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第十三章
522 ボーナス特典
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最深層。
コウヤ達はボス部屋まで来た。
「さあ、ラストですよっ!」
コウヤは、迷宮に入る前に見せたような、晴れやかな笑みを浮かべてボス部屋の前で拳を握ってみせる。
これに誰もが真剣に、神妙に頷く。
「ボスは【スピアビートルキング】と【スタッグビートルクイン】です」
その名の通り、大きなカブトムシとクワガタのような姿のボスだ。キングとクインの二体という、ボスとしては珍しいパターンだった。
「弱点は腹の方。出来れば頭と胴体の間を狙えれば一気に倒せます。戦い方としては、ひっくり返して接近戦をするか、飛んだ所を狙って遠距離から当てるかです。羽音が大きくとても不快な音を出すので、力で押し倒すのが一番かもしれませんが」
あの羽ばたく音は、どうしても慣れないものだ。女性達は、それを聞くと鳥肌が立つらしい。
「羽ばたかせるな! 力で押せ押せよ!」
「ひ、ヒリタっ……目が怖いんだが……っ」
「あの音がっ、あの羽音っ、耳に付いてしばらく離れなくなるのよっ! 絶対に聞きたくない!」
「いや、分かるけどな……」
女性冒険者の中では、蛇なんかよりもこっちの方が嫌らしい。
「うん。分かる……」
「夜中とか、聞こえる気がするんだよな……」
「夜営したくない……」
一度聞けば軽くトラウマになるレベルだ。
コウヤもうんうんと頷く。
「音、おっきいですしねっ。なんかゾゾっとくるんですよねっ」
更には、パックン達も同意する。
《震える感すごいよね (。-_-。) 》
《空気の振動が違うでしゅ……》
《直線だけでなく、急に方向を変えて来たりするのも、びっくりするんでやめてほしいです》
《テンキもアレは、昔から苦手でしゅよね……》
《イラついて羽根を燃やしてたよね (๑╹ω╹๑ ) 》
《飛ばなければ、アレらはただのノロマなカメです》
《硬いでしゅしね~》
《斬るよか叩き潰すべき ♪(´ε` ) 》
これらを何気なく聞いていた大人達は、拳を握った。そして、なるほどと納得する。
「斬らずに潰す……なるほど……」
「硬いからどうにもならないと思ってたけど、そっか……斬ろうというのが間違いだったんだ。くっ……何本剣をダメにされたことかっ……」
体はほとんどが硬く、剣など通らないのだ。
「それなのにっ、あの外皮が素材として手に入らないのも腹立つんだよっ!」
「「「「「それよ……」」」」」
腹側か、付け根の所しか剣が通らないのだ。逆にいえば、その硬い部分に傷が付かないから、素材として手に入ったら、最高の武器が出来るだろう。
何本も剣をダメにして倒して、その成果がこの迷宮特有のドロップ品だけというのは、かなり痛い。
とはいえ、ドロップする物が間違いなく高く売れるので、元手はなんとかなる。
しかし、そこでコウヤは首を傾げた。
その不思議そうな顔を見て、これまでの出来事が頭に浮かぶ一同。大分慣れて来た証拠だろうか。
他のメンバーに目配せされ、代表として口を開くのはここでもグラムだ。
「こ、コウヤ……まさかと思うが、何か……また俺らが知らない事があるのか?」
「え? あ~……知らないって事を知らなかったって感じなんですけど……」
「うん。それ、毎回だから。ほぼ俺ら知らんからな? できればこれからは、俺とかに確認してくれるか?」
「はいっ。そうします!」
元気なお返事を返すコウヤに、グラムは内心ため息を吐く。
「それで? ここでの良い情報は?」
「はい! どの迷宮ででもですけど、三回以上攻略した事がある人を含めたパーティで、十五人から十八人の中に従魔が一体以上含めたメンバーでここに入ると、ボスが最強になります!」
三パーティのMAX十八人か十五人以上のメンバーの中に、三回以上ここのボスを倒したことがある者が居れば良い。そして、その中に従魔が一体でも居れば条件は揃う。
「……う、う~ん……続けてくれるか?」
「はいっ。最強というのは、上位種ということでして。ここの場合は【ゴールドスピアビートルキング】と【シルバースタッグビートルクイン】になるんじゃないかなとっ」
「……見た事も聞いたこともないんだか!?」
「大丈夫です。二回りくらい大きくなって、金と銀になっただけです!」
「……眩しそうだな……そんで、絶対に剣は折れる……」
