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第十三章

511 良い罰だよなっ

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城を出て最短距離で貴族街を抜け、いよいよ町に出る。

「そういや、馬車じゃなくて本当に良かったのか?」

コウヤは、王子としてのお披露目をする前まで、ギルドや教会から王城まで、たいてい歩きで行き来していた。

拡張前の王都の大きさは、ユースールとほぼ変わらない。密集度が違うだけだ。よって、日々歩いて出勤するのが当たり前だったコウヤにとっては、そう大した距離ではないと今でも思っている。

「ずっとお城に居たので、どうにも運動不足なような気がするんですよ」

机仕事は好きだが、コウヤはギルド職員として迷宮にも潜るのが当たり前だったのだ。それを考えると、動いていないなと思えるのは当然だった。

「それに、ギルドに職員が馬車で横付けはちょっと……」
「「「「「あ~……」」」」」

なんだか格好がつかない気がする。ギルドマスターであろうと、ほとんど馬車など使わない。もちろん、長距離の移動の場合は使うし、出向く場所によっては使うが、出勤で使うことは先ずない。

歩いて二、三分以内の所に、たいていは寮もあるし、家を持つ者は、出勤に便利な場所を選ぶのが普通だ。だからこそ、出勤で馬車を使うなんてことにはならないという理由もある。

「それに、距離的にはユースールの自宅からギルドまでとそんなに変わらないはずなんです」
「そういえば……そうだな。コウヤの家は少し遠かったか……」

そう。出勤するのに便利な場所に自宅をというのが普通だが、コウヤの場合は気にしなかった。ユースールの場合は、新しく家を建てるタイミングであったことも理由としてはある。

「ギルドの近くは、冒険者の方達のための宿屋や借家として、一つでも多く空けておきたかったですし、何より、近くに居たら呼び出され易いじゃないですか」
「……そうだったな……」
「そうだったわ……」
「距離って大事だよな……」

かつてのユースールのギルドは、ただでさえ呼び出しが多かった。少しでも遠ければ、それだけ時間がかせげるし、呼ぶのが面倒になって諦めることもあるだろうという目論見もあった。

実際、本来の呼び出し回数より少なかったのだ、それでも毎日のように休む間もなく呼び出されていた。

「なんだか、今思うと、それなりにあの頃が懐かしいです」

しみじみとコウヤが言えば、眉間に皺を寄せながらグラムが溜息混じりに告げる。

「……今思ってもロクな奴らじゃなかったぜ……あいつら、今どうしてんだ?」
「どうなんでしょう? 本部の鉱山迷宮で働いてるみたいですけど」

多額の罰金も発生していたようなので、今もまだ働いているはずだ。

「本部かあ……行ったことねえなあ」
「俺も。鉱山の迷宮ってどんな感じなんだろ……」
「なあ、気になってたんだが、あそこは鉱山? なのか迷宮なのか、どっちなんだ?」
「は? いや、鉱山迷宮なんだから、両方だろ」
「そういう意味じゃなくてさあ」

話がおかしな方に転がっていく。これには、ダンゴが応えた。

コウヤは、いよいよ町に出たことで、気付いた住民達が手を振ってくるため、それに応えるのに忙しかった。

見慣れた冒険者ギルドの制服を着ているというのが良かったらしい。近衛師団の者とはいえ、冒険者らしい者達と気楽に話している様子なのだ。王子だとわかっても、コウヤであることに変わりはないと気付いたのだろう。

「わっ、こ、コウヤく、様っ」
「こんにちは~」
「はっ、こんにちは!」

こんな感じで普通に笑顔で手を振っているコウヤの代わりに、ダンゴが答えたのだ。

《言いたいことは分かるでしゅよ? どっちがメインかってことでしゅよね?》
「そうっ。だって、鉱山なら石? を採掘するだろ? 迷宮なら採掘してる暇ねえじゃん」
《あそこは、階層によるんでしゅ。浅い所で魔獣の心配なく採掘できる階層もあるし、オーガとかが出てきて、倒して安全を確保しないと採掘出来ない階層もあるでしゅ。それに、あそこは魔獣を倒しても鉱石が出るんでしゅよ》
「へえ……なら、売れるのは、どのみち鉱石か……」
《マジックバッグがないと荷物になるでしゅよ》
「……石だもんな……」

それほど長く潜って居られない上に、手に入れた物は重い。安全な階層は浅いが、採掘できる鉱石は小さく安いもの。それだけでは、犯罪者として扱われる者たちは稼げない。

そうなると必然的に深い階層へ向かうことになるが、距離があれば、手に入れた重い鉱石を運ぶのにも苦労することになる。

テンキが記憶を思い出すように宙に視線を投げて引き継ぐ。

《確か、あそこは犯罪者として来た者には、マジックバッグを持たせないそうです。長く篭られないようにですね》

犯罪者ではなく、普通に鉱山迷宮に入って稼ごうとする冒険者達にその規制はない。

《それに、採掘も取得した扱いで、魔獣を倒したのと同じでギルドカードに数を反映するそうです。なので、不正に手に入れる事もできません》

討伐数が記録されるように、採掘したものも手に取った時点でギルドカードに記録されるようになっているのだ。

「ズルできねえのか。あいつらにとったら地獄だろうな……」
「そんなに量を待てるほどの体力もないし?」
「人任せにするのが当たり前だった奴らにしたら、絶望するだろ」
「いやあ、良い罰だよなっ」

朝から晩までの重労働。それも自分でやらなければならない。手を貸してくれる者などいないのだ。自分でどうにかするしかない。

そこで、こちらに耳を傾けてもいたコウヤは、素直な感想を口にする。

「あそこに行くと、口数が少なくなるそうなんですけど、あの人達が口数少なくなるって……想像できないです」
「「「「「同感」」」」」

そう思うと、もう顔も見たくないと思った人たちでも、ちょっと今どうしているのか見てみたくなる。

《そこってクリスタルドラゴンが居るとこ?》

パックンが確認してくる。これに、コウヤは笑いながら頷いた。

「そうだよ。確か……そうだっ。パックンが初めてパックン大会をした所だねっ」
《あれはおいしい ♪(´ε` )  》

多分、色んな意味で。ダンゴも呆れる有り様だったのを思い出す。

《小型のドラゴンでしゅけど、ミミック一体にドラゴンが逃げるとか、異常だったでしゅよ!》
《あそこで伸縮のスキルを手に入れたんでしたか。アレをやるために……昔から変わりませんね……》
《頑張った d( ̄  ̄) 》
《動機が不純……とは言いませんけど、昔から欲望に忠実ですよね……》
「「「「「さすがパックン」」」」」
《どうも ( ̄+ー ̄) 》

そんな話で盛り上がりながら、久し振りのギルドに着いた。そこには、沢山の冒険者達が行き交っていた。








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