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第十一章
472 絶対ないです!!
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陶然と見惚れる者たちへと、コウルリーヤは伝える。
「きちんと今、気付けたならば、あなた方はこれからを悔いのないようにと生きていけるでしょう。それはとても……大切なことです」
「「「「「っ……」」」」」
目を丸くする様は、まるで『本物だ!』と感動するようでもあった。喋っていること。声を聞いていることが信じられないとでもいう様な様子にも見える。
しかし、コウルリーヤの姿になったコウヤはクスリと笑っただけで続ける。コウヤとしては、『ギルド職員から怪しい占い師の様な姿になった』ことに戸惑っていると思ったのだ。
「実際に悔いなく、なんていうのは難しいですけど……これからの事を誰もが一人一人で考えて、生きていければ、少なくとも自分で選んだことだからと、人のせいにして悩むことはなくなるでしょう。それで十分だと思います」
「「「「「……」」」」」
エルフ族や獣人族の事情を知るユースールの冒険者達はうんうんと頷く。彼らは、討伐に動いている間も、情報収集に余念がなかった。
当然だ。彼らの大事に想っているコウヤが、もうすぐ王子としてお披露目をする。そんなコウヤに悪心を抱く者が居ては困る。
彼らは彼らなりの方法で、コウヤを守ろうとしていた。だから、エルフ族や獣人族の行いや、神から受けた罰についても、調べていたのだ。
「どうしても、人がまとまっていると、誰かのせいにして逃げ道を作りがちです。多くの者が、一緒に逃げれば、責任を押し付けた相手への罪悪感は薄くなりますから……」
「「「「「あ……」」」」」
小さく、それに心当たりのある者たちが声を上げる。心当たりがあると気付けただけでも、十分な成果だろう。だから、コウヤは思わず微笑んだ。
「全てを自分のこととして受け止めるのは大変なことです。けど、逃げないことはとても大事で……そうして嫌なことでも受け止めようとすることで、次がないようにと思えるものです。後悔しないってそういうことでしょう?」
これに、思わずというように、ユースールの冒険者達が答えていく。
「確かに、後悔って後味悪いし……」
「もう二度とこんな思いしたくないって、努力するよなっ」
「逃げたら逃げたで後味悪いけど……けっこう早く忘れるし……」
「おんなじ事、やるよな」
「その時は辛いけど……次にやらないようにって思うなら、必要な辛さかもな」
そんな言葉を、周りも聞き、そうかと頷く。エルフ族や獣人族の者たちも、重々しく頷いて何かを決意したように目に力が宿る。
「生きていれば、後悔するのは当たり前で……でも、後悔するってことは、より良い結果になる事を想像できたってことです。『ああすれば良かった』って。そう思えるなら、それはいつか同じような事があった時に、誰かのためにでも動けるでしょう。自分さえ良ければ良いなんて生き方は、結構難しいですから」
「そう……かも」
「思わず動いちまったりするんだよな」
「あるある」
そんな事もあったなと、笑う者は多かった。
「俺、言うほど自分勝手じゃないのかも」
「あははっ。お前がそうなら俺もだよっ」
「えっ、俺良い人じゃん」
「だから、それなら俺も良い人だってっ」
そんな笑い声がこの場に満ちた。
これに、リクトルスも笑いながら告げる。
「ふふっ。世界は、そうやって少しずつ良くなっていくものです。あなた方のちょっとした行いで、後悔が一つでも減って、こうして笑うことが出来る世界に……私達は、それを見守ってますよ」
「「「「「リクト様……」」」」」
感動する冒険者達。その目に耐えられず、リクトルスがコウヤの肩を抱いて苦笑した。
「……こういうのは、コウヤ君の役回りでした……私は、ちょっとやそっとでは折れないよう、更に厳しく指導することにします!」
「えっ、い、今以上っすか!?」
「こ、これ以上だと……さすがに折れたままになりそうな……」
「そんな軟弱な事でどうします! 折れたものを修復する力もついて一石二鳥でしょう!」
「「「「「っ、そんなぁっ」」」」」
ユースールの冒険者達は、どうにかしてリクトルスを説得しようと頑張る。そんな様子が面白く、他の冒険者達が笑う。
しかし、そんな冒険者達にも、リクトルスは目を向けた。
「あなた達も笑っていますけど、他人事ではありませんよ。まったく、数百年でこんなにサボり癖が付いているなんて……嘆かわしい。いいですか? あなた達も、時間を作ってユースールに来なさい。レベルが低すぎます! これでは、この先また、迷宮化する土地も出てきますよ。きちんとその土地で管理出来るようにしてもらわなくては」
「っ、あ、あのっ。稽古をつけていただけるので……?」
「俺たちも!?」
喜び興奮する冒険者達を、ユースールの冒険者達がかわいそうな者を見るような目で見ているのには、気付いていない。
「当然です。コウヤ君。ギルドできちんと管理できるよう体制を作りましょう。落ち着いたら、相談に乗ってください」
「いいけど。リクト兄……良いの?」
「地上に下りることですか? 元々、コウヤ君にだけ任せたのがいけなかったんですよ。言っておきますよ! 今度、コウヤ君を敵に回すような事があれば、私も相手になります」
「「「「「俺らも止めるんでっ、絶対ないです!!」」」」」
「それやった奴、俺らが退治するんでっ」
「そんなバカ、俺らで締め上げますんでっ」
はいっと、必死な様子で沢山手が上がった。
「おや……まあいいでしょう。覚えておきますからね」
「「「「「お願いします!!」」」」」
「えっと……」
コウヤは、何だか不思議な空気になったなと、感じながら、そういえばこの後、また少し小さくなるんだけどなあと、のほほんと笑っていた。
***********
読んでくださりありがとうございます◎