「その通りです!」
「「「「「……」」」」」
ニコニコされても、喜ばしく思えないというのが一同の感想だ。ただでさえ戦いにくいのに、どうにもならなくなりそうだというのは、想像できる。
「それでですねっ。なんとっ、これを三十分以内に倒すと、ボーナス特典として素材も本来のドロップ品も手に入るんです!!」
「っ……それはおいしいっ……いや、三十分? 時間制限あり……間違いなく無理があるってことじゃないか? そんなに迷宮って甘くないよな? だから知らないんだよな?」
このボーナスについての情報が全く聞いたことがないということは、実現出来た者が皆無だということに他ならない。
「ってことで、検証も含めてやっちゃいましょう! 条件も揃ってますし!」
「「「「「いやいやいやいやっ!」」」」」
「「「「「私たち、戦闘要員じゃないです!!」」」」」
職員達が涙目になっていた。
「大丈夫ですよ。確かに、俺やテンキ達が居ないならやるべきじゃないですけど、今は居ますしっ。その上、経験さえ積めばSランク確定の人達も数人居ます。これで勝てなかったら、誰も攻略できませんよお」
コウヤは嬉しいのだ。いつもは、一人かパックン達としか来ない。だから、この条件が揃った所に居合わせたのも初めてだ。
この情報を知っていても、体験することができなかった。実際の所の検証ができなかったということ。
それは、コウヤにとっては少しばかり不満だった。せっかくならば、人として体験したいというのがコウヤの願いだ。
「ねっ。安全は保証します! やってみましょうっ」
《過信ではなく、事実として、私が居ればあなた方を死なせませんよ。ドラゴンの上位種が出ても問題ありません》
「「「「「……そこは信用してます……」」」」」
《ならば良いでしょう》
《素材っ、素材っ、わくわくっ(≧∇≦)》
《ここの子達もワクワクしてましゅ♪》
「「「「「……」」」」」
盛大に巻き込まれたという感が否めないが、今日はこれで終わりだし、仕方ないと諦め、一同は頷いた。
「行きましょう!!」
「「「「「おおっ!!」」」」」
もうやけくそだという様子ではあるが、こうして、初のボーナスステージ挑戦となったのだ。
**********
読んでくださりありがとうございます◎
少しお休みをいただきます。
お暇の間、他の作品も是非どうぞ◎
次回は2日です!
よろしくお願いします!
コウヤ達はボス部屋まで来た。
「さあ、ラストですよっ!」
コウヤは、迷宮に入る前に見せたような、晴れやかな笑みを浮かべてボス部屋の前で拳を握ってみせる。
これに誰もが真剣に、神妙に頷く。
「ボスは【スピアビートルキング】と【スタッグビートルクイン】です」
その名の通り、大きなカブトムシとクワガタのような姿のボスだ。キングとクインの二体という、ボスとしては珍しいパターンだった。
「弱点は腹の方。出来れば頭と胴体の間を狙えれば一気に倒せます。戦い方としては、ひっくり返して接近戦をするか、飛んだ所を狙って遠距離から当てるかです。羽音が大きくとても不快な音を出すので、力で押し倒すのが一番かもしれませんが」
あの羽ばたく音は、どうしても慣れないものだ。女性達は、それを聞くと鳥肌が立つらしい。
「羽ばたかせるな! 力で押せ押せよ!」
「ひ、ヒリタっ……目が怖いんだが……っ」
「あの音がっ、あの羽音っ、耳に付いてしばらく離れなくなるのよっ! 絶対に聞きたくない!」
「いや、分かるけどな……」
女性冒険者の中では、蛇なんかよりもこっちの方が嫌らしい。
「うん。分かる……」
「夜中とか、聞こえる気がするんだよな……」
「夜営したくない……」
一度聞けば軽くトラウマになるレベルだ。
コウヤもうんうんと頷く。
「音、おっきいですしねっ。なんかゾゾっとくるんですよねっ」
更には、パックン達も同意する。
《震える感すごいよね (。-_-。) 》
《空気の振動が違うでしゅ……》
《直線だけでなく、急に方向を変えて来たりするのも、びっくりするんでやめてほしいです》
《テンキもアレは、昔から苦手でしゅよね……》
《イラついて羽根を燃やしてたよね (๑╹ω╹๑ ) 》
《飛ばなければ、アレらはただのノロマなカメです》
《硬いでしゅしね~》
《斬るよか叩き潰すべき ♪(´ε` ) 》
これらを何気なく聞いていた大人達は、拳を握った。そして、なるほどと納得する。
「斬らずに潰す……なるほど……」
