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第十三章
525 群も大きくなるんです
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迷宮の棚卸しについての講習を終えて一週間が経った。
コウヤが遠慮なくというか、特に重要だと意識せずに披露することになった迷宮内の知識も迷宮の棚卸しの仕方と同時にギルドに伝えられた。
それをどうやって冒険者達に教えるかというのを現在、グランドマスターであるシーレスと前任のタリスをはじめとした冒険者ギルドの幹部達、それと上位の冒険者達を集めて朝から話し合っている。
場所は、この後の予定もあり、ほぼ完成した学園の大会議室である。
そして、何度目か分からないが、頭を抱えるシーレスがいつもと変わらない様子で報告を続けていたコウヤへと声をかける。
「コウヤ君……もうちょっとこう……一つずつ小出しにするとかできなかった?」
「思い出した時に口にしないと忘れますよ?」
「うん、そっか……そうだよね……それで唐突に思い出されても困るね……まとめてくれてありがとう」
「どういたしましてっ」
「……」
嬉しそうに返事をするコウヤだが、シーレス達は有り難くないんだけどねと言う言葉を必死で飲み込んでいた。
「では、次に未踏破だった場所についての報告です」
「うん……お願い」
コウヤは始まってまだ三十分と経ってはいないが、既に息継ぎもままならなくなっている彼らには気付かず、続けていく。
それは『果実の迷宮』で、誰も踏み入っていない場所があったということについてだ。
「先日、ようやく確認をし終わりました。先に予想し、報告した通り、フラットモンキーの大きな群ができていました。数としてはざっと三百」
「はあ!?」
「三百!? そんなに居たの!?」
シーレスとタリスが、目を丸くして思わず声を上げる。そして、確認するようにその討伐隊のリーダーとして参加したグラムに目を向ける。
「……居ました……」
「よく頑張ったね……丸二日篭ってたのって……」
「出られなかったんです……」
「「なるほど……」」
遠い所を見るグラムや討伐に参加した者達の目から光が消えていた。
調査と討伐をと迷宮の棚卸しの研修を全て終えてから向かうことになったグラム達は、丸二日、連絡もなく迷宮から出て来なかった。
付き添いとしてテンキ達がついて行き、この間、コウヤは棚卸しのことについての補足などの講義をギルド員達にしていた。
そんなコウヤに、帰ってこないと報告が来たが、遅くても三日は帰って来ない可能性があると言い聞かせ、外で心配そうに待機する護衛の冒険者達やギルド職員達にそのまま待機をとしていた。
彼らは本当に不安だったと思う。だが、氾濫にはならないからと笑うコウヤを信じて、グラム達が戻って来るのを待った。
そして、丸二日を越えようという頃、グラム達が戻ってきた。
「コウヤから、フラットモンキーならば、小さな群れでも三十は居るし、放置されていた期間を考えれば、その群れと群れが集まって、百単位のものになっている可能性はあると聞いてはいましたが……」
「……本当にそんなに居るとは思わないよねえ……群れで動く習性のある魔獣や魔物って、あまり迷宮に居ないし……」
「ゴブリン系でも、せいぜい一つの群れで百までですからね……」
それ以上になると、群れとして破綻するのだ。野生の群れを成す魔獣や魔物達は、色々と自然に賄えなくなると本能的に察し、一緒になっていた群れも分かれていくようにできている。
その群れごとの行動範囲は重ならないようにできているため、大きな群れの限界値というのはある。しかし、今回は迷宮の中。
「迷宮は閉じられた空間だし……仕方ないのかな?」
タリスの見解に、コウヤが頷く。
「そうですね。その上、迷宮の魔獣や魔物は自然死もせず、増えすぎたからと同士討ちして死ぬこともありませんから、増える一方だったかと」
「迷宮の特殊性もあるのね……」
出したら絶対に消さないというのが精霊達の拘りだ。意地とも言う。
「元々、フラットモンキーは生息地域も限定された魔物なので、群れも大きくなるんです。それで余計にですね」
「そうなんだ……」
「それが長年放置となると……仕方ないのかもね……」
なんとか納得したようだ。
