元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南

文字の大きさ
上 下
364 / 475
第十一章

469 最後のシメだよ!

しおりを挟む
いよいよ、最後のフィールドの討伐の日がやって来た。

合流した獣人の里の方の対応をしていた冒険者達も、ずっと偵察や支援に回っていた神官達までやる気満々だ。更には、ドラム組とドワーフ達も向かうと言う。

そして、野営地としている里のエルフ達も、せめて最後だけはと、ここ数日密かに訓練していたらしく、今日は参戦するとのことだ。

「最後ではありますし、総力戦になるのは悪くないんですが……楽しみにし過ぎじゃありません?」
「え? そう?」

タリスはキョトンとしているが、コウヤが不安に思っているのは、あまりにも全員が興奮状態なことだ。誰も彼もが鼻息が荒い。

「大丈夫だよ、兄さん。現場で調整するから」

ルディエがそう言って不敵に笑った。

「ん~、ルー君が言うなら……けど、魔法師の人たちが、昨日の影響で加減がわからなくなってるかもしれないから、そっちも気を付けてね」
「……それがあった……うん。でも、何とかするよ。リクト様も出るし」
「そうだね……じゃあ、頼むね」
「っ、うん」

よろしくとルディエの頭を撫でると、嬉しそうに頬を染めて頷いた。

タリス自身も興奮気味なので、いざと言う時に頼りにならなさそうなのだ。ルディエを信じることにする。ルディエさえ冷静なら、神官達が上手くフォローしてくれるはずだ。

準備も整ったと、タリスが声を張り上げる。

「それじゃあ、最後のシメだよ! 目一杯楽しもう! 行くよー!!」
「「「「「おおっ!!」」」」」

駆け足で里を出ていく面々。

残ったのは、後方支援の職員や冒険者達と、戦力外のエルフ達だ。

全員が手を振って見送ったが、唖然としていた。

「……なんだろ……ノリが飲み会に行くみたいな……」

そんなコウヤの感想に、全員が静かに頷いていた。

「じゃあ、宴会の準備をしましょうか」
「「「「「はい!」」」」」

本来なら、怪我人が運ばれ来るかもしれないからと、治療をする道具などの用意をして待つべきなのだが、神官が現場に居るため、そんな必要もない。

全員無事で帰ってくると確信できてしまう。

よって、必要なのは、打ち上げの用意だ。

「最後の打ち上げは、中央野営地にて、あちらに残っている冒険者達と合流して行います。そちらでは、既に屋台部隊が仕込みを始めている頃です。これより、テーブルなどを持って移動します」
「「「「「はい!」」」」」

テーブルや椅子はドラム組とドワーフの方達が作ってくれていた。

これらは、全てが終わった後、冒険者ギルドの各支部で保管することが決まっている。町や村のお祭りの時などに使えるだろう。

「まずは、移動をお願いします。こちらに運んでもらいましたら、小型の輸送庫で母艦に運びます」

マンタが上空でスタンバイ中。小型の輸送庫とは、空飛ぶ馬車のコンテナバージョン。小型トラックの荷台くらいあるので、大きめな机も問題なく載せられる。

これによって、上空に待機中のマンタへと運ぶ。ただし、コンテナの数は十もないので、中へ持ち込んだら下ろす必要がある。それが少々手間かもしれない。

一時間ほどで、積み込みが終わり、最初の野営地へと移動した。

そこでは、残っていた職員や後方支援の冒険者達が、コウヤ達を待っていた。

ここに残った冒険者達は、今日も周辺の安全確認に向かっていて留守なのだ。

「準備を始めます。ここには、獣人族の里の方を担当していた冒険者の方々も入りますので、予定より範囲を広げます。後ほど、代表の方は確認をお願いします」
「「「はい!」」」
「その範囲の外側に、今回の討伐に協力してくれた魔獣達へのお礼も用意することになります。そちらの準備も並行して行いますので、手が空いた方は、手伝いをお願いします」
「「「「「はい!」」」」」

商業ギルドから、宴会用の物資は大量に届いており、不足はないはずだが、各種、もしも足りない物があれば、パックンに頼むことになっている。あの中にはたいていの物は入っているという認識だ。

既に、冒険者ギルドの職員達も、後方支援の冒険者達も、そうした認識になったらしく、困ったらパックンを探すという具合だ。

ダンゴやテンキは、魔獣達の食事を用意する係を手伝ってくれている。人より魔獣の嗜好を知っているので、彼らに任せれば問題ないだろう。

コウヤは、他の野営地にも飛んで、準備の様子を確認したりと、夕方ギリギリまで飛び回った。

もちろん、この間、戦闘の様子は宙に映し出されており、確認している。

そして、日が赤く染まりだす頃。各所で歓声が上がった。

「ふう……終わったみたいだね」

最後のボスは、ヒュドラの亜種だったようだ。そして、フィールドの闇が晴れ、オレンジに染まる空に向けて、やったぞと手を上げ、雄叫びを上げる冒険者達が映っていた。

誰もがやり切った顔をして、仲間たちの肩を叩き、喜びの声を上げている。

「迎えに行かないとね」

こうして、長い、長い迷宮化討伐が終了したのだ。






**********
読んでくださりありがとうございます◎
三日空きます。
よろしくお願いします◎
しおりを挟む
感想 2,775

あなたにおすすめの小説

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜+おまけSS

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! アルファポリス恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 なろう日間総合ランキング2位に入りました!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。

重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。 あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。 よくある聖女追放ものです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。