない!」
聖女達は喜色を浮かべる。納得させられたと嬉しそうだ。しかし、それが彼女達に当てはまるとは、ジルファスは言っていない。
「皆もこれは納得できるだろう。神に近しい方々は、確かに美しい」
ここで、ジルファスや住民達が思い浮かべるたのは、確かに美しい人たちだった。
「これは認めるべきだな」
「ふふっ。では!」
「そう……認めるべきだ。神に近しい方々は美しい……ならば、お前達は違うだろう」
「「「……え……?」」」
「この方々を見て、自分たちの程度を知るべきだ」
そこに、空からふわりと三人の美女が降り立つ。ジルファスの前、聖女達との間に降り立ったその美女達は、聖魔教の特別な服を着ている。
「邪魔をしたかね?」
中心にいる女性がジルファスを振り返った。これに、ジルファスは笑みを向ける。
「いえいえ。寧ろ、お呼びしたいと思っておりました。ベニ大司教。セイ様、キイ様と三人揃われるのは久し振りですね」
「ああ。愚かなあの国に毒されたおバカな娘達が来たと聞いてねえ」
「城に殴り込みをかけるほどの気概のある子なのかと期待したが、ただのおバカだったようだね」
「失敗したねえ。三人居ると聞いたから、一人ずつ相手にしようと思ったが、これならば私だけで事足りた。三人で一人遊びがやり難くなったよ」
「「おお、それは残念だねえ」」
「……」
ベニ達は、三人で一人を演じて遊ぶのが好きだ。この王都の教会でもそれで遊んでいた。住民達の中には、同時に三人見たことがなく、ベニ達が三つ子だと知らない者も多かったのだ。それで密かに揶揄うのが三人の楽しみだった。
「……え? 同じ顔?」
「し、司教様が三人!?」
「ああ。神下ろしの儀式を知らない奴らは知らないのか」
「あれはびっくりするよね~」
「あんな美女が三人とかびっくりするわ」
「いや、あの儀式知ってても、三人を近くで見たことないから、あんなに似てるとは思わなかった……」
壁には、三人の顔がアップで映されているので、本当に三つ子なのだと改めて王都の住民の大半が驚いていた。
「それで? お前達は、何を言っていたんだい?」
「「「っ……」」」
ベニ達の迫力に押されて息を呑む聖女達。答えられないようなので、ジルファスが代わりに答える。
「何でも、自分たちは王妃に相応しいほどの美女だと主張しておりまして」
「ほお。美女ねえ……」
「美女かい?」
「美女とはねえ……」
「「「っ……」」」
完全に腰が引けていた。
そんな聖女達を見て、ベニが城の方に声をかける。
「ミラ、イスリナ、こっちに来てくれるかい?」
「いいわよっ」
「はい」
王妃ミラルファ、王太子妃イスリナを呼ぶ。
「「「っ……」」」
ベニ達とはまた違う雰囲気の美女達の登場に、聖女達は目を泳がせる。
「それじゃあ、人気投票でもやってみるかねえ。コウヤ!」
その声に応えるように、赤い薔薇の花の形をしたクリスタルのような物が住民達の上に降ってくる。
ニールが説明のために再び出て来た。
『薔薇形をしたものを手にお取りください。これより、人気投票を行います!』
「「「「「おぉぉぉぉぉっ!」」」」」
意味がわからないながらも、住民たちはまた楽しいことが始まるのだと盛り上がりを見せた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
その盛り上がりは、彼女達にとっては未知のもので、理解できなかったというのもあるだろう。
そして、全てが終了し、見ていた誰もが健闘を讃え、勝利報酬としての宮廷料理人お手製のサンドを頬張る者達を羨ましがった。
そんな中でニールが告げる。
『これにて、ゲームは終了となりますが、こちらのゲームや料理につきましては、コウヤ様をはじめとして上層部にて今後の運用を検討しております。以降のお知らせをお待ちください』
「「「「「っ、おぉぉぉぉっ」」」」」
「「「「「コウヤ様ぁぁぁぉ、お願いしまぁぁあす!」」」」」
そんな声援が城に向かって送られた。
ニールが下がり、さあ次はとジルファスが前に出る。その視線の先には聖女達が居る。住民達は思い出した。
「そういえば……」
「居たんだっけ」
「存在忘れてたわ……」
「あいつら、静かに出来るんだな」
「それなっ」
住民達は、完全に聖女達の存在を忘れていた。何でここに集まったのかという理由が、先ほどのゲーム観戦のためというものに置き換わろうとしていたのだ。
