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第十一章

473 監視なら任せてくれ

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コウヤは、コウルリーヤの姿のまま、リクトルスと野営地を回り、冒険者達を労った。

その際、コウヤがコウルリーヤの生まれ変わりだと周知されたのだが、冒険者達は納得顔だった。

コウヤの献身的な働きも見ているし、その強さも知っていたことで、距離を置かれることなく受け入れられたのは良かった。

そして、多くの者たちは、その後に首を捻る。

「え……この人が邪神って……」
「何言ってんの? 何考えてんだ? 昔の人ってバカなのか」
「こんな癒し系な空気持ってる人? 神? を邪神とか言っちゃうとか、頭おかしいだろ!」
「黒幕は誰だ!?」
「どいつが犯人だ!? 今のどっかの王家とかだったら反乱起こしたらあっ!」

そして、次第に怒り出す者が続出した。お酒が入っているのも原因だろうか。

「あ~……あの~……」

コウヤもこの反応はどうすればいいのか分からない。

一緒にリクトルスや、護衛だからと言って付いてきたルディエも頷いて煽るから、収拾が付かなくなってきている。

「まったくです。どれだけコウヤ君が人々のためにと頑張っていたか。とんだ恩知らずですよ」

そうリクトルスが言えば、冒険者達も大きく頷く。

「今回の仕事振りを見てたら分かります! そんな人を攻撃するなんてっ……バカ以外の何者でもないっ」
「どこのどいつですか! 邪神なんて言いやがったのは!」
「そうだっ、どいつだ!」
「どこの先祖ですか!」

ヒートアップしていく冒険者達に、ルディエがボソっと伝える。

「神教会」
「「「「「ぶっ潰す」」」」」

神教会に世話にならない冒険者はいない。よって、足下を見られて暴利を貪るその教会に恨みを抱かない者はいなかった。

「あっ。だからトルヴァランには神教会がなくなったのか」
「えっ、それ、本当なのか?」
「そうそう。その代わりに、神様に認められた教会があるんだよ」
「今回の討伐で、何か飛んでた人らいたじゃん。あの人らが神官様だよ」
「え!? 騎士様かと思ってた……あっ、でも、確かに……怪我治してたりしたな……」
「あの人たちが神官とか……最強じゃん。そりゃあ、神教会も手え出せねえわ」

聖魔教の神官達は、バイクで飛び回り、怪我人の救出や治療をしていたが、神教会の聖騎士や一般的な神官の服装とも違う制服だったため、神官と言われても半信半疑だった者は多かったらしい。

「なら、俺らの国の神教会も追い出してもらえねえかなあ」
「だよな。治癒魔法も、見たことねえくらい凄え威力だったし」
「何より、神様に認められてるって凄えよな。そんな教会なら……きっと娘も……」

治療費を稼ぐために、冒険者になる者も少なくない。同意して頷く者たちも多かった。

これに、ルディエが答える。

「もう動いてるよ。他の国の王達も同意した。神教会を追い出して、聖魔教に一新する予定だよ」
「マジで!?」
「やった! あっ、なあ、それ俺ら手伝えることあったら言ってくれ!」
「そうそうっ。逃げる奴とか捕まえてやるよ!」
「奴らに捕まってる病人を運び出すとかさ」
「後は~、あれだ! 弱味握られて、用心棒させられてる冒険者を抑えるとか!」
「何でも言ってくれ!」

これを聞いて、ルディエはふむと考え込む。そして、コウヤに目を向けた。

「これ、冒険者ギルドも巻き込んでいい?」
「ん? あ~……うん。そうだね。冒険者の方が、国の騎士や兵士を出してやるよりいいかも。逃げ道になる裏路地とか、冒険者の方が詳しいし、どうしても兵士や騎士が動くと大掛かりになっちゃうからね」
「なら」
「うん。マスター達にも相談してからだけど、いいかもね」

冒険者達は、町に溶け込むことも容易い。よって、事を起こすまでの監視や、中で困っている人を、秘密裏に助け出す事も可能だろう。

「監視なら任せてくれ」
「俺らは入って行っても、兵とかと違って、怪しまれないからな~。カモだと思っとけってやつ」
「俺っ、教会と繋がってる商会知ってる!」
「あ~、結構いるんだよな~」
「そっちの調べは国に任せればいいんじゃね? 俺らは、町の奴らとも協力して、町から逃がさんように見張ってればいい」
「そうそう。町の奴らも恨んでるもんなあ」
「教会と繋がってる商会の奴らも恨まれてるし、どうにかなっても心も痛まねえ」
「だな!」

なぜか、着々と各町、各国から神教会を叩き出す算段が組まれていく。これにより、予定よりも早く事が進むことになる。

そうして野営地を回り終えたコウヤだが、少し困っていた。

「う~ん」
「どうしたの兄さん。もう戻っていいんじゃない?」

無理してコウルリーヤの姿になっていることはないと言われたのだが、問題がある。

「うん……あのね。明日の片付けとか、俺、小さい状態でやることになるな~って」
「「あ……」」

そう、リクトルスとルディエは忘れていたのだ。コウヤのこの後の反動のことを。

そして、二人は真面目な顔で手を差し出した。それは、まるで子どもを抱き上げようとする手だ。

「「どうぞ」」
「……うん……」

多分、抱き抱えられながら仕事の指示をすることになるなとコウヤは覚悟を決めた。







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三日空きます。
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