「で? ドロップ品は二種類あったって聞いたけど、フラットモンキー一種だけだったのになんで?」
「どうやら、オスとメスで違ったみたいです。オスの方はワルビ、メスの方はプーラです。それも外のものよりも大粒の種です。大体、女性の握り拳くらいの」
「大きいね……」
「それ、まだ市場に流れてないよね? どうしたの?」
ワルビは、ビワのような果実で、プーラはプラムだ。一般的には、大粒のものでもその半分ほどだろう。
これは、今はない昔あった種のものだった。
「あまりにも大量なので、商業ギルドとの話し合いを待っています。今回の二日間の踏破時と、その後の調査中のもので、合わせてそれぞれが千個近くあるみたいなので」
「「「「「千!?」」」」」
「「今どこに!?」」
保管はどうしているのかとの心配と、どうやってそんなに集めたのかという驚愕に包まれる。
だが、コウヤはなんてことない様子で告げた。
「パックンが保管してます」
「あ……そう……」
「なら良い……のでしょうか?」
よくもそんなに入るものだと、今日は部屋の隅に居るパックンに目を向ける一同。それを受けて『?』を出していた。パックンにとっては、大したことではないのだから。
「けど、よくそんな大群が攻めてくる最中に、よくドロップ品を回収できたね?」
乱戦になれば、ドロップ品である果物は踏み付けられて消える。
「あ~……教官達が全力で回収をしてくれまして……」
「パックンちゃんならわかるけど、テンキちゃんやダンゴちゃん達も?」
「はい……」
グラムが、また遠いところを見る。なので、タリス達はテンキを見た。すると、小狐モードのテンキが、一つゆらりと尻尾を振ってから答える。
《どちらも、薬にも使えますし、何より主の好物でしたので》
《思わず踏み付けようとしてた子達をちょっと乱暴に扱っちゃたんでしゅけどね》
《怪我は治したし d( ̄  ̄)》
《我々も少し熱が入り過ぎましたけど、無駄にならなくて良かったです》
《もったいないでしゅしね~》
《まだまだ入るけど ♪(´ε` )》
「「「「「……」」」」」
「……」
全員がグラム達に同情したような視線を向けていた。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、23日です!
コウヤが遠慮なくというか、特に重要だと意識せずに披露することになった迷宮内の知識も迷宮の棚卸しの仕方と同時にギルドに伝えられた。
それをどうやって冒険者達に教えるかというのを現在、グランドマスターであるシーレスと前任のタリスをはじめとした冒険者ギルドの幹部達、それと上位の冒険者達を集めて朝から話し合っている。
場所は、この後の予定もあり、ほぼ完成した学園の大会議室である。
そして、何度目か分からないが、頭を抱えるシーレスがいつもと変わらない様子で報告を続けていたコウヤへと声をかける。
「コウヤ君……もうちょっとこう……一つずつ小出しにするとかできなかった?」
「思い出した時に口にしないと忘れますよ?」
「うん、そっか……そうだよね……それで唐突に思い出されても困るね……まとめてくれてありがとう」
「どういたしましてっ」
「……」
嬉しそうに返事をするコウヤだが、シーレス達は有り難くないんだけどねと言う言葉を必死で飲み込んでいた。
「では、次に未踏破だった場所についての報告です」
「うん……お願い」
コウヤは始まってまだ三十分と経ってはいないが、既に息継ぎもままならなくなっている彼らには気付かず、続けていく。
それは『果実の迷宮』で、誰も踏み入っていない場所があったということについてだ。
「先日、ようやく確認をし終わりました。先に予想し、報告した通り、フラットモンキーの大きな群ができていました。数としてはざっと三百」
「はあ!?」
「三百!? そんなに居たの!?」
シーレスとタリスが、目を丸くして思わず声を上げる。そして、確認するようにその討伐隊のリーダーとして参加したグラムに目を向ける。
「……居ました……」
「よく頑張ったね……丸二日篭ってたのって……」
「出られなかったんです……」
「「なるほど……」」
遠い所を見るグラムや討伐に参加した者達の目から光が消えていた。
調査と討伐をと迷宮の棚卸しの研修を全て終えてから向かうことになったグラム達は、丸二日、連絡もなく迷宮から出て来なかった。