「私は、この楽しい気持ちのまま終わりたいのだが、それで? 何か他に主張するものは決まったか?」
「「「……」」」
住民達の視線は冷たい。今にも『帰れコール』が始まりそうだ。
苦し紛れに聖女達は口を開いた。
「わ、私たちは、未来の王妃に相応しい美貌があります!」
「そ、そうよ! 料理なんて王妃には必要ないわ! 美しさが大事よ!」
「国の顔になるんですからね! 見た目は重要だわ!」
「「「「「……」」」」」
住民達だけでなく、ジルファスも王宮側の者達も目を丸くした。想いは同じ『え? 本気で言ってんの?』だ。
本気で聖女達は、自分たちは美しいと思っているらしい。自信満々に、向けられる視線を受けて得意げな顔をしている。その視線の意味を都合よく脳内変換しているようだ。
「……そうか……美しさに自信があると……」
「その通りよ!」
「聖女は特別なのよ!」
「神に近い尊い存在ですもの!」
「……特別……尊い……なるほど、確かに神に近い方は、美しく目を惹く存在だな」
「あら、分かっているじゃない!」
聖女達は喜色を浮かべる。納得させられたと嬉しそうだ。しかし、それが彼女達に当てはまるとは、ジルファスは言っていない。
「皆もこれは納得できるだろう。神に近しい方々は、確かに美しい」
ここで、ジルファスや住民達が思い浮かべるたのは、確かに美しい人たちだった。
「これは認めるべきだな」
「ふふっ。では!」
「そう……認めるべきだ。神に近しい方々は美しい……ならば、お前達は違うだろう」
「「「……え……?」」」
「この方々を見て、自分たちの程度を知るべきだ」
そこに、空からふわりと三人の美女が降り立つ。ジルファスの前、聖女達との間に降り立ったその美女達は、聖魔教の特別な服を着ている。
「邪魔をしたかね?」
中心にいる女性がジルファスを振り返った。これに、ジルファスは笑みを向ける。
「いえいえ。寧ろ、お呼びしたいと思っておりました。ベニ大司教。セイ様、キイ様と三人揃われるのは久し振りですね」
「ああ。愚かなあの国に毒されたおバカな娘達が来たと聞いてねえ」
「城に殴り込みをかけるほどの気概のある子なのかと期待したが、ただのおバカだったようだね」
「失敗したねえ。三人居ると聞いたから、一人ずつ相手にしようと思ったが、これならば私だけで事足りた。三人で一人遊びがやり難くなったよ」
「「おお、それは残念だねえ」」
「……」
ベニ達は、三人で一人を演じて遊ぶのが好きだ。この王都の教会でもそれで遊んでいた。住民達の中には、同時に三人見たことがなく、ベニ達が三つ子だと知らない者も多かったのだ。それで密かに揶揄うのが三人の楽しみだった。
「……え? 同じ顔?」
「し、司教様が三人!?」
「ああ。神下ろしの儀式を知らない奴らは知らないのか」
「あれはびっくりするよね~」
「あんな美女が三人とかびっくりするわ」
「いや、あの儀式知ってても、三人を近くで見たことないから、あんなに似てるとは思わなかった……」
壁には、三人の顔がアップで映されているので、本当に三つ子なのだと改めて王都の住民の大半が驚いていた。
「それで? お前達は、何を言っていたんだい?」
「「「っ……」」」
ベニ達の迫力に押されて息を呑む聖女達。答えられないようなので、ジルファスが代わりに答える。
「何でも、自分たちは王妃に相応しいほどの美女だと主張しておりまして」
「ほお。美女ねえ……」
「美女かい?」
「美女とはねえ……」
「「「っ……」」」
完全に腰が引けていた。
そんな聖女達を見て、ベニが城の方に声をかける。
「ミラ、イスリナ、こっちに来てくれるかい?」
「いいわよっ」
「はい」
王妃ミラルファ、王太子妃イスリナを呼ぶ。
「「「っ……」」」
ベニ達とはまた違う雰囲気の美女達の登場に、聖女達は目を泳がせる。
「それじゃあ、人気投票でもやってみるかねえ。コウヤ!」
その声に応えるように、赤い薔薇の花の形をしたクリスタルのような物が住民達の上に降ってくる。
ニールが説明のために再び出て来た。
『薔薇形をしたものを手にお取りください。これより、人気投票を行います!』
「「「「「おぉぉぉぉぉっ!」」」」」
意味がわからないながらも、住民たちはまた楽しいことが始まるのだと盛り上がりを見せた。
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