次回、一度空いて来週9日です。
よろしくお願いします◎
「きちんと今、気付けたならば、あなた方はこれからを悔いのないようにと生きていけるでしょう。それはとても……大切なことです」
「「「「「っ……」」」」」
目を丸くする様は、まるで『本物だ!』と感動するようでもあった。喋っていること。声を聞いていることが信じられないとでもいう様な様子にも見える。
しかし、コウルリーヤの姿になったコウヤはクスリと笑っただけで続ける。コウヤとしては、『ギルド職員から怪しい占い師の様な姿になった』ことに戸惑っていると思ったのだ。
「実際に悔いなく、なんていうのは難しいですけど……これからの事を誰もが一人一人で考えて、生きていければ、少なくとも自分で選んだことだからと、人のせいにして悩むことはなくなるでしょう。それで十分だと思います」
「「「「「……」」」」」
エルフ族や獣人族の事情を知るユースールの冒険者達はうんうんと頷く。彼らは、討伐に動いている間も、情報収集に余念がなかった。
当然だ。彼らの大事に想っているコウヤが、もうすぐ王子としてお披露目をする。そんなコウヤに悪心を抱く者が居ては困る。
彼らは彼らなりの方法で、コウヤを守ろうとしていた。だから、エルフ族や獣人族の行いや、神から受けた罰についても、調べていたのだ。
「どうしても、人がまとまっていると、誰かのせいにして逃げ道を作りがちです。多くの者が、一緒に逃げれば、責任を押し付けた相手への罪悪感は薄くなりますから……」
「「「「「あ……」」」」」
小さく、それに心当たりのある者たちが声を上げる。心当たりがあると気付けただけでも、十分な成果だろう。だから、コウヤは思わず微笑んだ。
「全てを自分のこととして受け止めるのは大変なことです。けど、逃げないことはとても大事で……そうして嫌なことでも受け止めようとすることで、次がないようにと思えるものです。後悔しないってそういうことでしょう?」
これに、思わずというように、ユースールの冒険者達が答えていく。
「確かに、後悔って後味悪いし……」
「もう二度とこんな思いしたくないって、努力するよなっ」
「逃げたら逃げたで後味悪いけど……けっこう早く忘れるし……」
「おんなじ事、やるよな」
「その時は辛いけど……次にやらないようにって思うなら、必要な辛さかもな」
そんな言葉を、周りも聞き、そうかと頷く。エルフ族や獣人族の者たちも、重々しく頷いて何かを決意したように目に力が宿る。
「生きていれば、後悔するのは当たり前で……でも、後悔するってことは、より良い結果になる事を想像できたってことです。『ああすれば良かった』って。そう思えるなら、それはいつか同じような事があった時に、誰かのためにでも動けるでしょう。自分さえ良ければ良いなんて生き方は、結構難しいですから」
「そう……かも」
「思わず動いちまったりするんだよな」
「あるある」
そんな事もあったなと、笑う者は多かった。
「俺、言うほど自分勝手じゃないのかも」
「あははっ。お前がそうなら俺もだよっ」
「えっ、俺良い人じゃん」
「だから、それなら俺も良い人だってっ」
そんな笑い声がこの場に満ちた。
これに、リクトルスも笑いながら告げる。
「ふふっ。世界は、そうやって少しずつ良くなっていくものです。あなた方のちょっとした行いで、後悔が一つでも減って、こうして笑うことが出来る世界に……私達は、それを見守ってますよ」
「「「「「リクト様……」」」」」
感動する冒険者達。その目に耐えられず、リクトルスがコウヤの肩を抱いて苦笑した。
「……こういうのは、コウヤ君の役回りでした……私は、ちょっとやそっとでは折れないよう、更に厳しく指導することにします!」
「えっ、い、今以上っすか!?」
「こ、これ以上だと……さすがに折れたままになりそうな……」
「そんな軟弱な事でどうします! 折れたものを修復する力もついて一石二鳥でしょう!」
「「「「「っ、そんなぁっ」」」」」
ユースールの冒険者達は、どうにかしてリクトルスを説得しようと頑張る。そんな様子が面白く、他の冒険者達が笑う。
しかし、そんな冒険者達にも、リクトルスは目を向けた。
「あなた達も笑っていますけど、他人事ではありませんよ。まったく、数百年でこんなにサボり癖が付いているなんて……嘆かわしい。いいですか? あなた達も、時間を作ってユースールに来なさい。レベルが低すぎます! これでは、この先また、迷宮化する土地も出てきますよ。きちんとその土地で管理出来るようにしてもらわなくては」
「っ、あ、あのっ。稽古をつけていただけるので……?」
「俺たちも!?」
喜び興奮する冒険者達を、ユースールの冒険者達がかわいそうな者を見るような目で見ているのには、気付いていない。
「当然です。コウヤ君。ギルドできちんと管理できるよう体制を作りましょう。落ち着いたら、相談に乗ってください」
「いいけど。リクト兄……良いの?」
「地上に下りることですか? 元々、コウヤ君にだけ任せたのがいけなかったんですよ。言っておきますよ! 今度、コウヤ君を敵に回すような事があれば、私も相手になります」
「「「「「俺らも止めるんでっ、絶対ないです!!」」」」」
「それやった奴、俺らが退治するんでっ」
「そんなバカ、俺らで締め上げますんでっ」
はいっと、必死な様子で沢山手が上がった。
「おや……まあいいでしょう。覚えておきますからね」
「「「「「お願いします!!」」」」」
「えっと……」
コウヤは、何だか不思議な空気になったなと、感じながら、そういえばこの後、また少し小さくなるんだけどなあと、のほほんと笑っていた。
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読んでくださりありがとうございます◎
次回、一度空いて来週9日です。
よろしくお願いします◎
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