元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

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第十三章

519 余裕なくね?

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迷宮に着いたコウヤは、門の前で先ずはと説明から入ることにした。一応は、事前の説明会もあったが、あまり時間が取れなかったので改めてということだ。

「では、これから迷宮の棚卸しに入りますが、先ずは改めてやる事の説明をしますね。質問があれば、いつでも聞いてください。後でとなると、確認忘れたということにってしまうかもしれませんからね。気付いた時に言ってください」

質問することを整理して頭に置いておくというのは、慣れている人でなければ中々難しい。『あっ、聞くの忘れた』となることも多々出てくるだろう。なので、多少時間がかかるかもしれないが、すぐに質問してもらうことにする。

「やる事は三つ」

三と指を三つ立てるコウヤを囲うようにして並んだ一同がうんと頷く。

「一つは、階層毎の魔獣や魔物の種類と正規のルートを通った際の数の確認です。ギルドの資料と同じかどうか、きちんと確認されている全種類を視認していきます」
「はいっ! もしも、資料と違う魔獣や魔物が確認された場合はどうするんでしょうか」

手を上げて質問したのは、ユースールの職員。今回、同行しているのは、マイルズだ。

本当はもっとユースールに長く居る者をと思っていたのだが、未だに女の人が怖いと言う人や王都の人を怖がる人が居るため、それならばと決まった。

一応は精神的に弱い者達も、それなりに動けるよう訓練しているため、実力的には誰を選んでも大丈夫なのだが、一緒に行く冒険者や他の支部の職員達を怖がっていては困る。

そろそろ、外に出て本格的に慣れるためのリハビリをしても良いと思うのだが、仕事はきちんと出来るため、周りもコウヤも無理にとは言わない。

本人達もこのままではいけないと思うようになっているらしいので、そのうち、ひょいっと出ていくようになるだろうとマリーファルニェも言っている。

今はエリスリリアやリクトルスも近くに居るのだ。その影響もあり、彼らも変わっていくだろう。

よって、今回マイルズが選ばれたのは、自然な流れだった。

コウヤはマイルズの質問に笑みを深めて答える。

「記録して後日、冒険者に調査依頼を出します。気のせいで済ませてもいけませんが、無理をして偵察するのもいけません。棚卸しの時はとにかく正しく記録を取ることが大事です」
「はいっ。それは倒してもいいですか?」

次は冒険者からの質問。

「避けられるならば避けます。これはどの魔獣や魔物でもそうです。無理がない範囲でなるべく避けて進みます」
「あ、出会ったやつ全部倒すんだと思ってた」

確認できてよかった。何人かがそうなのかと目を瞬いていた。

「倒すのに手間取っていると、リポップがありますから、正確な数がわかり辛くなります。なので、なるべくゆっくりでも足を止めずに正規のルートを進みます」
「え? 階層が広い場合もずっと?」

それはかなりの強行軍で、職員達には体力の心配があるのではないかと思ったようだ。

「あ、いえ。休憩所、セーフティーゾーンの確認もしますから、きちんと休憩も取りますよ。休憩所では、時間にして五分は休みながらその場がきちんと規定通りに保たれているかどうかの確認をします」

迷宮内では、何かを落としたりすれば、精霊が回収してしまったり、分解して処分してしまったりする。ただ、それが大事な物であり、その人の想いが込もっていれば、精霊は次にその人が現れた時に気付くように戻してくれたりする。

セーフティーゾーンは、迷宮内で唯一、物をそのまま置いておける場所だ。とはいえ、ごちゃっと、乱雑に置いたりすれば、ゴミ判断で周辺の物もまとめて回収されてしまう。

なので、ゴミもきちんと始末するのがルールだ。迷宮内だから、消えるからと適当にやるのは許されない。

置いておけるからと言って、保存食を置いておくなんてことは、盗難の心配が大きいのでできないのは残念なことだ。

用意できるのは、簡易トイレの施設と飲み水が確保できる設置式の魔導具くらい。こちらは大きくてそうそう持ち逃げ出来ないということもあるが、精霊が気を利かせて迷宮に組み込んでしまうため、盗難や破壊の心配はなかった。

「これが二つ目ですね。清掃や魔導具の整備が必要あるかどうかを確認していきます。五分ほどすれば、休憩所を出た時には魔獣達の敵対心……ヘイトもリセットされますので、時間はきちんと取ってください」
「知らんかった……」
「あ、五分でいいんだ」
「もっと必要だと思ってた……」

冒険者達は、感覚的にヘイトの有無は感じていたようだ。だが、正確に時間は知らなかった。大体これくらいしたらという大体の目安は体感で覚えていくものだ。

「五分で大丈夫ですよ。ですが、しっかり休憩するつもりの時か、振り切って逃げて来た時に入るものですし、大体五分以上の滞在になりますよね」
「あ、確かに」
「うん。そうだわ」
「そっか。なら気にしなくていいか」
「けど、知れてラッキー」

知識として知れたことは、冒険者にも職員にも良かったようだ。

「では、最後の三つ目。これは、階層で確認できる薬草や採取物と倒した魔獣や魔物のドロップ品の確認です」

魔獣や魔物を倒すことで出るドロップ品だけでなく、薬草の有無、種類の確認も同時に行う。よって、職員は二人から三人で手分けして確認していく必要がある。

「ドロップ品については、一種類につき、三から五体ほどで良いです。ただし、ドロップが中々出ない個体については、それが出るまで頑張ってもらいます。出るまで何体倒したかも記録が必要です」

稀に、十体中一体しかドロップしないという個体もあるのだ。

「あ~、そうなると……ボスは倒すのか?」
「倒します。なので、過剰戦力になっても、迷宮の適正ランク以上のパーティに依頼してくださいね」
「どおりで、過剰だと思ったんだよな……」
「この人数なら余裕だな~って思ってたわ」
「迷宮内の護衛だし、そりゃあそれなりに余裕がないとダメだとは思ったが……」
「護衛しながらボス戦はなあ……」
「……余裕なくね?」
「「「「「……」」」」」

人数的には充分過ぎると思っていたようだが、戦力にならない職員を連れてとなると、ボス戦までは厳しそうだと今更ながらに一同は気付いた。








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読んでくださりありがとうございます◎
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