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第十三章
537 選抜に入ります
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聖女が一人離脱し、審査員二人も薬で回復するとはいえ、精神的なダメージがかなり尾を引いている様子。
因みに、味見をしなかった聖女達の作った野菜炒めは、間違いなく生焼け、それも生で食べるものではない芋類が多かったため、もう視界にも入れておらず、そのまま放置された。
次にと、ジルファスは残りの三名の審査員達から一人を選んだ。
「あなたには、こちらの料理長が作った料理を食べてもらおう」
「っ、はいっ。ありがとうございます!」
彼らにはご褒美だったようだ。なんの躊躇いもなくそれを口にした。
「っ、うまっ、い、生きてて良かった……っ」
大袈裟な感想だが、もう勝者は決定だ。
「食べられる物というだけでも、こちらの勝利だと思うが、あなた方もそれでいいか?」
「「……はい……」」
二人の聖女達も、ここで反論すれば、自分たちの作った料理を食べなくてはならないと察した。そんなことは嫌だと判断した二人は、肩を落としながら頷いた。
「では、これであなた方は必要ないと証明された。お帰り願おうか」
「っ、そ、それはっ、納得できませんわっ」
「料理ができなかっただけで、決め付けられては困るわ!」
「……ならどうしたら納得する?」
ジルファスは相手に分かるほどはっきりと眉根を寄せて迷惑だという顔を見せる。
これには、聖女の二人も目を泳がせた。
「はあ……いいだろう。考えてみろ。今から一時間やる。好きなだけ話し合うがいい。その場でな」
「「っ……わかりましたわ」」
これに、大臣達が心配しながらジルファスに耳打ちする。
「よろしいのですか? 時間を与えては、城に入り込まれたりしませんか?」
「ああした輩は、入り込まれたら最後ですよ?」
「居座るんだよな……無理やり追い出そうとすると、こちらの外聞も悪くなるだけで……」
「分かります……それも相手が女だと特にやりにくい……」
「口も上手いですしねえ……」
数人がしみじみとそんな事を口にした。ジルファスは振り返って目を丸くする。
「まるで、経験があるみたいだな……」
「「「「「っ、滅相もございませんっ」」」」」
「……そうか……?」
その大臣達の侍従達がそっと目を逸らしている所を見ると、色々あったようだ。
しかし、話を蒸し返すこともないだろうと、ジルファスはそれ以上の追求は止めておいた。
そこに、ニールが近づいてくる。
「そろそろよろしいでしょうか」
「そうだな。コウヤの予想通りだ。一時間ほど、遊ぶとしよう」
「はい。それでは料理長、量産をお願いします」
「承知しました! おい、お前達、始めるぞ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
料理長が他の料理人達を連れて先ほど使ったキッチンセットの下へと向かう。
数名は、城に入って行った。
それを見送り、ニールが前に出る。
『これより、ゲームを行います。参加できるのは、この後、特別に選抜される三百人。皆さんの中から選ばれます。その内、ゲームをクリアした百人は、先ほど宮廷料理人が作ったサンドを食べる権利を与えられます』
「「「「「っ!! おおっ!!」」」」」
「マジか!」
「すげえっ! 食べたい!」
「ぼくも? ぼくもやれるかな?」
「子どもは……無理かもしれないわね……」
「え~」
集まった民達がざわついた。ニールが続ける。
『簡単なゲームになりますので、選ばれたのがお子様の場合、保護者の方をお二人まで伴っていただけます。逆にお子様の居る大人の方は、お子様もお連れください。では、先ず親子の方は手を繋いでください』
これで、不思議に思いながらも親子が手を繋いだ。
『次に、パートナーが居る場合も腕を組む、手を繋ぐなどして分かるようにお願いします。この場合、選ばれるチャンスが増えます。どちらかが選ばれた場合、そのパートナーの方もが一緒に参加していただきます。もちろん、クリアした場合は料理を分けて食べていただけます』
隣に居たパートナーや、友人と手を繋いだり、服を摘んだり、腕を組んだりしていた。
『参加したくない者は、手を挙げるか、その場で座ってください。では、選抜に入ります』
すると、コウヤの下から、ナナイロが飛び立った。羽ペン型のゴーレムだ。
それがその人の頭の上で円を描く。光の輪が出来ると、次の瞬間には、その人とパートナーや両親達が空に浮き上がった。
「「「「「えっ!?」」」」」
びっくりしている内に、多くの人々の頭上を通過し、中央の方に集められた。
選ばれた三百人の頭の上には、天使の輪のような色の付いた輪があった。
『ゲームの説明に入ります』
その言葉を合図に、その場に変化が起きた。
突如として、五つのゲームが出現する。
