上 下
433 / 471
第十三章

538 城でも用意しよう

しおりを挟む
パックン、ダンゴ、テンキが最初に説明しながらやり方を見せる。

そして、選ばれた挑戦者達がゲームをやっていく。映像の画面は五つになり、好きなものを観戦していた。

「そこだ! 遅いって!」
「頑張って!! もう少し!」
「ああっ! もうちょい上! 惜しい! 力弱いっ」

クリアできなくても、最後に点数によって上位の者からも食べられる人が選ばれるとあって、諦めることなく挑戦していく。

そして、誰もがゲームを終えると少しだけレベルが上がり、投擲スキルや気配察知スキル、空間把握スキルなどが取れていた。

それを密かに確認して、コウヤは満足げに頷く。

「やっぱり、これは訓練に使えますね」
「中々楽しそうだぞ? これで熟練度やレベルが上がるとなれば、嫌がらずにやるだろう」
「ですね。訓練場を一つ潰してでも、冒険者ギルドに入れるよう提案してみます」

コウヤは提案書を早速書き始めていた。これを覗き込みながら、アビリス王からも頼む。

「それと同じで良いから、軍部に上げておいてくれ。城でも用意しよう」
「分かりました。学園にも遊び場を作っても良いかもしれませんね。運動不足の解消にもなりそうです」
「ああ。あれならば、運動が苦手な者もやり易かろう」

そんな考察をしていれば、宮廷料理人達の作ったサンドとスープがコウヤとアビリス王の下に届かられた。持って来たのは料理長だ。

「コウヤ様! どうぞご正味ください! 陛下も!」

王がついでっぽいが、そこはもうアビリス王も気にしてはいない。コウヤと出会う前までよりも、遥かに料理も美味しくなったため、アビリス王に文句はなかった。

「ありがとうございますっ。とっても綺麗な配色ですねっ」
「はっ! 見た目の華やかさも計算いたしました!」
「ほお……っ、んっ、美味いっ。歯応えも面白いなっ」
「野菜の切り方にも変化を付けたんですね。さすがです」
「ありがとうございます!!」

これは、手軽さも良い。

「どうしましょうね? これ、商品化して欲しいって言ってましたよね」
「そうだな。民達がそう話していたのは聞こえたぞ」
「はい。その要望、聞こえておりました」

きちんと、民達の声も聞いていたのだ。

「教会の食堂でも良いですが……サンドは、お弁当として持っていけるのが利点だと思うんですよね……なので……教会の方でお弁当部門を作って、ギルドなど、各所に配達、そこで売るのが良いかもしれません」
「あそこの厨房は広いですしね……」

料理長が少し羨ましげな声音でそう呟く。教会の食堂の厨房は、そこで働く人を募れるようにと計算してかなり大きめに作ってあった。

空間拡張も施されているため、この王宮の厨房の二倍近い大きさだ。

「雇用も見込んでのものですからね。お弁当部門を作れば、主婦の方々の雇用も本格化できそうです。お子さんが居ても、孤児院に預けてもらえますし」
「おおっ、それは良い」
「そこで少し鍛えたら、学園の方にも来てもらえばいいかなとか考えてます」
「ははっ。相変わらずコウヤは抜かりない」
「さすがです、コウヤ様! あ、休みの日に料理人達がお邪魔しても良いでしょうか!?」
「ん? 構いませんよ? 騎士や兵の方が休日は冒険者になるのと変わりませんもんね」
「はい!!」

その休日の過ごし方は楽しそうと、料理人達は少し騎士達が羨ましく思っていたようなのだ。

「ふふっ。さて……自称聖女さん達はどうなりましたか……」

この盛り上がりに唖然としている聖女達二人。いつの間にか戻ってきた聖女も座り込んで呆然としていた。

彼女達には、国民と一緒に楽しむという催し物など、考えたこともなかったのだろう。







**********
読んでくださりありがとうございます◎
しおりを挟む
感想 2,759

あなたにおすすめの小説

シルバーヒーローズ!〜異世界でも現世でもまだまだ現役で大暴れします!〜

紫南
ファンタジー
◇◇◇異世界冒険、ギルド職員から人生相談までなんでもござれ!◇◇◇ 『ふぁんたじーってやつか?』 定年し、仕事を退職してから十年と少し。 宗徳(むねのり)は妻、寿子(ひさこ)の提案でシルバー派遣の仕事をすると決めた。 しかし、その内容は怪しいものだった。 『かつての経験を生かし、異世界を救う仕事です!』 そんな胡散臭いチラシを見せられ、半信半疑で面接に向かう。 ファンタジーも知らない熟年夫婦が異世界で活躍!? ーー勇者じゃないけど、もしかして最強!? シルバー舐めんなよ!! 元気な老夫婦の異世界お仕事ファンタジー開幕!!

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

魅了だったら良かったのに

豆狸
ファンタジー
「だったらなにか変わるんですか?」

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。