「硬いからどうにもならないと思ってたけど、そっか……斬ろうというのが間違いだったんだ。くっ……何本剣をダメにされたことかっ……」
体はほとんどが硬く、剣など通らないのだ。
「それなのにっ、あの外皮が素材として手に入らないのも腹立つんだよっ!」
「「「「「それよ……」」」」」
腹側か、付け根の所しか剣が通らないのだ。逆にいえば、その硬い部分に傷が付かないから、素材として手に入ったら、最高の武器が出来るだろう。
何本も剣をダメにして倒して、その成果がこの迷宮特有のドロップ品だけというのは、かなり痛い。
とはいえ、ドロップする物が間違いなく高く売れるので、元手はなんとかなる。
しかし、そこでコウヤは首を傾げた。
その不思議そうな顔を見て、これまでの出来事が頭に浮かぶ一同。大分慣れて来た証拠だろうか。
他のメンバーに目配せされ、代表として口を開くのはここでもグラムだ。
「こ、コウヤ……まさかと思うが、何か……また俺らが知らない事があるのか?」
「え? あ~……知らないって事を知らなかったって感じなんですけど……」
「うん。それ、毎回だから。ほぼ俺ら知らんからな? できればこれからは、俺とかに確認してくれるか?」
「はいっ。そうします!」
元気なお返事を返すコウヤに、グラムは内心ため息を吐く。
「それで? ここでの良い情報は?」
「はい! どの迷宮ででもですけど、三回以上攻略した事がある人を含めたパーティで、十五人から十八人の中に従魔が一体以上含めたメンバーでここに入ると、ボスが最強になります!」
三パーティのMAX十八人か十五人以上のメンバーの中に、三回以上ここのボスを倒したことがある者が居れば良い。そして、その中に従魔が一体でも居れば条件は揃う。
「……う、う~ん……続けてくれるか?」
「はいっ。最強というのは、上位種ということでして。ここの場合は【ゴールドスピアビートルキング】と【シルバースタッグビートルクイン】になるんじゃないかなとっ」
「……見た事も聞いたこともないんだか!?」
「大丈夫です。二回りくらい大きくなって、金と銀になっただけです!」
「……眩しそうだな……そんで、絶対に剣は折れる……」
「その通りです!」
「「「「「……」」」」」
ニコニコされても、喜ばしく思えないというのが一同の感想だ。ただでさえ戦いにくいのに、どうにもならなくなりそうだというのは、想像できる。
「それでですねっ。なんとっ、これを三十分以内に倒すと、ボーナス特典として素材も本来のドロップ品も手に入るんです!!」
「っ……それはおいしいっ……いや、三十分? 時間制限あり……間違いなく無理があるってことじゃないか? そんなに迷宮って甘くないよな? だから知らないんだよな?」
このボーナスについての情報が全く聞いたことがないということは、実現出来た者が皆無だということに他ならない。
「ってことで、検証も含めてやっちゃいましょう! 条件も揃ってますし!」
「「「「「いやいやいやいやっ!」」」」」
「「「「「私たち、戦闘要員じゃないです!!」」」」」
職員達が涙目になっていた。
「大丈夫ですよ。確かに、俺やテンキ達が居ないならやるべきじゃないですけど、今は居ますしっ。その上、経験さえ積めばSランク確定の人達も数人居ます。これで勝てなかったら、誰も攻略できませんよお」
コウヤは嬉しいのだ。いつもは、一人かパックン達としか来ない。だから、この条件が揃った所に居合わせたのも初めてだ。
この情報を知っていても、体験することができなかった。実際の所の検証ができなかったということ。
それは、コウヤにとっては少しばかり不満だった。せっかくならば、人として体験したいというのがコウヤの願いだ。
「ねっ。安全は保証します! やってみましょうっ」
《過信ではなく、事実として、私が居ればあなた方を死なせませんよ。ドラゴンの上位種が出ても問題ありません》
「「「「「……そこは信用してます……」」」」」
《ならば良いでしょう》
《素材っ、素材っ、わくわくっ(≧∇≦)》
《ここの子達もワクワクしてましゅ♪》
「「「「「……」」」」」
盛大に巻き込まれたという感が否めないが、今日はこれで終わりだし、仕方ないと諦め、一同は頷いた。
「行きましょう!!」
「「「「「おおっ!!」」」」」
もうやけくそだという様子ではあるが、こうして、初のボーナスステージ挑戦となったのだ。
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