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第十一章

464 仲直りしたん?

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一日目は、コウヤの予想通り空が赤くなる頃に、冒険者達は討伐を終えて戻って来た。

それをコウヤや他の手伝いに来ている職員達、後方支援の冒険者達が、里の入り口まで迎えに出る。

「お疲れ様でした! 入ってすぐの所で、防具等の汚れを落としてもらいます。その後、少し休息を取ってください! 二時間後に夕食をご用意します!」

魔法で全身綺麗にしてもらい、それぞれの待機場所で防具を脱いで、調子が悪くなった武器などを、ドワーフの者達にお願いしにいく。

そして、横になったりして二時間自由に過ごしてもらった。

その間に、コウヤは後方支援の者達やエルフの者達で食事の用意だ。

この時には、奥の里に居る者たちも数人、手伝いを申し出て来ていた。

周りには、その者達を厳しい目で見るユキ達が居るので、そうそう悪さはできないだろう。何より、あれから称号の効果なども確認したらしく、完全に心が折れたようで、始終申し訳なさそうに、従順に任された作業を黙々とこなしていた。

ようやく反省するということが出来たようだ。

そんな感じで、少々重苦しい雰囲気の者は居るが、宴会のような夕食の時間が始まった。

「いやあ、確かに今までのより大変だったが、何か気持ち的には余裕だっなあ」
「それだよ! 気持ちの余裕って、大事なんだなって思ったよ」
「安心して背中を任せられる仲間ってのもいいよな……」
「人数的にも安心できるのは大きいよ」

これまで、何日も迷宮討伐で戦って来た経験は、確実に活きてきているというのを彼らは実感していた。

「俺、連携ってこういうことなんだって、やっと分かった気がするんだよ」
「それあるっ。連携? これでいいんだろ? って思ってたのが、実は全然出来てなかったって気付いたわ」

自分が何をすれば良いのか、その後に、周りは何をしてくれるのか。そういった、連携がピタリとハマるようになってきたというのは、大きかった。

「いや~、あれだよな。欲しい時に援護が来たりするあの感覚……ゾクってしね?」
「俺……恋したかもって錯覚した」
「え! マジで!? けど俺もそれわかる。分かってくれたってドキっとするんだよな」
「ありがとっ、助かったって、振り返った先に居たのが親父だった時は……ああ……って思ったけどね!」
「「「あ~……」」」

意外にも、今回の討伐で、親子二代でというのが目に付く。

家を出て行った父親との再会なんてことも多く、討伐前に顔を合わせた親子が、殴り合っていたりもした。

だが、何度か同じ場所で戦ったことで、そのわだかまりもそれなりに解けたようだ。

「仲直りしたん?」
「いや。おふくろの前で土下座するまでは許さんってことにした」
「あ、俺も~、そう言っといた」
「すげえ青い顔してたな」
「大分、あれで溜飲は下がったわ」

冒険者の男親というのは、結婚して大人しく家の近くで働くという者は少ない。まだまだ夢を追いかけたいのだろう。もっと稼げるようになって、帰ってくるなんて言い残し、妻と子を置いて旅に出たりするのだ。

そして、息子は大体、苦労した母親のためにと頑張る。父親と同じ冒険者になるのは、それしか単純に稼げる仕事がないからだ。堅実に生きたい。母親を裏切った父親なんかと同じ職業なんて嫌だと思った所で、他に道がなかったのだ。

しかし、そうした息子達は、安全に、確実に稼ぐように努力する努力家だ。自然、ランクも高くなる。

「あははっ。そういや、お前んとこは、親父よりランク上だったんだろ?」
「うん。追い抜いてた。マジで殴ったら、一発で気絶した。あれには驚いた……というか、焦った」
「ぷっ、それで神官様達を探して走り回ってたんだな」
「やっぱ、一発は入れんとな~」

このエルフの里に来る前。メンバーの選出の時に、一番その騒動が多かった。

人数が減った事で、顔や名前の確認が出来てしまったのだ。上手く紛れていた父親達の存在が分かりやすくなった。

「俺のとこなんて、新しい母親と妹ができてるって聞いて、本気で腕折ったわ」
「それ他にもあったらしいな。何か、マジの刃傷沙汰もあったとか」
「ああ……あの兄妹のとこだろ。妹の方が、切り落とすって叫んでたわ」
「どこを?」
「分かるだろ……」
「「「「「……うん……っ」」」」」

ちょっと場が冷えたらしい。温かい食べ物や飲み物を引き寄せ合う。

「いや、でもさ。会えて良かったよな」
「まあな……探しに行くにしても、あと何年か先だと思ってたし」
「俺は、もう死んでると思ってたよ……」

そうして、チラリと目を向けるのは、それなりに楽しそうに飲み食いしている父親達の年代が集まった場所だ。

同じように、あちらは再会した息子達の事について苦笑混じりで語り合っているとは、彼らも知らない。

「こんなことがなければ、一生会えなかったかもな……」
「だな」
「良い方に考えようぜ」
「おう。なあ、そんで、終わったらきっちりふん縛って帰ろうぜ」
「凱旋だな! 親父共引き摺って」
「逃げられんよう、あの神官様達にも頼んどくか」
「そうしようぜ。あの神官様達なら信用できる」
「「「「「ふっふっふっ……」」」」」

そうして、密かに父親達の逃げ場は閉ざされていく。

「それにしても、飯が美味いな」
「ああ、昼メシも美味かったよな~」
「けど、あそこ暗かったから、なんか夕飯二回目みたいな気がする」
「完全に夜だったもんなっ」
「あんな迷宮あるんだな~」
「残りもそんなんだろ? 俺、暗視の術、初だったんだけど。ちょっと感動した」
「夜にわざわざ活動しねえもんな」
「夜は安全な場所を選ぶし?」

冒険者でも、意外と夜は町に戻るものだ。旅の途中だとしても、安全な火も焚きやすい野営地に留まるし、夜の魔獣討伐なんて危険なことはあまりしない。

「けど、スキルあったらもっと楽なんだろ? 欲しいよな~」

その言葉を待ってましたというように、コウヤがやって来る。

「ふふふっ。そう言われるかな~と思いまして、特別に『暗視スキル取得コーナー』を作っておきました!」
「「「「「はあ!?」」」」」

聞こえた冒険者達が全員驚愕の声を上げ、得意げにするコウヤを振り返った。

「あれ? そんな驚かれる事でした?」

思いの外、多くの者が聞いており、シンっと一瞬、静まり返ったことに、逆にコウヤは目を丸くした。

「あ~、コウヤだしな」
「だな」
「仕方ない」

ユースールの者達だけは、いつもの事かと笑っていた。

この後、どういうことかと、タリスなんかもコウヤを問い詰めることになる。そして、結局ほぼ全員がよろしくお願いしますっとコウヤに頭を下げたのだ。





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読んでくださりありがとうございます◎
次回二日空きます。
よろしくお願いします!
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