3×3の9マスの的、モグラ叩きのような台、巨大なクレーンゲーム機、ボーリングレーン、いくつものバスケットゴールのような物のがある舞台の五つだった。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
因みに、味見をしなかった聖女達の作った野菜炒めは、間違いなく生焼け、それも生で食べるものではない芋類が多かったため、もう視界にも入れておらず、そのまま放置された。
次にと、ジルファスは残りの三名の審査員達から一人を選んだ。
「あなたには、こちらの料理長が作った料理を食べてもらおう」
「っ、はいっ。ありがとうございます!」
彼らにはご褒美だったようだ。なんの躊躇いもなくそれを口にした。
「っ、うまっ、い、生きてて良かった……っ」
大袈裟な感想だが、もう勝者は決定だ。
「食べられる物というだけでも、こちらの勝利だと思うが、あなた方もそれでいいか?」
「「……はい……」」
二人の聖女達も、ここで反論すれば、自分たちの作った料理を食べなくてはならないと察した。そんなことは嫌だと判断した二人は、肩を落としながら頷いた。
「では、これであなた方は必要ないと証明された。お帰り願おうか」
「っ、そ、それはっ、納得できませんわっ」
「料理ができなかっただけで、決め付けられては困るわ!」
「……ならどうしたら納得する?」
ジルファスは相手に分かるほどはっきりと眉根を寄せて迷惑だという顔を見せる。
これには、聖女の二人も目を泳がせた。
「はあ……いいだろう。考えてみろ。今から一時間やる。好きなだけ話し合うがいい。その場でな」
「「っ……わかりましたわ」」
これに、大臣達が心配しながらジルファスに耳打ちする。
「よろしいのですか? 時間を与えては、城に入り込まれたりしませんか?」
「ああした輩は、入り込まれたら最後ですよ?」
「居座るんだよな……無理やり追い出そうとすると、こちらの外聞も悪くなるだけで……」
「分かります……それも相手が女だと特にやりにくい……」
「口も上手いですしねえ……」
数人がしみじみとそんな事を口にした。ジルファスは振り返って目を丸くする。
「まるで、経験があるみたいだな……」
「「「「「っ、滅相もございませんっ」」」」」
「……そうか……?」
その大臣達の侍従達がそっと目を逸らしている所を見ると、色々あったようだ。
しかし、話を蒸し返すこともないだろうと、ジルファスはそれ以上の追求は止めておいた。
そこに、ニールが近づいてくる。
「そろそろよろしいでしょうか」
「そうだな。コウヤの予想通りだ。一時間ほど、遊ぶとしよう」
「はい。それでは料理長、量産をお願いします」
「承知しました! おい、お前達、始めるぞ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
料理長が他の料理人達を連れて先ほど使ったキッチンセットの下へと向かう。
数名は、城に入って行った。
それを見送り、ニールが前に出る。
『これより、ゲームを行います。参加できるのは、この後、特別に選抜される三百人。皆さんの中から選ばれます。その内、ゲームをクリアした百人は、先ほど宮廷料理人が作ったサンドを食べる権利を与えられます』
「「「「「っ!! おおっ!!」」」」」
「マジか!」
「すげえっ! 食べたい!」
「ぼくも? ぼくもやれるかな?」
「子どもは……無理かもしれないわね……」
「え~」
集まった民達がざわついた。ニールが続ける。
『簡単なゲームになりますので、選ばれたのがお子様の場合、保護者の方をお二人まで伴っていただけます。逆にお子様の居る大人の方は、お子様もお連れください。では、先ず親子の方は手を繋いでください』
これで、不思議に思いながらも親子が手を繋いだ。
『次に、パートナーが居る場合も腕を組む、手を繋ぐなどして分かるようにお願いします。この場合、選ばれるチャンスが増えます。どちらかが選ばれた場合、そのパートナーの方もが一緒に参加していただきます。もちろん、クリアした場合は料理を分けて食べていただけます』
隣に居たパートナーや、友人と手を繋いだり、服を摘んだり、腕を組んだりしていた。
『参加したくない者は、手を挙げるか、その場で座ってください。では、選抜に入ります』
すると、コウヤの下から、ナナイロが飛び立った。羽ペン型のゴーレムだ。
それがその人の頭の上で円を描く。光の輪が出来ると、次の瞬間には、その人とパートナーや両親達が空に浮き上がった。
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『ゲームの説明に入ります』
その言葉を合図に、その場に変化が起きた。
突如として、五つのゲームが出現する。
3×3の9マスの的、モグラ叩きのような台、巨大なクレーンゲーム機、ボーリングレーン、いくつものバスケットゴールのような物のがある舞台の五つだった。
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