元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

文字の大きさ
上 下
397 / 475
第十二章

502 責任重大?

しおりを挟む
民達へのお披露目に使われるのは、城の外壁にある物見台だ。もちろん、特別に広く作られており、新王のお披露目なども全てここで行われる。

四階建てくらいの高さで、三階辺りの所が張り出してバルコニーのようになっている。そこで他国の王族の代表も集まる。

その下に広がるのは、中央広場だ。そこに、民達が朝早くから集まり始めていた。

「今回は、教会と冒険者ギルド、商業ギルドでも映像を流すと告知しておりますが、かなりの人が集まっているようです」

そう報告してくれるのは、向かいに座るニールだ。城からは馬車で移動しなくてはならない。それも、何台も連なっての移動となっていた。

この馬車に乗っているのは、ニールの他にはフレスタとディスタだ。二人は元王子だが、自国では待遇が良くなく、お披露目も出来ていなかった。けれど、卑屈になることなく、今回のコウヤのお披露目を喜んでいた。寧ろ、とても誇らしげだ。

「これほど盛大なお披露目は見たことがありませんっ」
「全国民が注目しているなんて……国王の即位式の時でも中々ないですよっ」

各領地でも、今日は領主邸や各ギルドと教会にてリアルタイムで映像が見られる。

今までは、映像でなどなかったので、この場に来た者しかこの雰囲気を味わえなかった。だから、王都から遠い土地に住む者達には、ほぼ関係ない話だし、民達にとっては、一日、一日を暮らしていくのに王族など意識しない。

そんな事があったんだねと軽く流してしまえるくらい話だ。

よって、ここまで注目されている王族などこれまで居なかった。

「映像でという話も、民の方からの訴えで決まりましたからね」

ニールの言葉に、コウヤは初耳だと目を丸くする。

「そうだったの? ジル父さんから頼まれて映像の魔導具を作ったんだけど」

ジルファスをはじめとした王族が、コウヤの姿を民達にもしっかり見てもらいたいということで、これを作ることになったというのが最初だ。

本来ならば、このお披露目でその映像の魔導具も初お披露目となるはずだったのだが、その前に迷宮化の討伐の折に、試験的に採用したのだ。

結果は大好評。良い宣伝にもなり、今回のお披露目についても、いつも王都に行けない各領地の民達が、見られるならば人生に一度は見てみたいという要望によって領主邸前に用意するはずだったものを、教会やギルドにも用意させたのだ。

なるべく多くの者が見えるようにという配慮だ。

「最初の予定数よりも多くなりましたでしょう」
「あ、うん。三倍くらいにはなったね。どうせ他の国の王家にも回すことになりそうだからって、かなり多めに作ってたのがギリギリになったから」

途中で追加発注がかかったのだ。別にコウヤとしては一度作り上げた物の量産は手間ではない。よって、特に苦になるでもなく数を用意できた。

「人生で初めて王族のお披露目を観るという者も多いでしょうから、かなり注目されています」
「そっか……今までは、この場に……王都に来ないと見られないものだもんね……」
「はい。それも、この場所に来られたとしても、顔など見えませんから。後で姿絵などで確認するものです」

すぐ下から見たとしても、顔までしっかり見えるのは、目の良い冒険者くらいだろう。手を振ってるし、中心に居るし、この人がそうかなというくらいの認識になる。

だが、今回はきちんとしたカメラワークでの撮影。張り出した場所のすぐにカメラを設置しているので、しっかりはっきりとアップが映るはずだ。

この広場でも、映像が壁に映し出されることになっていた。

バルコニーの上と下にそれぞれ、大きく映像が映される予定だ。

「……結構、責任重大?」
「お気になさらず。確実に史実として残る一日になるというだけです」
「大事だよね?」
「ご心配なく。コウヤ様の足跡は、ほとんど記録されることになっておりますから」
「……そうなんだ……」

そんなこと初めて聞いたなとコウヤは苦笑するしかない。ニールが言うならば、決定なのだろう。

そして、ようやく城壁に着いた。








************
読んでくださりありがとうございます◎
次回16日です!
文庫版第1巻好評発売中です!
しおりを挟む
感想 2,775

あなたにおすすめの小説

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。