付き添いとしてテンキ達がついて行き、この間、コウヤは棚卸しのことについての補足などの講義をギルド員達にしていた。
そんなコウヤに、帰ってこないと報告が来たが、遅くても三日は帰って来ない可能性があると言い聞かせ、外で心配そうに待機する護衛の冒険者達やギルド職員達にそのまま待機をとしていた。
彼らは本当に不安だったと思う。だが、氾濫にはならないからと笑うコウヤを信じて、グラム達が戻って来るのを待った。
そして、丸二日を越えようという頃、グラム達が戻ってきた。
「コウヤから、フラットモンキーならば、小さな群れでも三十は居るし、放置されていた期間を考えれば、その群れと群れが集まって、百単位のものになっている可能性はあると聞いてはいましたが……」
「……本当にそんなに居るとは思わないよねえ……群れで動く習性のある魔獣や魔物って、あまり迷宮に居ないし……」
「ゴブリン系でも、せいぜい一つの群れで百までですからね……」
それ以上になると、群れとして破綻するのだ。野生の群れを成す魔獣や魔物達は、色々と自然に賄えなくなると本能的に察し、一緒になっていた群れも分かれていくようにできている。
その群れごとの行動範囲は重ならないようにできているため、大きな群れの限界値というのはある。しかし、今回は迷宮の中。
「迷宮は閉じられた空間だし……仕方ないのかな?」
タリスの見解に、コウヤが頷く。
「そうですね。その上、迷宮の魔獣や魔物は自然死もせず、増えすぎたからと同士討ちして死ぬこともありませんから、増える一方だったかと」
「迷宮の特殊性もあるのね……」
出したら絶対に消さないというのが精霊達の拘りだ。意地とも言う。
「元々、フラットモンキーは生息地域も限定された魔物なので、群れも大きくなるんです。それで余計にですね」
「そうなんだ……」
「それが長年放置となると……仕方ないのかもね……」
なんとか納得したようだ。
「で? ドロップ品は二種類あったって聞いたけど、フラットモンキー一種だけだったのになんで?」
「どうやら、オスとメスで違ったみたいです。オスの方はワルビ、メスの方はプーラです。それも外のものよりも大粒の種です。大体、女性の握り拳くらいの」
「大きいね……」
「それ、まだ市場に流れてないよね? どうしたの?」
ワルビは、ビワのような果実で、プーラはプラムだ。一般的には、大粒のものでもその半分ほどだろう。
これは、今はない昔あった種のものだった。
「あまりにも大量なので、商業ギルドとの話し合いを待っています。今回の二日間の踏破時と、その後の調査中のもので、合わせてそれぞれが千個近くあるみたいなので」
「「「「「千!?」」」」」
「「今どこに!?」」
保管はどうしているのかとの心配と、どうやってそんなに集めたのかという驚愕に包まれる。
だが、コウヤはなんてことない様子で告げた。
「パックンが保管してます」
「あ……そう……」
「なら良い……のでしょうか?」
よくもそんなに入るものだと、今日は部屋の隅に居るパックンに目を向ける一同。それを受けて『?』を出していた。パックンにとっては、大したことではないのだから。
「けど、よくそんな大群が攻めてくる最中に、よくドロップ品を回収できたね?」
乱戦になれば、ドロップ品である果物は踏み付けられて消える。
「あ~……教官達が全力で回収をしてくれまして……」
「パックンちゃんならわかるけど、テンキちゃんやダンゴちゃん達も?」
「はい……」
グラムが、また遠いところを見る。なので、タリス達はテンキを見た。すると、小狐モードのテンキが、一つゆらりと尻尾を振ってから答える。
《どちらも、薬にも使えますし、何より主の好物でしたので》
《思わず踏み付けようとしてた子達をちょっと乱暴に扱っちゃたんでしゅけどね》
《怪我は治したし d( ̄  ̄)》
《我々も少し熱が入り過ぎましたけど、無駄にならなくて良かったです》
《もったいないでしゅしね~》
《まだまだ入るけど ♪(´ε` )》
「「「「「……」」」」」
「……」
全員がグラム達に同情したような視線を向けていた。
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次回、23日です!
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