元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

文字の大きさ
上 下
432 / 475
第十三章

537 選抜に入ります

しおりを挟む
聖女が一人離脱し、審査員二人も薬で回復するとはいえ、精神的なダメージがかなり尾を引いている様子。

因みに、味見をしなかった聖女達の作った野菜炒めは、間違いなく生焼け、それも生で食べるものではない芋類が多かったため、もう視界にも入れておらず、そのまま放置された。

次にと、ジルファスは残りの三名の審査員達から一人を選んだ。

「あなたには、こちらの料理長が作った料理を食べてもらおう」
「っ、はいっ。ありがとうございます!」

彼らにはご褒美だったようだ。なんの躊躇いもなくそれを口にした。

「っ、うまっ、い、生きてて良かった……っ」

大袈裟な感想だが、もう勝者は決定だ。

「食べられる物というだけでも、こちらの勝利だと思うが、あなた方もそれでいいか?」
「「……はい……」」

二人の聖女達も、ここで反論すれば、自分たちの作った料理を食べなくてはならないと察した。そんなことは嫌だと判断した二人は、肩を落としながら頷いた。

「では、これであなた方は必要ないと証明された。お帰り願おうか」
「っ、そ、それはっ、納得できませんわっ」
「料理ができなかっただけで、決め付けられては困るわ!」
「……ならどうしたら納得する?」

ジルファスは相手に分かるほどはっきりと眉根を寄せて迷惑だという顔を見せる。

これには、聖女の二人も目を泳がせた。

「はあ……いいだろう。考えてみろ。今から一時間やる。好きなだけ話し合うがいい。その場でな」
「「っ……わかりましたわ」」

これに、大臣達が心配しながらジルファスに耳打ちする。

「よろしいのですか? 時間を与えては、城に入り込まれたりしませんか?」
「ああした輩は、入り込まれたら最後ですよ?」
「居座るんだよな……無理やり追い出そうとすると、こちらの外聞も悪くなるだけで……」
「分かります……それも相手が女だと特にやりにくい……」
「口も上手いですしねえ……」

数人がしみじみとそんな事を口にした。ジルファスは振り返って目を丸くする。

「まるで、経験があるみたいだな……」
「「「「「っ、滅相もございませんっ」」」」」
「……そうか……?」

その大臣達の侍従達がそっと目を逸らしている所を見ると、色々あったようだ。

しかし、話を蒸し返すこともないだろうと、ジルファスはそれ以上の追求は止めておいた。

そこに、ニールが近づいてくる。

「そろそろよろしいでしょうか」
「そうだな。コウヤの予想通りだ。一時間ほど、遊ぶとしよう」
「はい。それでは料理長、量産をお願いします」
「承知しました! おい、お前達、始めるぞ!」
「「「「「はいっ!」」」」」

料理長が他の料理人達を連れて先ほど使ったキッチンセットの下へと向かう。

数名は、城に入って行った。

それを見送り、ニールが前に出る。

『これより、ゲームを行います。参加できるのは、この後、特別に選抜される三百人。皆さんの中から選ばれます。その内、ゲームをクリアした百人は、先ほど宮廷料理人が作ったサンドを食べる権利を与えられます』
「「「「「っ!! おおっ!!」」」」」
「マジか!」
「すげえっ! 食べたい!」
「ぼくも? ぼくもやれるかな?」
「子どもは……無理かもしれないわね……」
「え~」

集まった民達がざわついた。ニールが続ける。

『簡単なゲームになりますので、選ばれたのがお子様の場合、保護者の方をお二人まで伴っていただけます。逆にお子様の居る大人の方は、お子様もお連れください。では、先ず親子の方は手を繋いでください』

これで、不思議に思いながらも親子が手を繋いだ。

『次に、パートナーが居る場合も腕を組む、手を繋ぐなどして分かるようにお願いします。この場合、選ばれるチャンスが増えます。どちらかが選ばれた場合、そのパートナーの方もが一緒に参加していただきます。もちろん、クリアした場合は料理を分けて食べていただけます』

隣に居たパートナーや、友人と手を繋いだり、服を摘んだり、腕を組んだりしていた。

『参加したくない者は、手を挙げるか、その場で座ってください。では、選抜に入ります』

すると、コウヤの下から、ナナイロが飛び立った。羽ペン型のゴーレムだ。

それがその人の頭の上で円を描く。光の輪が出来ると、次の瞬間には、その人とパートナーや両親達が空に浮き上がった。

「「「「「えっ!?」」」」」

びっくりしている内に、多くの人々の頭上を通過し、中央の方に集められた。

選ばれた三百人の頭の上には、天使の輪のような色の付いた輪があった。

『ゲームの説明に入ります』

その言葉を合図に、その場に変化が起きた。

突如として、五つのゲームが出現する。

3×3の9マスの的、モグラ叩きのような台、巨大なクレーンゲーム機、ボーリングレーン、いくつものバスケットゴールのような物のがある舞台の五つだった。







**********
読んでくださりありがとうございます◎
しおりを挟む
感想 2,775

あなたにおすすめの小説

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。